森林管理や林業を目指す学生や研究者、関連事業者を対象に、この分野で活用拡大が期待されるドローンの見学会が7月12日、君津市(千葉県)の多目的施設、コードベースキミツで開催された。主催したのは森林利用学会で、呼びかけに応じた6事業者が、それぞれ運用、開発するドローンや技術を持ち寄り、森林管理や林業での活用実績、方法などを紹介した。見学会は当初、14万㎡のフライトスペースを持つ大規模ドローンフィールドDDFF(君津市)が予定されていたが、悪天候が予想されたため直前に、体育館を備える廃校利用施設のコードベースキミツに変更された。それでも関心を持つ数十人が足を運び機体を見学し、説明に耳を傾けた。DJIの物流機FlyCart30は保護等級の高さをいかし、雨の中で屋外飛行を披露した。
見学会のテーマは「最新のドローンを⾒て・触って・知ろう」。株式会社システムファイブ(東京)はDJIのDJIの物流機FlyCart30を紹介。IP55の保護等級の高さをいかして、屋外で雨の中を荷物を吊り下げて飛行する様子を披露した。GNSS技術のジオサーフ株式会社(東京)は米AgEagle Aerial Systems(アグイーグル・エアリアル・システムズ)傘下のスイスsenseFly社の固定翼機eBee Xを展示し、屋外飛行のかわりに、モニター内で模擬飛行させ、機体の特性を紹介した。インフラ点検の株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW、東京)は狭小空間や屋内飛行を得意とするSkydioJ2を体育館内で実演し、GPSに頼らずに飛行する様子や、障害物を敏感に察知する様子、目的地に正確に着陸する様子を紹介した。
ソニーマーケティング株式会社(東京)はソニーのフルサイズデジタル一眼カメラ、α7RVを搭載できる独自開発ドローンAirpeakS1(エアピークエスワン)を展示し、撮影対象の構造物を弧を描くように周回して撮影できるシステムや一度撮影した経路を再現できる仕組みを紹介し、有限会社森山環境科学研究所(名古屋市<愛知県>)はスイスWingtra(ウィントラ)社のテールシッター型VTOL機WingtraOneや微粒子補修装置を搭載した米Freefly Systems社の中型マルチコプターASTROなどを紹介し、ASTROについては飛行を実演した。半導体製造装置エンジニアリング技術の蓄積が厚いKMT株式会社(諫早市<長崎県>)は中国・深圳発のドローンメーカー、AUTEL ROBOTICSのEVO Maxシリーズの2機連携操作や暗闇での認識を実演したり仏PARROTのANAFI Aiを紹介したりした。
また当初開催会場となる予定だった、DDFFを運営するDアカデミー株式会社の依田健一代表も固定翼機を持参してかけつけ、会場体育館でデモ飛行を披露して賑わいに花を添えた。また森林情報を解析するソフトウェアDF scannerの開発で知られるDeepForest Technologies株式会社(京都市)もドローンの映像から針葉樹の樹種を識別する様子を紹介し、来場者の関心を引いた。
見学会では展示会の開始前にDアカデミーの依田健一代表がドローンの近況を概観した。その中でドローンの飛行について局面がマルチコプターの腕前が勝負所だった時代から、広域に飛べる固定翼の存在感が高まっている時代に変化していることについて言及した。
この中で依田氏は「今後、広域測量や物流などの存在感が高まると思います。いわゆるドローンのフェーズがかわってきます。私は小学生のころからラジコンを飛ばしてきたラジコンおじさんですが、こうしたテクニカルの腕前がもてはやされる時代から、これからは自動航行の時代に入ります。特に森林管理事業などにも関係する広域測量でドローンを使う場合は、ほぼ目視外飛行。パイロットにも、技量で飛ばすテクニカルの要素から、安全なプラン設計、飛行判断、緊急時対応への目配りなどCRM(ここではCrew Resource Managementのこと)を含むノンテクニカルの要素へと、求められる要素が変わってまいります。通信途絶時の対応やバッテリー切れのさいの対応など、予めチーム全体で対応や方針を決めて共有することを促し管理する役割が求められることになります。ドローン物流もいよいよ実装段階です。飛行許可の取り方や、CRMを身に付けなければいけません。われわれもその講習を今後、展開していく方針です」と自社の取り組みをまじえながら、局面の変化を伝えた。
CRMについては、以前から必要性が一部で強調されながら普及には時間がかかっている。現状では株式会社ダイヤサービス(千葉市)が展開するドローンスクールDOSAでCRMの講習に力を入れている。今後、パイロットにかたよりがちな運航事業の業務をチームで教習する取り組みの一環としてCRMの必要性の浸透が求められる。なおDOSAの講習では負傷者救護も必修化している。
