株式会社ORSO、ブルーイノベーション株式会社、一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)が、ドローンでプログラミングを学ぶスクール向けカリキュラム、「ドロミング ラボ」の普及を本格化させる。カリキュラムの提供を希望するスクールなどを全国から募り、10月から開校支援を展開する。ドロミングラボは、ドローンをプログラミング飛行させる体験を通して、創造力や論理的思考を育成する、小、中、高校生を対象とした教育カリキュラム。JUIDAが監修し、ブルーイノベーションとORSOが共同開発した。
「ドロミング ラボ」の事業概要は専用サイトで確認できる。事業展開の説明会、講師要請講座もオンラインで開催される。講師養成講座ではGoogleフォームでテストが行われる。また、千葉・幕張メッセで開催されるドローンの大規模展示会、Japan Drone 2020では、JUIDAが出展するブースでドロミングラボについて案内する。当面はJUIDA認定スクールを中心に案内する。
「ドロミング ラボ」専用サイトはこちら https://www.dromming.jp/
「ドロミング ラボ」普及本格化の背景にあるのは、急速な技術革新とグローバル化だ。今後、これまでの経験を当てはめても解決できない課題が急増することが確実視される中、教育では、従来の与えられた課題に決められたルールをあてはめて解決する方法から、自分自身で課題を発見し、解決に導く課題解決型学習や、デジタル機器を使いこなすITリテラシー向上の必要性が指摘されている。一方で「理科離れ」が顕著で、このままではIT人材不足が拡大することが確実視されている。このため3社は共同でドローンやプログラミングに楽しみながら取り組めるカリキュラムを開発、10~20年後の日本のIT人材を育成する。
「ドロミング ラボ」についてORSOは「これから社会に広く普及するであろうドローンとプログラミングが学べる、未来を見据えた新しいスタイルの教室です。産業活用が進むドローンを題材にすることで、教室で学んだことが、どう社会で活かされているのかを子供たちが自身の目で確かめることができ、学校教育でも重要視されている『社会とつながる学び』を提供しています」としている。
また「空を飛ぶドローンは、子供の興味・関心を集め、楽しい体験を通して多くの学びを子供たちに与えます」と、興味、関心を育む側面でのアプローチを重視する。好きなこと、楽しいことを持ちにくいと言われる子供たちの感性を刺激することで、子供たちの社会参加意欲、事項肯定感の引き上げにも寄与するとみられる。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は10月28日、JUIDA認定スクールが一堂に集まり交流を深める「認定スクールフェスタ」を開催し、8月1日時点で1万人を突破した会員数が、10月1日現在で10725人にまで拡大したことを報告した。また認定スクールの新規事業につなげる取り組みとして、小中学生向けのドローン操縦とプログラミングのカリキュラムと、インフラ点検のカリキュラムを年内に展開する方針を表明した。このほか革新的な活動をしたスクールを表彰し、山梨県の小1女児行方不明事件の捜査に協力したスクールに感謝状を授与した。
フェスタでは、地域との密接な関係を土台とした事業を創出するなど新たな取り組みをしたアイオス・無人航空機スクール(三重県四日市市)、豊臣ドローンスペシャリスト育成スクール(静岡市)、ドローン エンジニア ラボラトリー(茨城県高萩市)の3校を表彰。3校の代表者が登壇し、取り組みを紹介した。
このうち「ドローン エンジニア ラボラトリー」は、高萩市の伝統ある小中学校が廃校になったことをうけて跡地を市の委託もあって改装、再生し、スクールを運営するほか、キャンプイベントとあわせた取り組みを展開。この様子は民放の経済情報番組でも取り上げられた。フェスタ前日にはドローンサッカーの大会も開催し、地域の盛り上げに貢献している。
