持ち帰り弁当の「Hotto Motto (ほっともっと)」、定食レストランの「やよい軒」で知られる株式会社プレナス(福岡市博多区、塩井辰男代表取締役社長)は10月6日、埼玉県加須市で取り組んできたスマート農業による自社生産米の初収穫を行い、新米をオーストラリアの「やよい軒」に輸出すると発表した。プレナスは「生産性の高い稲作経営」を掲げ、ドローン散布、直播栽培、密苗栽培などいくつもの方法を取り入れており、今後、今年の作業や結果を検証し来年に生かす。プレナスは「来年は耕作面積を拡大しさらに検証を重ねてまいります」と話している。なおプレナスは同日、取り組みを紹介する特設ページ「スマート農業によるコメづくりへの挑戦」も開設している。
プレナスのコメづくりは今年、コメ農家の経営環境に強い危機意識を募らせたことからスタートした。社内に商品開発、仕入れなどから精鋭を集めたコメづくり事業推進室を組織。生産性の高い稲作経営の確立を目指し、今年、埼玉県加須市に借り受けた農地を「プレナス加須ファーム」と、それまで使ったことのなかったドローンを使い、関わったことのなかった稲作に取り組んだ。9月下旬に初収穫を迎えたコメづくりについて。プレナスはこの日、プレスリリースを公表している。「自社生産米、初収穫」の見出しを赤のフォントで描いている。
プレスリリースの内容は以下の通りだ。
株式会社プレナス(本社:福岡市博多区、代表取締役社長:塩井辰男)は、持ち帰り弁当の「Hotto Motto(ほっともっと)」と定食レストランの「やよい軒」を国内に 2,863 店舗、海外 9 カ国・地域に 247 店舗の計3,110 店舗を展開しております(2021 年 9 月末現在)。
当社は海外の「ほっともっと」、「やよい軒」に自社で生産した米を輸出するため、2月より埼玉県加須市に借り受けた農地“プレナス加須ファーム”にて、スマート農業を取り入れた生産性の高い稲作経営に取り組んでまいりました。このたび稲刈りの季節を迎え、新米を収穫する運びとなりましたのでお知らせいたします。
プレナス加須ファームでは、5月の田植え以降、ドローンを使って水田に直接種をまく直播栽培や、稲を通常の倍の密度にした密苗栽培を導入し、苗を育てて水田に植える従来の移植栽培と共に、複数の栽培方法と多収米などを含む色々な品種を掛け合わせ、様々な組み合わせを検証してまいりました。また、水田の水量などを遠隔で操作するクラウド型水管理システムや、作業記録など日々のデータを“見える化”したシステムなど、ICT技術を活用して生産性の向上を図りました。
生育が進んだ7月にはドローンを使って上空から水田を撮影し、葉色によって稲の生育具合を把握するとともに、必要な箇所に重点的にドローンで肥料を散布しました。その後天候にも恵まれ、9月上旬より収穫を迎えることができました。収穫した米は埼玉県内の自社工場で精米し、オーストラリアの「やよい軒」に輸出いたします。来年は耕作面積を拡大し、さらに検証を重ねてまいります。
プレナスはこれからも、農業の生産性向上や耕作放棄地の抑制など、我が国農業の様々な課題解決の一助となるよう努めてまいります。
【プレナスの米づくり】ホームページ https://www.plenus.co.jp/brand/ricebusiness/
持ち帰り弁当の「HottoMotto (ほっともっと)」と定食レストランの「やよい軒」を国内外に3000店舗以上展開する株式会社プレナス(福岡市)が、埼玉県加須市で取り組んでいるコメづくりが間もなく収穫期を迎える。ドローンでの直播、農薬散布や、センシングなどのテクノロジーを使い、効率的に質のよい国産米を生産し、海外に輸出し、海外店でも自社産の国産米を提供する展望の第一歩だ。特筆すべきは、この事業に取り組む関係社員が、ドローンにも、農業にも初心者であること。農業従事者の減少に対する危機感と、日本のおコメを海外に届けたい情熱が元手の取り組みが、初めての実りの秋を迎える。
