AAM開発の株式会社SkyDrive(豊田市<愛知県>)は2月24日、大規模展示会場、東京ビッグサイト(東京)の敷地を離発着場にして、型式証明の取得手続き中の機体「SKYDRIVE(SkyDrive式SD-05型)」のデモフライトを実施した。SkyDriveの機体が東京の上空を飛ぶのは今回が初めてで、2月28日までは一般にも開される。
デモフライトは東京都が採択した事業で、SkyDrive、三菱地所株式会社(東京)、兼松株式会社(東京)がコンソーシアムを組んで実施した。大阪・関西万博と同様、パイロットは搭乗させず遠隔制御で飛行させた。機体が型式証明を未取得のため、デモフライトであっても飛ばせる場所が限られる。航空管制圏との関係、地上での人々の往来、周囲の建物や構造物との距離など多くの条件のすべてを満たすよう調整したうえで、デモフライト実現にこぎつけた。
また、旅客運用を見越して搭乗者のチェックイン機能を持たせた搭乗ターミナルをトレーラーハウスに整備して現場に持ち込み、搭乗までの流れを模擬体験できるようにした。搭乗ターミナルは兼松が業務提携しているバーティポート開発で知られる英Skyports社と開発したもので、周辺環境や風向、航空情報など監視に必要な情報の収集や解析ができる機能を持つ。日本国内では今回が初披露で、実際にはポートの設置環境ごとに最適な構造、規模、デザイン、設計などを開発する考えだ。同社のポートはすでにニューヨークやドバイでは公開されている。
この日のデモフライトでは東京ビッグサイトの海に面した駐車場に20m四方のエリアをマークして離発着場に仕立てた。機体は正面を海に向けるように離発着場に置かれ、報道陣はそこから50mほど離れた場所で、機体の後ろ側を見る形で待機した。飛行前点検のあとローターが回転をはじめ、準備が整ったところで回転を速めると機体が垂直にふわりと浮上した。
離陸した機体は上空4~5mほどの空中で静止したあと、正面の方向に前進し海の上に進み、海面から13mほどまでやや高さを上げながら150mほど進んだ。その後機体は海上で旋回し、正面を離発着場側に向き直し帰路をたどりはじめた。離発着上の真上で静止した後、離陸した場所に正確に着陸した。この間約3分30秒。機体の全長が約11.5m、全幅が約11.3m、高さが約3mと日本で型式証明の手続きに入っている機体では最小クラスのコンパクトさが可能にした小回りの効く運用と正確な着陸をアピールした。スピードは4m/sec(約時速14㎞)だった。通常運航では時速100㎞を見込んでいる。
なおデモフライト前後では、会場から約3.5㎞離れた東京ヘリポートを離陸したヘリコプターや羽田空港を離陸した飛行機が飛ぶ場面があり、来場者はそれぞれの発する音を比較し、SkyDrive機の優位性を再確認していた。
コンソーシアムの代表企業である三菱地所の土山浩平・丸の内業務企画部主事は「今回は旅客ターミナルの活用も見え据えた一体運用が特徴だと考えています。今回のターミナルは都内の臨海部という場所の制約、工期短縮などの条件を満たすためトレーラーハウス型の動産を活用したターミナルし、グループ会社である株式会社三菱地所設計(東京)のデザインをふまえました。電車の駅のように乗り物を利用するために欠かせないインフラとしてターミナルを用意した実証になっているところに意義を感じています」などと述べた。
旅客ターミナルの運用を担った兼松の中村康平・航空宇宙事業部第一課課長代理は、その旅客ターミナルの手続きをデモ。2棟の建屋をチェックイン前後で分かれ、チェックインは顔印象で済ませられる。また同時に体重を測定しデータを機体に送信することで安定飛行の最適化に反映させる。「顔パスで認証し、金属探知機で保安検査を済ませると、ラウンジエリアのドアが開き搭乗できます」などと説明した。
また、飛行後には東京都デジタルサービス局デジタルサービス推進部スマートシティ推進担当課長の大井征史氏が「みなさまに無事飛べる姿をお見せすることができてよかった。これから大きな成果につながると思っています」とあいさつした。
SDの福澤代表は、会場からの実用化時期の質問に対し「いま東京都と実証を進めている段階で、2027年にプレ実証をして、そのあと商用化というマイルストーンで進めています。東京以外では2028年に大分、大阪あたりでのスタートを目指しています」などと話した。
