一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が12月6日、7日に福岡国際会議場(福岡市)で開催する地方展示会「Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)」には、Japan Droneに初登場の事業者、技術が話題を集めそうだ。風洞試験装置や流体測定機器などの開発を手掛けるスタートアップ、株式会社日本風洞製作所(福岡県久留米市)は、空飛ぶクルマ開発に有効な小型で可搬型の独自の風洞設備、突風発生装置を、株式会社Braveridge(ブレイブリッジ、福岡市)は基盤の重さが1.6gの“世界最小”の外付け用リモートIDを、それぞれ初公開する。12月5日の改正航空法施行の直後でもあり、レベル4関連の技術を中心に関心を集めそうだ。
株式会社日本風洞製作所(福岡県久留米市)は2016年創業のスタートアップで、JapanDroneには今回が初登場だ。同社は航空産業の発展に欠かせない風洞の技術を追求、「風洞の民主化」をかかげ、よりコンパクト風洞「Aero Optim」を開発したほか、独自の短距離整流技術で大型風洞を省力化・小型化することに取り組んでいる。JapanaDrone福岡には、安価で、可搬で、垂直にも風を発生させることができる画期的な突風発生装置や、ピッチ回転架台を展示する。どちらも公開するのは、今回が初めてだ。
株式会社Braveridge(ブレイブリッジ、福岡市)は同社が開発した“世界最小”のリモートID「リモートID mini」を展示する。外寸は19×19mmで、厚み5.0mm、重量は1.6g(アンテナ、電源線重量を除く)と小型で、スペースが限られた機体への搭載が可能になる。12月1日に開発を発表したばかりで、2023年3月に発売を予定している。同社は2022年8月30日に発売した「リモートID BVRPA/BVRPN」が低価格で大きな話題になっており、今回の「mini」も注目されそうだ。
ITbook ホールディングス(東京)の株式会社サムシングと、長崎放送株式会社(長崎市)のグループ会社でドローン事業を手掛ける株式会社kiipl&nap(キプランドナップ、東京)は、九州電力株式会社(福岡市)、計測検査株式会社(福岡県北九州市)と、合同ブースを構える。特徴ある振り子揺れ防止機能や空中自動キャリブレーションを備え、自動飛行に対応する最大積載量49㎏の特殊大型ドローン「EAGLE-49」、「点検」分野では、人の立ち入りが難しい狭隘部や危険な個所を360度カメラで全方位の確認ができデータも取得できる独自のマイクロドローン「COBALT-360X1」、Trimble社製地上型レーザスキャナ「Trimble X7」を搭載した自立四足歩行の犬型ロボット「SPOT」など、3分野の特殊な技術を展示する計画だ。
このほか、ソフトウェア開発の株式会社オーイーシー(大分県大分市)、ドローンソリューションの株式会(東京)、株式会社快適空間FC(福岡市)、ドローン技術開発のciRobotics株式会社(大分県大分市)、自動制御技術のブルーイノベーション株式会社(東京)、水中、飛行ドローン運用の株式会社ジュンテクノサービス(埼玉県川越市)など、ドローン関係者には馴染みの深い事業者も登場する。
レベル4解禁に伴う操縦ライセンスへの関心が高まる中、一般社団法人ドローン大学校(東京)、エックス・ワン株式会社「ドローンXアカデミー下関校」(山口県下関市)、山一商事株式会社「ドローンスクールLINK長崎」など、ドローンスクールも出展し、取り組みを披露する。福島県と大分県が合同出展するなど自治体の出展も来場者の関心を集めそうだ。
Japan Drone / 次世代エアモビリティEXPO in 九州(福岡)2022 | |
会期 | 2022年12月6日(火)・7日(水) 10:00~17:00 |
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会場 | 福岡国際会議場 4F会議室(展示・コンファレンス) |
主催 | 一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA) |
共催 | 株式会社コングレ |
出展者数 | 50社・団体 |
特別協力 | 福岡地域戦略推進協議会/株式会社西日本新聞社 |
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入場料 | 1,000円(税込)*来場事前登録で無料参加可能 |
近い将来、ドローンが街じゅうを飛び回り、荷物の運搬、工事現場や屋根裏の点検、更には気象や交通状況の観測、災害対応などあらゆる場面で活躍するようになるとき、既存の有人航空機と同様、人びとの安全と安心を守るための仕組みが必要となります。具体的には、全ての航空機およびドローンが迅速かつ確実にお互いを認識できる必要があります。そのためにFAA(米国連邦航空局)によって発表されたものが「リモートID」制度です。この制度により、ドローンメーカーやオペレーターだけでなく、誰にとっても透明性の高いドローンのオペレーションが可能になります。今回は、FAAのWebサイトなどに公開されている「リモートID」制度の概要をまとめました。(筆者:Tavis Sartin=DRONE FUNDグローバル・マーケティング・マネージャー )