会場となったコードベースキミツは、君津市と株式会社テラ(鎌倉市)が、廃校となった旧松丘小学校、旧松丘中学校の一部施設の再利用設備で、新時代の技能獲得に向けたコラボレーションの基地として2023年5月に誕生した。KDDIスマートドローン株式会社(東京)が、ドローンスクール「KDDIスマートドローンアカデミー君津校」を設置して、国家資格取得向けの講習やSkydio機の運用人材の育成などを手掛けているなど、施設としてドローンの活用を想定している。グラウンドは、広大なDDFFには及ばないものの約2500㎡あり(DDFFは14万㎡)、旧校舎、旧体育館がそろうなど多彩な活動に対応が可能だ。現在、コードベースキミツとしてして活用できる範囲を拡充する方針で、地域のドローン技能の拠点としての活動の拡大が期待される。
このコードベースキミツはJR久留里線の上総松丘駅から徒歩11分の場所にある。東京駅を起点に向かうなら木更津駅で久留里線に乗り換えることになる。移動時間で比べると、自動車移動のほうが1時間以上効率的だが、少なからぬ鉄道愛好家はこの駅に興味を持っている。理由は①そもそも本数が少ない②JR東日本随一の赤字区間にある③非電化でディーゼルカーが走る④車窓が絵になる、などがある。
とりわけ赤字路線はしばしば話題にのぼる。JR東日本による昨年(2023年)11月の発表によると、上総松丘駅のある線区(久留里~上総亀山)は、100円の運輸収入を計上するのに要する営業費用(営業係数)が1万6821円と、JR東日本管内で最大の赤字だ。同じJR久留里線内での、2駅手前の久留里駅までの営業係数は1153円。これでも赤字路線だが久留里―上総亀山間の大赤字はさらに際立つ。
起点となる木更津発の列車は平日1日12本。このうち6割の7本が途中の久留里止まりで、その先にある上総松丘まで乗り換えなしに行く本数は5本にとどまる。このため鉄道愛好家にとって久留里―上総亀山間の線区はいわゆるレア度が高い。また久留里でも終点の上総亀山でもなく目的地になりにくい上総松丘駅は隣の話題の線区にあり、のひとつで駅であり、好奇心がかきたてられる。
コードベースキミツの取材日は午前8時26分に上総松丘駅に到着した。復路の出発は14時34分までなく、レア度を確認した。さらにこの日は雨に見舞われ、上総亀山ー久留里間で運転を見合わせた、タクシーでの代行輸送が行わることになった。無人駅に備えられた無線で「待合室でお待ちください」と係員の肉声で放送されたが、それを聞いていた利用者はほかにはいなかった。やがて上総松丘駅に本来、列車が入線する時刻にあわせるようにJR東日本の社有車と、それに先導された民間タクシーがとまり、「こちらにお乗りください」と案内された。タクシーに乗り、途中平山駅で乗客がいないことを確認したうえで、久留里駅まで連れて行ってもらった。代行輸送なのでタクシー料金が別途かかることはなかった。所要時間は予定していた鉄道の時間と大差なかった。久留里線をめぐっては沿線住民と自治体、JRなどによる協議が続いている。昨年(2023年)12月の協議では、地域住民に選ばれていないと受け取られるアンケート結果が公表され、存続を求める側から、結果を要約したものでなくすべてを公開するよう意見が出たという。協議次第ではさらに話題の路線となる。
コードベースキミツで講習を受けたり、展示会をしたり、セミナーを開いたりするなどして訪問する機会があった場合には、最寄り駅である小さな無人駅、上総松丘に立ち寄っておくのも関心のある向きの選択肢のひとつかもしれない。
米シカゴで開催された航空宇宙産業の大規模展示会、XPONENTIAL2019で現地視察したトライポッドワークス代表、佐々木賢一さんのレポートは今回が完結編です。VTOLの存在感がどれだけ大きかったかを感じ取ることができる臨場感たっぷりの渾身のレポートをどうぞ。あ、佐々木さんが撮影、編集したシカゴの街のスペシャル動画もあります!(DroneTribune 村山繁)
今年は数々のVTOL機が展示されていました
前回、DAY2でレポートをしたBell NEXUSのほかにも、今年はかなり多くのVTOL(垂直離発着)機が展示されていました。
スイスのベンチャーAutoFlight社のWhite Shark V40。
ペイロード8Kg含む総重量45Kg、最高速140Km/h、航続距離1300Km、放送用のCOFDM技術を利用して200Kmのフライトコントロールと1080p/30pの映像の伝送ができるとのことです。
ボーイング社のCargo Air Vehicleのモックアップ。
ペイロード500ポンド(227Kg)!
