DJIはドローンが飛行禁止エリアに侵入しそうになると操縦者の意志や操作にかかわらず、飛行を強制的にそれ以上進めなくなる機能を事実上廃止する。欧米ですでに適用されている変更を、日本を含め世界各国に適用を広げる。これまでは「うっかり侵入」の防止に重宝されてきた一方、禁止エリア内での災害発生時などにドローンでかけつけることが制約があるなどの声もあった。方針転換により、操縦者のより厳密な管理と、禁止エリア管理者の監督強化が求められることになる。
DJIの発表は以下の通りだ。
DJI、GEOシステムのアップデートを未対応の国際市場へ拡大
2025年11月17日 – DJIは本日、GEOシステムのアップデート適用エリアを、欧州と米国に続き、未適用の国・地域へと拡大することを発表しました。これは、DJIが空域ガイダンスシステムを標準化し、世界中のドローンオペレーターに一貫した体験を提供するという継続的な取り組みにおいて、一歩前進したことを示しています。
2024年初頭に欧州で、2025年初頭に米国で導入されたアップデートを踏まえた今回のグローバル展開は、オペレーターが認識して責任を負う、という規制の原則に沿ったものです。このアップデートの一環として、世界中に残存する飛行禁止区域(NFZ)が強化警告区域(EWZ)に再分類されます。これにより、飛行体験が統一され、異なる管轄区域を横断して運航するパイロットの混乱が軽減されることになります。
今回のアップデートは段階的に展開される予定で、2025年11月17日にDJIのコンシューマーおよびエンタープライズの製品ラインから始まり、続いて同年12月にファームウェア・リリースを通じて農業ドローンにも順次適用されます。そして、2026年初頭にGEOロック解除申請サービスが終了することにより、一連のアップデート・プロセスが完了します。(以下略)
今回の転換は、操縦者や原発、空港など禁止エリア管理者にとって、より重要度が高いとみられうる。
飛行禁止区域(NFZ)が強化警告区域(EWZ)に切り替えられることで、Geofencing機能(ジオフェンシング機能、区域進入自動制御)が解除され、警告表示だけになる。緊急事態などによりGeofencingが機能している区域にドローンを飛行させる必要があるときには、当局ではなくDJIにGeofencing機能を一時的に解除する申請(GEO Unlock Request サービス=いわゆる解除申請サービス)をする必要があったが、これを「2026年初期」に廃止する。
パイロットのその区域に対する状況、法令、許可の有無の理解や確認、判断がより厳密に問われることになり、技術的な飛行ブロックがなくなるため「うっかり侵入」リスクも高まることになる。
施設管理側もより厳密に空域の管理が迫られることになりそうだ。


能登地震対応にドローン事業者が続々と参画している。イームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>)は中型の「E6106FLMP2」、大型の「E6150TC」をあわせて4機を持ちこみ現地の需要に対応しているほか、石川県庁内に設置されたリエゾン拠点で業務調整にあたっている。ドローンが被災地で活躍するには、現地のニーズ、活躍できる事業者の選定、必要な申請など数々の業務調整が不可欠で、その調整役に経験のあるドローン事業者の知見や経験が役立っている。また株式会社SkyDrive も「SkyLift P300S」1機を含め4機を持ちこみ、ドローンの運用に定評のあるエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社(NTTコミュニケーションズ、東京)は主に上空の通信環境整備を担う。株式会社スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)、日本航空株式会社(東京)、ヤマハ発動機株式会社(磐田市<静岡県>)、日本DMC株式会社(御殿場市<静岡県>)、川崎重工業株式会社(東京、神戸市<兵庫県>)などが現地で被災地の支援の先頭に立っている。
ドローン事業者は主に輪島市、珠洲市で活動をしている。両市は一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)に支援を要請していて、要請を受けたJUIDAのもと、ドローン事業者が災害対応に奔走している。
イームズロボティクスは機体の運用のほか、石川県庁DMAT調整本部内に情報連絡のために設置されたリエゾン拠点で輪島市などで活動するJUIDAや、経産省、国交省、事業者との業務調整にあたっている。政府、国内ドローン事業者へのヒアリングシートを作成したり、政府と災害時のドローン飛行などについて定めている航空法138条92項の取り扱いや災害救助法適応についても協議した。事業者との調整では株式会社スペースエンターテイメントラボラトリー、双葉電子工業株式会社(茂原市<千葉県>)と連絡をとり事前調整にあたった。
また、国立研究開発法人防災科学技術研究所(防災科研、つくば市<茨城県>)とは、オルソデータをアップロード出来るSIP4Dイームズロボティクスパイロットシステムを準備し、SIP4Dにアップされたオルソデータが災害対応機関が閲覧する災害情報サイト、ISUT-SITEに表示されるようにした。一般財団法人日本気象協会、株式会社ウェザーニューズとは活動支援用の特設サイトの準備を調整した。 ウェザーニューズにはドクターヘリ位置情報を輪島市でも確認出来るように、輪島市のDMAT本部にもシステムが設置されるよう調整した。NTTコミュニケーションズとは輪島市上空の電波状況について再計算を受ける調整をし、輪島市で活動するJUIDAチームとの共有を図った。
ドローンオペレーターとしては、輪島市、珠洲市からの撮影要望のある場所を持ちこんだ機体などを使い空撮し、オルソを作成したうえSIP4Dにアップロード した。佐川急便にも物流ニーズを確認したうえで物流用機体の準備を図った。
SkyDriveは1月8日から14日にかけて現地入り。物流、状況把握を担った。スペースエンターテインメントラボラトリー(横浜市)は水上飛行を調整し、日本DMCは飛行前のロケハンのためにドローンを運用した。
災害対応の現場では、業務調整が不可欠だ。結集した事業者や、それぞれの事業者が持つ知見は、適切に運用が図られてはじめて本領を発揮する。どこで、なんのために飛行することが求められているのか、そのためにどこに、どう申請するのか、飛行環境は整っているのか、など数々の業務調整が果たす役割は大きく、今回は、専門家とのつながりも含めた業務調整の蓄積が一定水準で機能したといえそうだ。災害対応はまだ続くが、ドローン事業者が災害対応のために集結し、それぞれが果たした役割や成果は、今後の検証事例やモデルケースになることは間違いない。
JUIDAは発災直後から内部で調整を進め、1月4日以降、活動を具体化させ、1月5日にはブルーイノベーション株式会社(東京)、株式会社Liberaware(千葉市)とともに支援を始めた。被災地では1月2日に緊急用務地域に指定され(1月5日に改定)ている。現在の航空法では緊急用務地域では国か地方、または現地災害対策本部の要請を受けていない場合、原則としてドローンの飛行は禁止されている。JUIDAは輪島市、珠洲市の要請を受け活動をしており、ドローン事業者も原則として、JUIDAの統括のもとで運用している。
JUIDAが公表している活動報告