リモートID制度は、既存のドローン登録制度などとは異なり、オペレーターのもつ全てのドローンのID情報(詳細は以下)を付与することを必須としています。これにより、飛行中のドローンの飛行情報や位置情報などを、安全な空域管理のために地上から識別することができます。
リモートID情報は、ドローンが活用するほとんどの電波帯を用いて送信されます。業務用電波帯のみならず、Wi-FiやBluetoothなどでも送受信されるよう検討されています。そして、送信される情報には、UA ID(機器のシリアル番号またはセッションID)、フライト情報(GPS情報、高度、速度など)、コントロールステーションまたは離陸場所の位置、タイムスマーク、そして緊急事態の状況などが含まれます。
しかし、パイロットの個人情報やその他の情報は、パイロットの身元を保護するために、送信データには含まれません。これらの情報へのアクセスはFAAに限定され、必要に応じて権限のある法執行機関に提供されます。
リモートIDはFAA、その他行政機関、および私たち一般市民が、ドローンとその操縦場所または離着陸地点に関する情報を特定するのに役立つ重要なツールとなります。道路や水上の乗り物にナンバープレートや所有者の情報が紐づいているのと同様に、当然空中の機体にも、機体の識別等のためデータを管理者に送信する方法が必要です。
2021年1月15日、FAAはリモートIDに関する新しい制度の最終版を公開しました。これらの制度は2021年4月21日から適用される予定です(当初は3月16日から適用される予定でしたが、3月10日にその延期が発表されていました)。
ドローンメーカーは、4月21日から18か月以内に、新制度への適合を確認する必要があります。オペレーターはさらに1年間をかけて、下記の3つの方法のいずれかで運用要件を満たす必要があります。
リモートID制度では、FAAへの登録を必要とする全てのドローンが、リモートIDに関する情報を地上に送信できるようにすることが求められます。ドローンオペレーターは、以下3つのうち、どれか1つの方法を満たすことで、新しいリモートID制度のもとでドローンを飛行させることができます。
1つ目は、リモートIDの送信機能を内蔵したドローンを飛ばすという方法です。ドローンから直接リモートID情報の送信を行います。離陸から着陸までの間、ドローンは以下の情報を送信します。
・ドローンID(UA ID) ・ドローンの位置と高度 ・速度 ・コントロールステーションの位置と高度 ・タイムスタンプ ・緊急時の状況
2つ目は、リモートIDモジュールを後付けで装着したドローンを運用するという方法です。これによってオペレーターは、リモートID機能を内蔵しないドローンを、今回の新しいリモートID制度に準拠させることができます。
ただしオペレーターは、リモートIDモジュールのシリアル番号を機体の登録情報に追加する必要があります。また、リモートIDモジュールを使用して飛行する際には、目視内飛行(VLOS)に制限されます。
離陸から着陸までの間、リモートIDモジュールは以下の情報について送信を行います。
・ドローンID(UA ID) ・ドローンの位置と高度 ・速度 ・離陸地点の位置と高度 ・タイムスタンプ
パイロットはリモートIDを搭載していないドローンを、FAAが認めた特定の指定地域内でオペレーションすることができます。地域に根ざした組織、初等・中等教育機関、その他FAAが認めた組織がFRIAの設立を申請することができます。
・ドローンのセルフテストをし、リモートIDが機能していない場合はドローンを離陸させることはできません。
・リモートIDはオペレーターが無効にすることはできません。
・リモートIDは免許の不要な無線周波数帯(例:Wi-FiまたはBluetooth)でも送信しなければなりません。
・リモートIDドローンおよびリモートIDモジュールは、送信したIDを受信できる範囲が最大になるようメーカーが設計する必要があります。
最後に
新しいリモートIDの制度は、ドローン・エアモビリティ前提社会の実現に向けた重要な一歩となります。有人機と無人機が空を共有する未来のためには、空域の状況を明確に把握する事が重要です。また、これらの規則は、ドローンやその他の新しいエアモビリティ技術に対する社会的な信頼を積み上げていくことに役立ちます。
このリモートID制度の最も重要な意義は、行政、専門家、メーカー、そして私たち一般市民が一体となって、安全で確実なドローンの運用を実現するため、適切な規則を作り上げられることを示している点にあります。
FAAは、2019年12月31日から60日間にわたって「リモートIDに関する提案型制度メイキング(NPRM)」のパブリックコメントを実施しました。これにより、業界の専門家、一般の人々からリモートIDに関する具体的な内容について、53,000件以上のコメントが寄せられました。最終案には、それら多くのコメントが反映されることとなりました。
このように様々なステークホルダーによって実現した制度メイキングの事例は、ドローン・エアモビリティ前提社会実現に向けて、大きな一歩だと考えます。
リモートIDに関するFAAの資料(英語)は以下をご覧ください。