6つのデュアルローターシステムと12のプロペラを備え、長さ17.5feet(5.3m)、幅20feet(6.1m)、高さ5feet(1.5m)、総重量は500Kgと巨大な機体で都市間の物流を実現すべく開発が進んでいるようです。
同じくボーイング社のPassenger Air Vehicleのモックアップ。
このプロトタイプの今年1月に行われた初飛行テスト様子を収めた動画があります。
https://www.boeing.com/features/2019/01/pav-first-flight-01-19.page
アメリカのベンチャーELECTRAFLY社のPERSONAL FLIGHT VEHICLES。
4つのプロペラと小型ジェットタービンエンジンのハイブリッド機なんですが、スターウォーズ好きの私にはスピーダー・バイクが実現するのか!とワクワクしてしまいます。
これで森の中をハイスピードで飛び、「エピソード6/ジェダイの帰還」ごっこをしたいと思うのは私だけでは無いでしょう(笑)
NASAのUrban Air Mobilityのテスト機、「Langley Aerodrome #8」。
宅配車や6-8人乗りのコミュニティバス的な運用を目指しているとのことです。
NASAのラングレー研究所と言えばNASA最古の研究所で、航空機や宇宙探査機の研究で有名ですね。
BellとNASAが共同で開発している輸送機。
30Kgの積載量と160Km/hの飛行速度。
離発着時は縦に、飛行時は横になって飛び、通称Xwingと呼ばれているようなのですが、Xwingと言えばこれまたスターウォーズですね(笑)
Northwest UAVのVTOL機。
なんだか複雑な機体ですが、UAVエンジンのメーカーなのでとにかくモーター部を強調するデザインになっているようです。
最近、DJI MAVICによく似た小型機EVOの販売を開始したアメリカAUTEL RoboticsのVTOL機。
THREOD SYSTEMSは軍や警察、国境警備向けのSTREAM C VTOL UASを展示。
2000m以上の高度を最高速130Km/hで5時間以上の飛行が可能とのこと。
30倍ズームカメラ、赤外線カメラ、レーザーレンジファインダー搭載で100Km以上の距離で通信できるようです。
アメリカPAE ISRのResolute Eagle。
このメーカーも米国政府機関、NATOなどが顧客で、情報監視や偵察が主な役割とのことで、最高高度4500m、飛行時間12時間が可能なようです。
KARI(韓国航空宇宙研究院)のVTOLプロトタイプ。
名前の通り、日本で言うところのJAXAに当たる研究機関で、宇宙開発に関する研究開発と並んで、UAVの研究にも力を入れているようです。
以上のように、今年のXPONENTIALはVTOL機が展示の中心でした。
離発着に滑走路が要らず、航続距離や速度やペイロードが稼げて、何より長時間の飛行が可能なVTOL。
軍事を含む産業用のUAVとして、ヒトやモノを運ぶFlying VehicleとしてのVTOLは、これからドローンの主流の一つになって行く予感がしました。
3回に分けてお届けしたXPONENTIAL 2019のレポートは如何でしたでしょうか。
まだまだお伝えしたい内容もあるのですが、それはまたの機会とさせて頂きます。
最後に、今回のシカゴにはMAVIC2 ProとOSMO Pocketを持って行き、シカゴの街を撮ってきましたので是非ご覧下さい。
私の勝手なシカゴのイメージは、新旧の建物が入り混じった歴史あるミシガン湖畔の街で、街中を走る鉄道と摩天楼、映画でギャングまたは警察から主人公が逃げる時に使う古い建物の非常階段と暗く狭い路地、そこから車で逃げる時のカーチェイスは鉄道のガード下の道路でって感じでしたので、そのイメージに合う場所をチョイスして撮影しています(笑)
なお、渡米前にFAA(連邦航空局)に機体を登録、飛行場所はClass G空域(届出無しで飛行して良いエリア)かつNo Droneになっていないところを120m以下で飛行、つまりUSの法令を遵守して撮影しています。
来年のXPONENTIALはボストン。
2020年5月4〜7日です!(完)