一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が、設立6周年を記念して企画した「JUIDA創立6周年記念ウェビナー」をインターネットで公開中だ。内閣府、経済産業省、国土交通省、農林水産省、総務省のドローン関係部局の代表者がそれぞれの取り組みを紹介していて、レベル4実現への展望を概観できる。JUIDAの最近の取り組みや、9月に発表した石油化学プラントのドローン点検に関する新資格などの説明も行われている。
「JUIDA創立6周年記念ウェビナー」は、新型コロナウイルスの流行に伴い、JUIDAが毎年開催している周年セミナーのかわりに企画した。ドローンにかかわる行政機関がのきなみ登壇しており、それぞれの現在の取り組みを概観することができる。
登壇した内閣官房小型無人機等対策推進室の長崎敏志内閣参事官は、レベル4を目指すうえでの課題のひとつに環境整備と技術開発の連携をあげた。制度整備では、所有者情報の把握、機体の安全性確保、操縦者の技能、運航管理の4点が重要と位置づけ、すでに法案が成立している所有者情報把握については法の律施行に向けた準備を進め、「残る3点については2021年度までに制度化を果たしていく」と述べている。またドローンの新たなユースケースと社会実装の論点には、物流、災害対応、医療、警備の4点を列挙し、それぞれの考え方について言及している。
また総務省総合通信基盤局の翁長久(おなが・ひさし)移動通信課長は、LTEの上空利用申請処理機関の短縮について、「2か月かかっている審査期間を短くすることについて制度化を進めている。今年中に制度設計し、簡便な手続きでドローンへの搭載ができるようにしたい。たとえばキャリアに申請することにより1週間程度で認めるなどを考えたい」と話している。
そのほか、セキュリティ強化の取り組みや、登録制度の1年半後の開始計画、農業利用のうち散布などでの利用手続きの簡素化への取り組みなどが披露されている。
JUIDAの鈴木真二理事長、ブルーイノベーション株式会社の熊田貴之社長が石油化学プラントのドローンによる点検を可能にする新資格を説明。ジャパンドローン運営事務局の管埜寛之ゼネラルプロデューサーが「Japan Drone 2020」(9月29、30日に開催)の開催概要を説明した。開催概要は、このセミナーが「Japan Drone 2020」開催前日に公開されたことから催事の予告もかねているが、当時の開催に向けた思いや準備を知ることができる。
JUIDAの熊田知之事務局長は最後のあいさつの中で、JUIDAの取り組みを概観している。熊田事務局長はこの中で、株式会社アフロとの連携、プラント点検新資格創設、ドロミングラボの本格スタート、技術論文集『テックニカルジャーナル』の発刊、海外との連携や21か国30機関とのMOU(覚書)締結などに触れており、網羅している範囲の広さがうかがえる。
ウェビナーの視聴はここから申し込める。
視聴は無料で、動画の公開は10月23日、午後5時に終了する。視聴の申し込みは10月20日、午後5時まで受け付ける。申し込み後、2営業日以内に事務局がウェビナー情報をメールで送付する段取りとなっている。メールが届かない場合には事務局で問い合わせを受け付ける。
事務局が公開している式次第は以下の通り。
◇◇◇JUIDA創立6周年記念ウェビナー◇◇◇ [1]主催者挨拶 JUIDA理事長 鈴木 真二 『空の産業革命に向けた取組発表』 [2]空の産業革命に向けたロードマップの改定について ~我が国の社会的課題の解決に貢献するドローンの実現~ ◇内閣官房 小型無人機等対策推進室 内閣参事官 長崎 敏志 様 [3]空の産業革命に向けた総務省の取組について ◇総務省 総合通信基盤局 移動通信課長 翁長 久 様 [4]ドローンの利活用促進に向けた経済産業省の取組について ◇経済産業省 製造産業局 産業機械課 次世代空モビリティ政策室長 川上 悟史 様 [5]無人航空機に係る航空法の概要と環境整備に向けた取組 ◇国土交通省 航空局 官房参事官(航空安全) 成澤 浩一 様 [6]農業分野におけるドローンの活用状況について ◇農林水産省 生産局 技術普及課長 今野 聡 様 [7]「プラント点検上級操縦技能証明証の創設」 ◇ブルーイノベーション株式会社 代表取締役社長 熊田 貴之 様 ◇JUIDA理事長/福島ロボットテストフィールド所長 鈴木 真二 [8]JUIDA主催「Japan Drone 2020」最新情報 ◇Japan Drone 運営事務局 ゼネラルプロデューサー 管埜 寛之 様 [8]閉会挨拶 ◇JUIDA理事・事務局長 熊田 知之
