ブルーイノベーション株式会社(東京)は、埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故を受け、国土交通省が地方自治体に要請した「下水道管路の全国特別重点調査」の一環として、栃木県野木町で行われた雨水管点検に屋内点検ドローンELIOS3を投入した。調査は渡辺建設株式会社(宇都宮市)が請け負い、ブルーイノベーションと連携をとって実施、作業員が管路内に立ち入ることなく安全を確保するとともに、工期短縮にもつなげた。
野木町での調査は昨年(2025年)12月中旬に行われた。国交省がその年の3月18日に地方自治体に対して要請した「下水道管路の全国特別重点調査」に基づき野木町が実施した。国交省は調査対象を「社会的影響が大きく、大規模陥没が発生しやすい管路」と定めていて、例示された条件である「完成から30年経過、管径2m以上」などに該当する雨水管を調査した。
国交省は調査方法について「潜行目視またはドローン・テレビカメラ等による調査」と言及していた。「潜行目視」とは管路内に調査員が直接管内に入り、照明を使って壁面のひび割れ(クラック)、腐食、木の根の侵入、土砂の堆積状況を調査員の目で確認する方法だ。詳細な状況把握が可能だが、酸欠、有毒ガス、増水などのリスクがある現場のため、調査員の安全確保として十分な換気などの管理が必要だ。雨水管の場合は点検の可否や安全性が天候に左右される。点検の現地で天候に問題がなくても上流で雨が降っていれば点検現場がその後、増水に見舞われる危険がある。ドローンを使えば調査員が中に入ることがなくリスクを大幅に減らせる。ドローンの機能も大幅に向上していることから、調査業務を請け負った渡辺建設がブルーイノベーションに参加を呼び掛けた。
野木町の雨水管の調査にELIOS3を使ったことで、調査員を増水リスクなどの危険に直面させることなく作業を終えることができた。渡辺建設はDroneTribuneの取材に対し「下水道点検では作業員など5~6人が管路に入ることがあります。安全であるとは言えない空間での調査ですので人が入らなくてすむとなると大きなメリットです」とドローン活用のメリットを説明した。
調査を発注した野木町もDroneTribuneの取材に対し「発注はドローンの使用を前提ではありませんでした。受注者からの提案でドローンを使うことになり、安全確保のメリットは大きいと感じました。(町内には)ドローンが飛行できる大きな管径の管路は多くはありませんが、今後も機会があれば検討することになるかもしれません」と話した。
またブルーイノベーションは1月13日に発表したプレスリリースで、通常なら5日間の工期が2日に短縮できたと伝えている。DroneTribuneが確認したところ渡辺建設も「それは事実です」と話している。工期短縮もドローン活用のメリットとして認知が広がる可能性がある。
一方で、点検機能を満たすドローンの台数が需要にこたえられるだけ十分かどうか、ドローン点検のコストを各自治体が負担できるか、などが課題となる可能性がある。
全国の下水道約49万㎞の約95.5%は口径450mm以下の管が占めていると言われる。そうなるとドローンで点検できる下水管はわずかということになる。
ブルーイノベーションのELIOS3は機体サイズが480mmだ。管径がこれより大きいと飛ばせない。株式会社LiberawareのIBIS2はシリーズや機体が約200㎜と小さいが点検管経としては500㎜以上が推奨されている。日本の下水道の大部分は直径200mm〜450mmで、ドローンも人も立ち入れず、主に自走式テレビカメラ車や引込式カメラが点検を担う。
一方で2025年1月に道路陥没を起こした八潮市の下水管は最大管径が4.75mだった。管径2m以上の大口径管の中でもさらに巨大な部類で日本国内の下水管総延長の0.1%にも満たないレアな下水管だ。これを前提に下水管全体へのドローンの導入を主張するのは現時点では非現実的だ。
