ラスベガスで開催された世界最大のテクノロジートレードショードCES2020で、ブルーイノベーション株式会社(東京)は、ドローンの屋内飛行をより高い精度で実現させる「BI AMY2(ビーアイエイミー・ツー)」の発売と、京セラとの移動通信中継局の共同開発方針を1月9日に発表した。
同社が発売を発表したBI AMY2は、工場や倉庫など屋内でのドローンの飛行を精密に遂行させる同社のプラットフォーム「BI AMY」の刷新版。ドローン本体と運用に必要なソフトウェアなどを一体化させたシステムで、ドローンの屋内業務に不可欠な、自分の居場所を正確に割り出す自己位置推定機能を飛躍的に向上させた。
自己位置推定機能の向上に採用されたのが、複数のセンサーを接続させる「マルチセンサーポジショニング」で、この技術の搭載により「世界トップレベル」(同社)の誤差1センチの精度を実現したという。
最適なルートを自動で設定する「セルフナビゲーション」を搭載したほか、同社の基幹技術である他のロボットやドローンを連携して制御、管理し、ひとつの判断で最終的なミッションをこなす「One Command Full Mission」をこなすクラウドシステム「Blue Earth Platform」(BEP)の一環で運用されることも特徴だ。
また京セラと共同開発をする移動通信中継局は、災害現場など携帯電話の電波が届かないエリアで、ドローンの飛行で携帯電話の通信を可能にする技術。ドローン内の通信ユニットが自動で通信網を形成する。ブルーイノベーションがサーバー対応やインタフェースの構築を担い、京セラが通信ユニットの開発を担う。CESではブルーイノベーションブースで参考出品。今後の法令改正などをふまえ2021年度中の商用化を目指すという。
ブルーイノベーションはCES2020で日本のドローンスタートアップとして初めて、単独でブースを出展した。
ドローンサービス開発を手掛ける株式会社ブルーイノベーション(東京)は6月12日、設定した飛行ルートとの実際の位置との誤差がプラスマイナス1センチという高精度な自己位置推定技術を搭載したインドアプラットフォーム「AMY(エイミー)」を開発、提供を開始したと発表した。拡張性の高さが特徴で、倉庫、工場、商業施設など幅広い屋内のドローンのニーズに、最小限のカスタマイズで適用できる。マーカーをはり、センサーで読み取ることで「おそらくほかにない高い精度」(同社)を実現した。すでに検品や動物の監視などの引き合いがあるという。
ブルーイノベーションが開発したAMYは、ドローン本体、サーバー、アプリで構成。そのほかマーカーが必要になる。GPS(全地球測位システム)が使いにくい屋内で自動飛行や手動飛行が可能だ。マーカーを天井か床にはり付ければ、ドローン本体に搭載した天井向き、床向きのカメラのいずれかがマーカーをとらえ、利用者の用途に応じて飛行ルートを設定できる。飛行ルートと実際のドローンが認識した位置とのずれはプラスマイナス1センチで、同社はこの機能をSmart Flightと呼び、第一の特徴としている。
「誰でも使えること」を重視したSmart Setupが2つめの特徴だ。マーカーの設置は、飛行予定場所の天井の高さなどあらかじめ決められた環境に応じて定められた規則通りにマーカーをはりつければ準備は完了する。また飛行エリアや飛行ルートの設定はアプリで可能で、スマホゲームの感覚で専門的な知識がなくても感覚的にできるよう工夫を重ねた。自動飛行をさせたいタイミングは、日付、曜日、時間などいくつかの条件設定が可能。エラーが発生した場合には飛行中でも、飛行前でも緊急停止する。
周辺の様子をとらえる可視カメラは機体前面に向いて取り付けられていて、とらえた映像はリアルタイムで確認が可能。位置確認ができ、フライトログの取得もできるため、映像と位置情報の同時確認が可能だ。これをSmart Monitoringと呼び、3つめの特徴と位置づけている。撮影動画は機体が着陸すると自動でサーバーにアップロードする。
発表会の中で同社の熊田貴之社長は「もともとは災害原因の究明のための技術開発をしてきた会社。海岸線のモニタリングをする中で、発災後の写真を入手する方法がなく、その当時はたこを飛ばしたりしていた。その中でドローンに出会い、そこから可能性の大きなドローンのサービスに力を入れるようになった。屋内開発は特に力をいれてきた領域で、屋内の警備、下水管の点検などを開発してきた。この過程で、倉庫や商業施設、工場設備の点検などさまざまな要望を聞くようになり、そのソリューションを提供することを目指して今回のAMYを開発した」と経緯を説明した。
AMY開発の指揮を執った熊田雅之専務は、開発にあたって「こだわり抜いたポイント」を「高精度化」「軽量化」「安価に導入可能」「わかりやすいUI」「親近感わくデザイン」と紹介。「安価」については、環境次第で価格はかわるものの、「初期導入費用で100万円程度」と明かし、「使ってもらわないと意味がないので」と低めに設定した理由を説明した。またわかりやすさについては「どんな人でも迷わない」を合言葉に開発に着手。画面をみれば、次に何をすればいいのかがわかるようなシンプルなUIにした。「ドローンやITを熟知している人が使うわけではないことを知っているので、そういう人にも苦手意識を持たせたくなかった」というのが理由だ。機体カバーの丸みをおびたデザインも、目にする人に親しみをもってもらうための工夫だ。
発表会では実演も実施。アプリで簡単に飛行ルートを設定できる様子をディスプレーに投影し、その場で1分後に離陸するようセット。時間になると自動的にドローンが飛び、あらかじめセットした経路を、セットした向きで飛行した。着陸後には、撮影した画像と、フライトログとの照合ができる様子も示した。この日は会見場の天井にマーカーが設定してあって、「マーカーの大きさや設置する感覚は一定の目安されているので、それにそって設置すれば、環境の異なるところでも同じような飛行が可能」という。
■AMY(エイミー)の特徴
・機体重量:910グラム(カバーは別。実験機では機体+カバーで1250グラム)
・バッテリー重量:450グラム
・フレームサイズ:450ミリ×430ミリ×600ミリ
・モーター間対角線:600ミリ
・推奨飛行速度:0.3メートル/秒
・飛行時間:10分
・推奨飛行範囲:飛行幅1.5メートル以上、飛行高度2.5メートル以上
・アプリケーション対応OS:Android7.0以上
ブルーイノベーションHP:https://www.blue-i.co.jp/news/2078/