一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は10月31日、東京・元赤坂の明治記念館で「JUIDA 認定スクールフェスタ2023」を開催し、顕著な実績のあったスクールを「SCHOOL AWARDS 2023」として表彰した。プロデューサーで慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏が代表を務める北陸の空株式会社(鯖江市<福井県>)が運営するスクール「ドローンキャンプ北陸の空」が、3年連続で最高賞を獲得した。従来の最高賞である「ゴールド」の上位となる「プラチナ」を特設して表彰した。続くゴールドにも同社系列のスクールが入り、事実上、若新氏系が1位、2位と獲得した。特筆すべき取組を顕彰する理事長賞にはDアカデミー株式会社が運営するDアカデミー関東本部が実施したザンビア共和国からの研修生に対する橋梁点検講習が選ばれた。フェスタではこのほかJUIDAが登録講習機関等監査実施団体として実施している監査の中で、監査に指摘されやすい事例が報告され、JUIDA会員に対するサポート活動の方針が紹介された。
JUIDAは認定スクールの実績を表彰する「SCHOOL AWARDS 2023」を毎年、開催している。上位3スクールに順にゴールド、シルバー、ブロンズの各賞を授けている。今回もゴールドを「ドローンキャンプ九州の空」、シルバーを「ドローンスクール&コミュニティ空ごこち大阪校」、ブロンズを「拝島ドローンスクール」(福生市<東京>)にそれぞれ授けた。ただし今回は、最も顕著な実績をあげたのは「ドローンキャンプ北陸の空」で、2021年、2022年に続く3年連続となることから、例年通りの最高位でああるゴールドではなく、さらに上位のプラチナを特設して表彰した。
「ドローンキャンプ北陸の空」は、プロデューサーの若新氏が代表を務める企業が運営するスクールで、人里離れた場所で地域をあげて食事を含めて地域色豊かなもてなしを提供し講習成果もあげる独自の合宿スタイルで話題となり県外からも多くの受講生を集めている。プラチナに次ぐゴールドを受賞した「ドローンキャンプ九州の空」も系列スクールで、同じスタイルで福岡県内の郊外で運営している。
若新氏はプラチナの受賞を記念して約15 分間、プレゼンテーションを行った。
若新氏は「現状では空港も新幹線もない数少ない県といわれる福井の山奥にあるほとんど人が住んでいない場所でスクールをしています。こんなところから新しいサービスなんかはじまるはずがない、と思われそうなところで事業を始めたいと思って始めました。主に県外からいらっしゃる受講生を町全体でもてなす事業モデルをつくって運営しています」などとスクールを紹介した。
このほか「一見、お客さんがこなさそうなアクセスの悪い場所だからこそ、人目を気にせず落ち着いて安心してゆっくり練習ができます。価値のある体験を提供できるのだと思っています」「優秀な講師を獲得するため一日あたりの手当てを高くした」「特殊な生活を選択しているクセの強い人たちとチームを組んで、運営しています。そういう人は各地にいらっしゃるとは思いますが、そういうクセの強い方々とコミュニケーションを取り信頼関係を築くにはコツが必要です。われわれにはクセの強い仲間といい連帯をつくることができたので、廃校をいかすビジネスをいなかからつくりだすことができたのかもしれません」など、軽妙なトークは会場を魅了し、参加者は笑ったりうなずいたりメモを取ったりしていた。
理事長賞を獲得したDアカデミー関東本部は、アフリカ大陸南部のザンビア共和国政府で道路の維持管理を担う道路開発庁(RDA:Road Development Authority)から派遣された7人の公務員や大学職員らを受け入れ、橋梁をドローンで点検する技能に関する研修を実施した。ザンビアでは道路の維持管理が進まず1970年代以前につくられた橋梁の老朽化が社会問題化している。特殊な橋梁も多く一般的な点検がしにくいこともあり、対策のひとつとしてドローン活用があがっている。ザンビア専門家への研修は、独立行政法人国際協力機構(JICA)が実施する「橋梁維持管理能力向上プロジェクト」の一環で、事業を請け負った大日本コンサルタント株式会社(東京)がドローン点検で実績のあるDアカデミーに研修を打診したことから行われた。
DアカデミーはJUIDAのカリキュラムに基づいた座学、実技を同社が持つ君津市内のフィールドや同市内の橋梁などで実施した。
