一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長は10月5日、危機管理技術を展示する「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2022」で「レベル4解禁への期待と課題」のテーマで講演し、不審ドローンの検知と対処を今後の課題にあげた。検知方法の種類や、対処法についても見解を披露し「技術を組み合わせて対処しようとしています」と述べた。会場には災害、事故、事業承継、サイバーセキュリティーなどさまざまな危機管理技術、製品、ソリューションが展示され、5日に4249人、6日に4526人が足を運んだ。展示会は7日まで開催される。
鈴木理事長は講演の中で、ドローンの歴史、用途、これまでの主な事故や事件、12月に導入される国家資格としての操縦ライセンスの仕組み、米欧の制度との比較、制度整備の方向性、リスク評価、事業者の定義や認証のあり方などを1時間にわたり講演した。
この中で今後の課題として「どんなドローンが飛んでいるかを検知し悪意をもったドローンに対処することが必要です。ミリタリーの文脈で語られがちなテーマですが、今後は空港周辺などでセ日する必要がありますから、民生分野でも活用される可能性が高いと考えます」などと、ドローンの検知の重要性を指摘した。検知の方法として周波数分析、音響センサー、光学、レーダーなどの具体例を示した。
また不審ドローンを無効化、無力化させるための対処法について、RF(無線周波数)ジャマー、GPSスプーフィング、ハイパワーマイクロ波、ネットガン、高エネルギーレーザーなどの技術とともに「鳥」の活用に言及。「鳥を調教して(不審ドローンを)攻撃させる方法も研究されています」と述べ、検知されたドローンへの対処法の検討状況を説明した。
技術的にドローンと親和性の高い空飛ぶクルマについても言及し、「“クルマ”といわれていますが、必ずしも自動車のように道路を走る乗り物という意味ではなく、クルマのように手軽に飛ぶ、という意味で使われているものと承知しています。2025年の大阪・関西万博で実験が行われる見通しで、期待しているところです」と、今後の実用化に期待を表明した。
展示会ではさまざまな危機管理技術が展示されている。
株式会社トラジェクトリー(東京)は災害共有システムをパネル展示した。株式会社SynchroAZ(シンクロアイズ、岐阜県)は、現場作業員の視野を、オンライン会議などに参加した場合に共有できるメガネ型デバイスを紹介。電源を入れてヘルメットなど装着すれば、オンラインミーティングに視野を共有する。試しにつかってみると、見慣れたオンライン会議の画面に、自分がカメラを通じてみている画面が共有されている様子が確認できた。デバイスはレンタルで対応しているという。一般社団法人拡張現実防災普及(東京)は、カメラでとらえた人物をデフィスプレイ上で水害や火災のけむりにまきこまれたような映像を映し出すデモンストレーションを実施。板宮晶大代表理事は「防災意識の啓蒙に役立てたいと思っています」と話した。
株式会社レッツコーポレーション(愛知県名古屋市)は、裸眼で3Dに見えるシステムを展示。2つのレンズのついたカメラと見る角度によって飛び出して見えるレンチキュラーディスプレイを活用。ブースにした福田伊佐央係長は「不審者をとらえたら遠近がリアルで分かります。遠隔手術なども活用範囲です。災害対応以外では広告などが考えられます」と説明した。
また木村化工機株式会社(東京)、森村商事株式会社(東京)、東京工業大学とともに、放射線除去装置を25トントラックに載せて展示。放射性物質を含む空気を取り込み、洗濯機のようにじゃぶじゃぶとまわる水の中を通して洗うことで水溶性の放射性物質をとりのぞき、さらに粒子状の物質をとりのぞき、最後に吸着させる巨大システムで、木村化工機の吉井友彦執行役員は「99.9%の放射性物質を除去できます。現在試験を進めていて、原子力災害が起きた地域の避難施設などの空気の浄化などの用途を想定しています。試験用に計器類などをつけているためにシステム全体が大きいですが、実用化するときにはこれよりはコンパクトになります」と話していた。
展示会は7日まで行われる。