ホバーバイクの開発で知られる株式会社A.L.I. Technologies(東京)の米国法人で同社株式を100%保有する親会社、AERWINS Technologies Incの株式の取引が2月6日午前9時半(日本時間6日23時半)、米ナスダック市場で始まり、取引開始後に6.39ドルの初値を付けた。AERWINSはそれまで未上場だったが、すでに上場しているSPAC(特別目的買収会社)のPONO Capital Corp(米デラウェア州)と2月4日付で合併したことにより、2月6日以降、PONOからAERWINSに名称を変え、市場でAERWINS株として市場の取引が始まった。
米AERWINSが合併したPONOはSPACと呼ばれる事業会社の買収を目的とした会社でナスダック市場には上場済み。2月4日の取引では11.05ドルでこの日の取引を終えていた。未上場のAERWINSと合併し、その手続きが2月4日に終了したことから、週明けの2月6日以降、「AWIN」をティッカーシンボル(銘柄を識別するための証券コード)として、NASDAQ市場で取引されることになった。CEO、会長にはShuhei KOMATSU(小松周平)氏が就任している。
PONOの上場にはDRONE FUND創業者でエンジェル投資家の千葉功太郎氏が関わっており、昨年(2022年)8月には、PONOの第二弾となるSPAC、「PONO CAPITAL TWO」(ティッカー、PTWOU)も上場させている。今後PONO同様、未上場企業の買収で上場させるDe-SPACを進めるとみられる。
参考:「PONO CAPITAL TWOがNASDAQ上場」の記事はこちら
2月4日にA.L.I.が発表したDe-SPAC完了の発表は以下の通り。
株式会社A.L.I. Technologies(東京都港区:代表取締役社長 片野大輔、以下「A.L.I.」)は、A.L.I.の米国法人であるAERWINS Technologies Inc(米デラウェア:Chairman & CEO Shuhei KOMATSU、以下「AERWINS」)と、SPAC(特別目的買収会社)のPONO Capital Corp(米デラウェア:CEO Dustin SHINDO : Ticker Code “PONO”)が、当事者間のDe-SPAC契約による企業合併が完了したことをお知らせいたします。
この合併により、AERWINSの株式が、NASDAQ(National Association of Securities Dealers Automated Quotations)にて、「AWIN」のティッカーシンボルで米国ニューヨーク時間の2023年2月6日から取引開始予定です。
詳しくは、AERWINSのIRページを参照ください。
https://aerwins.us/investor-relations/
De-SPACによるNASDAQ上場は、日本国内史上初の事例であり、日本勢で唯一の上場エアモビリティカンパニーとなります。また、日本の製造業系スタートアップ企業で米国上場を果たした初めての事例とも言えます。
また、合併手続き完了に伴い、AERWINSのCEO(最高経営責任者)/会長/取締役として、Shuhei KOMATSUが就任いたしました。取締役メンバーは下記の通りです。
■取締役
伊東 大地
■社外取締役
山田 希彦
Steve Iwamura
Dr. Mike Sayama
さらに、AERWINSの役員に就任したメンバーは下記の通りです。
■CFO(Chief Financial Officer)
岡部 健介
■CPO(Chief Product Officer)
三浦 和夫
■Global Markets Executive Officer
伊東 大地
<A.L.I. Technologies 代表取締役社長 片野大輔>
当社のお客様、お取引先様、株主様をはじめ、創業以来支えてくださったすべてのステークホルダーの皆様のご支援、ご高配に心より御礼申し上げます。私の人生の夢は、日本発の技術力で世界を席巻する会社を作ることです。今回の米国上場によって、ようやくグローバル展開のスタートラインに立てたと思います。ここから皆様の期待に恥じぬよう頑張って参ります。
<AERWINS CEO Shuhei KOMATSU>
I think Japan is originally a manufacturing country. Precision is rooted based on Japanese culture. We will continue to pursue the possibility of new mobility with the culture of Japanese to be global company. I understand it is a big responsibility, but to talk about the ideal, I recognize that it is necessary to have the ability and I will devote myself to it every day.
