近鉄グループホールディングス株式会社(大阪市)が空飛ぶクルマの実現にまた一歩踏み出した。同社は4月7日、空飛ぶクルマ開発の株式会社SkyDrive(愛知県豊田市)への出資を決定したと発表した。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)での「空飛ぶクルマ」の実現を目指す。また大阪・伊勢志摩エリアなど近鉄沿線地域での空飛ぶクルマ事業の可能性を検討する連携協定の締結を協議中だ。
近鉄グループホールディングスは、株式会社大林組(東京)、関西電力株式会社(大阪市)、東京海上日動火災保険株式会社(東京)とともに、大阪での「空飛ぶクルマのエアタクシー事業」の実装に向けた「空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査」を実施することで、SkyDriveと連携している。2021年10月には大阪港の中央突堤でSkyDriveの貨物輸送ドローンを海上飛行させる実験を実施した。実験後には、SkyDriveの空飛ぶクルマ「SD-03」のモデル機を展示したレジャー施設「天保山マーケットプレース」に足を運び、主催者とともに空飛ぶクルマへの意欲を語るなど連携の強さを印象付けていた。
この日の発表は以下の通りだ(以下引用)。
近鉄グループホールディングス株式会社(本社:大阪府大阪市、代表取締役社長 小倉敏秀、以下「近鉄グループ」)は、株式会社 SkyDrive(本社:愛知県豊田市、代表取締役 CEO福澤知浩、以下「SkyDrive」)への出資を決定したことをお知らせいたします。今後、近鉄グループでは、2025 年日本国際博覧会(以下「大阪・関西万博」)において「空飛ぶクルマ」の実現を目指してまいります。また、両社では、大阪・伊勢志摩エリアなど近鉄の沿線地域における「空飛ぶクルマ」事業の成立可能性を検討するための連携協定の締結を協議中です。
近鉄グループは、運輸、不動産、流通、ホテル・レジャーなど暮らしにかかわる多様な事業を展開し、暮らしに新たな喜びや豊かさを提供することを目指しています。SkyDrive は、空飛ぶクルマの機体メーカーとして、日常の移動に空を活用することを目指し、2020年11月より大阪府が設立したラウンドテーブルの構成員として参加し、2021年9月には大阪府・大阪市と「空飛ぶクルマ」実現に向けた連携協定を締結いたしました。
これまで共同での実証実験の実施などの取り組みを行ってまいりましたが、「空飛ぶクルマ」の実現に向けた検討を加速するため、近鉄グループは出資を行う運びとなりました。
現在両社で、大阪エリアや伊勢志摩エリアなど近鉄の鉄道沿線地域やレジャー施設等を中心に、市場性調査やビジネスモデルなど、事業の成立可能性を検討する連携協定の締結を協議中です。
今後、近鉄グループでは、SkyDrive をはじめとする様々な機体メーカーや関連する技術や知見をお持ちの企業様と協業して、2025 年の大阪・関西万博において「空飛ぶクルマ」の実現を目指してまいります。
■ コメント:近鉄グループホールディングス株式会社 小倉敏秀代表取締役社長
近鉄グループでは、社会の構造が大きく変化する中、共創による豊かな社会の実現に向けた取り組みを進めています。このたび、国内で唯一有人飛行試験に成功し、「空飛ぶクルマ」のフロントランナーである SkyDrive さんへ出資させて頂くことになりました。今後、鉄道など既存交通との結節による移動の利便性向上、離発着場を核としたまちづくり、観光・レジャー用途での観光地の魅力向上などを検討し、「空飛ぶクルマ」を通じた魅力ある社会づくりに貢献してまいります。
■コメント:株式会社 SkyDrive 福澤知浩代表取締役 CEO
近鉄グループさんとは、SkyDrive 創業以来、空飛ぶクルマ実装に向けた議論や活動を一緒にさせて頂いています。2021 年 10 月には、地域住民の方々の理解と社会受容性を高めるために、「空飛ぶクルマによるエアタクシー事業性調査」を共同で実施させて頂き、今回、出資頂く運びとなりました。近鉄グループさんは、運輸・ホテル・レジャー・流通などの領域で、地域の方々と直接接しながら、人々の暮らしに喜びや豊かさを提供されています。SkyDrive のビジョンである「空を、走ろう」が、近鉄グループさんの各領域とシナジーを生みながら広がっていくことを目指し、まずは、大阪エリアや伊勢志摩エリアにおける空飛ぶクルマの社会実装を目指して参ります。地域経済の発展ならびに、安全で楽しく便利な暮らしの実現に貢献できるよう精進して参ります。
株式会社大林組(東京都港区)、株式会社NTTドコモ(東京都千代田区)、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社(東京都港区)は、屋内建設現場でドローンを自律飛行させて撮影させて進捗を管理する実験を実施した。ドローンは100カ所以上の管理個所を自動撮影した。撮影は日付をあけて3回実施。同一個所の画像を選びだし、最新データと過去データとを照合できることを確認した。「工区」などの手入力が不要で、効率的な進捗管理につながる期待が高まっている。
実験ではAIドローンメーカー米Skydio, Inc の「Skydio 2」を飛行させ、ドコモが技術検証用に開発したドローン飛行プログラム、NTTコムウェアのソフトウエアである「SmartMainTech」シリーズ「KnowledgeMap4D」を使った。
会場は東京・品川の建設現場の約500m²ある屋内空間で、Skydio2が空間内116箇所を記憶して自動飛行を実施した。時間帯や天候などの異なる環境で自律飛行が可能かどうかを見極めるtaため、2021年7月15日から8月3日の期間に、最大10日間あけて飛行させた。その結果、設定ルートを自動・自律飛行することを確認した。
また取得したデータを使って進捗管理ができるかどうかを「KnowledgeMap4D」を使って確認した。「KnowledgeMap4D」は取得画像を取り込んで3Dデータ化し、建設現場を再現した3D空間上にSkydio2の飛行軌跡や撮影点を配置した。これにより撮影時のSkydio2の位置や高度などを正確な把握できることを確認した。撮影した現場写真を3D空間上に反映するため、表示された点群の任意の点を選択すると、撮影場所単位で異なる日付の工事写真を表示させることができることを確認した。関係者は「時系列で容易に比較できることを確認しました」としている。
建設現場の記録や進捗管理では、作業工程ごとの状況写真、経過写真など多くの写真を撮影する。建屋内など写真だけでは位置の特定が難しくなることを想定し、「階」や「工区」などの位置情報を写真管理システムに手入力する作業が伴うことが多い。異なる日付の写真を比較するさいには、日付ごとに管理されたフォルダから同じ位置情報の写真を探す必要があり、入力、比較のそれぞれで手間と時間がかかることが多い。
今回3社が実証実験を実施したドローンを活用した進捗管理では手入力作業は不要で、比較するには3Dデータ上の任意の箇所をクリックすればその場所の写真を閲覧できる。撮影に使ったSkydio2も、機体に搭載している計6個のカメラで取得した映像から周囲の三次元環境と自己位置を推定することが可能で、障害物回避性能の高さが特徴だ。ドコモがSkydio2向けに開発した技術検証用飛行プログラムを使えば、多地点を通過するルートの事前設定もでき、GPSなどの位置情報が取得しづらい環境でも複雑なルートを自動・自律飛行できる。
3社は、今後「ドローンを活用した建設現場におけるさらなる作業の効率化に向けて引き続き連携していきます」と話している。