気ままな外出を控える日常が続く中、ドローン関係者の中にも医師、看護師、介護士などとして新型コロナウイルスと格闘していたり、こうした医療従事者を支える活動をしていたりする人々がいる。神奈川県藤沢市に拠点を構える「チーム藤沢」は、飛沫感染、接触感染を防ぐフェイスシールドを医療機関や介護施設など、感染者を受け入れる可能性がある施設を中心に無償で届ける活動を続けている。移動などに必要な資金は寄付頼み。届ける物資は協力者のボランティア。願いと善意に支えられた熱意と志の活動だ。
「チーム藤沢」は、災害時に支援物資を届ける有志の市民団体だ。運営母体の下田商会(神奈川県藤沢市)はPC修理専門店で、平成13年1月の設立以来、データ復旧、救出の高い技術、良心的な価格、厳密な情報管理、海上自衛隊出身の下田亮代表をはじめとするスタッフの誠実な仕事ぶりで全国の国公私立大学、研究機関、製薬会社、医療機関、陸海空自衛隊などから頼られ、実績と信頼を積み上げてきた。ドローン空撮事業部門「藤沢航空撮影隊」も持ち、NHKや民放のテレビ番組からも引き合いがあり、点検や研究用の撮影でも声がかかる。
チーム藤沢は2016年の熊本地震のさいに、緊急支援、復興支援をするために発足させた。以来、地震や台風などの大規模な自然災害を中心に、被災地や避難所に救援物資を届けてきた。必要な救援物資は、全国の仲間に呼びかけて募る。広く厚い協力と善意が集まり、活動が支えられている。
新型コロナウイルスに立ち向かう医療従事者向けに、フェイスシールドを届ける取り組みは、チーム藤沢で医療部門を担当する山崎脳神経外科クリニック(藤沢市)の山崎久美さんが提案したことがきっかけだった。それまでチーム藤沢では、マスク着用に伴う耳の負担を軽減するため、耳にかけるゴムを頭のうしろにまわしてとめられるようにする「イヤーガード」を3Dプリンターで出力していた。それを見た山崎さんが、飛沫感染や接触感染リスクを軽減できるフェイスシールドの製作を打診した。
フェイスシールドは、顔をすっぽりと覆う、クリアファイルやラミネートなどのシールド材と、シートを支える頭にとりつけるフレームを組み合わせてつくる。大阪大学大学院医学系研究科の中島清一特任教授も提唱しており、フレームのデータも公開している。このデータを参考にフレームを印刷すれば、フェイスシールドをつくれる。医療現場では個人防護具(PPE)の不足や、それに伴う家用崩壊の恐れが深刻化していた。プロジェクトが動き出した。
チーム藤沢内で、メンバーの所有する3Dプリンターで製作に入る一方、迅速に届けるため、全国の3Dプリンターを持つ仲間に呼びかけ、製作協力を呼び掛けた。すぐに全国から協力の申し出があった。
ドローン関連事業でも、株式会社ジーエスワークス代表の河原暁氏、ジオサーフ株式会社の小路丸未来氏、Dアカデミー株式会社代表の依田健一氏、株式会社D-eyes代表の橋本健氏、株式会社JINSOKUTSU代表の南博司氏、ドローンかまくら代表の檜森晃治氏、Dig-it works株式会社代表の坂本政和氏、POC-DC株式会社の小神野和貴氏らが名乗りを上げた。
続々とチーム藤沢にフェイスシールドが届き始めた。これに、使い方の説明や、医療従事者向けの手紙を添えて梱包した。
届け先は地元、藤沢市内の医療機関からはじめた。やがて評判が口コミで広がり、フェイスシールドの要望は全国から届くようになった。クリニック、医師会、医大、訪問看護ステーション、歯科、整形外科、小児科など、届け先はすでに広範に及ぶ。届け先からは、「大変助かります」「本来発熱者とは無縁ですが、インフォームドコンセントの家族に微熱があり、PPEの必要性を実感しました」「内科以外でも必要と実感しています」などと感謝の声が届くようになり、活動が求められていることを実感した。
心無い仕打ちも受けた。ある医療機関からは無償で届けた同じ日に「装着したら頭が痛くなり使えない」とクレームが入った。「医療機関ではもっとちゃんとした製品を使う」「チーム藤沢という団体が怪しくて信用できない」などと言葉を浴びせられた。下田代表が届け先の医療機関に出向き、反論せずに詫びをいれ、提供した製品を回収した。それでもチーム藤沢は活動を停止させていない。むしろ無償提供活動を活発化させている。
フェイスシールドを提唱した大阪大学の中島特任教授は、この直後に「医療従事者の皆様」とSNSに投稿した。その中で中島氏はフレームの不具合は「試作品をテストしてデザインを最適化する時間的余裕を持てなかった中島の責任」と責任を引き受け、「でも、フレームに正しくシールド材をつけて、正しく装用するかぎり、飛沫・接触感染を防ぐPPEとしてちゃんと機能することだけは、医療機器開発を長年主導してきた中島が保証します」と断言した。
そのうえで最も大切なことを最後に付け加えた。「印刷協力者の皆さんには、何より敬意をもって接していただきたい。我々が自分達にしかない医療技術、医学知識、臨床経験でもってコロナに対峙するように、彼らも彼らにしかないスキルや知識、経験を駆使して、フレームを印刷する、という行為を通じてコロナと闘っているのです。彼らは我々の戦友なのです。戦友には礼節をもって接していただきたい」。チーム藤沢は、この投稿に勇気づけられた。
