大阪・関西万博開幕の2025年春までちょうど2年となった2023年4月13日、大阪万博機運を醸成するイベント、「咲洲プレ万博」がアジア太平洋トレードセンター(ATC、大阪市住之江区)で始まり、こけら落としイベントの「ATC OSAKA MIRAI EXPO」では、ドローンやいわゆる空飛ぶクルマに関する展示が中心的な存在感を示した。ATC OSAKA MIRAI EXPOの初日の13日には橋下徹元大阪府知事も行われ、多くに来場者でにぎわった。ATC OSAKA MIRAI EXPOで開幕した咲洲プレ万博は、今後年間50以上の催事を予定している。
ATC OSAKA MIRAI EXPOは、ATC OSAKA MIRAI EXPO実行委員会の主催、咲洲プレ万博実行委員会の共催で行われ、大阪府、大阪市、大阪府教育委員会、大阪市教育委員会、公益社団法人2025年日本国際博覧会が後援した。13~16日の4日間が会期で、平日の13、14日には「Business Day」として、先端技術の社会実装を見据えた展示や商談会、セミナーなどが行われた。
展示の中心はドローンやいわゆる空飛ぶクルマなどの関連技術だ。エアロファシリティ株式会社(東京)は、いわゆる空飛ぶクルマが着陸するためのポートを提案していて、豊富なヘリポート設置実績を生かしてポートの情報や、ヘリポートにも使えるゴム製マット「パズルマット」を告知、来場者にはつなげて使うマットのサンプルを見せたりした。同社は大阪・関西万博でっ会場内離着陸場運営協賛者に選ばれたオリックス株式会社(大阪市)や関西電力株式会社と協定書を締結している。
機体開発のスカイリンクテクノロジーズ株式会社(SLT、神戸市)も会場にブースを設け、同社が開発する6人乗りのチルトウイング型のリフト&クルーズ機の実物の6分の1の模型を展示した。会場では森本高広CEOも来場者を迎え、問い合わせや相談にていねいに応じていた。
販売プラットフォームなどのサービス開発を進めるエアモビリティ株式会社(東京)は機体メーカーと部品メーカーとを結ぶeコマースサイト「AeroMall」(https://aeromall.jp)などを来場者に紹介した。同社は販売プラットフォームの開発を手掛けていて、スイスの機体メーカー、デュフォー社(Dufour Aerospace社、チューリヒ)と日本市場での代理店契約を締結したことを発表している。
大阪府もVRゴーグルを装着して空飛ぶクルマのバーチャル乗車体験ができるブースを設置。多くの来場者がVRゴーグルをかけて歓声をあげていた。
そのほか、公益財団法人新産業創造研究機構(ナイロ、神戸市)が兵庫県と共同でブースを設置しこれまでの取り組みを紹介。過去に41の事業を実現させた実績がありブース内には連携した企業の名前が掲げられている。KDDIスマートドローン株式会社(東京)。TOMPLA株式会社(新潟市)、セブントゥーファイブ株式会社(東京)、日本化薬株式会社(東京)など、ドローンや空飛ぶクルマに関わる企業の名前も多くみられた。
また一般社団法人MASC(岡山県倉敷市)などが、中国EHang(イーハン)社のEHang216を展示し、来場者が写真におさめたり乗り込んだりしていた。
なお講演では橋下徹元大阪府知事が登壇。万博をテーマとしながら、空飛ぶクルマについても「大いに期待していますよ。推進しなきゃいけない立場ですからね」と述べた。
講演では少子高齢化への対応についての危機感を中心に言及し、「高度成長のリニア型の時代はすばらしいものを作ればよかったが、これからは成熟時代でサーキュラー型。すでにあるすばらしいものを、つなげて、まわして、付加価値にすることが大切」「万博はイベントではなくソリューション。今後、世界の各国も高齢化に突入することを考えると、日本は先取りして取り組んでいることになる。日本の取り組みは輸出できる。少子高齢化を強みに。一市民として無責任に言えば、人口減省のドバンテージを実験的につなげてソリューションとして提供していければいいと思う」などと持論を展開し、会場から拍手を浴びた。
大阪・関西万博の主催団体である公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は2月21日、大阪・関西万博で利用者を乗せた航行の実現をめざすいわゆる「空飛ぶクルマ」の運航事業者が、ANAホールディングス株式会社とJoby Aviation Inc.のグループ、日本航空株式会社、丸紅株式会社、株式会社SkyDriveの4グループ5社に決定したと発表した。また万博会場内の離発着場となるポートの運営を担う協賛企業について、オリックス株式会社が決定したと発表した。運航事業者に選ばれたSkyDriveの 福澤知浩代表取締役CEOは「今後も事業開発、機体開発に推進してまいります」と話している。
運航事業者に決まった4グループはそれぞれが別々の機体を運航する。万博会場では彩り豊かな機体が運航する見込みだ。
ANAHDとJobyは、Jobyが開発する「S-4」、JALは提携する独Volocopterが開発する「VoloCity」、丸紅は、提携する英Vertical Aerospaceの「VX4」を運航する見込みだ。
丸紅は子会社の丸紅エアロスペース株式会社とともに英Vertical Aerospace社と業務提携し、今年1月に25機分をの前払いして購入予約済みだ。同社は空飛ぶクルマの運航を想定したヘリコプターでの模擬体験ツアーを実施するなど、社会実装を視野に入れた取り組みを加速させている。