プレナスは日本国内の「HottoMotto」や「やよい軒」のほかに、海外でも約270の店を構える。一部、日本からの調達もあるが、多くが現地での調達だ。これを自社生産の国産米に切り替えることを目標に、今年2月、社内で「米づくり事業推進室」が発足した。集められたのは直前まで商品開発や仕入れ、物件などを担当していた社員。農業もドローンも初心者ばかりだ。
推進室は「生産性の高い稲作」を目指すことを決めた。重労働をできるだけ軽減できる方法で、どこまでできるか。ドローンもIoTも解析ソフトも使って、まずはやってみることにした。その結果は、翌年の稲作の貴重なデータになる。そんな実験的な色彩を帯びる事業だ。今年度の作物は、病害虫に強い地元埼玉県が奨励する「彩のきずな」、収穫量の多い「あさひの夢」のほか10種類以上だ。
推進室が発足してすぐの今年2月、埼玉県加須市に約2.5ヘクタールの農地を借り「プレナス加須ファーム」として管理を始めた。田んぼの整備、種子の準備を進めてきた。
5月には、ドローンで種もみをまいた。7月にはドローンを使って水田を上空から撮影し、葉色の色むらから生育具合を把握し、必要な箇所に適切な肥料を投下した。ドローンは散布用に株式会社FLIGHTS(フライト、東京)が開発した「FLIGHTS―AG」を採用。葉色解析のソフトウェアには株式会社SkymatiX(スカイマティクス、東京)の「いろは」を採用した。葉色解析のデータ取得にはDJIのMavic2 PROを飛ばした。
作付けは5月10日からドローンを使って始めた。水田から2メートルほどの高さから約4メートルの幅に種もみをまいた。苗を田植え機で植えるのではなく、種もみをドローンでまく「直播」にしたのは、同社のコメづくり事業が、効率化、スマート化を進める実験の色彩が濃いためだ。実際、この日の作業は「田植え機による作業の半分ほどの時間」だという。
また7月14日には地元行政や農業関係者が見守る中ドローンを飛ばした。ドローンが上空からとらえた映像をディスプレイに映し出すと、稲の根付き具合などが一目でわかり、のぞきこんだスタッフや様子を見守っていた関係者から「ほお」「分かりやすい」など感心する声があがった。
ドローンの画像は葉色解析クラウドサービス「いろは」にアップロードして解析した。「いろは」は、画像解析技術と地理情報技術を活用し、空からのデータを図面としてみることができるようにするソフトウェア。農地を画像にし、WEB上で管理、記録することで、関係者と共有したり、過年度の状況を振り返ったりできる。この日もドローンから得られた「いろは」で解析して得られた画像データから、光合成が活発に行われているところとそうでないところを色で判別するなどを行い、精度の高い生育状況の確認が可能なことを実感した。
肥料の追加投入が必要と判断した個所には、ドローンで追肥した。ドローンは液剤、粒剤のいずれも散布が可能で、この日は粒剤を散布した。
IoTも活用している。田んぼにはセンサーを設置し水位、水温を観測。スマートフォンで現状を確認できる。水を供給する設備も整え、スマホと連動させ、水位が低いときにはスマホで水の供給を指示できる。
「何をもって順調というのか、ほかの農家さんとは基準が違うと思いますが」と笑いながらも、現時点では順調だ。近く稲刈りをする。収穫した初めてのコメは、国産米として海外の店の一部に届けられる。初めての経験は、次年度以降の生産の土台となる。
初年度の収穫量は10トン程度を見込む。今後3~5年かけて50トン程度にまで引き上げたいと考えている。その先に、同社の海外の店舗で年間に使う約1000トンを見据える。将来的には海外の自社チェーン以外の日本食店や小売店向けの輸出にも取り組みたい。生産拠点の拡充も検討している。
当面は、ドローンなど先端技術を使うことで、安定的な供給と売り上げ拡大にどの程度めどがつくのかがカギになる。同社は「これからもお客様の満足と健康を実現し、人びとに笑顔と感動をお届けし続けることができるよう邁進してまいります」と話している。