しかしながら大口径の管路ほど大都市近郊にある事実がある。問題が起きれば、より多くの人々に影響を及ぼす。八潮の事故では約120万人の周辺住民が生活用水の使用制限を受けた。これよりも大きな管径の下水管に問題が起きればさらに大きな影響が出るとも想像しうる。東京には内径12.5mの下水管や、内径8mの下水管がある。奈良県から大阪府へ流れる大和川上流流域下水道にも数メートル級の大口径管が使われている。
下水道管の老朽化や損傷が原因の道路陥没は、2022年度に2607件発生した。老朽化した下水道管が破損したり、硫化水素の発生でコンクリートが腐食したりしたことが主な原因だ。野木町の点検対象は雨水管で幸い大規模補修の必要性は確認されなかった。一方、硫化水素が発生しやすい汚水管や合流管、とりわけ古いコンクリート製の汚水管は陥没リスクが高いうえ、硫化水素の発生は人の安全性も脅かす。大きな汚水管は総延長に占める割合こそわずかではあっても点検の重要性は重大だ。ドローンの優先度が高いと言われる理由だ。
下水道管の老朽化リスクが日常生活に忍び寄る中、下水道とドローンなどへの関心はさらに高まりそうだ。


ブルーイノベーション株式会社(東京)と株式会社エヌ・エス・シー・エンジニアリング(東京、NSC)は3月23日、東京都下水道局が管理する墨田区内の下水道施設を、スイスFlyability社製の球体ドローン「ELIOS2」で点検し、状況を確認したと発表した。点検した下水管は実際に運用中で、作業が困難なために確認できていなかった箇所もあり、下水道点検の有効性を確認した。東京都下水道局によると、稼働中の下水道でドローンが飛行したのは都内では初めてという。

ドローンによる点検が行われたのは墨田区内の雨水管1か所、汚水管1か所の2か所で、いずれも1月下旬に実施された。とくに汚水管は家庭からの台所、トイレなどの生活排水や事業所の排水を排除するために日常的に運用中されていて、流れを止めての点検は事実上不可能だ。複数の管が接続されるなど構造が複雑で点検が必要な個所があるものの、汚水が流れていて、有毒ガスが発生する危険性があり作業員が立ち入ることが難しく、状況の確認ができていない個所がある。このため状況確認対策が課題となっている。
点検は東京都が未確認下水道の状況確認技術を模索するため試験的に実施したもの。BIとNSCが、地上の安全な場所からオペレーションを実施した。地上のマンホールのふたにあたるところから、ELIOS2を施設の最深部まで飛行させた。
雨水管では地下約 26m までもぐらせた。地下での航続距離を確保する技術を活用しながらそこにめぐらされている管路を約30mまで点検できることを確認した。また、搭載したカメラでひび割れがあることを映像で確認した。
汚水管では、下水が常時流れているために管内で空気の流れが生じ、ドローンの安定飛行を妨げるうえ、湿度が高く、湯気も充満していてカメラの視界を遮るため、ドローンでの点検としては難しい環境だ。ただELIOS2では、7つのセンサーを搭載した安定飛行性能が有効に機能し管内を飛行。暗く湿度の高い環境の中、粉塵最適化ライトで鮮明な映像を取得した。この点検で、缶を詰まらせたり悪臭を発生させたりするおそれのあるグリスが一部にこびりついているものの、運用に問題がある状況ではないことを、運用開始以来、初めて確認した。
NSCの奥孝彦代表取締役は、「今回、作業員が安全に入坑できないとされた大規模人孔内に ELIOS2ドローンを使用して坑内の撮影調査を行ったところ、作業員の進入が不可能であった箇所をはじめとして想定以上の作業成果を得たことは、新たな前進といえます。今後、ドローンによる下水道管路施設調査における活用を拡げるには、下水道人孔内 では不可避な環境条件である高湿度、湯煙、高粉塵、上部からの落水(雫)、常時流下する下水、高速下水流 による坑内風速、管路の屈曲などドローンの飛行環境、カメラ撮影障害、電波不達・障害など多くある課題 の解決を図る必要があります。さらには、機器落下時には水没、バッテリー容量から飛行時間の制約などの 解決しなければならない点もあります。下水道管路内のドローン活用は有効であることは今回の調査でも明らかであり、早期に課題解決を図りつつ多くの試行を経て確実な調査技術として確立することが望まれます」とコメントを寄せている。