また山梨県道志村で起きた小学生女児がキャンプ場で行方不明になった事件では、自衛隊からの連絡をうけたJUIDAの捜査協力要請に対し、MIRISE DRONE SCHOOL(神奈川県小田原市)、秋葉原ドローンスクール(東京)、Dアカデミー関東埼玉校(埼玉県川越市)が協力。3校に感謝状が授与された。
またJUIDAの今後の取り組みについて、事務局長の熊田知之理事が、従来の「市場創造」、「教育事業」、「安全対策」の“3つの柱”に「社会貢献」を加えると述べた。
「市場創造」の一環として、JUIDAが監修したインフラ点検カリキュラムや、ジュニアプログラミングカリキュラムを近く展開する方針を表明し、「社会貢献」活度の一環として自衛隊との包括災害防災協定を締結したことなどを紹介したほか、写真提供サービスの株式会社アフロ(東京)や、一般財団法人日本アマチュア無線振興協会(東京)などとの協業実勢や方針を紹介し、今後も積極的に協業に取り組む姿勢をアピールした。
新たなカリキュラムとして紹介されたジュニアプログラミングについて、株式会社ORSO、ブルーイノベーション株式会社が登壇して、小中学生対象の操縦・プログラミングカリキュラム「ドロミング ラボ」を開発したことを紹介。JUIDA監修のうえで近く、展開する方針を表明した。
「ドロミング ラボ」については事業説明会を開催する予定で、第1回が、11月12日(火)13~15時、第2回が11月26日(火)、それぞれ株式会社ORSOのDRONE STARラウンジ(東京都千代田区内神田2-4-6 WTC内神田ビル1階)で行われる(問い合わせはドロミングラボ事務局=080-3464-8264=まで)。
また、インフラ点検についても、ブルーイノベーションがスイスFliability社の球体ドローン「ELIOS」を活用したカリキュラムを開発しており、JUIDA監修のうえで近く展開する方針だ。
このほか創設から1年を経たドローンスクール37校を表彰した。
JUIDAの鈴木真二理事長が近年のアピソードをまじえてあいさつ。「今年は水害が多く、ご苦労されていると思います。自分も福島のロボットテストフィールドの所長でもあって、開所式に向かう当日に体験をしました。その日午後6時すぎ、仙台から常磐線で原ノ町まで向かう途中、雨がひどくなり午前7時半、山下駅で信号が赤にかわり電車が止まり、そのまま5時間、列車にとどまることになりました。車内泊も覚悟していたらタクシーを手配してくれて、目的地まで送り届けてくださったということがあります。実はこのタウシーでの移動も、道路の冠水で、途中までいっては引き返し、を繰り返してたどり着いた経緯があります。空飛ぶクルマが早く出現してほしいな、と実感した次第です」と話した。
来賓として登壇した内閣官房小型無人機等対策推進室の長崎敏志内閣参事官は、「日本のドローンの取り組みはすべて、2015年に首相官邸の屋上で不審な機体が発見されたところからはじまるという特異な経緯をたどっています」と日本の特殊性を説明したうえで、内閣官房の取り組みとして「3年後に内閣官房にできたいわゆるドローン室ができ、この7月からは体制を見直し、テロ対策に加え、利活用を業務に追加することになりました。中でもレベル4をどう実現させていくのか、がミッションで、今年度中に環境整備を進める」と決意表明。「新しいルールづくりは大変であることを実感としています。ドローンスクールのみなさんにも現場の課題や役所への要望をきかせて頂ければうれしく思います」と述べた。
国土交通省航空局安全企画課の英浩道課長も「改正航空法からまもなく4年。空域として、方法の二つを柱として安全の許可・承認。申請件数は1か月4000件になっています。新たに、飲酒禁止、飛行前点検必須、衝突予防、危険飛行禁止を定めました。まだドローンに対して、社会的に懐疑的な方々もいる。ルールを守ることで社会受容性を高めていきたいと思っています」と話した。
表彰式や説明会のあとの交流会では株式会社アマナビの児玉秀明社長が乾杯を発声。ステージのスクリーンには、同社が前日に納品したばかりという、姫路城の幻想的な風景を切り取た映像が投影され、参加者がその美しさに息をのんだ。