※DF=記事中の株式会社FLIGHTS、株式会社SkymatiXはDRONE FUND投資先企業です
「米づくり事業推進室」は今年2月に発足し、私が室長になりました。私自身はコメづくりの初心者です。それどころかチーム全員がそうです。ほかのメンバーも直前まで商品開発、仕入れ、物件などを担当していた初心者ばかりが集まったチームです。
『やよい軒』も含め国内のお店ではすべて国産米を使っていて、その量は約4万トンです。ます。その意味ではかなりのおコメを使っています。それだけのおコメを仕入れてきたわけです。
ところが、仕入れ先である農業の現状は厳しくなっています。高齢化や、従事者の減少、コメの消費量も先細り。国も主食を減らす動きをしています。今年2月に「米づくり事業推進室」が発足したわけですが、その1年前にコメづくりの問題を考えるプロジェックトができてそこで調べてきたのですが、離農の進行も深刻です。農家の方にも話を伺いましたが「来年は仕入れられても、5年後はだれも残ってないよ」などという話も聞くようになりました。
会社としておコメを仕入れられなくなると困るわけですが、われわれの危機感は、「会社が困る」という次元をはるかに超えています。われわれがコメづくりに取り組むことで日本の農業の一助になればいいという気持ちです。
プレナスは事業でおコメを使いますが、文化を研究する部門もあります。精米工場も抱えています。おコメを大切にする会社なのです。唯一、生産だけ、手掛けていなかった。そこで生産から消費までのサプライチェーンのすべてに関与することで、総合的に、相乗効果も期待して、貢献ができることがあるのではないかと考えているのです。
われわれは国内だけでなく、海外にも店舗を持っています。海外に260~270の店舗があります。おコメも扱っています。ただし、国によってクオリティ、価格、仕入れルートがばらばらです。一方でおコメは日本のものがおいしいと思っています。海外でも日本のおいしいおコメを食べて頂きたいと思っています。ですのでわれわれが生産したおコメは当面、海外向けに提供することを予定しています。これは日本の生産者さんとの競合を避けるためでもあります。短期的には企業のブランディング、産地のサステナビリティへの貢献を視野に入れています。海外に持っていくことに成功すれば、日本の農業の可能性を拓くことにつながるかもしれません。価格帯も中間層向け。スマート農業では「高級米を高価格で」という声も聞こえますが、我々の取り組みはそれを目指しているわけではありません。
これからの農業は、少ない農家が大きな生産にシフトすることがテーマになります。従来の方法だと、重労働で規模拡大は難しい。2月に部署が発足し、春にはすぐ田植えという目先の問題もあり、負担の大きい作業は避ける必要がありました。そこで負担が少なくてすむ期待ができる直播にしました。
「直播」そのものは新しい方法ではありません。歴史はあります。しかし日本では定着していません。その理由として言われていることのひとつに、チャレンジできる環境にいない農家が多い、ということがあります。新しい方法にチャレンジしても、従来の方法で見込める生産量の保証がないので、チャレンジしにくいということです。われわれは企業です。チャレンジできます。企業が取り組む価値はそこにあるのかな、と思います。「だからこそわれわれがやらなきゃ」と、推進室のみんなが感じていて、できることに取り組んでいます。
ドローンでの直播もそのひとつです。ドローンを使ったのはこの数年で革新がすさまじいことと、日本の規模に見合っていそうなこと。海外の広大な規模の農業であれば、飛行機を使うとか、大型のトラクターを使うということがあります。日本の、少なくともわれわれの取り組む規模には、ドローンのサイズ感がちょうどいいと思ったのです。
初心者なりにいろいろと考えてやっていますが、初心者は初心者です。よいコメがたくさん取れればいいと思いますが、それ以上に、今回の経験に価値があると考えています。今回の経験の結果がまもなく稲刈りという形で出てきます。結果に関わらず、楽しみです。
