一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は4月28日、ドローンなど次世代移動体や関連技術の研究論文集『Technical Journal of Advanced Mobility』『(次世代移動体技術誌)』を創刊した。創刊号には動画から3D動画を再構成する技術や、コントロール・モーメント・ジャイロによる機体制御の研究、電波、欧州のUTMの取り組みなど10本の論文が掲載された。執筆陣には大学、企業、研究機関などの研究者ら総勢20人が名を連ねた。JUIDAは次世代移動体の研究集積の場として、研究成果の活用や、研究者の参加、交流を促す。
テクニカルジャーナルはドローンなど移動体に関する研究成果を集積する場として、JUIDAが温めていた企画だ。3月に開催を予定していたドローンの大規模展示会&カンファレンス「JapanDrone2020」での公表を画策していたが、3月開催ができなくなったことから仕様を変更し、オンラインジャーナルとして創刊した。閲覧は無料で、JUIDAのサイトからダウンロードできる。(ダウンロードはこちら)
創刊号には、学習が必要とされない、動画から3D動画像を再構成する「動的視差法」を提案した『単眼カメラ搭載移動体からの撮影動画シーンの 3 次元動画像による再構成』(会津大学コンピュータ理工学部の岡嶐一氏、奥山祐市氏、橋本康弘氏、畠圭佑氏)や、欧州の「シングルヨーロピアンスカイ航空管制研究共同実施機構」(SESAR: The Single European Sky ATM Research Joint Undertaking)を軸に欧州の運航管理の取り組みを概観した東京大学の中村裕子氏による『欧州のドローン運行管理システム研究開発動向から』、近畿大学産業理工学部の鈴木信雄氏、株式会社国際電気通信基礎技術研究所の吉岡達哉氏、株式会社 KDDI総合研究所の松野宏己氏、 東北学院大学工学部の鈴木利則氏による『ドローン運用のための上空電波環境の推定』などが紹介されている。
このほか、
・『CMG(コントロール・モーメント・ジャイロ)による ドローンの姿勢制御』(早稲田大学理工学術院総合研究所大内茂人氏ら5人)
・『3次元計測動向・ドローン登場で加速』(合同会社スパーポイントリサーチの河村幸二氏)
・『DRF 法(変形拘束下高負荷プレス)による 高強度マグネシウム合金棒の開発』 (豊橋技術科学大学の三浦博己氏)
・『アーバンエアモビリティ〜身近な空の新たな活用に向けて〜』(法政大学理工学部機械工学科の御法川学氏ら3人)
・『太陽光エネルギーを利用した ソーラープレーンの技術課題』(公立諏訪東京理科大学工学部の雷忠氏)
・『永久磁石ハルバッハ配列界磁の特徴とドローン用モータへの応用』(工学院大学工学部電気システム工学科の森下明平氏)
・『新機構・鏡像配置 XY 分離クランク機構を用いた 極低振動ガソリンエンジンの開発』(Zメカニズム技研株式会社の吉澤匠氏ら4人)
が収録されている。
編集長を務めるJUIDAの岩田拡也常務理事は「異分野技術交流の場の中核として,その範囲の広範さと技術の深さを併せ持つ技術集積媒体となるべく創刊されました。今後ドローンは、更に小型高機能ネットワーク型に発展したり,大型化人搭乗型に発展したり様々な進化を遂げていくことでしょう。また、水中ドローンが出てきたように,宇宙ドローンなど多様なドローンとその活用法が現れたり,その運航管理方法や規格,ルールが生まれてくる可能性に満ちています。本誌は,多岐にわたるドローン技術の大海を航海するドローンにか かわる全ての皆様にとりまして,進むべき道を指し示す羅針盤となることと思います」と述べている。
JUIDAの鈴木真理事長は、高度なドローンの研究開発活動について「さらに高きを目指して頂けるように、Technical Journal の創刊に踏み切りました。次世代移動体の研究開発成果をアカデミアだけでなく産業界,研究機関,行政機関などすべての分野,地域から発表して頂き,切磋琢磨して頂くことでこの分野の発展に貢献できればと思っております」と期待を寄せている。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
公式アカウントが公開した動画はこちら
AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
ACSLの発表はこちら。