やよい軒 の記事一覧:2件
  • 2021.10.8

    プレナス、自社生産米を初収穫 スマート農業挑戦の新米をオーストラリア「やよい軒」へ

    account_circle村山 繁
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     持ち帰り弁当の「Hotto Motto (ほっともっと)」、定食レストランの「やよい軒」で知られる株式会社プレナス(福岡市博多区、塩井辰男代表取締役社長)は10月6日、埼玉県加須市で取り組んできたスマート農業による自社生産米の初収穫を行い、新米をオーストラリアの「やよい軒」に輸出すると発表した。プレナスは「生産性の高い稲作経営」を掲げ、ドローン散布、直播栽培、密苗栽培などいくつもの方法を取り入れており、今後、今年の作業や結果を検証し来年に生かす。プレナスは「来年は耕作面積を拡大しさらに検証を重ねてまいります」と話している。なおプレナスは同日、取り組みを紹介する特設ページ「スマート農業によるコメづくりへの挑戦」も開設している。

    「生産性の高い稲作経営」目指し、ドローン、直播、密苗、クラウド型水管理も

     プレナスのコメづくりは今年、コメ農家の経営環境に強い危機意識を募らせたことからスタートした。社内に商品開発、仕入れなどから精鋭を集めたコメづくり事業推進室を組織。生産性の高い稲作経営の確立を目指し、今年、埼玉県加須市に借り受けた農地を「プレナス加須ファーム」と、それまで使ったことのなかったドローンを使い、関わったことのなかった稲作に取り組んだ。9月下旬に初収穫を迎えたコメづくりについて。プレナスはこの日、プレスリリースを公表している。「自社生産米、初収穫」の見出しを赤のフォントで描いている。

     プレスリリースの内容は以下の通りだ。

    【スマート農業による米づくりの挑戦】 “米づくり”本年の振り返り、来年は耕作面積をさらに拡大

    コンバインによる稲刈り
    脱穀したての籾

    株式会社プレナス(本社:福岡市博多区、代表取締役社長:塩井辰男)は、持ち帰り弁当の「Hotto Motto(ほっともっと)」と定食レストランの「やよい軒」を国内に 2,863 店舗、海外 9 カ国・地域に 247 店舗の計3,110 店舗を展開しております(2021 年 9 月末現在)。

     

    当社は海外の「ほっともっと」、「やよい軒」に自社で生産した米を輸出するため、2月より埼玉県加須市に借り受けた農地“プレナス加須ファーム”にて、スマート農業を取り入れた生産性の高い稲作経営に取り組んでまいりました。このたび稲刈りの季節を迎え、新米を収穫する運びとなりましたのでお知らせいたします。

     

    プレナス加須ファームでは、5月の田植え以降、ドローンを使って水田に直接種をまく直播栽培や、稲を通常の倍の密度にした密苗栽培を導入し、苗を育てて水田に植える従来の移植栽培と共に、複数の栽培方法と多収米などを含む色々な品種を掛け合わせ、様々な組み合わせを検証してまいりました。また、水田の水量などを遠隔で操作するクラウド型水管理システムや、作業記録など日々のデータを“見える化”したシステムなど、ICT技術を活用して生産性の向上を図りました。

     

    生育が進んだ7月にはドローンを使って上空から水田を撮影し、葉色によって稲の生育具合を把握するとともに、必要な箇所に重点的にドローンで肥料を散布しました。その後天候にも恵まれ、9月上旬より収穫を迎えることができました。収穫した米は埼玉県内の自社工場で精米し、オーストラリアの「やよい軒」に輸出いたします。来年は耕作面積を拡大し、さらに検証を重ねてまいります。

     

    プレナスはこれからも、農業の生産性向上や耕作放棄地の抑制など、我が国農業の様々な課題解決の一助となるよう努めてまいります。

     

    【プレナスの米づくり】ホームページ  https://www.plenus.co.jp/brand/ricebusiness/

     

     

    ドローンによる直播の田植え(5月)
    生育状況をドローンで把握(7月)
     
    ドローンを使った葉色診断(7月) ⓒ2021 SkymatiX,Inc.
    稲刈り直前(9月)
    収穫の喜び(9月)
    初収穫を終えたプレナス加須ファーム
    初収穫を終えたプレナス加須ファーム
    プレナスがつくった米づくりの特設ページ「プレナスの米づくり|プレナスの米づくり|Plenus」

