株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)と、大阪市高速電気軌道株式会社(大阪メトロ、大阪市)は大阪エリアで空の移動革命を社会実装させるために共同で取り組む業務提携を結んだ。また大阪メトロがSkyDriveに出資した。大阪メトロによるSkyDriveへの出資は8月23日付。今回の出資の金額は非公表だが、SkyDriveの資金調達は2022年9月のシリーズCラウンド以降の3回で累計約80億円となり、またこれを含めた調達総額は350億円超となった。大阪メトロは2025年の大阪・関西万博でVポート(離発着場)の整備を担うことになっている。これをきっかけにエアモビリティ事業に本格的に参入する方針で、10月1日には社内に専門の部署を発足させる。万博閉幕後の2028年に大阪市内の大阪城東部の開発エリアに新設を計画しているメトロ新駅にVポートの設置を目指しており、大阪メトロの河井英明社長は新駅の開業にあわせ、Vポートを活用した空のサービスを開始することを目指すことに「願わくば、そうなれば望ましいと期待しています」と意欲を示した。
提携は8月26日に発表された。大阪市内の大阪メトロ本社では、大阪メトロの河井英明代表取締役社長、SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOらが会見した。
河井社長は「大阪全域での格段に便利で快適な移動サービスを構築するモビリティのベストミックスカンパニーに取り組んでおります。空飛ぶクルマが加えることで地下、地上、空が一体となったあらゆる移動サービスにこたえる交通インフラの確立を目指します」と空クル事業への参入の意義を説明。「当社がVポートの整備や運営を手掛けます。ストレスフリーな、多様なモビリティの結節点として、今後開発する中規模から大規模の乗り継ぎハブとして、必要に応じて(ビルの)屋上などにも設置して、都市機能のさらなる強化を図りたいと思っています」と述べた。
業務提携について、河井社長は「空飛ぶクルマの社会実装、都市内の輸送などでの両者の目指す姿が一致したことと、大阪メトロのVポート事業、SkyDriveの機体製造、運航事業の補完関係が極めて明確で、SkyDriveは私どもにとってベストパートナー。当社はこれから空飛ぶクルマ事業に本格的に参入していく所存ですが、現時点では知見が不足しており、事業かに必要な各種調査、人材交流、事業化後の協力体制までを盛り込んだ提携を結びました」と提携締結の経緯を説明。「(大阪城東部に計画している)『森之宮新駅』のVポート設置をはじめ、当社の空クル事業を加速させ、大阪における空飛ぶクルマの社会実装につなげたいと考えています」と意欲を示した。
大阪メトロからSkyDriveへの出資について、河井社長は「空飛ぶクルマ事業は先行事例もなく両者とも相当のリソース、エネルギーを投入する必要があり、出資することでSkyDriveの財務面をサポートし、強固なパートナーシップを築くことにしました」と説明。関連して「また空飛ぶクルマに関わる専属の組織をたちあげることを決めました」と10月1日付で新部署を設置する方針を示した。後世メンバーは今後調整するが、この時点では中期的に10人規模をめざし、社内の人材のほか、外部の有識者の登用も検討する見込みだ。
SkyDriveは、自社開発のエアモビリティを、自動車を日常的に使うように運転の延長線上で空を移動できる乗り物を作りたいという思いから創業時から「空飛ぶクルマ」と呼び、英語表記として「FLYING CAR」を使っている。現在開発中の機体は操縦士1人と同乗者2人までの3人乗りの12基のローターを搭載するバッテリー駆動のエアモビリティで、陸上を走る機能は持たないが、創業時の思いは自動車の延長線上で日常使いできる空の乗り物だった。現在も将来的な空と陸の両用機の開発を排除していない。
この日の会見では福澤CEOが自社開発中、製造中の「空飛ぶクルマ」の特徴や開発にかける思い、エアモビリティのある社会の利便性などを説明したあと、大阪メトロとの関係について言及した。その中で、大阪メトロの河井社長らがSkyDriveの施設を見学に訪れて熱心に見学したことや、意見交換でモビリティ革命について意気投合したことなどを紹介した。
福澤CEOは「大阪における多くの方々の日常的な移動の向上に起用したいと思っています。新しいものを生み出す観点からは、機体開発だけではなく、効率のいいオペレーション、利用者にとっての使いやすさも同時に満たす必要があります。両者一眼となってプロジェクトに取り組んで参ります」と抱負を述べた。
