国土交通省は3月18日、東京・豊洲のオフィスビル、ホテル、バスターミナルなどを備える豊洲スマートシティの核施設、「ミチノテラス豊洲」で、災害発生を想定した船舶と陸上との間をつなぐドローンによる物資配送の実証を実施した。行政活用ドローンの標準仕様を規定化するプロジェクトの一環で、東京湾内に物資を運んできた舶から、ミチノテラスのデッキに備えたドローンポートまで、ドローンで飲料水などの物資を届ける物資輸送の実証を行った。国交省総合政策局技術政策課の斎藤輝彦技術基準企画調整室長は「飛行に最適な天候と言えない中での飛行で貴重なデータを得ることができました」と実証の意義をあいさつした。
この日の実証は、都心機能が集積し、滞在者が多く、ビルなどの構造物が立ち並ぶ臨海エリアで、ドローンが安定して飛行するための環境や条件、課題などを洗い出すことを目的に行われた。
実証が行われたミチノテラス豊洲は、清水建設が開発したオフィスビル「メブクス豊洲」と4月15日に開業予定のホテル「ラビズタ東京ベイ」をつなぐエリアに設けられたデッキ状の空中広場で、周辺にはゆりかもめの市場前駅、豊洲市場、高層住宅などが集まる。交通広場は、日本初の都市型道の駅「豊洲 MiCHiの駅」として、地域の賑わい創出と防災拠点の機能を持つ。海抜ゼロメートルエリアの周辺地域の滞在者が、災害発生時に身を寄せる場所として想定されている。オフィスビルには清水建設が独自開発した建物オペレーションシステム「DX-Core」を実装していて、ビル共用部のエレベーターや自動ドアの制御と、自動搬送ロボットの制御をデータ連動させ、郵便物などの館内配送の無人化を実証させる計画だ。ドローンの運用が実装になれば、エリアの滞在満足度や安心感を飛躍的に高めるとみられている。
実証では、災害発生で水があふれ陸路が機能しなくなったミチノテラスに、支援物資を積んだ船が東京湾内の敷地のわきまで航行し、そこからミチノテラスまでドローンで物資を運ぶシナリオを想定した。海風が舞い、GPS環境にも難があるうえ、当日はときおり雨脚が強くなるあいにくの環境での実証だったが、船から離陸したドローンは、ほぼ自動飛行でミチノテラス上空まで飛行すると、デッキに設置されたドローンポートに着陸した。ドローンは日本の企業が開発した機体が使われた。
またミチノテラス側から東京湾に浮かぶ船に向けた飛行も実施。ここでは別の日本企業が開発した機体が使われるなど複数の機体の運用を確かめた。さらに、情報漏洩などのセキュリティ対策が強化された日本製の機体も飛行し、厳しい環境の中で安定した飛行を見せた。
午後になると雨脚がさらに強まり、再度、船からミチノテラスまでの飛行を試みようとしたが、周辺への影響なども考慮し、その場では飛行を断念した。
この日は内閣官房、防衛省なども現地を視察した中で実証が行われた。
実証を主催した国交省の伊藤真澄技術政策課長は「国土交通省は平時、有事のさまざまな場面でドローンを活用しています。その中で行政ニーズに適したドローンはどのような性能を持つことが必要なのかをまとめておくためこの実証をすすめております。たとえば、観測にはどういう能力が必要か。また災害時であれば、悪天候の中で飛す必要がございますので、雨や風に強い対候性がどれだけあればよいのか。どれだけ長時間、長距離を飛べるのか。さらに物資輸送であれば高いペイロードがあるのか。一方で、平時に点検に活用する場合であれば、非GPS環境下でもどの程度飛べるのか。あるいは自動航行で取得したデータをAI解析できないか。来年度も同様の実証を続けていくつもりです」と趣旨を説明し、新年度も継続する意向を表明した。
また斎藤室長は「気温が低く雨も降るというドローンの飛行にとって適したとはいえない、普通だったらやらないだろうという状況で、ぜひお願いします、ということで実施して頂きました。我々にとっては、限界がどこかを知っておくことはとても大事です。災害救助には、物資輸送などは真剣な場所です。人の生き死にに関わります『できる、できる』と言いながら、実際に運用できなかった、となると、行政としては取り返しがつかないことになってしまいます。われわれのニーズが現実にできるのか、できないのか。そういった意味でも実証をやらせていただいているわけです。その意味ではこうした環境の中で実証ができましたことは、貴重なデータを得ることができたので、大変有意義だったと思っています。今後も引き続き、取り組みを進めて参ります」と話した。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
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