ブルーイノベーション株式会社(東京)が2月21日、工場などの施設内をUGV(自動走行ロボット)の定期的巡回による無人保守・点検サービス「BEP サーベイランス」の提供を正式に提供を始めたと発表した。約2年間の複数施設での現場検証をふまえ、ソリューションとして公開した。
ブルーイノベーションが2月21日に発表した内容は以下の通りだ。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之)は、発電所(水力、火力、原子力など)や石油化学プラント、工場などのインフラ施設内を自動走行ロボット(Unmanned Ground Vehicle:以下、UGV)が定期的に巡回し、点検・保守業務を効率化・無人化するロボット自動巡回ソリューション「BEP サーベイランス」の正式サービス提供を2月21日より開始します。
「BEP サーベイランス」は、従来の人による巡回点検にかかっていた膨大な時間や手間を減らすだけでなく、作業内容の標準化や点検データの蓄積・定量化による予兆保全に貢献します。また、遠隔からのリアルタイム監視も可能なため、施設状況を即時に把握したい緊急時にも活用可能です。
① 従来、施設内データ収集の多くは、人の巡回による目視と紙による記録で行われており、広大な敷地内の移動や点検項目が多岐にわたるなど膨大な手間と時間を要していました。今回提供する「BEP サーベイランス」は、高画質カメラやサーモカメラ、マイクなど、人の目や耳に代わるデバイスを搭載したUGV が施設内を定期的に自動巡回し、設備状況や計器の数値などのデータ収集を自動で行います。巡回後は充電ポートに帰還するので施設内の無人化に寄与します。
② また、点検結果は手書きされることも多く、作業内容や結果が属人化され、共有や蓄積・分析が難しいといった課題もありましたが、「BEP サーベイランス」では、UGV の経路やデバイスの向きを設定することで、点検対象物を同じ画角・状態でデータ保存します。こうして得られた点検結果はレポート出力も可能なので早期に共有することや、ビッグデータ化することで、設備の予兆保全に貢献します。
③ さらに、設備が遠隔に離れている場合、災害や事故などの緊急時には即座に現場の状況を把握しきれないといったリスクもありましたが、「BEP サーベイランス」では、UGVを緊急巡回させ、デバイスの手動操作することで、遠隔地から施設状況をリアルタイムで把握、情報を共有することが可能です。なお、今回提供を開始する「BEP サーベイランス」は、2022年4月1日よりトライアルサービスを開始しており、複数のインフラ施設での現場検証を経てこの度、ソリューションとして正式提供を開始するものです。
■「BEP サーベイランス」 特長とメリット
【スケジュール予約】
点検経路・点検開始時間をセットしておくことで予約点検。定期的にセットしておくことで、自動で定期巡回点検します。点検計画に沿って抜け漏れなく点検を実施します。
【自動巡回・データ取得】
施設内の点検対象の場所と経路をセットすることで何度でも同じ経路を自動巡回。巡回プランは複数設定でき、それぞれスケジュール管理が可能です。
【自動充電】
BEP サーベイランスの正式版では新規開発された充電ポートが付属します。4 時間の充電で 4 時間の巡回点検が可能です。巡回点検後、充電ポートに自動で戻るので、現場に行く手間を減らします。
【ネットワーク管理・レポート出力・遠隔操作】
取得した点検データは自動送信され管理アプリで確認可能。データは位置情報とともに閲覧でき、一覧から迷うことなく確認できます。確認した点検結果はレポートとして出力することもできます。また、管理アプリ上ではリアルタイム映像を確認する機能も新規追加しており、緊急時にはデバイスの手動操作も可能です。
【カスタマイズ性】
BEP サーベイランスは、カメラなどのデバイスは現場の状況や環境に応じてカスタマイズが可能です。トライアルサービス提供中に現場の需要に合わせて選択可能なデバイスが増加しています。デバイスのほか、管理画面・レポートの形式なども、お客様のご要望に応じてカスタマイズが可能です。
■「BEPサーベイランス」 導入手順
「BEPサーベイランス」は、現場の条件・要件を整理・検証する初期導入支援からはじまり、お客様ご自身が安心して運用できるよう技術スタッフの安心サポートも提供しております。安全機能も備えておりますが、万が一の事態に備えての保険などもご案内しています。
■「BEP サーベイランス」 サービスプラン
「BEP サーベイランス」は、お客様のご要望にあわせて購入プラン・サブスクプランを用意しています。また、どちらのプランでも導入支援として初期設定や講習なども提供しています。