また福澤CEOは、記者会見の質疑応答に答える形で自社製品について触れ「(大阪関西万博では)デモフライトを実施すべく動いております。そのタイミングで(世界の)いろんな会社が飛行を目指しています。その一番進んでいる会社とあまり大きな差はないレベルだと思っております。ほかのプレイヤーと一緒に万博でデモフライトができればいいと思っています」と自信をのぞかせた。
また大阪メトロからの出資については、「とっても助かります。大変ありがたい」と感謝した。そのうえで「モノができたあとには、利用者が実際にどう使い、うまくワークするのかどうかが大事になります。ぼくらは飛ばすことについてはできますが、利用者にとって移動ニーズがあるのか、コストと価格が見合うのか、地下鉄やオンデマンドバスと組み合わせたときの結節点のありかたはこれでいいのか、といった需要側のことがわからない面があります。そうしたところをワンチームで勧めたいと考えています」と付け加えた。
空クル事業のサービスについて、大阪メトロの河井社長は「最初は遊覧飛行ぐらいかもしれません」などと展望。日本で最初の商用運航でありたいか問われた質問に対して、「できることでありましたらそういうことも目指したい」と応じた。
商用運航のスタートの時期について河井社長は「万博が終わって数年以内にはスタートしたいと思っています」と述べたあと、2028年に開設を目指す森之宮新駅との関連について追加で質問をされ、「新駅にVポートをつくれないか検討を進めていきたいと思っています。(森之宮では)新しい駅ビルもつくります。再開発も行いますのでそこにVポートをつくりたい。タイミングがあえば(2028年のサービス開始が)望ましいかな、と期待しているところです。私どもだけでできるわけではないですが、私どもとしてはそう願っています」と2028年のサービス開始に期待を寄せた。福澤CEOも「われわれも目指します」と同調した。
大阪メトロとSkyDriveは提携についてプレスリリースを発表している。SkyDriveのプレスリリースは以下の通り。
~併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました~
(※編集部注:大阪メトロもほぼ同じ内容のリリースを公表している。会社名の場所や上記の「出資いただきました」が「出資しました」になるなど文章上の係り結びが整理されている)
「空飛ぶクルマ」(※1)の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「SkyDrive」)は、空飛ぶクルマの社会実装を目指し、2025年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」)後の大阪エリアでの空飛ぶクルマを用いた事業化に向けた検討を行うことを目的に、大阪市高速電気軌道株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 河井英明、以下「Osaka Metro」)と業務提携契約を締結したことをお知らせします。併せて、Osaka MetroからSkyDriveに出資いただきました。
SkyDriveは「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、「空飛ぶクルマ」の開発をしています。大阪・関西万博においては、「空飛ぶクルマ」の2地点間での運航事業者に選定されています(※2)。
Osaka Metroは、地下鉄およびニュートラムを9路線運営しており、1日の乗降客数は平均約240万人にのぼります。大阪を各段に便利で快適なまちにしていくことを目的に都市型MaaS構想「e METRO」を推進しており、パーソナルな移動を実現するための新たな選択肢として「空飛ぶクルマ」も視野に入れています。2024年2月には大阪市の「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定され、バーティポートの整備を進めていきます。
両社は、Osaka Metroが「空飛ぶクルマ」会場外ポート事業者として選定されて以来、協議を進めてきました。議論を進める中で、Osaka Metroが都市型MaaS構想で目指す「あらゆる移動ニーズに応える交通インフラの確立」と、SkyDriveが実現を目指している、「空飛ぶクルマ」によって日常の移動に空を活用する世界に親和性があると考え、この度、業務提携契約の締結に至りました。
今回の提携により、両社はビジネスモデルの策定・精緻化、オペレーション内容の設定・確定など、「空飛ぶクルマ」の事業化に必要な検討を進めてまいります。
(以下にSkyDriveのシリーズCについてのリリースがあります)
