SkyDriveはアブダビ首長国の政府機関である交通統合センター(ITC)とAAM(いわゆる空飛ぶクルマなどの先進的エアモビリティ)の社会実装に向けた協力覚書(MOU)を結んだと発表した。空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」(SD-05型)の導入可能性を調査し、離着陸場や充電設備などのインフラ整備、エコシステム構築、事業化検討を進めることが盛り込まれた。アブダビはすでに複数のAAM企業と提携を拡大しており、SkyDriveにとっても今回のMOUをUAE展開の加速につなげたいところだ。
SkyDriveがアブダビのITCとのMOUの調印式は、2025年11月11日にアブダビで開催された自動運転技術、ドローン、スマート交通インフラをテーマとした国際的なイベント・展示会「DRIFTx 2025」で行われた。今回のMOUでSkyDriveは同社の「SKYDRIVE(SD-05)」をアブダビの都市交通に活用する可能性を探る。離着陸場としてのヴァーティポート整備や充電インフラの検討、AAMのエコシステム形成、需要調査を含む事業化の検討などが中心となるとみられる。SkyDriveはITCと協力してAAMの導入に必要となる制度面の調整や技術要件の整理も進めていく姿勢を示している。
SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOは、「世界の中でも空飛ぶクルマの早期商用化を目指し、インフラや規制の整備を先進的に進めているアブダビ首長国と提携できることを光栄に思います。今回の提携は『日常の移動に空を活用する』という、われわれの目標を現実のものにするために、非常に重要な一歩となると考えております。今後、ITCと協力しながら、アブダビ首長国の住民の方、ビジネスや観光で訪れる方に、革新的で持続可能な移動体験を提供できるように活動をおこなってまいります」とコメントした。
ITCのDr. Abdulla Hamad AlGhfeli氏は「われわれは、未来のモビリティへの移行を加速させるため、国内外での戦略的パートナーシップを進めています。今回の合意は、スマートで統合的な交通システムを構築し、最新の自動運転や先進的な航空モビリティの技術を導入するという、アブダビの強いコミットメントを示すものです。今後、人々の生活の質を高め、アブダビ首長国を先進モビリティシステムの世界的な中心地にするという、政府の統合交通インフラのビジョン実現に貢献します」と期待を示している。
SkyDriveは今回の合意以前からUAEでの事業展開を進めてきた。2023年にはAAMのインフラ開発を手掛けるカナダのVPortsと協力し、ドバイに設置が進む「AAMインテグレーター・ワールドセンター」を活用する覚書を締結している。また、2025年にはドバイのヘリコプターチャーター会社AeroGulf Servicesと同社の「空飛ぶクルマ」の導入を検討するMOUを交わした。今回のITCとの連携はこうしたUAEでの活動の延長線上と位置づけられる。ドバイの観光市場、アブダビの都市交通政策が現時点でのUAEでのAAM展開だ。
アブダビ政府はAAMを都市交通戦略の柱として掲げ、多くの国際企業と協力関係の構築を進めている。Joby Aviationとは飛行運航、訓練、製造拠点の検討を含む包括的MOUを締結しており、Archer Aviationとはアブダビ空港やEtihadトレーニングなど複数機関との協力関係の枠組みを構築している。また英Skyportsとはヴァーティポートネットワーク整備に関する協力が進むなど、AAM実装に向けたパートナーはすでに多岐にわたる。
アブダビは複数企業との連携を通じてAAM運用の実証基盤を整備する段階に入りつつあり、SkyDriveの参画はAAM実装の選択肢を広げる役割を担う。SkyDriveにとってもUAEでの実装に向けた取り組みが進む契機となる可能性がある。
一方、Joby、Archer、EHangなど主要プレーヤーも、アブダビの都市間移動、観光需要、物流用途などの領域でAAMの活用を見据える。SkyDriveを含む各社は今後、実装への道筋をかけて都市のニーズに合わせた運用モデル構築に取り組むことになる。SkyDriveは軽量機体をいかした短距離移動や観光用途に強みがあり、UAE市場で他社とは異なる運用領域を打ち出せる可能性がある。

一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は7月24日、インドネシアの中堅私学であるMOESTOPO大学(ジャカルタ)、広告代理事業や現地進出支援事業を展開するCHUO SENKO INDONESIA(CSK、同)とドローンの産業振興や人材育成の重要性などの方向で協議を重ねることについて基本合意し、それぞれと覚書(MOU)を調印した。今後、具体的な内容などについて協議する。JUIDAはマーケットやビジネスチャンスの拡大に向けて海外展開に積極的で、今後の検討次第で、インドネシアでの認定スクール開設も視野に入る。


会談には、MOESTOPO大学側の代表として、大学の運営責任者であるThomas Suytno教授、CSK側の代表としてRudy Harjatno会長らが出席。JUIDAからは鈴木真二理事長、熊田知之事務局長らが出席した。MOESTOPO大学のSuyatno氏はインドネシア私立大学協会の会長も務めている。
会談ではドローン産業の育成の重要性について出席者が意気投合。CSKのHartanto会長は「テクノロジーはテクノロジー自身のためにあるわけではなく、人間の幸せのためにある。とりわけドローンには期待していて、大学としてそれを担える人材育成に貢献したい。そのための機会も提案したい」と発言、JUIDA側出席者が頷いた。また、ドローンの飛行ルールについてインドネシア側から「国内では十分に整備されているとはいえない」という課題が取り上げられると、鈴木理事長が「レギュレーションの制定は産業発展のうえで重要」と指摘。インドネシア側が同意する場面がみられた。会談では今後も協議を続ける方向が確認され、MOUに調印することになった。
今後の協議についての具体的な内容は今後検討することになるが、インドネシア国内でのドローン市場や、特に人材育成のメソッド、ルール策定に関する情報交換などが含まれる見込みだ。大学がJUIDAのメソッドを活用したドローンスクールを開設することも視野に入る。
日本国内のドローンに関連した人材育成の仕組みは、海外でも人材育成の事例として取り上げられることがあり、特に200を超えるスクール網を持つJUIDAには世界各国の企業、政府から問い合わせが相次いでいる。JUIDAも積極的に交流を進めていて、シンガポールでは認定スクール設立にこぎつけた。インドネシアで事業が具体化すればJUIDAの海外展開にはずみがつきそうだ。
JUIDAの鈴木理事長は会談後「今回のMOUはインドネシア、日本それぞれにとって有意義。今後、人材育成を通じたドローンの産業振興について協議することなどが考えられえる。JUIDAにとってはこれまで培ってきたノウハウの有効活用にもつながる」と話した。

