• 2022.3.24

    国交省、東京臨海部の「ミチノテラス豊洲」で物資輸送の実証 東京湾の船上からドローン配送

    account_circle村山 繁

     国土交通省は3月18日、東京・豊洲のオフィスビル、ホテル、バスターミナルなどを備える豊洲スマートシティの核施設、「ミチノテラス豊洲」で、災害発生を想定した船舶と陸上との間をつなぐドローンによる物資配送の実証を実施した。行政活用ドローンの標準仕様を規定化するプロジェクトの一環で、東京湾内に物資を運んできた舶から、ミチノテラスのデッキに備えたドローンポートまで、ドローンで飲料水などの物資を届ける物資輸送の実証を行った。国交省総合政策局技術政策課の斎藤輝彦技術基準企画調整室長は「飛行に最適な天候と言えない中での飛行で貴重なデータを得ることができました」と実証の意義をあいさつした。

    都市機能集積エリアでスマートシティ推進の一翼を担う

     この日の実証は、都心機能が集積し、滞在者が多く、ビルなどの構造物が立ち並ぶ臨海エリアで、ドローンが安定して飛行するための環境や条件、課題などを洗い出すことを目的に行われた。

     実証が行われたミチノテラス豊洲は、清水建設が開発したオフィスビル「メブクス豊洲」と4月15日に開業予定のホテル「ラビズタ東京ベイ」をつなぐエリアに設けられたデッキ状の空中広場で、周辺にはゆりかもめの市場前駅、豊洲市場、高層住宅などが集まる。交通広場は、日本初の都市型道の駅「豊洲 MiCHiの駅」として、地域の賑わい創出と防災拠点の機能を持つ。海抜ゼロメートルエリアの周辺地域の滞在者が、災害発生時に身を寄せる場所として想定されている。オフィスビルには清水建設が独自開発した建物オペレーションシステム「DX-Core」を実装していて、ビル共用部のエレベーターや自動ドアの制御と、自動搬送ロボットの制御をデータ連動させ、郵便物などの館内配送の無人化を実証させる計画だ。ドローンの運用が実装になれば、エリアの滞在満足度や安心感を飛躍的に高めるとみられている。

     実証では、災害発生で水があふれ陸路が機能しなくなったミチノテラスに、支援物資を積んだ船が東京湾内の敷地のわきまで航行し、そこからミチノテラスまでドローンで物資を運ぶシナリオを想定した。海風が舞い、GPS環境にも難があるうえ、当日はときおり雨脚が強くなるあいにくの環境での実証だったが、船から離陸したドローンは、ほぼ自動飛行でミチノテラス上空まで飛行すると、デッキに設置されたドローンポートに着陸した。ドローンは日本の企業が開発した機体が使われた。

     またミチノテラス側から東京湾に浮かぶ船に向けた飛行も実施。ここでは別の日本企業が開発した機体が使われるなど複数の機体の運用を確かめた。さらに、情報漏洩などのセキュリティ対策が強化された日本製の機体も飛行し、厳しい環境の中で安定した飛行を見せた。

     午後になると雨脚がさらに強まり、再度、船からミチノテラスまでの飛行を試みようとしたが、周辺への影響なども考慮し、その場では飛行を断念した。

     この日は内閣官房、防衛省なども現地を視察した中で実証が行われた。

     実証を主催した国交省の伊藤真澄技術政策課長は「国土交通省は平時、有事のさまざまな場面でドローンを活用しています。その中で行政ニーズに適したドローンはどのような性能を持つことが必要なのかをまとめておくためこの実証をすすめております。たとえば、観測にはどういう能力が必要か。また災害時であれば、悪天候の中で飛す必要がございますので、雨や風に強い対候性がどれだけあればよいのか。どれだけ長時間、長距離を飛べるのか。さらに物資輸送であれば高いペイロードがあるのか。一方で、平時に点検に活用する場合であれば、非GPS環境下でもどの程度飛べるのか。あるいは自動航行で取得したデータをAI解析できないか。来年度も同様の実証を続けていくつもりです」と趣旨を説明し、新年度も継続する意向を表明した。

     また斎藤室長は「気温が低く雨も降るというドローンの飛行にとって適したとはいえない、普通だったらやらないだろうという状況で、ぜひお願いします、ということで実施して頂きました。我々にとっては、限界がどこかを知っておくことはとても大事です。災害救助には、物資輸送などは真剣な場所です。人の生き死にに関わります『できる、できる』と言いながら、実際に運用できなかった、となると、行政としては取り返しがつかないことになってしまいます。われわれのニーズが現実にできるのか、できないのか。そういった意味でも実証をやらせていただいているわけです。その意味ではこうした環境の中で実証ができましたことは、貴重なデータを得ることができたので、大変有意義だったと思っています。今後も引き続き、取り組みを進めて参ります」と話した。

    ミチノテラス豊洲で行われた実証では東京湾に浮かぶ船からドローンで物資を輸送する実証が行われた
    物資をかかえて着陸
    船から飛行した機体
    高セキュリティ対応ドローンも飛行を披露した
    実証でお試し飛行を披露した高セキュリティ性能を備えた機体は多くの視察者の関心を集めた
    あいにくの天気の中だったが高セキュリティ対応ドローンが安定飛行を見せた
    リアルタイムでH工状況が確認できるモニターに視察関係者が興味津々
    実証ではビル、サイネージなどさまざまな構造物がある環境での飛行の課題を洗い出す
    ミチノテラスから離陸した機体は奥に見える船を目指す
    ミチノテラスを離陸した機体が船に向かう様子を視察者が見守®
    実証会場は日本初の都市型道の駅「豊洲MiCHiの駅」
    実証会場一帯は研究対象にもなっている

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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