~「空飛ぶクルマ」の機体開発および製造を加速~
「空飛ぶクルマ」の開発およびドローン関連サービスを提供する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO福澤知浩、以下「当社」)は、新たに4社を引受先とした第三者割当増資により追加調達を完了しました。2022年9月に実施したシリーズCラウンド以降、3回に渡り追加調達した金額は累計約80億円となります。
<本ラウンドの引受先>(五十音順)
<これまでの追加調達のプレスリリース>
2024 年 1 月:https://skydrive2020.com/archives/41403
2023 年 4 月:https://skydrive2020.com/archives/21778
■ 資金調達の背景・目的
当社は、「100 年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに 2018 年に設立し、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、空飛ぶクルマの開発を行っています。社会実装する上で不可欠な認可の1つが型式証明です。当社の製品『SKYDRIVE(SD05型)』は、2021年に日本の国土交通省により、型式証明申請が受理され、2022年には審査適用基準の方針を合意しました。現在は、次の段階である適合性証明計画の合意に向け、開発と並行して証明活動を行っております。そして、証明計画合意後は、その計画に沿って地上試験、飛行試験等を行います。
今回の資金調達を通して、前述の地上試験、飛行試験等の環境や体制を強化し、開発・証明活動を加速していく所存です。加えて、量産に向けた品質保証部門等の増員・強化にも着手してまいります。
また、当社の『SKYDRIVE(SD-05型)』は、4カ国(日本、アメリカ、韓国、ベトナム)から、合計263機のプレオーダーをいただいております。お客様に納入後も機体のコンディションが管理できるよう、設計から製造そして納入後まで、一貫して機体データを管理するデジタルプラットフォームの構築を進めてまいります。
■株式会社SkyDrive代表取締役CEO福澤知浩コメント
2022年9月のシリーズCの資金調達時以降、多くのグローバルトップクラスの航空機エンジニアがチームに加わり、当社の機体開発は大きく前進する事が出来ました。また、株主でもあり強力なパートナーであるスズキ株式会社のご協力の元、2024年3月、スズキグループの静岡県磐田市の工場で『SKYDRIVE(SD-05型)』の製造を開始することが出来ました。
事業開発においても、スズキのサポートの元、インドでの市場開拓を進め、グジャラート州政府と戦略パートナーシップを締結しております。
アメリカにおいては、2023年11月にSkyDrive America, Inc.を設立、サウスカロライナ州やジョージア州等の各空港を起点とした航路検討が進んでおります。
この度、投資家の皆さま、事業会社の皆さまに、当社の進捗を評価していただき、強力なサポートをいただくことができました。感謝するとともに、皆様のご期待に応えるべく全力で開発と事業を進めてまいります。
防災、事業継続、セキュリティなど危機管理に関連する技術を紹介する「危機管理産業展(RISCON TOKYO)2024」(株式会社東京ビッグサイト主催)、テロ対策技術を紹介する「テロ対策特殊装備展(SEECAT)’24」(東京都主催)、新技術、新製品を御披露目する「エヌプラス(N-Plus)2024」の「特別企画展フライングカーテクノロジー」(エヌプラス実行委員会 、 フライングカーテクノロジー実行委員会主催)が10月9日、東京ビッグサイトで始まった。ドローンやエアモビリティの関連技術、製品も展示され、セミナーなどステージ企画も多くの来場者を集めている。いずれも11月11日まで。SEECATへの入場は完全事前登録制だ。
RISCONは危機管理技術のトレードショーで、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、東京)、株式会社JDRONE(東京)、株式会社Liberaware(千葉市)など多くの関連事業者が技術を持ち寄っている。ステージ企画でもドローンやエアモビリティ関係の第一人者が登壇し、初日の9日には、株式会社manisoniasの下田亮氏が能登半島地震で被災した沿岸部海底を調査した経緯やそのときに仕様した技術などを紹介した。
