仙台市は11月5日午前、津波避難広報訓練を行う。訓練では仙台市の津波情報伝達システム(屋外拡声装置)、緊急速報メール、広報車両に加え、ブルーイノベーション株式会社(東京)の「BEPポート|防災システム」を活用した仙台市津波避難広報ドローンなどを使い避難を呼びかける。訓電時間に指定エリアにいる市民や勤務者は、一時避難するなどして万が一に備え、避難行動の定着を図る。
ブルーイノベーションの「BEPポート|防災システム」は、仙台市が2022年、一宮町(千葉県)が今年(2025年)5月、沿岸防災を目的に導入し、運用を始めた。津波警報や津波注意報が出されると自動でドローンが離陸し、沿岸地域にアラート音を流し周辺にいる人々に避難を呼びかけるシステムで、職員が津波に遭遇する危険のある沿岸部に近寄ることなく避難を呼び掛けられることを目指している。今年7月30日午前8時24分のカムチャッカ半島付近で発生した地震に伴う気象庁の津波注意報で、仙台市、一宮町それぞれのドローンが出動し沿岸上空で避難を呼びかけるなど役割を果たした。11月の訓練ではこのシステムを訓練として活用する。
11月の訓練は仙台市が主催し、宮城県警察本部、仙台東警察署、若林警察署、宮城海上保安部、公益財団法人日本道路交通情報センター、東日本高速道路株式会社、民間協定津波避難施設などが協力機関として参画する。
訓練は「東北地方太平洋沖を震源とする地震が発生し、地震発生の3分後に宮城県に大津波警報が発表された。そのため、津波避難エリア1・2内(編集部注:仙台市が指定したエリア)の居住者等は、津波の到達予定時刻までに、津波避難エリアより内陸側への避難、または津波避難施設・場所への緊急一時避難が必要となった」と想定して行われる。
当日の午前9時48分から、津波情報伝達システム(屋外拡声装置)の避難広報を3階行い、緊急速報メールを午前9時48分に送り、消防車両・区広報車による避難広報は午前9時48分から10時30分にかけて行う。津波避難広報ドローンによる避難広報は午前10時00分から10時30分ごろに行われる計画だ。また巡視艇(宮城海上保安部)の避難広報も午前9時48分から10時30分ごろに行われる。
ドローンは初動対応として沿岸部で空から避難広報を行い、同じ時刻に出動する消防車両は内陸部をめぐるなど活動するエリアを分担するという。
仙台市とノキアソリューションズ&ネットワークス合同会社(東京都港区)は11月12日、プライベートLTEネットワークを使ったドローンの飛行と、ドローンの災害活用の実験を実施した。当日は仙台市の南蒲生浄化センターを起点にノキアドローンを3キロ離れた荒浜海岸まで飛ばし、津波警報が発令されたことを想定して非難を呼びかけたり、現場の状況を確認したりした。仙台市は2020年度中に市の海岸10キロでの実用化を目指している。

実験は、仙台市沿岸部で大津波警報が発令されたことを想定して行われた。プライベートモバイルブロードバンドネットワークソリューション「Nokia Digital Automation Cloud」を使い、仙台市宮城野区の南蒲生浄化センター付近の沿岸にプライベートLTEネットワークを構築。そのうえで、ノキアの完全自律型ドローンにスピーカー、HDカメラ、サーマルカメラを搭載してフライトさせた。
ドローンは荒浜海岸上空で、搭載したスピーカーから、事前に録音された音声を流したり、本部からリアルタイムで発した音声を配信したりする広報活動を実施。本部からは「津波警報が発表されました。沿岸付近の方は高台に避難してください」と呼びかけ、スピーカーからリアルタイムで声が届けられることを確認した。
また、ドローンからのHD映像やサーマルカメラ映像を受け取って、沿岸の様子を上空から確認したりした。
海岸から3キロ離れた本部で避難誘導活動ができることから、救援者が現場にかけつけるなどして津波にあう2次災害を避けられる有効な手段であることが実証された。
仙台市では東日本大震災のさい、避難を呼びかけるために荒浜地区に向かった職員2人が津波にあい死亡している。仙台市の高橋新悦副市長は「助けに行った方々が命を落とすことは、残されたわれわれにとってものすごく悔しい。二度とこういうことがないようにしたい。今回の検証はその意味では期待している」と述べた。
プライベートLTEはミッションクリティカルな状況下で対応できることが特徴。携帯電話で使われているLTE技術を、免許を持たない一般の企業、団体が専用ネットワークとして活用できるため、導入の期待が高まっている。今回の実験で使われたプライベートLTEは、TD-LTEネットワークで、TD-LTEネットワークを活用したドローンの飛行実証実験は国内では今回が初めてだ。
ノキアは、2017年に仙台市とICT技術活用する連携協定を結んでいてる。
仙台市は同士の海岸10キロを対象に、2020年度中の実用化を目指す考えだ。