スマート農業事業を手掛ける株式会社ワイズ技研(東京都渋⾕区)は5月17日、オーガニック栽培の酒⽶、⼭⽥錦の種籾をドローンで圃場に直播する取り組みを徳島県小松島市で実施したと発表した。田植え不要のドローンによる直播で、田植えの場合に必要な育苗や苗運搬の作業負担軽減を目指す。同社によると、オーガニック栽培の山田錦をドローンで直播したのは過去に例が見当たらないという。
⼭⽥錦の直播が行われたのは、徳島県小松島市の⼀般社団法⼈いきいきファーム⽴江(Farm19)の圃場。ワイズ技研が農業のDX化を進めるプロジェクト、「Y’sSmartAgri(ワイズスマートアグリ)」の第一弾として取り組んだ。ワイズは収穫までの期間もドローンなどを使ったリモーロセンシングで⽣育状況を撮影・解析し、適期作業の推進を進める。今回も植生の活性度を表す正規化植生指数 (NDVI)を取得した。直播による負担軽減と、データに基づいた農業DX化推進による収量、品質の確保を目指す。
今回の直播では、農業の技術革新、アグリイノベーションを推進する株式会社マイファーム(京都府京都市)の協⼒を得て、種籾を鉄粉でコーティングした鉄コーティング種⼦を使った。直播に伴うリスクのひとつ、浮き寝などを軽減する。
ワイズ技研は、農業の効率化にドローンを活用する「SkyFarm」プロジェクトを2018年に開始。農薬などの散布事業を全国で展開している。事業を通じて地元農家、農業普及委員、地元農協などから稲作での作業負担の大きさを見聞きし、⽥植え作業のかわりに、ドローンによる直播による負担軽減法を検討してきた。今回環境が整い、第一弾として小松島市で実施することとなった。すでに
水稲での直播は1990年代から農業従事者の負担軽減策として提唱されているものの、定着していない。背景には直播の切り替えに伴う収量減少不安がつきまとうことや、田植え機の改善により負担軽減がある程度進んだことが背景にある。
一方で農業従事者の人口減少、高齢化と、それに伴う経営の大規模化、圃場の大型化などが進み、若手の従事者の育成が急務となっている。
ワイズはドローンやIoTデバイス、AIなどスマートテクノロジーを⽤いる農業のDX化を「Y’sSmartAgri」として進め、若手が農業に関心を持つ環境を整え、地域の活性化に貢献する取り組みを進める。
株式会社ワイズ技研 ■会社設⽴:1989年3⽉1⽇ ■事業内容:地盤調査・地盤補強⼯事事業、⼀次産業アップデート事業「Y'sSmartAgri」、テクノロジー推進事業「SkyFarm」「AquaResarch」、埼⽟労働局登録教習機関「三郷トレーニングセンター」などを展開 ホームページ:http://www.ysgiken.co.jp/ 株式会社ワイズ技研は、テクノロジーで「住」と「⾷」の基盤を⽀え、⼟を耕し、空を愉しみ、⽔を愛し、⼈を育て、地球上の命がつながる「環」を作ります。ワイズ技研は地盤調査・改良事業における実績と信頼を軸に、新たにテクノロジーを利活⽤した農林漁業の6次産業化、7次産業化に寄与するサービスを展開しています。 ■代表取締役:北⽥ 諭史(きただ さとし) 1971年宮崎⽣まれ 熊本育ち 東京在住。株式会社ワイズ技研代表取締役。⼀般社団法⼈いきいきファーム⽴江理事。幼少期から阿蘇⼭の雄⼤な⾃然を感じられる環境で育つ。ベビーブーマー最後尾世代として激しい競争にさらされる中、競争しない⽣き⽅を模索し法律職・研究職を志すも挫折。紆余曲折の末、⾃ら中⼩事業を事業承継して経営するに⾄り結果的に激しい競争に晒されている。新規事業として建機技能教習所やドローン事業を開始。”社内と社会に幸せと愛の量を増やす”べく、エリアを問わずテクノロジーでローカルを活性化することに貢献するため奮闘中。現在の関⼼事は中⼭間地の⼀次産業のDX、スマート化といったアップデート。早稲⽥⼤学⼤学院法学研究科修了。