下田氏は空のドローン、水中ドローンを使い分けてデータを取得し、それらを組み合わせて地形図を作るなどして、地震による海底被害の調査に取り組んだ。下田氏は「調査した海底では、あるはずの海藻が根こそぎ引きはがされていた。魚などの産卵場所が少なくなっていることが考えられ、調査結果は漁業者が対策を相談するさいの資料になると思う」などと、調査の意義を報告した。また、光が乏しい水中の画像を鮮明化する技術を、同社の海上自衛隊OBが新たに「ivcs」として開発したことも紹介し、この技術を使う前後の画像を比較して示したりした。会場は多くの来場者が詰めかけ、講演を時間より早めに終えたあと会場からの質問も受け付けるなど盛況だった。
N-Plusの特別企画展フライングカーテクノロジーでも多くの展示、講演が企画され初日から多くの来場者が詰めかけた。
「空飛ぶクルマの現状と課題」を演題にした基調講演では、慶應義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科(SDM)顧問の中野冠フライングカーテクノロジー実行委員長がコーディネートし、株式会社SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEO、テトラ・アビエーション株式会社の中井佑代表取締役が登壇した。
中野氏は、通説を疑ってみることを提唱し、「空飛ぶクルマ」に関わる騒音、利便性、環境などいくつもの「疑わしい通説」を列挙し盲目的に信じ込むことに警鐘を鳴らした。SkyDriveの福澤氏は開発している機体を大阪・関西万博でフライトさせる目標に向けて活動を続ける中で、「万博では飛行場でもない場所で複数の機体、それも2種どころではない機体が飛ぶことが予定されていて、そうなれば世界で初めてです。商用運航ができないことがニュースで大きく取りあげられていますが、実は世界でも画期的なことをしようとしているのです」と万博での飛行の意義を強調した。テトラの中井氏は「移動時間を短くすることを目指し開発をしている。現在開発中の機体は今年度末に試作機が出来る予定」などと計画が進んでいることを説明した。
10日以降も多くの来場者が見込まれる。
東京都内に竣工した大規模物流施設「MFLP・LOGIFRONT東京板橋」に、ドローンの実証実験が可能な施設「板橋ドローンフィールド(板橋DF)」が誕生し、10月2日にお披露目された。LOGIFRONT東京板橋は三井不動産株式会社、日鉄興和不動産株式会社が開発した地元と協議を重ねて竣工した「街づくり型物流施設」でドローンフィールドは物流施設に寄せられる新産業創出機能に対する期待を担う。ドローンフィールドは一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)、ブルーイノベーション株式会社が監修した。飛行用ネットフィールドやドローンポートが備わり、稼働中の物流施設を使った実験も可能で、都心の実験場の開設で、高頻度の実験が可能になる。会員制コミュニティも運用し共創を加速させる。
LOGIFRONT東京板橋と板橋DFは9月30日に竣工し、10月2日に竣工式典と説明会が行われた。説明会では日鉄興和不動産の加藤由純執行役員、三井不動産の篠塚寛之執行役員、板橋区の坂本健区長が参加した。加藤氏、篠塚氏が施設を説明し、坂本区長があいさつをした。施設内では内覧会でドローンのデモフイライトが行われ、ここでは三井不動産ロジスティクス事業部の小菅健太郎氏が概要を説明、JUIDAの鈴木真二理事長があいさつをした。ブルーイノベーションの熊田貴之代表取締役社長も登壇した。
板橋DFはドローン飛行用のネットフィールド、ドローン事業者用R&D区画、交流スペースを備える。物流施設に併設していることから、施設を実験会場として活用することも想定していて、施設の外壁を使った点検や配送などの垂直飛行、屋上にはりめぐらされた太陽光パネルの点検、接地されているドローンポートの活用、AGV(自動搬送車)との連携などが想定されている。ドローンオペレーター輩出で実績をもつドローンスクール、KDDIスマートドローンアカデミー(東京)が東京板橋校を構え、人材育成にあたることも発表された。
このうちネットフィールドは、敷地内の広場に整備された広さ約650㎡、高さ14mのネットに囲まれた設備で、この中では申請をせずにドローンを飛ばせる。KDDIスマートドローンアカデミー東京板橋校の講習会場にもなる。敷かれている芝はフットサルコート仕様で、時間帯によって地域住民の健康増進にも開放される。
ネットフィールドに近い入り口から建物に入るとすぐ、ネットフィールドをのぞむ位置にドローン事業者の交流を目指して設置された交流施設「ドローンラウンジ」がある。大型モニター付きのミーティングルームなどが備わり、ネットワーキングイベントにも使える。
