長岡技術科学大学安全安心社会研究センター(センター長:門脇敏教授)は1月21日、「航空安全とドローン安全」をテーマにした特別講演会を開催する。公益社団法人日本航空技術協会(JAEA)の稲垣充理事が「航空安全」について、安全安心社会研究センターの木村哲也副センター長(長岡技大教授)が「ドローン安全」について講演するほか、パネルディスカッションも行う。講演会を主催する安全安心社会研究センターは長岡技大が「システム安全」の啓発を目的に2008年に設置し、政策提言、情報発信、調査研究を行っている。今回の特別講演は、会場参加とオンライン参加とが選べる。
特別講演会ではシステム安全の視点からドローンや安全を考察する。ドローンの実務や運用などは直接の対象ではない、主催者は「本講演会は長岡技術科学大学安全安心社会研究センター主催の学術的講演会であり、航空安全とドローン安全との円滑な融合のための、システム安全に基づく方法論研究が主題です。ドローン操縦ライセンス制度等の実務的な話題は取り扱いません」と、実務に関するテーマでないことについて念を押している。
概要は以下の通り
■日時:1月21日(土)、14:30~
■会場:
①田町グランパークカンファレンス302+303会議室
(東京都港区芝浦3丁目4-1田町グランパーク、人数限定、申込順)
②オンライン(Zoom)
■主催:長岡技術科学大学安全安心社会研究センター
■テーマ:航空安全とドローン安全
14:15 受付
司会:安全安心社会研究センター・副センター長、木村哲也教授
14:30 開会の挨拶:安全安心社会研究センター・センター長、門脇敏教授
14:35 講演1「航空安全」(耐空性維持)」(公益社団法人日本航空技術協会<JAEA>・稲垣充理事)
15:45 講演2「ドローン安全」(長岡技術科学大学・木村哲也教授)
16:30 パネルディスカッション(テーマ:航空安全とドローン安全の融合)
パネラー:JAEA稲垣理事,センター客員研究員若干名
ファシリテーター:木村哲也教授
■申し込み:必要事項をメールで連絡。こちらのサイトで確認を
一般社団法人日本ドローンコンソーシアム(JDC)が開催した「第1回JDCフォーラム」では、ドローンの事業、研究に関わる事業者、研究者、行政担当者らが、点検、安全、防災などテーマごとに意見を交わす分科会的なセッションと、内閣府、総務省、国土交通省、経済産業省のドローンに関わる責任者、担当者が登壇するパネルディスカッションが行われた。
テーマごとのセッションのうち、「安全推進/技能検定」のセッションでは、システム安全の社会啓発に取り組む長岡技術科学大学の木村哲也准教授が、生活支援ロボットのISOに携わる経験などをもとに「持続的発展に必要な国際安全規格から見たドローン安全」でスピーチした。
木村氏は、機械に取り付けられているプロペラの回転が指を切断するリスクについて検証した実験映像を見せながら耐切創性について説明。そのうえで、「安全は基本的人権の一部と言って文句は言われないと思う」と位置づけ、「持続的なビジネスにも必要だ」と強調した。
安全の基準となる安全規格について、木村氏は蒸気機関の誕生、普及に伴い生まれたと説明。具体的には、かつて蒸気船が発明されたとき、火災を起こす危険性の高い、技術の低いボイラーを採用した船の入港を制限しなければならず、そのため入港できる船として認める最低基準を定め、事業者がその基準を守りあった経緯があったという。また技術開発費は、持続的経営の必要性の中で理解され、事業主が吸収してきたと解説した。
認証機関については民間が担うのが世界の大勢であると紹介。「日本では公共的なものは国や行政に担ってもらおうとする空気が強いが、世界的な考え方はそうではない。民間が自由にビジネスをしたいから、自らを律する基準をさだめるという考えがある」と述べた。
一方でドローンについては、「経験のない技術が世の中に出てこようとしているの。このため、蒸気船のように、経験的から安全確保策をつくるのではなく、論理的に組み立てていく必要があるのではないか」と述べた。
さらに、安全規格は「社会をコントロールする重要なツール」と指摘。「価格、性能と異なり安全性、環境対応などユーザーに分かりにくいところ、メーカーが手を抜けるところは、第三者的な規格を作っておく必要がある。クルマでいえば、型式認定を受け、個々に車検制度があり、保険にも入ることになっている」と説明を加えた。そのうえで、「規格をめんどうなもの、やっかいなものと受け止める声も聞かないことはないが、もともとの発想は反対。研究者にとっては、技術開発を自由にやらせてほしいから、規格をつくり、それを守るから、それ以上の指図をしないでほしい、というメッセージだった」と繰り返した。
安全に「絶対」が存在しない状況での規格策定については、どこまで許容範囲かを探る作業になると言及。木村氏は「生活支援ロボットでも町の中で動かす話になると、子供にぶつかったらどうなるのか、とか、“絶対に安全でないと困ります”という発言をされる方がいらる。そこが生活支援ロボットを社会に展開するうえでの課題となっています」と紹介した。
一方で、「追求しすぎるとコストがどんどん上がるのが安全。むやみやたらにコストをかければいいというものでもない。いい塩梅で成り立つ安全を考える必要がある」と、そのバランスの重要性を指摘した。
このほか施設点検セッションでは、三信建材工業株式会社、株式会社日立システムズ、山九株式会社、株式会社ジャストなどの代表者が取り組みを報告。株式会社ジャストの角田賢明取締役は、球体ドローン「ELIOS」を使って構造物調査に取り組んだ事例などを紹介し「安全や効率などで成果があった。今後も改善、向上に向けて取り組みたい」と意気込みを語った。
パネルディスカッションには、内閣官房小型無人機等対策推進室の長崎敏志内閣参事官、総務省総合通信基盤局移動通信課の荻原直彦課長、国土交通省航空局安全企画課の英浩道課長、経産省製造産業局産業機械課の玉井優子課長が登壇。JDC制度設計委員長で慶應義塾大学教授の武田圭史氏がナビゲーターを務め、会員向けのアンケート結果を紹介しつつ、登壇者の意見を促した。
登壇した4人はそれぞれ各賞の計画や取り組みを披露し、「規制でドローンの発展を阻害することはしたくない」など、そろってドローンの利活用推進の立場を表明した。
国交省航空局安全企画課の英課長は「飛行申請は年々増えている。用途をみると、空撮が一番多く、測量、インフラ点検の順番だ。業務上必要なものとして使われているという印象を持っている」と現状を分析した。
総務省の荻原課長は「通信インフラの利活用は地域の活性化などにとって大切であり、ドローンにとっても大切。どう使いやすくするか。そこにいま力をいれているところ。幅広く要望、意見を聞き、取り組みに反映させたい」経産省の玉井課長は「役人にとって“改正する”という業務は珍しくないが、制度をどう設計し、産業をどう育てるかということはあまりない経験することではなく、いまはたのしく仕事をしている」
ただ、社会にはドローンの利活用を歓迎する声ばかりではなく、長崎参事官は「かかってくる電話にはクレームが多くまだまだ賛成ばかりではない。ドローンの利便性をどう伝え、安全性をどう確保し、それをどう理解して頂くか。これからも取り組みを加速させて、当たり前にドローンが飛ぶ世の中になると期待している」と述べた。
最後にJDCの野波健蔵会長は、「2016年が産業用ドローン元年といわれ、昨年2018年は物流ドローン元年といわれた。2022年には第三者上空飛行元年になり、2020年代後半にはわれわれが想像しているような、どこでもドローンが飛ぶ社会になると展望している」としめくくった。