<PONO Capital Corp / DIRECTOR 千葉功太郎氏>
今回のAERWINSの上場は、「日本のスタートアップを、SPACという枠組みを通じてニューヨークへ連れて行く日本史上初の大プロジェクト」と位置付けています。また、当社のようなディープテック企業は、米NASDAQに上場し、海外投資家に評価いただいた方が、よりグローバルでの成長と活躍が見込めるでしょう。米国ハワイ本社のPONO Capital のボードメンバーは、私を除きハワイ在住の日系アメリカ人です。「日本人と日系米国人とのコラボによって、ニューヨークへの架け橋になる」ことを願っております。
企業合併に関する詳細は、2022年9月7日のNASDAQからの発表を参照してください。
なお、AERWINSの株式はSBI証券、マネックス証券、他、国内からもご購入いただけます。(五十音順)
SBI証券 https://www.sbisec.co.jp/
マネックス証券 https://www.monex.co.jp/
当社は、「空中域(地面と空のあいだ、人の生活範囲の空中)から社会の仕組みを変えていく」をスローガンに、実用型ホバーバイク「XTURISMO」、エアモビリティプラットフォームとなる管制アプリケーション「COSMOS*」を展開しています。A.L.I. Technologiesは、既存の発想に捉われず、エアモビリティ(有人・無人)社会の実現に必要なシステムをグローバルに発信する日本発のスタートアップ企業として、イノベーションを起こし続けてまいります。今後も、「Establish the Theory」というセオリーや常識に囚われないミッションの実現に向けて、さらなる事業拡大と企業価値の向上に努めてまいりますので、引き続き変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
*COSMOS: Centralized Operating System for Managing Open Sky
DRONE FUND創業者でエンジェル投資家の千葉功太郎氏が社外取締役を務める特別買収目的会社(SPAC)の米PONO CAPITAL TWOが8月5日、米株式市場NASDAQに上場した。今後、米国株式市場への上場を目指すディープテック関連の日本の未上場スタートアップを主な対象に、PONO CAPITAL TWOとの合併に応じる呼びかけを本格化させる。SPACと合併を果たした未上場企業は、市場で株式が取引される上場企業となる。通常のIPOより簡易な手続きで米国市場に上場できる利点があり、上場を目指すスタートアップにとっては米市場上場への近道となる可能性がある。千葉氏は日本でスタートアップのムーブメントを起こす立役者の一人で、ドローン前提社会の構築にも大きな役割を演じている。今度はSPACを通じて日本のスタートアップをグローバルな成長に手引きする考えだ。
NASDAQに上場したPONO CAPITAL TWOは、SPAC運営の米Mehana Capital LLC (ハワイ州、CEO、Dustin Shindo氏)が設立した同社としてのSPAC第2号だ。第1号のPono Capital Corpは昨年8月に発足しており、CEOのShindo氏と知人である千葉氏がエンジェル投資家兼社外取締役として参画した経緯がある。第2号は1号の成功をふまえ、量産スキームとして設立した。千葉氏も1号同様に経営と資金面で参画するほか、日本国内の初期投資家を集めて資金調達をする役割と、日本のスタートアップから合併候補先を探し、上場させるDe-SPACプロセスに乗せる役割を担う。このため初期投資家の多くに日本人投資家だ。
一方、Shindo氏や、PONO CAPITAL TWOのCEO、Darryl Nakamoto 氏が、SPAC本体の上場実務や市場からの資金調達、IR活動、De-SPAC 実務などを担う。
特徴のひとつが規模1億ドル(約135億円)と、米国で主流の時価総額1000億円を超える大型SPACに比べて小型である点。テック関連株の世界的な急落で米国市場では大型SPACの合併が成立せず「空箱」呼ばわりされる状況さえあるが、小型SPACにとっては合併対象候補が増える追い風となっている。また外国為替市場で米ドルに対し円相場が安くなっていることも、ドル建てのSPACにとっては戦略が立てやすい環境ともいえる。
千葉氏はPONO CAPITAL TWOの上場について、「米NASDAQに上場し海外投資家に評価された方がグローバルでの成長と活躍が見込める日本スタートアップを、SPACという枠組みを通じてニューヨークへ連れて行く大プロジェクト」と位置付けている。ボードメンバーの大半がハワイ在住日系アメリカ人のため、「日本人と日系ハワイ米国人とのコラボによって、ニューヨークへのカケハシになる、を実現させたい」と意気込んでいる
また、これまでドローンやエアモビリティのスタートアップや関連産業の振興を、千葉道場やDRONE FUNDを通じて支えてきた経緯もあり、「日本のドローンや空飛ぶクルマのような、テクノロジーものつくり産業を、全世界で戦えるNASDAQ上場企業にしたい」との思いも強く、周回遅れ、などと言われる日本のドローン関連の眠れる技術が世界でSPACを通じて世界で脚光を浴びる可能性もある。
■SPACとは
Special Purpose Acquisition Companyの略で「スパック」と称され、「特別買収目的会社」と略される。未公開会社の買収を目的として設立される法人。自身は事業を行なっていない。上場後に株式市場から資金調達を行い未公開会社の買収を行う。SPACに買収された未公開会社は、従来の上場のプロセスを行わずに上場する。SPAC自身は事業を行っていないため、著名経営者や投資家が代表に就任したり参画したりして信用を獲得し、それを背景に資金調達することが一般的。従来のIPOに比べ短期間での上場が可能と言われる。一方SPACには上場から18カ月までに買収を周知するなどのルールがある。日本国内ではSPACを用いた上場はまだ認められていないが、2021年11月には岸田文雄首相が設置した「新しい資本主義実現会議」でSPAC導入の検討が盛り込まれた緊急提言がまとめられるなど機運が高まっている。