乗用eVTOL開発の米Pivotal社(ピヴォタル、旧Opener)は1月9日、米国で1人用パーソナル・エアリアル・ビークル(PAV)、Helix(ヘリクス)の販売を始めた。基本価格は「パッケージ1」で19万ドル(約2800万円)、外装、装備を充実させたパッケージ2が24万ドル(3400万円~)、デジタルフライトパネルなどを備えるフライトデッキを装備し自在な外装を楽しめるパッケージ3が26万ドル(3800万円)などとバリエーションがある。ヘリクスはバッテリーで動く軽量のeVTOL(電動垂直離着陸)機で、米国内で所定の条件下で当局の免許不要で飛ばせるパート103ウルトラライト級にあたる。早ければ6月に納品される。
米PivotalのHelixは、Pivotalの前身Opener社時代に開発していた一人乗りPAV、「BlackFly」をベースに新たなシート素材を採用したほか、モバイル対応の先進的なビュースクリーンを搭載し、キャノピーのアップグレード、カスタム外装など、数々のデザイン改良を取り入れた刷新モデルだ。
8つの固定ローターと2組のタンデム翼を持つシングルシートPAVで、ローターも翼も機体に固定されていてティルトさせることはできない。代わりに機体全体を傾けて浮上から巡行へに切り替えるティルト・クラフト・アーキテクチャを採用している。幅414㎝、長さ408㎝、高さ140㎝。何も積まない状態での重さは約16㎏だ。
3 つあるシステムのいずれかに障害が発生した場合でも、他の 2 つのシステムで障害をカバーするトリプルモジュラー冗長性を備えるほか、短時間で確実に展開するバリスティックパラシュート、緊急時に水上に降りられるためのフロートなど水上機能、確実な着陸を支援する下向きの着陸カメラ、ADS–B(送型自動従属監視、Automatic Dependent Surveillance–Broadcast)も搭載する。
購入できるのは米国の18歳以上で、体重が220ポンド(約100㎏)以下、立っている時の身長が6フィート5インチ(約196㎝)以下、座っている時の身長が3フィート3インチ(99㎝)以下の希望者。米国内の空港から離れた混んでいない場所など定められたエリアで、海抜5,000フィート(約8,000メートル)までの上空で飛べる。米国には、クラスGと呼ばれる航空管制の管理外の日の出から日没までの間であれば飛行可能(Class G airspace over uncongested areas in the daytime)というルールがあり、これに準拠する。個人の短距離移動や空中散歩などのエンターテインメント利用を想定している。
パッケージ1からパッケージ3までのライイナップがあり、基本のパッケージ1(19万ドル)は、ピュアホワイトとカーボンファイバーの外装仕上げで、カスタム航空機マーキング、透明または着色キャノピー、標準フライトデッキ、HD着陸カメラ、レベル1充電器、ビークルカート、包括的なパイロットトレーニング、標準保証が含まれる。
パッケージ2(24万ドル)にはトレーラーとデュアルウィングカートがつく。2つの充電器、4Kランディングカメラ、ADS-B航空管制システム、統合プロポ、延長保証が含まれている。具体的には、グロスホワイトとストライプのカーボンファイバー外装、カスタム航空機マーキング、透明または着色キャノピー、標準フライトデッキ、着陸支援、録画、共有機能付き4Kカメラ、統合された航空またはGMRS無線セット、ADS-BインおよびリモートID航空交通システム、レベル1およびレベル2充電器、カスタムカップリングケーブル、デュアルウィングカート付き輸送トレーラー、ビークルカート、包括的なパイロットトレーニング、保証がセットになる。外装は胴体上部がグロスホワイトで、胴体下部にストライプ状のブラックカーボンファイバーを組み合わせる。
パッケージ3(26万ドル)ではスタイルのデザイン性を高めたことが特徴だ。グロスホワイトとカーボンファイバーで仕上げ、さらにティール、コッパー、シルバーのアクセントカラーを選べる。また、外装をフルカスタムすることも可能だ。このほかの具体的な内容は、カスタム航空機マーキング、透明または着色キャノピー、オプションのキャノピーセラミックトップサイドコーティング、プレミアムフライトデッキ、着陸支援、録画、共有機能付き4Kカメラ、ビーコンライト、統合型航空無線またはGMRS無線セット、ADS-Bイン、ADS-Bアウト、リモートID航空交通システム、統合型緊急探知機(ELT)、レベル1およびレベル2充電器、カスタム・カップリング・ケーブル、デュアルウィングカート付き輸送トレーラー、ビークルカート、総合操縦訓練、ゲスト向けの包括的パイロット・トレーニング、保証などとなっている。
