消防庁(総務省)は地方自治体向けの指針である「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」の改訂版をまとめ、公表した。災害が発生したさいに市民に避難を呼びかけるさいの伝達手段としてスピーカーを搭載したドローンの有効性を盛り込んだ。
手引きでは、災害の状況や避難の適否など地域住民に周辺滞在者に必要な情報を伝える手段を、「主たる伝達手段」と「それ以外の伝達手段」とに分類している。その中で「スピーカー付きのドローンによる災害情報伝達」を「それ以外の伝達手段」に位置付け、手引きに盛り込んだ。
「スピーカー付きのドローンによる災害情報伝達」については、「移動しながら広範囲に放送を行うことができるので、沿岸部や山間部などの地理的条件により屋外スピーカーを整備するハードルが高い地域などで有効に災害情報法を伝達することができる」などと説明。
同時に「一方で、Jアラート信号に連動して自動で飛行させる場合でも飛行に1~2分程度の時間を要するため、到達までに一定の時間がかかる津波に関する情報等の伝達には有効であるが、特に緊急性の高い緊急地震速報等を放送する場合は屋外スピーカー等と連携して災害情報を伝達する必要がある」と指摘している。
また、ブルーイノベーション株式会社(東京)が運営した検討会の内容をまとめた「災害情報伝達手段としてのドローンの活用に関する検討報告書」についても言及し、「留意事項を整理している」と参照することを促した。
なお、手引きには「主たる伝達手段」として、市町村防災行政無線(同報系)、MCA陸上移動通信システムを活用した同報系システム、市町村デジタル移動通信システムを活用した同報系システム、FM放送を活用した同報系システムなど9種類を列挙。「それ以外の伝達手段」として、電話一斉送信システム、登録制メールによる災害情報伝達、緊急速報メール、SNSによる情報伝達など11種を列挙した。「スピーカー付きドローンによる災害情報伝達」はこの11番目に紹介している。
2026年3月付けで改訂した「手引き」は目次なども含め263ページあるが、本文は全体の3割弱で残る7割強は過去の報告書や、2026年3月にまとめた「災害情報伝達手段の奏功事例集」などの参考資料が占める。
参考:災害情報伝達手段の整備等に関する手引き

機体に載せたスピーカーで避難を呼びかけるなどドローンの災害活用を進めるブルーイノベーション株式会社(東京)は、総務省消防庁が設置した「災害情報伝達手段」としてドローンの有効性を検討する検討会で事務局を担い、実証実験も行ったと発表した。総務省消防庁は3月24日、これに基づいて「災害情報伝達手段としてのドローンの活用に関する検討報告書」を公表した。報告書はドローンを防災行政無線の補完に有効と結論づけ、運用する場合の留意事項などを整理。市町村向けの「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」に反映される見込みだ。
「災害情報伝達」は、行政が住民に対して、避難情報や気象情報を届けるための仕組みや手段だ。「消防白書」(総務省消防庁)や「情報通信白書」(総務省)で多重化や多様化の重要性を盛り込んでいる。防災行政無線のほか、Jアラート(全国瞬時警報システム)、緊急速報メール(エリアメール)、Lアラート(災害情報共有システム)、SNS・HP・登録制メールなどがある。
検討会はスピーカーを搭載したドローンが「主たる災害情報伝達手段の代替、または補完」として有効かどうかを検討した。特に防災行政無線が抱える、広い沿岸部を持つ自治体にとっての設置台数確保、山間部での設置難易度の高さなどの課題をふまえ、①運用上の留意事項の整理、②「主たる災害情報伝達手段」となるための要件設定の検証、③想定される課題の整理などを検証するための実証実験を行った。実証実験では、音声の届く音達範囲や、音声の内容が聞き取れる了解度などを、沿岸部や山間部など環境の異なる場所で、機体と観測者の位置、距離などで条件分けして実施した。
事務局を担ったブルーイノベーションは広い沿岸部を抱える仙台市や千葉県一宮町でJアラートに対応して自動で避難広報のためにドローンが発信するシステムに納入していて、実証実験でもこれらの自治体での検証を実施した。また山間部での実験は宮城県白石市の「みやぎ蔵王白石スキー場」などで、耐候性検証を大型降雨実験施設で、音声伝達性能検証を板橋ドローンフィールドで実施した。
この結果、遮蔽の有無や観測者との向きなどで聞こえ方に差があることや、運用者が安心して活用できるためのマニュアルの整備などの重要性が確認された。音声の伝達性については、「指向性スピーカーを搭載するドローンでは、全方向に音を届けるために工夫することが望ましい」「飛行実験を行った60mまでの高度では、ドローンの飛行高度による音の減少幅は小さいと考えられる」などと考察した。
そのうえで、自治体で災害時の情報伝達手段としてドローンを活用する際の留意事項には、「ドローンの活用においては住民の行動変容につなげることが重要であり、そのためには飛行ルート、運用体制、放送内容、スピーカーの性能等で留意すべき点がある」と結論づけ、飛行ルート、運用体制などそれぞれについて考察した。
たとえばJアラート情報と連動させることについては、津波に関する情報には有効であっても、緊急地震速報では数秒の猶予しかないため「✕」と判定し、「ドローンの飛行までに1~2分ほどを要することを踏まえると、到達までに一定の時間がかかる津波に関する情報等の伝達では有効であるが、特に緊急性の高い緊急地震速報等を放送する場合は、屋外スピーカーその他の手段と連携して災害情報を伝達することが必要だと考えられる」などと整理した。
検討全体として『「主たる災害情報伝達手段として必要な要件のうち、「発災前後を通じて、継続して使用できる耐災害性を有していること」及び「市町村が伝えるべき防災情報を制約なく伝達できること」を満たしているとは言えず、現時点では、防災行政無線等の代替とまではいえないと考えられる。ついては、現時点では、スピーカードローンは、屋外スピーカーや戸別受信機の補助として運用することが望ましいと考えられる』とまとめた。
近くこの内容を「災害情報伝達手段の整備等に関する手引き」に反映させる。



