経済産業省、厚生労働省、消防庁で構成する「石油コンビナート等災害防止3省連絡会議」は3月27日、カメラを搭載したドローンによる化学プラントの点検作業の指針となる「ガイドライン」を改訂した。プラントを点検するさいのドローンの適用範囲を従来の「屋外」から「屋外及び屋内」に拡大したことや、ドローンの点検が目視点検の一部を代替できることを明示したことが柱。3省庁は今後、関係法令の見直しも含め、ドローンによるプラント点検の拡大を後押しする方針だ。
3省連絡会議がまとめたのは、ドローンによる点検の安全な運用の指針となるガイドラインの改訂版「プラントにおけるドローンの安全な運用方法に関するガイドラインver2」と、指針のベースとなる先行事例を分析し、紹介した「プラントにおけるドローン活用事例集ver2」。それぞれ、昨年3月の公開版を見直して改訂した。
また新たにドローンによる点検の利点と課題を、実証実験をふまえて整理した「プラント保安分野における目視検査の代替可能性に関する考察」も公開した。
改訂ガイドラインは、タンク、ボイラー、トッパー、フレアスタックなどのプラント設備点検に、ドローンの活用に期待が高まっていることを背景にまとめられた。化学プラントでは、設備の性格上、高い防爆対策が求められることもあり、標準的な運用方法の指針を求める声にこたえる意味がある。
改訂ガイドラインでは、屋内特有の要件があることを明記し、対応可能な業者を選定する必要性に言及。ドローンのプラント屋内飛行については、GPSに頼らず、目視外での飛行が必要なケースが想定されることから「十分に技量を要する操縦者でなくてはならない」と盛り込んだ。また使用機体についても、「衝突回避機能を有することや、ガードなどの機構を有することで設備等に損傷、破損を生じない機構を有する必要がある」と指摘した。
さらに飛行計画書作成段階で、「日常的に人が入ることができない空間や高所において活用する場合は、設備の目印、突起物などの障害物の有無などに十分な確認を行う」ことや、飛行時の安全確保のため「安全運航管理者に加え、操縦以外のアドバイス(たとえば自己位置確認、カメラ及び照明の角度等)を行う補助者の少なくとも3人以上の体制が望ましい」ことも追記した。
あわせてリスク要因も「高温または低温の場合、電子機器が故障し操縦困難になること」「ドローン自身に起因する気流の乱れにより操縦が困難になること」など9点を列挙。これに対応するため、「温度条件による飛行中止基準を設ける」「視界不良による飛行中止判断基準を設ける」「飛行中止判断者の配置」など操縦不能への対策や、「アセスメント飛行の実施」「衝突回避機能の搭載」など、設備を破損させないための対策、「屋内の突起物や狭小部の事前確認」といった突起物や狭小部に拘束されないための対策などを列記した。
プラント点検は、作業の迅速化、効率化、簡素化、労働災害撲滅などの観点からカメラを搭載したドローンの活用に対する期待が高まっている。一部で試験的導入は始まっているものの、本格的な導入には安全な運用のための指標が必要であるとを求める声があり、経産省など3省が昨年3月、ガイドラインを策定した。今回はドローンの活用を従来屋外から拡大し、屋内での有効性、目視の代替可能性を認めたことで、プラント点検へのドローン導入の加速が期待される。
一方で、点検には、プラントごとに作業に関わるきまりが、それぞれのベースとなる法令に基づいて定められている。原油タンクの点検は消防法、ボイラーであれば労働安全衛生法、原油を異なる沸点をもつ留分ごとに分類するトッパー(常圧蒸留装置)は高圧ガス保安法などに基づいて決められていて、点検は作業員による目視を前提としている。
今回、カメラによる目視の代替が可能であることが確認できたことから、3省はカメラを搭載したドローンによる点検を可能にするための関係法令の見直しに着手する方針だ。また、余剰ガス償却塔であるフレアスタックなど、カメラによる点検を目視代替になることが認められているプラントについても、ドローンの活用による迅速化、効率化、労働災害撲滅を後押しする方針だ。
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