ドローンを利用したインフラ点検ソリューションを手がける株式会社ジャパン・インフラ・ ウェイマーク(大阪市中央区、JIW)は4月20日、電力設備、通信設備など社会基盤を持つ事業者7社と資本業務提携を締結したと発表した。柴田巧代表取締役社長はこの日WEBを利用した会見に登壇し、点検作業の効率化を実現させるAIの共同開発に取り組むと表明した。DroneFundも同日、2号ファンドからJIWに出資すると発表した。
JIWが資本業務提携を結んだのは、東京電力パワーグリッド株式会社、北陸電力株式会社、大阪ガス株式会社、 西部ガス株式会社、 東洋エンジニアリング株式会社、株式会社NTTデータ、DroneFundの7社。資本提携にあたってJIWが第三者割当増資を実施。提携各社はJIWの普通株を取得した。西部ガスは、2019年7月に組成したSGインキュベート第1号投資事業有限責任組合を通じて取得した。共同開発、設備の共同保全のほか提携各社から事業を受託する。
JIWの柴田巧社長はこの日の会見で、冒頭に、新型コロナウイルス感染拡大防止の第一線として危険と隣り合わせで活躍する医療従事者に感謝を述べた。そのうえで生活や産業の基盤となるインフラ事業者を重ね合わせ、厳しい環境下での作業が生活や産業基盤を守っていると指摘。「FIELD WORK AT HOME」を掲げて、現場のデジタル化、自動化を進め、現場環境の改善を目指す方針を改めて表明した。
会見の中で柴田社長は、JIWが1年間に1500の設備を点検した実績や、効率化を進めている現状を報告。すでに作業時間の最小化を進めてきた一方で、さらなる効率化のためには現場で撮影された写真などのデータを分析する作業の自動化が必要になると指摘した。このため今回の提携に参加した各社とは、自動化に必要な膨大なデータを提携各社で持ち寄り、業界を超えてAIを共同開発する。
柴田社長は「ベンチャー企業のスピード感と、民間インフラ事業者の工夫によって、維持管理コスト削減を実現し、それを日本全国に広めることが使命」と述べた。
会見では提携した7社を「1年目に参加頂ける企業」として紹介しており、「今後もご協力頂ける企業様をお待ちしております」と述べるなど、提携企業の拡大にも意欲を示した。
JIWは2019年4月にNTT西日本の子会社として発足したドローンを活用したインフラ点検ベンチャーで、昨年7月にはドローン点検大手であるマレーシアのエアロダイン社と提携、今年1月にはAIドローンを開発している米SKYDIO社と提携するなど活動を活発化させている。
AIドローン開発の米Skydioが日本市場に参入することになった。ドローンでのインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(本社・大阪市、JIW)は1月22日、米Skydio.Inc(カリフォルニア州、Skydio)と、点検のための特別仕様機「Skydio R2 for Japanese Inspection」(J2)の開発を完了したと発表した。また両社は同時に、この開発機J2を使った橋梁点検を、東南アジアと日本で展開する独占パートナーシップを締結したことも発表した。点検のトライアルを実施することも決め、希望事業者の募集も開始した。
米SkydioはAIとコンピュータビジョンに高度なロボティクスを組み合わせたドローンシステム開発で知られ、2018年2月に13のカメラを搭載したコンシューマー向け「R1」、2019年10月にはカメラを6つにして小型、軽量、長時間化させた後継機「R2」を発表した。R2発売前の2019年7月からティザー広告の公開をはじめると、草木が生い茂る丘陵で疾走する自転車をドローンが見失うことなく自動追尾する動画が反響を呼んだ。10月には機体を発売。発売翌日にはHPで「完売」を報告するほどだった。
昨年7月には統合ドローンソリューションを提供する米CAPE社(カリフォルニア州)が、商用ドローンの統合的なセキュリティ確保を目的に発表した「Cape Preferred Partner Program(P3、ケイプ・プリファード・パートナー・プログラム)で、DJIとの統合を中止し、Skydioの参加を発表している。
JIWとの点検のための共同開発機J2は、このR2がベース。R2はプロペラが折り畳みできるコンパクト設計のVisual SLAM搭載機。60fpsに対応した4Kカメラ6機で機体の周囲を全方位で見渡せる。45メガピクセルの画像をリアルタイムで収集し、毎秒1・3兆回の演算ができるAIで解析する。障害物を検知し避けながら飛行することが可能だ。また特定の人物の動きを予測し先回りして撮影することもできる。ジンバルは3軸。スマートフォンのアプリのほか、専用コントローラーでも制御できる。バッテリーは本体の底に脱着する。