この日はデモフライトも行われ、施設内では物流施設内で照明を落とし、光が届きにくい場所で球体ドローンELIOS3などの機体を飛行させる様子や、建物の外壁を点検するような飛行を公開した。
説明会では、東京大学と三井不動産の産学共創協定に基づく「三井不動産東大ラボ」が主体となる共同研究としてGPSに依存しないドローン位置特定技術、高層マンションなどでの垂直配送実現性検証や、ブルーイノベーションが主体となる長距離、長時間、自動航行に対応する高性能ドローンポートの開発などが含まれることが紹介された。
三井不動産の篠塚執行役員は「都心での高頻度な実験が進みにくい課題を解決することが可能となります。ドローン技術のイノベーションが起こることを期待しています。またここで検証された技術が配送、建物管理、災害時対応などの分野で課題解決につながることを期待しております」と述べた。
監修を担当したJUIDAの鈴木真二理事長は「ドローン産業の発展に少しでもお役にたてることを期待しております」とあいさつした。
板橋DFの入るLOGIFRONT東京板橋は、三井不動産、日鉄興和不動産が手掛ける大規模街づくり型物流施設で、物流拠点として高い機能と豊かなデザインを備えながら、地元の要望を取り入れた街に開かれた施設で、三井御不動産の篠塚執行役員は「街づくり型物流施設の集大成」と位置付けた。
板橋区との協議では、災害に強いまちづくり、地域に開かれた憩いの場の整備、新産業機能の要望を取り入れ、近くを流れる荒川、新河岸川の氾濫などの災害を想定し、住民の対比場所の確保、支援物資の補完場所の確保なども設けていることが特徴だ。あいさつした板橋区の坂本健区長は「防災力向上に多大な貢献を頂いております」と謝辞を述べた。
開発したのは日本製鉄の製鉄所があった場所で、フロアプレート約36000㎡、屋上に設置した太陽光パネルは4MV、敷地の河川敷として公開空地を設定して地域にも開放した。
ドローンフィールドとの相乗効果について、今回の説明会で物流用途や防災用途でのグ遺体的な実装計画には触れられなかったが、大型物流施設に併設されたフィールドであり、大型河川の流域に位置し、防災に高い問題意識を持つ板橋区にあることなどから、ドローンの実装にも高い期待がかかりそうだ。
第3回ドローンサミットが10月1日、札幌札幌コンベンションセンターで開幕した。会期は2日間。32の関連ブースが来場者を迎える。講演などのステージ催事も多く催される。初日の10月1日は北海道内外から多くのドローン関係者が訪れた。会期は2日まで。
第3回ドローンサミットは経済産業省、国土交通省、北海道が主催。地元北海道のデジタル技術見本市、「北海道ミライづくりフォーラム」と同時開催となる。ドローンサミットは2022年に神戸、2023年の長崎に続く開催。展示のほかデモフライト、識者や事業者による講演、セミナーなども開催される。
初日にはSkyDriveや大阪府などが登壇する「空飛ぶクルマのミライ~大阪・関西万博とその後の社会実装の展望~」、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)による「能登半島地震における災害時支援報告と今後に向けて」などが行われた。2日目も全国新スマート物流推進協議会などによる「ドローン物流を組み込んだ新たな社会インフラの現在地と今後の展開」、DRONE FUNDや北海道大学、NEDOなどが登壇する「北海道の空の未来とは ~エアモビリティ前提社会に向けて~」などいくつものステージが会場を彩る。
(写真はいずれも田口直樹氏が撮影)
トレーニング用の小型ドローンとコントローラーがセットになった新・練習機セット「DRONE STAR TRAINING」を開発した株式会社ORSO(東京)が、開発中の「実地試験トレーニングマット」の試作品の使い勝手を試せる「特別試操会」を9月27日、東京・内神田で開いた。国家資格の実地試験対策を想定した試験コースを約3分の1サイズでプリントしたマットと、操縦技能修得を成否を分けると言われる「8の字」に特化したマットの2種類の試作品が用意され、スクール講師、事業者、愛好家らがDRONE STAR TRAININGを操縦しながらマットの使い勝手を試した。参加者からは「受講生向けの自宅練習にいい」「講習の空き時間にも使える」「科学教育でも導入できそう」などの感想や意見が相次いだ。ORSOは今回の意見や感想も参考にして製品化を進め、11月中の発売を目指す。