楽天グループ株式会社、パナソニックホールディングス株式会社、株式会社西友は5月28日、茨城県つくば市で自動走行ロボット(UGV)を使った無人配送サービスを開始した。初日の5月28日は、サービス開始の午前11時より2時間前の、午前9時過ぎの時点ですべての時間枠の予約が埋まった。配送では対象エリア内では最長距離となる拠点から道のりにして約1㎞の利用者の自宅前に注文通りに荷物を届けた。配送中にはロボットを見かけた通行人が写真に納めたり、子供たちが手を振ったりと好意的に受け止められている様子が見られ、早くも町の風景に溶け込んでいることを印象付けた。サービスは原則として7月30日までの毎週土曜日に、つくばエクスプレスのつくば駅を中心とした約1000世帯を対象に提供される。110円の手数料がかかる有料サービスだ。担当者は「今後エリアの拡大、サービスのさらなる充実で期待に応えていきたい」と話している。
配送サービス初日の5月28日は、予約が可能となる当日午前0時過ぎに最初の予約が入った。その後も断続的に予約が入り、午前9時にはすべての予約枠が埋まった。受けつけた予約は順調にこなし、すべての買い物配送を無人で届けた。システム上は、注文者が思い立ったときに申し込み、最短30分で届けるオンデマンド配送を組み込んでいるが。この日はオンデマンド配送の出番はなかった。
対象エリアであるつくば駅周辺には、商店や飲食店が集積し、マンションや住宅も多い生活機能充実エリア。ロボット配送サービスが提供される週末は、駅前広場にキッチンカーが繰り出すなど賑わいが増す。配送ロボットは時速4㎞の、人々がおしゃべりしながら歩く速度で賑わいのなかを進む。配送ロボットが通ると、居合わせた人々が指をさしたり、スマホで撮影をしたりと好意的な反応がみられた。とくに子供たちは、ロボットをみつけると話しかけたり、手を振ったりと、関心を引いた。ペットの犬が振り向いたり、吠えたりと反応を示したこともあった。
配送用ロボットはパナソニックが開発したUGV「X-Area Robo(クロスエリアロボ)」。市の中心街にあるスーパー、西友つくば竹園店のわきが待機スペースで、注文にあわせてスタッフが買い物の荷物を積み込む。ロボットは常温、冷蔵、冷凍の三温度帯に対応し、注文者は生鮮食品、お弁当、日用品など2000品目以上から選べる。注文は楽天が開発したアプリで完結する。店舗は注文が入ったことを楽天の開発した店舗向けシステムで確実に把握できる。また自宅で買い物の到着を待つ注文者も、ロボットの自宅への接近や到着をショートメールやサイトなど複数の方法で通知を受けられるなど、受け取り漏れを防ぐ工夫がこらされている。
「今回の対象地域でない場所にお住まいの方からも問い合わせを頂くなど関心をお寄せ頂いています。技術的にはさらに離れたエリアへの配送も可能なので、今後エリアを拡大したり、サービスのさらなる充実をしたりと、期待に応えていきたいと思っています」と話している。
5月26日には楽天グループ株式会社コマースカンパニーロジスティクス事業ドローン・UGV事業部ジェネラルマネージャーの向井秀明さん、同事業部UGV事業課シニアマネージャーの牛嶋裕之さん、パナソニックホールディングス株式会社テクノロジー本部モビリティソリューション部部長(兼)モビリティ事業戦略室エリアサービス事業戦略担当の東島勝義さんが、つくば市の多用途交流拠点「co-en(コウエン)」で説明会を行い、集まったメディアにむけて実演を披露した。
楽天はこれまでにも自動配送を実証実験などの形で取り組みを積み重ねてきた経緯がある。楽天の向井ジェネラルマネージャーは今回の取組の意義を「手数料110円と有料にして実際の形に近づきました。これまで扱えなかった冷蔵、冷凍品も扱えるようになりましたし、注文アプリには『いますぐ配送』とオンデマンド機能を追加しました。注文をしてから最短30分でご自宅に届きます。少子高齢化社会の中で、配送員は減り、配送ニーズは増えます。運ぶコストの上昇が見込まれる中でも、UGVを使うことで最終的には人よりも安く運べるようにしたいと考えています。まずは実際に体験いただいて、こうしてほしい、といた声をいただいて改善を続けていきたいと。安価で便利な配送サービスをつくることが今回のミッションです」と話した。
パナソニックの東島部長は「X-Areaロボはフレキシブルであり、かつ、機能安全に関する国際規格に適合したユニットを搭載した安全自律走行プラットフォームです。万が一システムが不安定になっても絶対にとまります。いわば、自由度をもってサービスにとけこみ、それでいてぶつからないロボットです。運用面でも、現場の事業者が容易に運用できるほか、複数エリアを東京の1か所で集中管理してより実用化に近づけました」と実用化に向けた工夫を説明した。
楽天の牛嶋シニアマネージャーはデモンストレーションの概要を説明。自動配送ロボットが通るルートや、店舗スタッフが注文を受けてから店内で荷物をピックアップし、ロボットに乗せ、利用者が通知を受けて、受け取るまでの流れを説明した。5月28日の配送初日も、運用現場で配送状況を見守った。
UGV配送については2022年3月4日に道路交通法の改正案が閣議決定され制度化が進む見込みとなった。2022年2月18日には一般社団法人ロボットデリバリー協会が、楽天やパナソニックのほか、川崎重工業株式会社、株式会社ZMP、TIS株式会社、株式会社ティアフォー、日本郵便株式会社、本田技研工業株式会社の8社で発足、その後、正会員、賛助会員が加わるなど勢力を拡大し、実装へ向けた環境が整いつつある。