理事長賞の受賞にはDアカデミーの依田健一代表と、内藤和典講師が登壇。依田氏は「私は英語が話せません。学校時代5段階で2しかとったことがないぐらい。それでも来た仕事は断らないことにしています。今回も、無謀にも引き受けました。私が話したのは、1,2,3,ダアーって勢いをつけるぐらい。専門的なことも伝える必要もあるので、そこは英語が話せる内藤先生に大活躍頂きました。手探りではじめましたが、結果的にはザンビアの橋梁の現状など直接聞かないとわからないことをいっぱい知ることができました。受講生はみなさん学ぶ意欲が高く、礼儀正しかったです。そしてみなさんにご満足いただけました。日本の教育制度は評判がいいです。みなさんのところにも海外からの問い合わせが来ていると思います。ぜひ海外にみなさんにもドローンを普及させていきましょう」と話した。
会合では経済産業省製造産業局航空機武器宇宙産業課次世代空モビリティ政策室長の滝澤慶典企画官、国土交通省航空局安全部無人航空機安全課の梅澤大輔課長が現状や最近の取り組みを紹介した。
JUIDAからは鈴木真二理事長が、JUIDAが8周年を迎え、認定スクールがインドネシアの1校を含め277になり、JUIDA認定ライセンスを取得した技能証明証取得者が30121人、安全運航管理者が25868人、認定講師が2456人となっていることを紹介。「国家資格の制度が始まったあとも数字が堅調に伸びており、JUIDAは国家資格と両輪で発展を支えます」と明言した。
熊田知之事務局長は、レベル4飛行の制度が整ったことに伴い、安全運航管理者にレベル4対応の上級版を創設する準備を進めていることや、会員サポートを今後も充実させていくこと方針を示した。研究開発支援活動として現在の「テクニカルジャーナル」活動の充実や周辺活動を充実させる方針も表明した。鈴木理事長の「両輪発言」を受け、熊田事務局長も「JUIDAは認定スクール制度をしっかり守っていきます。国家資格を取得した方をしっかりサポートしますし、しっかりしたライセンスの前のライト教育も進めます」と宣言した。
このほか、監査実施団体として進めている監査の現状報告やそこからみえてきた傾向についての報告や、防災協定のアンケート結果報告なども行われた。
後半は明治記念館内の別会場に移動し、会員相互の交流を深めた。
千葉県君津市が7月から市内の橋梁点検に4Kカメラを搭載したドローンを使う実証実験を行うと表明しました。増加する点検需要への対応と点検予算削減を目指しています。小さな橋ほど住民の生活に欠かせないものですが、数が多いうえ細かな作業が必要で、自治体の悩みの種です。その課題にシステム開発の株式会社アイネット、Dアカデミー株式会社が挑んでいます。今回Dアカデミー代表の依田健一さんが、君津市での橋梁点検を可能にした“発想の転換”について明かしてくれました。以下、その原稿をそのまま記事としてお届けします。(DroneTribune編集長 村山繁)
北海道から沖縄まで全国17か所でドローンスクールを展開しているDアカデミー株式会社(代表取締役 依田健一)は令和元年5月28日、千葉県君津市と、ドローン使った橋梁点検の実証実験に関する覚書を締結しました。
橋梁点検は一般に、作業員を乗せたアームを橋の下にせり出させ、点検のために足場をかけるなど大規模で点検費用のかさむ方法をとっています。生活道路の片側を通行止めにしないとならないこともあり、無数にある小さな橋には適していませんでした。
Dアカデミー株式会社はこのたび発想を転換し、コンパクトで安価なドローンを利用して簡単に橋梁点検ができる仕組みを実現しました。
通常のドローンの操縦では、構造物にぶつかることがないように、接近せずにすむように飛ばします。しかしここではあえて、機体を橋梁に接近させます。それによって機体に備わっている衝突防止センサーを利かせ、機体を安定させることができるのです。これはコロンブスの卵的発想であり有効です。
また橋梁点検では橋の裏側を点検しなければならないため、橋の下にもぐったドローンは頭上を見上げるように上部を撮影をする必要があります。多くのドローンは、カメラこそ搭載していても、機体の真上の撮影することは困難です。そこで、撮影用のスタビライズ機能の付いたカメラを機体の上部に新たに搭載することにしました。これにより機体上部の安定した撮影にも成功しました(航空局改造申請許可承認済み)。
作業員による目視点検でさえ困難な小さい橋が、全国には無数にあります。小さな橋では作業スペースの確保が難しいなど物理的な問題や、小さいわりには費用がかかるなど効率の課題もあり、建設現場で使うような大型ドローンでの点検には不向きです。ところが今回の方法で実験をしたところ、安価で手軽に有効な画像が取得することができました。今後の橋梁点検の予備検査に大きく貢献すると期待できます。(Dアカデミー株式会社 依田健一)
お問い合わせ:Dアカデミー株式会社、045-520-755
ウェブサイト:d-academy.co.jp/