PAVとしては米LIFT社のヘクサ(HEXA)が2023年3月、大阪市の大阪城公園でGMOインターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿グループ代表が搭乗した飛行が披露されている。日本では一人乗り、個人用途のエアモビリティ市場や制度整備は着手できていないが、2025年の大阪・関西万博で旅客用としてのエアモビリティ(いわゆる空飛ぶクルマ)の運用が現実味を帯びる中、一人乗りの手軽なエアモビリティ、PAVの注目度は高まりそうだ。
Helixの公式サイト
乗用eVTOL開発の米ピヴォタル社(Pivotal、旧Opener)は、2024年1月9日をめどに米国で1人用パーソナル・エアリアル・ビークル(PAV)、ヘリクス(Helix)を販売すると発表した。ヘリクスの基本価格は19万ドル(約2850万円)でオプションやアクセサリーは今後、追加発表する。ヘリクスはバッテリーで動く軽量のeVTOL(電動垂直離着陸)機で、米国のルールで決められた条件下なら免許不要で飛ばせる。機体全体を傾ける設計が特徴的で緊急時に着水できる。PAVとしては米LIFT社のヘクサ(HEXA)が今年3月、大阪市の大阪城公園でGMOインターネットグループ株式会社(東京)の熊谷正寿グループ代表が搭乗した飛行を日本で披露しており、日本のPAV市場創出も期待される。
ピヴォタル社は、ヘリクスの発表にあわせ、従来の社名Openerの変更も発表した。ケン・カークリン最高経営責任者(CEO)は「Pivotalの名は飛行の力で移動を変えるという私たちの使命を反映している」と話している。
ピヴォタルが発表したヘリクスは、8つの固定ローターと2組のタンデム翼を持つシングルシートPAVのeVTOLだ。幅414㎝、長さ408㎝、高さ140㎝で、何も積まない状態での重さは約16㎏。米国の航空当局である連邦航空局(FAA)の基準では「パート103ウルトラライト」に分類される。ローターも翼も機体に固定されていてティルトさせることはできない。代わりに機体全体を傾けて浮上から巡行へに切り替えるティルト・クラフト・アーキテクチャを採用している。操縦士は体重約100㎏、身長約2mまでのパイロットが搭乗できる。飛行時の巡航速度は最大 55ノット(63 mph、時速約101㎞)だ。
ティルト・クラフト・アーキテクチャはピヴォタル社の機体の特徴で、Opener時代の主力機として知られる1人用PAV機、BlackFly(得意客向けに納入)からの設計思想を、量産機体であるヘリクスでも踏襲した。プラットフォームは2011年の初飛行以来、12年間改良を積み重ね現在は第五世代にあたる。機体にランディングギアはなく機体で着地する。機体にフロートを備えているため緊急時に着水ができる。限定的ではあるが水陸両用機だ。
ティルト・クラフト・アーキテクチャに加えシンプルなユーザー・インターフェースで操作性から複雑さを取り除いたほか、システムや機器の一部が故障しても、予備系統に切り替えるなど機能を保つフォールト・トレランスや、重のモジュール式冗長性を持たせ、安全性を追求した。
飛行は米国内のクラスGと呼ばれる管制されていないエリアでの日の出から日没までの間で可能(Class G airspace over uncongested areas in the daytime)で、個人の短距離移動や空中散歩などのエンターテインメント利用を想定している。
発売は同社公式サイトから。同社は45,000ドルの手付金を受け取った後、出荷予定日を設定する。購入者はその際、カリフォルニア州パロアルトにあるカスタマー・エクスペリエンス・センターで飛行のためのトレーニングを予約する。出荷は2024年6月10日を予定している。米国以外での購入についてのアナウンスはない。
日本国内でのヘリクスのような機体を飛ばすためのルールは現存していない。事例としては2023年3月15日に、大阪市の大阪城公園で同じパート103に該当する米LIFT社のヘクサ(HEXA)を実験として飛行させたことがある。HEXAに搭乗したGMOインターネットグループの熊谷正寿グループ代表は5月にドローントリビューンが行ったインタビューで「飛行そのものでは技術的には全然、問題のないレベルです。あとは規制と市民感情。規制は日本では大阪・関西万博をきっかけにずいぶん整備が進んでいますし、これからも進むと思います」と話しており、PAVの国内市場創出について、日本でもルールの検討と市民感情の期待感醸成が期待される。
GMO熊谷氏インタビューはこちら:https://dronetribune.jp/articles/22494/
PIVOTALの公式サイトはこちら:https://pivotal.aero