J2では、こうしたR2の機体性能はそのままで、点検用に特別機能を装備した。衝突回避の範囲を、従来機で基準点から150センチだった距離を50センチ以内に収まるように設計。これにより、三角形の部材同士をつなぎあわせたトラス構造の橋梁など狭い空間で作業を容易にした。また、橋梁の裏側のオルソモザイクを取得できるようカメラが機体の真上に向くようにした。さらに非GPS環境下での画像でもGPS座標が取得できるよう、機体全方位を確認できる特性をいかしGPS座標をExifファイルに記録。非GPS環境下の画像でクラックなどの異常を検知した場合、その場所をGPS座標と照合し特定できる。ドリフトがあった場合でも機体がGPS環境下に出た時点で補正できる。
これによって、点検個所の拡大、点検精度の向上、工期短縮化とそれに伴うコスト削減が図る。点検個所としては、橋梁床板、送電設備、変電設備、建築物の屋内、灯台、鉄道橋梁などを想定している。
JIWは昨年7月からJ2の開発に着手。米国で開発してきたが、昨年11月に電波法の緩和で、技術適合証明(技適)未取得機の実験飛行が可能になったことから、国内でも実験を重ねてきた。急こう配の渓流に築造された砂防ダムの点検実験では、機体が勾配をスムーズにたどり、渓流を覆う草木を避けながら自律飛行する様子が確認できた。
JIWの柴田巧代表取締役社長は「点検作業員の負担軽減や人事不足解決のためにドローンを活用する動きは活発化しているが、どうしても点検の専門知識を持たないドローンパイロットが飛行させ、その後点検の専門家が確認する必要があった。効率化に限界があった。J2なら点検の専門家がドローンを自律飛行させて点検させることに道を開く。自動車がマニュアルミッションからオートマチックに転換したほどのインパクトがあると思う」と、点検作業の大幅な効率化を展望している。
JIWはSkydioと共同開発した「J2」を使った橋梁点検を、日本と東南アジアで展開する。点検作業はJIWと、同社が認めたパートナーだけが展開できる独占パートナーシップに基づいて実施する。現時点では日本国内で2社、海外勢では昨年7月に業務提携した、世界25カ国でサービスを展開するマレーシアのドローンソリューションカンパニー、Aerodyne gronpがJIWのパートナーとなっている。
点検事業は、J2が技適を取得したのちに展開する。技適取得は4月ごろになる見込みだ。ただそれまでの間もトライアルは継続する。さまざまな環境での点検効果を確認するため、同社のトライアルに有償で参加を希望する事業の募集も始めた。
募集対象は、J2利用のインフラ点検を希望する企業で、募集期間は1月22日から3月31日まで。メールか電話で問い合わせを寄せたうえで、JIW担当者と打ち合わせを実施する。
問い合わせ先は以下の通り
・株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク 管理部
・電話:03-6264-4649
・メール:info-support@jiw.co.jp
東京モーターショー2019の呼び物のひとつとなったドローンでは、展示のほかにカンファレンスやレースも開催されモーターショーの刷新を印象付けた。FAI Drone Tokyo Racing & Conference実行委員会は11月1日に、ドローン前提社会を率いるキーマンを招いたシンポジウム「ドローン前提社会を目指して」を開き、1日、2日にかけてFAI(国際航空連盟)公認のドローンレースを開催し、両日とも来場者を魅了した。
カンファレンスでは、DroneFundの創業代表パートナーの千葉功太郎氏が、「日本は課題がいっぱいある課題先進国。その特徴はメリットにかえていくことができる。政府は2022年にレベル4を実現するとコミットした。これは先進国では初めてのこと。ドローンについてはよく、日本が世界からで遅れているといわれるが、そんなことはない」と期待を込めた。そして、これからさまざまな取り組みを進めるうえで、大事なことは「まずはやってみること」と指摘した。
続いて登壇した内閣官房小型無人機等対策推進室長﨑敏志内閣参事官は「安全を守ることでドローンの普及につなげたい」、また総務省移動通信課の荻原直彦課長も「ドローンを飛ばして空の基地局のように使おうとする場合、申請から2~3カ月かかるので、現在、制度整備に取り組んでいる。2020年中には、前日とか、せめて前々日とかにインターネットで申し込めば当日に使えるようにできないか検討している。電波の手続きがドローンの普及の支障になることがないようにしたい」と、ドローンの普及を支援することを表明した。
「課題を明確にするためのセッション」では、A.L.I.Technologiesの片野大輔代表取締役社長が進行をつとめる中、慶應義塾大学SFC研究所・ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が、「社会受容性につながる活動が大切になる。ドローンが当たり前に受け入れられる社会をつくるには、さまざまな実例が必要になる。キーワードは実例による啓発という意味で『ラフコンセンサス』。さきほどの、とりあえずやってみよう、という提案ははまさにそれにあたる」と躊躇なく取り組める環境づくりの重要性を説いた。