内閣府が8月17日午前に発表した2020年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比7.8%減、年率換算では27.8%だった。マイナス成長は3四半期連続。新型コロナウイルス感染症の影響が直撃し、これまで最大の落ち込みだったリーマンショック後の2009年1~3月期(前期比年率17.8%減)を超えた。減少率としては比較可能な1980年以降最大と、深刻な落ち込みを余儀なくされた。非接触、非対面社会への移行が必要となる中、ドローン関連産業のリーダーは、価値ある未来を手繰り寄せる役割を担うことになりそうだ。
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う緊急事態宣言などにより、経済活動が停滞したことが影響した。特に民間需要と輸出の落ち込みが強烈だ。
民間需要のうち民間最終消費支出は前期比マイナス8.2%(年率マイナス28.9%)で、3四半期連続の悪化となった。消費増税の行われた昨年10~12月期のマイナス2.9%を大きく上回る落ち込み幅だ。民間最終消費支出の内訳をみると、家計消費支出が前期比マイナス8.6%(年率マイナス30.1%)と急落した。緊急事態宣言を受けた外出自粛や休業要請で、飲食サービス、宿泊サービス、輸送サービスの落ち込みが如実に映し出されている。
外需も輸出が前期比マイナス18.5%(年率マイナス56.0%)と急減。米国の都市封鎖などで自動車輸出が大幅に減少した。インバウンド消費もサービスの輸出にカウントされるため、需要がほぼ消えたことになる。
西村康稔経済再生相は会見で「緊急事態宣言の下で経済を人為的に止めていた影響でこのように厳しい結果となった。(輸出は欧米のロックダウンの影響で急減したが)今後は中国や欧米の経済回復が輸出をけん引していくことを期待したい」と述べた。
4~6月期のGDPについて、SMBC日興証券株式会社金融経済調査部の丸山義正チーフマーケットエコノミスト、宮前耕也シニアエコノミスト、今村仁義エコノミストは、比較可能な1980年以降の、現行の「08SNAや簡易遡及データに加え、連続性はないが、1955年以降について係数を得られる68SNAデータから、「第二次大戦後における最悪の落ち込みと位置付けられよう」と分析している。
あわせて、リーマンショックやバブル崩壊など過去の景気後退と比べ、コロナショックには4点の違いがあると分析した。それぞれ、①突然に落ち込んだ②金融システムが原因ではない③迅速な政策措置を講じた④需要刺激策が十分に機能しないーがその4点だ。対策を講じるにも過去の経験からはじき出した対応だけでは不十分となる可能性がある。
さらにデジタルトランスフォーメーションの必要性にも言及。「今後の課題として、対面でしか生み出せない価値があることに疑いの余地はないにせよ、実態を反映しないルールやレガシーのために対面を余儀なくされているケースも多く、真に物理的な対面が必要なケースに労力を振り向けるため、ルールとテクノロジーの両面で政府、経済主体が対応を進める必要がある。それが真のDXでもあろう」と主張している。
ドローン関連の経営者、ビジネスマン、研究者、関連担当を受け持つ公務員、知見のある議員連盟所属議員は、他の領域よりも幸いにしてDXに近いポジションにいる。日本社会が対面依存からの脱出や、脱出までの時間の短縮に力を発揮するタイミングであるといえそうだ。