DJI JAPAN株式会社は10月9日、千葉・幕張メッセで記者会見し、圃場センシング用の「P4 Multispectral」、散布用の「AgrasT16」の、新型ドローン2種を発表した。登壇した呉韜代表取締役は、「P4 Multispectral」について、「日本の開発チームが商品化した、世界初の完全統合型マルチスペクトル イメージングドローン」と紹介した。同社は11日まで幕張メッセで開催中の「第6回農業Week」にブースを構えており、新型機2種の実機も展示している。
新型機はいずれも、DJIが9月に米国で開催した年次カンファレンス「AirWorks2019」で発表している。DJI JAPANは農業従事者が集まるイベント「第9回農業Week」(開催は10月11日まで)の開催にあわせて、会場である千葉・幕張メッセ内にある会議室で会見を開いた。
説明会では商品の説明に先立ち、呉代表が日本の農業の現状について「国内の農業は現在、深刻な人手不足に直面しています。就業人口はこの8年間で3分の1減少し、平均年齢も上昇しています。自分自身も田植えをしていて、年々周囲で農家が減っていることは身をもって実感しています。農業には省力化が必要で、ドローンはそのひとつのツール」と、ドローンを農業の課題解決に役立てたいとの考えを述べた。
説明会では「P4 Multispectral」について「センシングの分野で農業従事者の要望を具体化できた」と指摘。呉代表は「多くのユーザーなどから要望を伺い、協力も頂き、日本の開発チームが商品化した、世界初の完全統合型マルチスペクトル イメージングドローンです」と紹介した。
具体的な特徴として、呉代表は、2メガピクセルの高解像度カメラを6つ搭載していることや、すべてのカメラにグローバルシャッターを採用していて移動中も高精度撮影が可能なこと、農作物の生育状況を総合的に観測できること、RTKによりセンチメートル単位の精密測量に対応していること、3つの日照センサーをRTKアンテナに干渉しないように搭載し、異なる時間帯に観測しても、データを補正することで一貫性の高いデータが取得できること、リアルタイムでデータを手元でみられること、「GS PROアプリケーション」の活用で、飛行プラン策定から画像マップ生成までをひとつのアプリでできることなどを説明した。価格は税込み約85万円で、RTKステーションを組み合わると約120万円だ。
また散布機「AGRAS T16」について、同社農業ドローン推進部の岡田善樹マネージャーが、「効率性、安全性、処理能力で大幅に向上を図った」と説明。具体的には、薬剤タンクが最大16リットルとなったことや、散布幅が最大6.5メートルに広がったこと、8つのスプレーノズルを搭載し最大吐出量が1分あたり4.8リットルとMG‐10月より44%増加したこと、タンクとバッテリーがカセット式になり取り付け、取り外しが簡単になったことなどを説明した。
このほか、機体前方のカメラで正面の障害物を手元で確認できたり、レーダーの刷新で高い精度で地形を認識できるようになり、自動航行中に障害物を検知した場合には、機体自身が障害物を避けた後、本来の飛行経路になめらかに戻る機効を搭載した。岡田マネージャーは「農業ドローンを一貫したソリューションとして考えている。今後次のステージに進んでいきたい」と宣言した。
DJIは、米国ロサンゼルスで開かれた年次カンファレンス「AirWorks 2019」で、精密農業や環境モニタリング調査向けの「P4 Multispectral」のほか、農薬散布機の「AgrasT16」、災害救助プログラムなどを新たに発表した。「P4 Multispectral」は、10月9日に千葉・幕張メッセで開幕する農業の総合展「 第9回農業WEEK」を構成する展示会「第6回 国際次世代農業EXPO」でお披露目される予定だ。
P4 Multispectralは、可視光とブルー、グリーン、レッド、レッドエッジ、近赤外線の帯域のマルチスペクトルカメラアレイを搭載。取得データを組み合わせて、作物や圃場の植生、健康状態や、雑草、害虫被害、土壌の状態などを測定する。太陽放射照度を捉えるスペクトル日照センサーを搭載し、異なる時間帯にデータを収集しても得られた結果の精度を高めることができる。
DJIは「農業ドローン市場は、2019年の12億ドルから、2024年までには48億ドル に成長すると予測され、P4 Multispectralを用いて、農業従事者は収穫量を改善し、コストを削減でき、環境の専門家は管理する土地の植生を簡単にモニタリングできるようにする新しいツールであり、業界の課題解決だけでなく、次世代の農業を担う製品でもあります」と説明している。
カンファレンスではP4 Multispectralのほかにも、企業、事業従事者、行政などが業務に活用することを念頭に置いて、同社が刷新した技術も発表した。 その中には、肥料や農薬などの液体を農作物、果樹園などに噴霧、散布する「Agras T16」、 山火事、ハリケーン、台風、洪水、竜巻、地震などの自然災害対応や復旧作業で、初動対応する警察や消防向けにDJIのドローン技術とサポートを迅速に提供するための災害対応プログラムもあった。
DJIのバイスプレジデント兼アメリカ地域担当マネージャーのMario Rebello氏は、「DJIは、昨年エンタープライズ向けドローン技術の提供に注力してきました。その結果、アメリカの最も洗練された企業や政府機関の一部は、ドローン技術を日常業務に安全かつ確実な方法で配備できるようになりました。今年は、実用的なドローンを農業従事者や農学者、土地管理者に紹介し、より効率的で環境に優しい方法を用いた土地管理の実現を目指しました。また、緊急対応にあたる要員が、業界最高のツールに確実にアクセスをできるようにして、自然災害時に迅速に対応し、命を救うために必要な支援を提供できるようにします」と話している。
またカンファレンスでは、DJI のパートナーやユーザーも活動を報告。FLIRがDJI Matrice 210 専用のマルチガス検出器「MUVE C360」を導入したことを報告したほか、MicrosoftもAzure IoT EdgeやAzure Cloudなどを活用し DJIドローンフリートの安全な運用を合理化する方法を展開したと説明した。このほか、Corteva Agriscience と DroneDeploy、ロサンゼルス消防局、American Petroleum Institute と Marathon Petroleumも事例を発表した。
さらに、マルチスペクトルカメラやLiDARセンサーといった独自のカスタムセンサーをカスタマイズできるDJI X-Port の導入、機体などに損傷が生じた場合の新型補償「Enterprise Shield Renew」を導入し、「Basic」と「Plus」のプランがあることを発表。「Enterprise Shield Plus Renew」では、購入1年以内の損傷、無制限の交換、無償修理サービスを提供する。