そのほか、千葉功太郎氏は2015年4月22日に首相官邸で不審ドローンが発見された事件を「あれで全国民が知ったのである意味では、ラッキーだった。だれでも知っているのだからネガティブからポジティブになればいいだけ」と指摘した。株式会社自律制御システム研究所の鷲谷聡之COOも「これまでの3年間は夢だったものを現実にする時間だった。今後3年は、明確に描けている目標に猪突猛進で動く時間」と述べた。
このあと、株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(JIW)の柴田巧社長、KDDI株式会社経営戦略本部次世代基盤整備室の博野雅文グループリーダー、名古屋鉄道株式会社の矢野裕取締役常務執行役員、株式会社プロドローンの河野雅一社長、NECのロボットエバンジェリスト西沢俊広PSネットワーク事業推進本部マネージャー、株式会社日立製作所ディフェンスビジネスユニットドローン事業開発センターの横山敦史部長代理が登壇し、自社の取り組みを紹介した。
JIWの柴田氏は「点検のオペレーション事情は、各社に話を聞いてみると電力も道路もガスも同じ状況だった。そこで、『オペレーショナルエクセレンス』を提供する会社を設立した。現状では作業の2~3割がドローンによる目視飛行。ドローンの自律航行などの自動化に置き換われば生産性は5割向上する」と述べた。KDDIの博野氏は「2023年度に5Gの基地局を5万局開設する。ドローンは優良なユースケースで、目視外飛行がいわゆるスマートドローンの事業のコアと考えている。まずは産業面では監視、警備で、コンシューマー向けではエンタメになるだろう」と述べた。
KDDIは今回、日本で初開催されることになったFAI公認ドローンレースで5Gを提供し、レース中継やライブ配信を支えた。
名鉄の矢野氏は、鉄道会社と空との関係をこれまでの歴史から説明し、今後、ビジネスとして成立する未来が開けているのは、サービスの代替、周辺ビジネス、ドローン前提社会のインフラ整備と説明。「作業の代替としては、1990年代に登場した無人ヘリが、数の上で2005年に有人機を逆転した。有人機パイロットの養成に時間がかかることを考えると、これからも無人機が伸びる。周辺ビジネスでは、自動車産業がメタファーになる。前提社会のインフラ整備としては、管制システムが大事だろう」と話した。
プロドローンの河野氏は、知財を重視していることを説明。「特許はロボットアームなど94件ある」と説明したうえで、「ドローン配送は中距離、長距離にこそ向いている。ドローンによる300キロ配送は実現できる。近い将来、人の手を介さないAGVも活用した輸送プラットオームができる」と展望した。
NECの西沢氏は、NEDOの究として取り組んでいる運航管理機能を紹介。「目的の異なるドローンが同じ空域で飛ぶことを管理する。1平方キロメートルに1時間で100フライトを目標に掲げ、実際に146フライトは達成した。都市部の物流がターゲットなので、きびしい目標をたてた。また最大37機が、1平方キロメートルで同時飛行した」と成果を説明した。日立の横山氏は、「目指しているのは飛ばすことでも作ることでもなく、社会課題を解決していいことをもたらすPOWERING GOODだ」と強調した。また国際標準化の議論でも日本勢が積極的に関与している実態を紹介した。
登壇者はこのあと、TMI総合法律事務所の弁護士、新谷美保子氏と長﨑内閣参事官のファシリテーションにより行われたパネルディスカッションにも参加し、さらに議論を深めた。
FAI Drone Tokyo Racing & Conference実行委員会は、11月1日、2日にFAI(国際航空連盟)公認のドローンレースも開催。1日の予選に出場した世界各国から出場した約40人の選手から、上位16人が2日の準々決勝に進み、準決勝を経て、決勝には日本人4人が進出。国内ランキング1位の岡聖章選手と、 川田和輝選手(小学5年)、上関風雅選手(小学5年)、小松良誠選手(高校1年)が熱戦を繰り広げ、岡選手が優勝した。
決勝ではレースの合間にアイドルグループでイベントアンバサダーを務める日向坂46がライブパフォーマンスを披露し、会場を埋め尽くした来場者がライブとレースとを堪能した。
カンファレンスでKDDIの博野氏が伝えた通り、レースの様子はKDDIが開発した5G(第5世代移動通信システム)を活用した超低遅延4K伝送システムで戦況をリアルタイムで会場内の大型モニターに投影し、会場を盛り上げた。
また日向坂46のライブイベントでは、人気DJピストン西沢氏がリミックスした「誰よりも高く跳べ!」や「ドレミソラシド」などの人気曲を披露した。
レースの観戦者は4000人程度とみられ、ドローン初心者にも楽しんでもらうためのステージの第一歩を踏み出した。