楽天グループ株式会社と日本郵便株式会社の合弁会社で、ドローン配送事業を担うJP楽天ロジスティクス株式会社が、千葉市・幕張新都市の海沿いにそびえる高さ105mの31階建て超高層マンションで、大規模災害を想定したドローンによる救援物資配送を実施したと発表した。大型コンベンションセンター「幕張メッセ」、ホテル、ショッピングエリア、住宅など都市機能の集合するエリアの超高層ビルを会場にしたドローンの飛行を実現させたことで、今後、都心部各地でのドローン利用に関する議論にはずみがつく可能性がある。
実験が行われたのは2021年12月2021年12月1日(水)から16日(木)にかけて行われた。会場は千葉市美浜区の「THE 幕張 BAYFRONT TOWER & RESIDENCE」のタワー棟屋上ヘリポートで、ふだんは立ち入り禁止だ。大規模災害の発生で地上の物流網が機能不全に陥ったことを想定した。
実験では住民がスマホで楽天の専用アプリから、救急箱、医薬品の発想を注文。注文を確認すると、千葉県市川市の物流施設「プロロジスパーク市川3」の駐車場流倉庫に待機するスタッフが、品物を箱詰めしてドローンに据え付ける。ボタンを1度押すとドローンが自動飛行し、東京湾の上空を高さ約50mで飛行し、マンション接近時に150mまで浮上したうえで、100m超の超高層マンション屋上に着陸した。飛行距離は約12㎞、飛行時間は約17分。着陸したドローンから住民が荷物を受け取り、空からの配送が機能する可能性を確認した。
使用した機体は台湾のドローン製造大手、Coretronic Intelligent Robotics Corporation(台湾新竹市 、CIRC=中光電智能機器人)の機体をベースにJP楽天ロジスティクスと共同開発した配送専用の機体で、4本のアームの先に上下にプロペラがつく回転翼機。最大積載量 じは7kgで、飛行中の情報をリアルタイムで取得できるような改良が施されたという。
今回実験が実現できた背景には、地域と行政との信頼関係が大きい。実験の会場周辺地域は、国家戦略特区である千葉市とテクノロジーに関わる実験に協力するなど良好な関係を築いており、今回の実験も昨年春ごろに行われた別の実験を進める中で浮上し、マンション側に丁寧な説明を重ねた。JP楽天は千葉市が進める「千葉市ドローン宅配等分科会技術検討会」に参加する形で今回の実験を実現させた。JP楽天ロジスティクスドローン・UGV事業部の向井秀明ジェネラルマネージャーも「千葉市とは2018年から二人三脚でさまざまな取り組みを進めてきました。その中で、ドローンが大通り上空を飛行するにはどうしたらいいかなど、ひとつひとつの課題を検証してきました。このたびの物流倉庫から超高層マンションの屋上まで配送ができたと思っています」と話している。
JP楽天は2016年に楽天としてドローン配送事業を手掛け始めた当初から完全自動を追求してきた。物資をドローンに搭載するところまでは人が行うものの、そのあとは一回ボタン操作をすると自動で飛ぶことで利用者の利便性につなげようとしてきた。JP楽天の向井マネージャーは「自動で離陸し、設定どおりに飛行し、荷物を切り離して帰ってくる(今回の実験は片道)。トラックの物流は常に人と荷物が一緒だが、ドローンであれば自動対応するので少人化にもつながるソリューションです」と話す。
国内には阪神淡路大震災(1995年)の1月17日、東日本大震災の3月11日(2011年)、防災の日の9月1日(1923年の関東大震災)など防災、災害対策に思いを寄せるきっかけとなる日があり、こうした日をきっかけに、ドローン利活用の推進も含めた議論を行政と地域で活性化させる機運が高まりそうだ。
都市部超高層マンションに向けたドローンによるオンデマンド配送は今回が国内で初めてだ。JP楽天の向井マネージャーは「今後も本実証実験で得た都市部に向けたドローン配送の知見を生かし、ドローンを活用した配送サービスの実現に向けて取り組んでまいります」と話している。
映像制作の株式会社Surfrider(東京)が千葉県市原市に、ドローンやラジコン飛行機などの飛行場「市原ドローンフィールド (Ichihara Drone Field、I.D.F)を開設した。6月26日にはオープニングイベントが行われ、腕利きのパイロットによるデモフライトなどが行われた。都心近接の立地と、約20万㎡の広大な敷地を、新型機の開発やフライト技術のトレーニングなどに生かす。ドローンレーシングチームRABBITS-FPV代表のえりんぬ(中川絵梨さん)がアドバイザーとして運営に携わり、土日を中心に利用者を受け入れる。
「市原ドローンフィールド」は、JR内房線・小湊鉄道五井駅から東に約10キロの中山間地に広がる丘陵地で、電柱などの構造物がない。都心からは1時間FPVレースSurfriderがテレビや映画などの撮影に使っていて、都心から1時間圏内とアクセスがよく、まとまった広さが確保できるため、合戦シーンなど大掛かりな撮影に重宝している。
この場所をドローンの開発や試験飛行に生かしてもらうため、ドローンフィールドとして活用することにした。FPVレース用のエリア、有視界飛行エリアが設けられ、原則として予約して利用できる。レース用ゲート、障害物なども設置してあり、このエリアだけで3万平方メートルほどを確保した。機体性能を発揮したフルスピードでの直線飛行も、急降下、急上昇も可能だ。今後、地域の人材育成などへの活用も検討する。
6月26日のオープニングイベントでは、開設を聞きつけた愛好家や事業者が、ラジコン飛行機を持ち寄り、使い心地を試した。腕利きのパイロットによるデモンストレーションも行われ、スゴ技の連続に来場者から拍手があがった。
会場では、FPVドローン展示販売店GSRTA(ジーエス アールティーエー、千葉県船橋市:https://www.gs-rta.com/)もテントを広げ、さまざまな機体を展示して来場者が足を止め見入っていた。同店はドローンのショップとしては珍しい実店舗として関係者の間で知られ、初心者から愛好者まで多くの利用者が頼る。この日も「市原で飛ばして壊した場合には帰りに立ち寄ってほしい」などとアピールした。
またあげパンの名店「Café&Bar」(埼玉県日高市)がキッチンカーを出し、名物のあんバターあげパンをその場で揚げて提供するなどして彩りを添えた。
Surfriderの松家健代表は「機体開発の方々から、首都圏近郊で広い土地を確保したいという声をよく耳にしていました。都心から1時間でこられるので、そんな方々のお役にたてればと思っています。確認したい飛行性能に応じて、構造物をつくる相談も受けられるので、そんな声も効かせてほしいと思っています」と話している。
アドバイザーのえりんぬは「手探りで運営をすることになりますが、利用者の声に耳を傾けて改善を重ねていきたいです」と利用者に使いやすいフィールドを目指す考えを表明した。
■市原ドローンフィールドの公式サイト(今後予約情報を更新)
■問い合わせ先は松家(マツカ)さんまで
:info@surfrider.biz