東京電力ホールディングス株式会社(東京)、ブルーイノベーション株式会社(東京)、株式会社テプコシステムズ(東京)は5月11日、空中に固定できず、たわんだり揺れたりする送電線をドローンがリアルタイムでなぞるように自動飛行しながら撮影、点検する「送電線点検用ドローン自動飛行システム」を開発したと発表した。送電部門を担う東京電力パワーグリッド株式会社(東京)が、同社が保有する送電線の点検業務に6月に導入する。
システムは、ブルーイノベーションが開発した情報統合基盤「Blue Earth Platform」をベースにブルーイノベーション、東電HD、テプコシステムズの3社が共同開発した。センサーで送電線を検知し、その情報をもとにカメラを搭載したドローンの飛行を制御する。ドローンは自動で送電線と適切な距離を保って飛行し、最適な画角で送電線を機体の振動制御しながら撮影し、腐食など異常の有無が確認できる。画像認識と異なり逆光や影、類似する構造物の影響を受けない。技術は特許を出願しているという。
このほか、現場作業員向けに送電線撮影に特化したアプリケーションも開発した。ドローンの離発着から送電線撮影までワンクリックで済む。
自動飛行のため作業員は、点検時のドローン操縦から解放される。ドローンからリアルタイムに送られる映像を確認し、気になる箇所があれば、その場でドローンを一時停止させ、映像を拡大するなどして状況を確認する。
東電グループはこの技術を、同グループの送電部門、東電PGが6月に導入する。従来の高倍率スコープやヘリコプターなどを使う目視確認と比べ、点検品質の向上、作業の効率化、コスト圧縮が期待できる。東電PGの保有する地上の送電線は2万8391kmあり、自動システムの導入で作業時間の短縮、将来的な作業員の不足対応、設備の高経年化による点検対象増加対策を見込む。
東電グループはこれまでも点検作業の効率化、コスト削減のためドローンの自動飛行を検討してきた。しかし本格導入には、電線の磁界による方位測定の難しさや、風、気温などにより位置や張り具合が固定しない電線の追随撮影の難しさが妨げとなっていた。