日本から選定されたSkyDriveは、商用機として発表された「SD-05」を運航させる見通し。同社は万博開催の2025年の事業開始を目指している。
Volocopterには住友商事株式会社が出資を決めており、日本企業のエアモビリティ事業参入機運が加速している。(「住商がVolocopterに出資」の記事はこちら)
SkyDriveは以下のプレスリリースを発表している。
「空飛ぶクルマ」(※1)および「物流ドローン」を開発する株式会社SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役CEO 福澤知浩、以下「当社」)は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)『未来社会ショーケース事業出展』のうち、「スマートモビリティ万博」における空飛ぶクルマの運航に係る事業者に選定されたことをお知らせいたします。
■2025年大阪・関西万博「未来社会ショーケース事業出展」応募の背景
当社は、「100年に一度のモビリティ革命を牽引する」をミッションに、「日常の移動に空を活用する」未来を実現するべく、2018年7月に設立し「空飛ぶクルマ」を開発しています。2019年に日本で初めて「空飛ぶクルマ」の有人飛行に成功し、2025年の大阪・関西万博開催時に大阪ベイエリアでのエアタクシーサービスの実現を目指して開発を推進してきました。
この実現に向け、大阪を舞台とした空飛ぶクルマの社会実装に向けた動きを加速させるため、大阪府が2020年11月に設立したラウンドテーブルに、当社も設立当初から構成員として参加し、様々なステークホルダーとの連携や事業検討のための議論、地域住民の理解促進や社会受容性を高めるための活動を行ってきました。また、2021年9月には更なる認知度や社会受容性の向上を目指し、大阪府、大阪市と連携協定を締結し、断続的な活動を行ってきました。
この度当社は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会が実施した、大阪・関西万博の「未来社会ショーケース事業出展」の、会場内ポート及び会場外ポートをつなぐ2地点間での空飛ぶクルマの運航の実施を目指し、運航に係る事業者の募集に応募した結果、選定される運びとなりました。
航路や飛行頻度、機体の稼働台数、サービス提供価格等の詳細は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会を含む関係者の方々と、順次協議、決定してまいります。
■株式会社SkyDrive 代表取締役CEO 福澤知浩 コメント
当社はこれまで、2025年大阪・関西万博にて、現在設計開発中の空飛ぶクルマ「SD-05」を皆さまにお披露目し、未来を感じていただくことを目指してまいりました。この度、「スマートモビリティ万博」空飛ぶクルマ事業における参加企業に選定いただき、大変感慨深く感じます。これまで様々な形で応援・ご支援くださった関係者の皆さまと、大阪・関西万博を目標に共に励んできた社員の皆に、心より感謝申し上げます。
万博の場に向けた空飛ぶクルマへのご期待を改めて実感し、これからのチャレンジに奮い立つ気持ちでございます。10年後、20年後に当たり前となる「日常の移動に空を活用する未来」を体感し、楽しみにしていただける場となるよう、今後も事業開発、機体開発に推進してまいります。
万博協会のプレスリリースは以下の通りだ。
公益社団法人2025年日本国際博覧会協会は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における「未来社会ショーケース事業出展」のうち、「スマートモビリティ万博」空飛ぶクルマの会場内ポート運営の協賛企業を決定しました。また、2022年12月27日より2023年1月20日まで募集(第1次)を行った空飛ぶクルマ運航事業について、参加企業を選定しました。
「未来社会ショーケース事業出展」の各事業については、引き続き多数の企業・団体と協議中であり、新たな協賛企業・団体については順次発表する予定です。
■協賛企業
オリックス株式会社(東京都港区 取締役 兼 代表執行役社長・グループCEO 井上 亮)
■協賛内容
万博会場内の北西に位置するモビリティエクスペリエンスに設置予定のポートの運営 (整備・維持管理・撤去を含む)を実施します。
■参加企業
・ANAホールディングス株式会社(東京都港区 代表取締役社長 芝田 浩二)及びJoby Aviation Inc. (アメリカ合衆国 カリフォルニア州サンタクルーズ CEO JoeBen Bevirt)
・日本航空株式会社(東京都品川区 代表取締役社長執行役員 赤坂 祐二)
・丸紅株式会社(東京都千代田区 代表取締役社長 柿木 真澄)
・株式会社SkyDrive(愛知県豊田市 代表取締役CEO 福澤 知浩)
■事業内容
万博会場内ポート及び会場外ポートをつなぐ2地点間での空飛ぶクルマの運航の実施を目指します。関係自治体や国の関係機関の協力を得て、具体的な取り組みを今後行っていく予定です。本事業の詳細については、今後関係者と協議の上決定します。
<ご参考>▽未来社会ショーケース事業について
未来社会ショーケース事業は、大阪・関西万博のテーマである「いのち輝く未来社会」を支える技術・サービスを、2025年以降の未来を感じさせる「実証」と2025年の万博にふさわしい「実装」の形で、「未来社会の実験場」となる万博会場の整備、運営、展示、催事などに活用し、国内外の幅広い参加者や来場者に、体験として提供する事業群の総称です。