また、デモフライトは一般にも公開するが、天候によりフライトの可否を判断する。運航状況については以下の「X」SkyDrive公式アカウント(https://x.com/Skydrive_jp)で随時公表する。







SkyDriveはアブダビ首長国の政府機関である交通統合センター(ITC)とAAM(いわゆる空飛ぶクルマなどの先進的エアモビリティ)の社会実装に向けた協力覚書(MOU)を結んだと発表した。空飛ぶクルマ「SKYDRIVE」(SD-05型)の導入可能性を調査し、離着陸場や充電設備などのインフラ整備、エコシステム構築、事業化検討を進めることが盛り込まれた。アブダビはすでに複数のAAM企業と提携を拡大しており、SkyDriveにとっても今回のMOUをUAE展開の加速につなげたいところだ。
SkyDriveがアブダビのITCとのMOUの調印式は、2025年11月11日にアブダビで開催された自動運転技術、ドローン、スマート交通インフラをテーマとした国際的なイベント・展示会「DRIFTx 2025」で行われた。今回のMOUでSkyDriveは同社の「SKYDRIVE(SD-05)」をアブダビの都市交通に活用する可能性を探る。離着陸場としてのヴァーティポート整備や充電インフラの検討、AAMのエコシステム形成、需要調査を含む事業化の検討などが中心となるとみられる。SkyDriveはITCと協力してAAMの導入に必要となる制度面の調整や技術要件の整理も進めていく姿勢を示している。
SkyDriveの福澤知浩代表取締役CEOは、「世界の中でも空飛ぶクルマの早期商用化を目指し、インフラや規制の整備を先進的に進めているアブダビ首長国と提携できることを光栄に思います。今回の提携は『日常の移動に空を活用する』という、われわれの目標を現実のものにするために、非常に重要な一歩となると考えております。今後、ITCと協力しながら、アブダビ首長国の住民の方、ビジネスや観光で訪れる方に、革新的で持続可能な移動体験を提供できるように活動をおこなってまいります」とコメントした。
ITCのDr. Abdulla Hamad AlGhfeli氏は「われわれは、未来のモビリティへの移行を加速させるため、国内外での戦略的パートナーシップを進めています。今回の合意は、スマートで統合的な交通システムを構築し、最新の自動運転や先進的な航空モビリティの技術を導入するという、アブダビの強いコミットメントを示すものです。今後、人々の生活の質を高め、アブダビ首長国を先進モビリティシステムの世界的な中心地にするという、政府の統合交通インフラのビジョン実現に貢献します」と期待を示している。
SkyDriveは今回の合意以前からUAEでの事業展開を進めてきた。2023年にはAAMのインフラ開発を手掛けるカナダのVPortsと協力し、ドバイに設置が進む「AAMインテグレーター・ワールドセンター」を活用する覚書を締結している。また、2025年にはドバイのヘリコプターチャーター会社AeroGulf Servicesと同社の「空飛ぶクルマ」の導入を検討するMOUを交わした。今回のITCとの連携はこうしたUAEでの活動の延長線上と位置づけられる。ドバイの観光市場、アブダビの都市交通政策が現時点でのUAEでのAAM展開だ。
アブダビ政府はAAMを都市交通戦略の柱として掲げ、多くの国際企業と協力関係の構築を進めている。Joby Aviationとは飛行運航、訓練、製造拠点の検討を含む包括的MOUを締結しており、Archer Aviationとはアブダビ空港やEtihadトレーニングなど複数機関との協力関係の枠組みを構築している。また英Skyportsとはヴァーティポートネットワーク整備に関する協力が進むなど、AAM実装に向けたパートナーはすでに多岐にわたる。
アブダビは複数企業との連携を通じてAAM運用の実証基盤を整備する段階に入りつつあり、SkyDriveの参画はAAM実装の選択肢を広げる役割を担う。SkyDriveにとってもUAEでの実装に向けた取り組みが進む契機となる可能性がある。
一方、Joby、Archer、EHangなど主要プレーヤーも、アブダビの都市間移動、観光需要、物流用途などの領域でAAMの活用を見据える。SkyDriveを含む各社は今後、実装への道筋をかけて都市のニーズに合わせた運用モデル構築に取り組むことになる。SkyDriveは軽量機体をいかした短距離移動や観光用途に強みがあり、UAE市場で他社とは異なる運用領域を打ち出せる可能性がある。