トレーニングマットはドローンを飛ばすコースがプリントされたマットで、新・練習機セット「DRONE STAR TRAINING」を使って、国家資格取得に必要な技能を効率的に習得することを主な目的としてORSOが開発している。6月に開催されたドローンの展示会JapanDroneでDRONE STAR TRAININGを公開したさいに会場に設置したところ、DRONE STAR TRAININGとともに「あのマットも欲しい」という声が相次いで寄せられ、市販化に向けて開発を進めることになった。
この日はAタイプとBタイプの2種類の試作品がお披露目された。Aタイプは国家資格の実地試験コースをイメージしたもので、約3分の1に縮小したコースがプリントされている。ふたつに分かれているマットをマジックテープでつなげて使う仕様で、広げると4.8m×2.5mになる。収納や運搬のさいには、ふたつに分けて丸めれば、折り目をつけずに1.3mの筒に収まる。素材はDRONE STAR TRAININGの機体を飛ばしたさいにダウンウォッシュで浮き上がることなく、それでいて、持ち運びのさいにかさばり過ぎないようなものを選んだ。
スクエア飛行、8の字飛行、異常事態における飛行などに対応し、パイロンが置かれる場所なども図示されている。数字がふられていて試験や練習で想定される「『3』から『4』に移動してください」などの指示に従う練習も可能だ。特別試操会を主催したORSOの高宮悠太郎DRONE STAR事業部長は「エレベーター、エルロンを同時に動かす練習などにいかしてもらうことを想定しました」と説明した。
またBタイプは、操縦技能の習得で難関とされる「8の字」部分を抜き出したコースがプリントされているマット。3m×1.5mとAタイプよりひとまわり小さく、計算上は江戸間の6畳におさまる。高宮部長は「さらに小さい場所に設置できるよう、難しいといわれる部分の練習に特化したタイプです」と説明した。長方形をたてに3分割されていて、すべてをつないでも、中央を抜いて左右をつないでも使える。左右をつなげることで円周上を飛ばす練習に使うことができる。また3つに分割したマットをまるめれば、1.1mの筒に収納できる。
いずれのマットも実地試験コースの3分の1サイズになっているのは、DRONE STAR TRAININGの機体サイズが、国家資格の試験に使われる機体のたて、よこともに3分の1程度であることなどを考えたためだという。
試操会では、約10人の参加者が次々とAタイプ、Bタイプのマットの上で飛行し使い勝手を試した。参加者からは「受講生に課題を与えるさいに使いやすい」「自宅練習用に貸し出すこともできそう」「講習の効果を高めやすい」などと、国家資格取得に向けた効果を期待する声が多く聞かれ、ORSOスタッフがメモをしたり掘り下げるための質問をしたりした。中には「プログラミングなどサイエンスの講習にも使えそう」など、使い勝手の向上や用途の拡大につながりそうな改善点や意見、感想もあった。
高宮部長は「今回みなさまから頂いた意見を参考に試作品を製品化し、11月の発売を目指します」と話した。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が能登半島の豪雨災害への対応を開始した。自衛隊と連携し孤立集落へのドローンによる物資配送などにあたる。株式会社NEXT DELIVERY(小菅村<山梨県>)、株式会社ACSL(東京)がすでに現地入りし、株式会社エアロジーラボ(AGL、箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)が近く合流する。ブルーイノベーション株式会社(東京)も一両日中に加わる。
JUIDAは9月23日に被害の大きい輪島市に入った。翌9月24日にはNEXT DELIVERY、ACSLが合流した。株式会社エアロジーラボ(箕面市<大阪府>)、株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)も9月25日中に現地入りし、ブルーイノベーション株式会社も追って合流する見通しだ。
このうち事業者として現地にもっともはやく合流したNEXT DELIVERYは小菅村、小松市(石川県)のそれぞれから現地で運用していた物流用機Air Truckを持ちこんだ。2機を持ちこんだのは、孤立集落への物資配送の輸送頻度が高くなることが見込まれるためだ。1月に発生した能登半島地震の震災対応のさいには小菅村の機体を持ちこみ、医薬品の輸送で被災地を支援した。同社はドローン配送を平時と有事の両面で活用するフェーズフリー活用に取り組んでいる。
輪島市中心部では9月21日午前9時10分までの1時間に120ミリの大雨が記録され、気象庁が輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表した。その後22日午前10時10分、気象庁金沢地方気象台が大雨特別警報を大雨警報に切り替えたと発表した。