チーム藤沢の下田代表が今、もっとも気になるのは、「やさしい気持ち」だ。下田代表は最近、SNSで「皆が自粛している時に仕事をするのは悪い事。その風潮がより一層と強くなるでしょう。今、一番怖いのは人の心です。だから、やさしい気持ちを忘れないで」と投稿した。クレームに反発しなかった理由が、ここににじむ。
チーム藤沢を運営する下田商会はちょうど1年前の2019年5月8日、「藤沢航空撮影隊」として千葉県君津市で「3Dプリンターセミナー」を仲間の事業者とともに開催し、参加者にドローンで撮影した写真から3Dモデルを作製する方法を伝授していた。講習会では、この技術は社会に役立ててこそ生きることを強調していた。
技術の役立て方は、これからも試されることになりそうだ。
チーム藤沢は、3Dプリンター所有者の協力や仕上げ作業の補助、支援機などの協力や、支援金を募っている。支援金振り込み先は「かながわ信用金庫藤沢営業部、普通口座、2158228、口座名:チームフジサワ」。詳細はチーム藤沢の公式FBページ、または電話(0466・48・2386、下田商会内)で問い合わせを。
10月12日から13日にかけて静岡県から東北にかけて日本列島を縦断し、多数の死者、行方不明者、河川の堤防決壊、土砂崩れなどの甚大な被害をもたらした台風19号の爪痕が残る被災地で、多くのドローン活動家、ドローン事業者が災害対応に活躍しています。本サイトはその方々の活躍に敬意を表し、心から支持するとともに、現地でのご苦労に対し、被災された方々、災害対応にあたっておられる方々にお見舞いを申し上げます。
ドローン研究と実装をけん引する慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアム(古谷知之代表)は、「災害ドローン救援隊 DRONE BIRD」を運営するNPO法人クライシスマッパーズ・ジャパン(東京都調布市)、災害ボランティア活動を展開するチーム藤沢、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の認定スクールを運営するDアカデミー株式会社、ジオサーフ株式会社のメンバーや、フリーのドローンパイロット、稲田純次氏らとともに、甚大な被害に見舞われた神奈川県相模原市に発災直後から入り、実態調査を実施しています。
現地では、発災箇所を中心に、その周辺の状況をオルソ化できるようドローンから撮影し、被災箇所の詳細を把握するため映像撮影も実施しています。その結果、土砂災害、河川の氾濫、冠水、崩落が、現地に入る前に入手していた情報よりも、深刻な状況であることをつかみました。また、数箇所で地滑りを確認したため、周辺住民に避難を呼びかけ、県に情報を提供するなどをしました。
収集した情報は、GitHub, Google Drive、OpenAerialMap、国立研究開発法人科学技術研究所(本所:茨城県つくば市)のNIED-CRCなどで提供されます。
現地に入ったドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、今後、被災地での支援活動が活発化するに伴い、ボランティアに対して円滑な情報提供の必要性が高まると想定。自治体や気象庁、国土地理院など公的なデータだけでなく、現地入りした事業者のデータがより大切になると指摘し、同様に災害活動で現地に入っているドローン事業者に対し、データの共有を呼び掛けています。
「福島ドローンスクール」を運営するほか、水中ドローンの普及にも力を入れている株式会社スペースワンは、本社を構える福島県郡山市や隣接する須賀川市が被災。13日朝から災害協定を締結している郡山市や須賀川市からの要請もあり、郡山エリア2班、須賀川エリア1班に分かれ、総動員で被害状況調査にあたりました。
郡山市内を流れる阿武隈川はこの台風で氾濫し、国土地理院によると阿武隈川と支流の逢瀬川と合流する地点の西側の住宅地が東西1.5キロほどの範囲で浸水したとみられています。浸水の深さはこのあたりで最大でおよそ3メートルで、福島県桑折町では深さは最大でおよそ5.2メートルに達しているとみられるといいいます。同社は撮影で得られた情報をそれぞれの自治体に提供するなどの活動を続けています。
自然災害や紛争地域で脅威にさらされている人びとに対する支援活動を行う認定NPO法人ピースウィンズ・ジャパン(広島県神石高原町)は、千曲川沿いで浸水被害の大きかった長野市に、医者を含む医療チーム、レスキューチームを派遣し医療支援や、病院避難支援、避難所支援などを展開しています。
PWJレスキューチームと医療チームは上陸する前日から災害に備えて待機し、訓練を重ねていました。これまでの活動はPWJのHPで公開しています。
国際航業株式会社、パスコは共同して被害状況を把握するため、10月13日に株式会社パスコと共同で、茨城県、栃木県、埼玉県などを撮影。撮影した写真を同社HPで公開しています。