昨年末に破産を申請したドイツのAAMメーカー、ヴォロコプターはJCAB(日本の国交省航空局)に申請している型式認証の申請について取り下げない方針だ。同社がDroneTribuneの取材に回答した。これまでに2年以上当局と良好な関係を構築しており、「今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もない」という。テスト飛行など必要な作業を続けながら、立て直しに注力し、弁護士をまじえて立て直しの方向を模索するとともに、昨年末から投資家とも接触している。
ヴォロコプターはDroneTribuneの質問に回答し、国交省航空局が申請を受理して手続きを進めている同社の2人乗りeVTOL型AAM「VoloCity(ヴォロシティ)」の型式認証(TC)取得について、申請を取り下げない方針を明確にした。航空局も受理した申請について手続きを継続する姿勢を示しており、当面は従来通り、TC取得手続きが進行む。
ヴォロコプターのTC申請については、国土交通省航空局(JCAB)、欧州航空安全機関(EASA)と日欧それぞれの航空当局が受理し、これに基づいて手続きを進めている。当局が受理したのは2023年2月21日だが、ヴォロコプターが申請したのはその前年(2022年)の末だ。これをふまえ、ヴォロコプターは「2年以上EASA&JCABと良好な関係を築いているうえで、技術説明、テスト飛行、書類の整理などを行なっております。昨年、大阪・関西万博での飛行が商用運航からデモ飛行に切り替わったことに伴い(TC取得を)急ぐ必要性が薄まり、プロセスを一時保留しておりますが、今までの作業が無駄になることは特になく、申請を取り下げる予定もありません」と話している。
一方、再建にも注力する。現時点で具体策はまとまっていない中、もともとコスト管理を徹底して対応を進めており、立て直す箇所の特定を弁護士とともにすすめている。「他社と比較し認証費用を半分以下に抑えている」ケースもある中で、EASA監査の75%を完了していて、当面は投資家との連絡も図りながら再建策構築に注力する方針だ。
ヴォロコプターがTC取得を目指しているヴォロシティは2人乗りのeVTOL型AAMで、18 個の電動ローターを搭載し35㎞の航続飛行を想定している。海外製AAMの中では日本でなじみの深い機体のひとつで、2023年3月には、実物大モデルをJR大阪駅に隣接する大規模複合施設「グランフロント大阪」で公開され、居合わせた来場者や通行人の搭乗体験を受け入れていた。もともと、大阪・関西万博で飛行を披露する機体に含まれていたが、2024年9月に飛行を担う4グループのひとつ、日本航空、住友商事グループが、運用機体をヴォロコプターのヴォロシティから、米国 アーチャー社(Archer Aviation, Inc. )のMidnight(ミッドナイト)に変更することが公表された。なお、運用機体変更のタイミングで、万博での運航チームそのものも日本航空、住友商事から両者が出資する株式会社Soracle(ソラクル、東京)に引き継がれている。
次世代エアモビリティ開発の独ヴォロコプター社は9月3日、経営体制の刷新を実施した。同社のアドバイザリーボード(諮問委員会)は、アドバイザリーボードのチェアマンに、前ダイムラーCEOのディーター・ツェッチェ(Dieter Zetsche)博士を任命した。またジーリーテクノロジーズ(Geely Technology Group=吉利科技集団)CEOのジーハオ・シュウ(Zhihao Xu)博士が新たにアドバイザリーボードのメンバーに加わった。ヴォロコプターの経営を2年間率いてきたダーク・ホーク(Dirk Hoke)CEOは本人の申し出により2025年2月に退任する。ホーク氏の後任CEOは今後、公表される見通しだ。
ディーター・ツェッチェ新チェアマンは任命を受け、ただちに就任した。ツェッチェ氏は就任にあたり「ヴォロコプター社とともに都市交通革命構築を支え、ドイツが21世紀もモビリティの先進地であり続けることに貢献することを楽しみにしています」とコメントした。ステファン・クローク(Stefan Klocke)前チェアマンや、マジド・ムフティ氏(NEOM Investment FundのCEO)は引き続きアドバイザリーボードメンバーにとどまる。
新たなボードメンバーとなったジーハオ・シュウ氏がCEOを務めるジーリーテクノロジーズは、中国の自動車製造大手、吉利汽車や、スウェーデンのボルボ・カーズ、ドイツのメルセデス・ベンツ・グループを傘下に持つ持株会社、ジーリーホールディンググループ(Zhejiang Geely Holding Group=浙江吉利控股集団有限公司)のグループ会社で、ダイムラーとともにヴォロコプターの株主でもある。「未来のモビリティは、道路上と空中とで生じます。相乗効果は明らかで、だからこそ、私の豊富な経験を提供できることを嬉しく思っています」とコメントしている。
ヴォロコプターは8月、オリンピック開催中のパリで、都市部での実践的な運用をためす運用ヴァリデーションフェーズの検証活動キャンペーンを終え、重要な段階を乗り越えた。パリで飛行した機体は「2X」で、今後、大阪万博での飛行が期待されるエアタクシー用「VoloCity」の開発を完了させ、欧州連合の航空当局、EASA(欧州連合航空安全機関)の認可取得を目指すことになる。
2年間経営を率いてきたホークCEOは「私のキャリアの中でこれほど短期間にダイナミックな会社の発展を経験したことはありません」「素晴らしい従業員を抱える偉大な新興企業を率いることができたのは光栄なことでした。2025年2月末までは、EASA認証の取得に全精力を注ぎ、ヴォロコプターの将来に不可欠なビルディングブロックを作り上げるつもりです」などと話している。本人が退任を申し入れ、アドバイザリーボードが受け入れた。
同社の発表はこちら:https://www.volocopter.com/en/newsroom/volocopter-to-undertake-leadership-changes