国土交通省は9月22日午後3時に輪島市、珠洲市、穴水町、能登町を国土交通大臣による航空法第132条の85による緊急用務空域公示第2号に指定した。ドクターヘリや救急搬送などの活動を妨げることにならないよう、国、地方などの要請を受けていないドローンは現地での飛行させることができない。一方、孤立集落への物資搬送などにドローンの活用は期待されていて、石川県は9月24日、JUIDAに対し支援を要請した。
JUIDAは石川県の要請より前に現地への急行を準備し、9月23日には現地に入りし、自衛隊など関係機関と調整を開始。24日の石川県からの要請を受けて具体的な取り組みを進めることになった。25日にはひとつの孤立集落への物資輸送を開始する準備を進めていたが、幸いにもこの集落への陸路が開通したためこの集落への配送は陸路にまかせ、ドローン配送は別の集落への取り組みに切り替えることを決め、次の対応を練っている。
JUIDAのもとにはドローン事業者から協力の申し入れも届いており、JUIDAが現地の需要とすりあわせながら、対応を検討している。
能登地方では9月25日も不明者の捜索が続けられ、この日輪島市で3人がみつかり、いずれも死亡が確認されたことから、豪雨の死者は計11人となった。午後4時現在、5人の行方がわかっていない。また輪島市、珠洲市、能登町の16カ所の集落が孤立し、157人が取り残されている。
山梨県は、富士山麓に広がる青木ヶ原樹海での夜間パトロールにドローンを活用する取り組みを始めた。自殺防止対策の一環で、ドローンの運用は海岸警備や夜間警備の実績を持つ株式会社JDRONE(ジェイドローン、東京)が担う。9月18日は富士河口湖町の景勝地、富岳風穴の隣接地にドローンやモニターを設置し、自動飛行のデモンストレーションや最初の取り組みを行った。国の天然記念物である青木ヶ原樹海は、観光名所が多く海外からの観光客も多く訪れる。一方で自殺多発地帯としても知られ、山梨県は見回りなどの対応を強化している。ドローンでの見回りは夜間の見回りと人影を発見したさいの声掛けを担う。
初日の9月18日には、富岳風穴の隣接地に拠点を整備した。見回り用にサーマルカメラを搭載したドローンDJI Matriceシリーズを用意し、自動充電ポートDJI Dock 2、DJI Dock 1に配備。スピーカーなど防災対応の装備をJDRONEが独自にカスタマイズしたセキュリティ用ドローンも待機させた。またドローンから届いた映像を受信するモニターなども準備した。
デモンストレーションではで見回り用ドローンがDJI Dock 2から離陸し、樹海上空を飛行した。この日はデモンストレーション用に樹海内をスタッフが歩きまわっていた。モニターにはドローンから送られてきた映像が温度の違いで白、黒の濃淡で表示された、とくに温度の高いところは赤で示された。ドローンの離陸から数分で、モニター内に不自然に動き回る白く動く点が確認できた。今度はスピーカーを備えたセキュリティードローンが離陸し、白い点が見えた地点に向かって上空から、散策路をはずれないよう促すメッセージなどを流した。メッセージは山梨県が専門家に相談したうえで練った。また上空から流す音声は入力を切り替えることで、肉声で呼びかけることができるようにもなる。
今回のプロジェクトでドローン運用の実務を担うことになったJDRONEは、海水浴客の不測の事態を警備するパトロールなどドローンを使った警備で実績を持つ。また2023年に吸収合併した当時の株式会社ヘキサメディアは、2021年に甲州市で果実盗難対策として不審者、不審車両を上空からドローンで発見、特定し盗難抑止につなげる取り組みを実施している。今回もこうした豊富な経験が生かせる。
山梨県によると、この事業の目的は「自殺企図者の保護」だ。県は対策として日中の時間帯には365日、パトロール員が自動車での巡回と遊歩道の徒歩での巡回を行っていて、保護の実績もあがっている。ドローンは、パトロール員の巡回が終了した夜間の見回りを担う。自殺企図者を発見したさいにはパトロール員に連絡をとって保護にあたる。必要に応じ警察とも連携する。
2023年に山梨県内で自殺とみられる死者が発見されたのは215人。人口10万人あたりの自殺者数26.8で2年連続全国最悪だ。3割は居住地が山梨県外であることもわかっている。
山梨県健康増進課の知見圭子課長は「ドローンによるパトロールを含めて様々な方面からアプローチし、自殺防止に取り組んでいきたいと考えています。青木ヶ原は自然が多様で名所も多く魅力あふれる場所です。こうした魅力で知られることを期待しています」と話している。