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
  • 2021.9.14

    「やよい軒」のプレナス、スマート農業のコメづくりに挑戦中  間もなく初収穫【DF】

    account_circle村山 繁
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     持ち帰り弁当の「HottoMotto (ほっともっと)」と定食レストランの「やよい軒」を国内外に3000店舗以上展開する株式会社プレナス(福岡市)が、埼玉県加須市で取り組んでいるコメづくりが間もなく収穫期を迎える。ドローンでの直播、農薬散布や、センシングなどのテクノロジーを使い、効率的に質のよい国産米を生産し、海外に輸出し、海外店でも自社産の国産米を提供する展望の第一歩だ。特筆すべきは、この事業に取り組む関係社員が、ドローンにも、農業にも初心者であること。農業従事者の減少に対する危機感と、日本のおコメを海外に届けたい情熱が元手の取り組みが、初めての実りの秋を迎える。

    農業もドローンも初めての“素人”チーム 「農業救いたい」の情熱で挑戦

    追肥のためにドローンを飛行させるプレナス米づくり事業推進室の担当者。2月に推進室が発足することになるまでドローンに触れたことはなかったという=埼玉県加須市、2021年7月14日

     プレナスは日本国内の「HottoMotto」や「やよい軒」のほかに、海外でも約270の店を構える。一部、日本からの調達もあるが、多くが現地での調達だ。これを自社生産の国産米に切り替えることを目標に、今年2月、社内で「米づくり事業推進室」が発足した。集められたのは直前まで商品開発や仕入れ、物件などを担当していた社員。農業もドローンも初心者ばかりだ。

     推進室は「生産性の高い稲作」を目指すことを決めた。重労働をできるだけ軽減できる方法で、どこまでできるか。ドローンもIoTも解析ソフトも使って、まずはやってみることにした。その結果は、翌年の稲作の貴重なデータになる。そんな実験的な色彩を帯びる事業だ。今年度の作物は、病害虫に強い地元埼玉県が奨励する「彩のきずな」、収穫量の多い「あさひの夢」のほか10種類以上だ。

     推進室が発足してすぐの今年2月、埼玉県加須市に約2.5ヘクタールの農地を借り「プレナス加須ファーム」として管理を始めた。田んぼの整備、種子の準備を進めてきた。

    散布ドローンは「FLIGHTS―AG」、葉色解析にSkymatiXの「いろは」

     5月には、ドローンで種もみをまいた。7月にはドローンを使って水田を上空から撮影し、葉色の色むらから生育具合を把握し、必要な箇所に適切な肥料を投下した。ドローンは散布用に株式会社FLIGHTS(フライト、東京)が開発した「FLIGHTS―AG」を採用。葉色解析のソフトウェアには株式会社SkymatiX(スカイマティクス、東京)の「いろは」を採用した。葉色解析のデータ取得にはDJIのMavic2 PROを飛ばした。

     作付けは5月10日からドローンを使って始めた。水田から2メートルほどの高さから約4メートルの幅に種もみをまいた。苗を田植え機で植えるのではなく、種もみをドローンでまく「直播」にしたのは、同社のコメづくり事業が、効率化、スマート化を進める実験の色彩が濃いためだ。実際、この日の作業は「田植え機による作業の半分ほどの時間」だという。

     また7月14日には地元行政や農業関係者が見守る中ドローンを飛ばした。ドローンが上空からとらえた映像をディスプレイに映し出すと、稲の根付き具合などが一目でわかり、のぞきこんだスタッフや様子を見守っていた関係者から「ほお」「分かりやすい」など感心する声があがった。

     ドローンの画像は葉色解析クラウドサービス「いろは」にアップロードして解析した。「いろは」は、画像解析技術と地理情報技術を活用し、空からのデータを図面としてみることができるようにするソフトウェア。農地を画像にし、WEB上で管理、記録することで、関係者と共有したり、過年度の状況を振り返ったりできる。この日もドローンから得られた「いろは」で解析して得られた画像データから、光合成が活発に行われているところとそうでないところを色で判別するなどを行い、精度の高い生育状況の確認が可能なことを実感した。

     肥料の追加投入が必要と判断した個所には、ドローンで追肥した。ドローンは液剤、粒剤のいずれも散布が可能で、この日は粒剤を散布した。

     IoTも活用している。田んぼにはセンサーを設置し水位、水温を観測。スマートフォンで現状を確認できる。水を供給する設備も整え、スマホと連動させ、水位が低いときにはスマホで水の供給を指示できる。

     「何をもって順調というのか、ほかの農家さんとは基準が違うと思いますが」と笑いながらも、現時点では順調だ。近く稲刈りをする。収穫した初めてのコメは、国産米として海外の店の一部に届けられる。初めての経験は、次年度以降の生産の土台となる。

     初年度の収穫量は10トン程度を見込む。今後3~5年かけて50トン程度にまで引き上げたいと考えている。その先に、同社の海外の店舗で年間に使う約1000トンを見据える。将来的には海外の自社チェーン以外の日本食店や小売店向けの輸出にも取り組みたい。生産拠点の拡充も検討している。

     当面は、ドローンなど先端技術を使うことで、安定的な供給と売り上げ拡大にどの程度めどがつくのかがカギになる。同社は「これからもお客様の満足と健康を実現し、人びとに笑顔と感動をお届けし続けることができるよう邁進してまいります」と話している。

    ※DF=記事中の株式会社FLIGHTS、株式会社SkymatiXはDRONE FUND投資先企業です

    ■米づくり事業推進室の佐々木哲也室長に聞く 「日本の農業の一助になれば」

    プレナス米づくり事業推進室の佐々木哲也室長とプレナス総務本部コーポレートコミュニケーション室の古賀雅也室長

     「米づくり事業推進室」は今年2月に発足し、私が室長になりました。私自身はコメづくりの初心者です。それどころかチーム全員がそうです。ほかのメンバーも直前まで商品開発、仕入れ、物件などを担当していた初心者ばかりが集まったチームです。

     『やよい軒』も含め国内のお店ではすべて国産米を使っていて、その量は約4万トンです。ます。その意味ではかなりのおコメを使っています。それだけのおコメを仕入れてきたわけです。

     ところが、仕入れ先である農業の現状は厳しくなっています。高齢化や、従事者の減少、コメの消費量も先細り。国も主食を減らす動きをしています。今年2月に「米づくり事業推進室」が発足したわけですが、その1年前にコメづくりの問題を考えるプロジェックトができてそこで調べてきたのですが、離農の進行も深刻です。農家の方にも話を伺いましたが「来年は仕入れられても、5年後はだれも残ってないよ」などという話も聞くようになりました。

     会社としておコメを仕入れられなくなると困るわけですが、われわれの危機感は、「会社が困る」という次元をはるかに超えています。われわれがコメづくりに取り組むことで日本の農業の一助になればいいという気持ちです。

     プレナスは事業でおコメを使いますが、文化を研究する部門もあります。精米工場も抱えています。おコメを大切にする会社なのです。唯一、生産だけ、手掛けていなかった。そこで生産から消費までのサプライチェーンのすべてに関与することで、総合的に、相乗効果も期待して、貢献ができることがあるのではないかと考えているのです。

     われわれは国内だけでなく、海外にも店舗を持っています。海外に260~270の店舗があります。おコメも扱っています。ただし、国によってクオリティ、価格、仕入れルートがばらばらです。一方でおコメは日本のものがおいしいと思っています。海外でも日本のおいしいおコメを食べて頂きたいと思っています。ですのでわれわれが生産したおコメは当面、海外向けに提供することを予定しています。これは日本の生産者さんとの競合を避けるためでもあります。短期的には企業のブランディング、産地のサステナビリティへの貢献を視野に入れています。海外に持っていくことに成功すれば、日本の農業の可能性を拓くことにつながるかもしれません。価格帯も中間層向け。スマート農業では「高級米を高価格で」という声も聞こえますが、我々の取り組みはそれを目指しているわけではありません。

     これからの農業は、少ない農家が大きな生産にシフトすることがテーマになります。従来の方法だと、重労働で規模拡大は難しい。2月に部署が発足し、春にはすぐ田植えという目先の問題もあり、負担の大きい作業は避ける必要がありました。そこで負担が少なくてすむ期待ができる直播にしました。

     「直播」そのものは新しい方法ではありません。歴史はあります。しかし日本では定着していません。その理由として言われていることのひとつに、チャレンジできる環境にいない農家が多い、ということがあります。新しい方法にチャレンジしても、従来の方法で見込める生産量の保証がないので、チャレンジしにくいということです。われわれは企業です。チャレンジできます。企業が取り組む価値はそこにあるのかな、と思います。「だからこそわれわれがやらなきゃ」と、推進室のみんなが感じていて、できることに取り組んでいます。

     ドローンでの直播もそのひとつです。ドローンを使ったのはこの数年で革新がすさまじいことと、日本の規模に見合っていそうなこと。海外の広大な規模の農業であれば、飛行機を使うとか、大型のトラクターを使うということがあります。日本の、少なくともわれわれの取り組む規模には、ドローンのサイズ感がちょうどいいと思ったのです。

     初心者なりにいろいろと考えてやっていますが、初心者は初心者です。よいコメがたくさん取れればいいと思いますが、それ以上に、今回の経験に価値があると考えています。今回の経験の結果がまもなく稲刈りという形で出てきます。結果に関わらず、楽しみです。

    水位などを測定するセンサーも取り付けた
    2021年7月14日の状況
    雑草の解析も色でわかる
    プレナスが採用した「FLIGHTS-AG」。担当者は「使いやすいですよ」と評判は上々だ
    ドローンで上空から俯瞰した時点で生育状況が外観できる

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。