中国のドローン物流大手ANTWORK社は10月15日、 中国民間航空局(CAAC)から、都市部での商用ドローン配送を可能にする「特定UASパイロット運用承認」(Specific UAS Pilot Operation Approval)と、「UAS配送ビジネスライセンス」(UAS Delivery Business License)を取得した。規制当局が都市部でのドローン配送を正式に認めたケースはANTWORKが世界で初めてとみられる。今後、中国で1日あたり1000件の商業ドローン配送を運営する計画を表明しているほか、世界での展開も視野に入れいている。日本ではブルーイノベーション株式会社と業務提携を結んでおり、日本でのサービス導入、拡大が期待される。
ライセンスの授賞式は中国・杭州で行われ、CAACの Lv Erxue副局長がANTWORKのZhang LeiCEOにライセンスなどを渡した。
ANTWORKはこれまで3年間、杭州市などで2万回以上、合計60,000 km以上の試験飛行を繰り返し、CAACが管轄している「SORA」と呼ばれる厳格な運用リスク評価に合格していた。
ANTWORKのZhang LeiCEOは「ANTWORKはまもなく杭州市で1日あたり1000件の商業ドローン配送を運営する予定です。 その後、世界中の100を超える大都市に都市内航空ネットワークを構築し、取引先と消費者に高速で信頼性の高い航空サービスを提供することを目指します」と話しているという。
ANTWOKは、ドローンやAGV、人工知能を組み合わせた全自動デリバリーシステムの開発を手掛けるベンチャー企業で、物流上の大きなテーマのひとつである、ラストワンマイルと呼ばれる玄関先までの配達課題の解決に取り組んでいる。中国郵政と共同で中国初の速達配送をはじめたほか、中国家電量販店「スニン」や、アリババグループの物流運用会社CAINIAOなどにサービスを提供しているなどの実績を持ち、2018年には広州市内のスターバックスと提携し、近隣のオフィスビルにコーヒーをデリバリーするサービスを提供して話題を集めた。
日本ではブルーイノベーションが7月に同社と業務提携を締結。ANTWORKのドローン物流サービスを日本に導入展開するために、ブルーイノベーションの開発するBIポートに接続することを表明しており、今後、国内外での物流サービスの共同開発などに期待が寄せられている。
ブルーイノベーション株式会社の熊田貴之社長は17日、ドローンが高い精度で離着陸できるだけでなく、自律的に地上を走行するAGVが運んできた荷物を受け取るなどの機能を持つポートについて、「間もなく公表します」と予告した。横浜市の総合展示場、パシフィコ横浜で開催されたセミナーに登壇し、同社の取り組みを紹介する中で言及、参加者がメモを走らせていた。
熊田社長が登壇したのは、「サービスロボット開発技術展、産業用ロボット開発技術展、ロボットITソリューション展、次世代モビリティ開発技術展」(主催、横浜ロボット開発技術展実行委員会)で行われた「ロボット・モビリティ専門セミナー」。熊田氏は「ドローンビジネスの最前線」について、同社の独自統合システム「ブルー・アース・プラットフォーム(BEP)」、SORAPASSなどを紹介し、「豊かな生活の実現に貢献する」と改めて宣言した。
講演では冒頭、熊田社長がブルーイノベーションのこれまでのの取り組みを紹介。この中では、ドローンの担い手を育成する必要性が高まると感じて、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の設立に関わり事務局を運営していることや、その後、点検、監視などのソリューションを開発することに注力し、「One Command Full Mission」を実現させるシステム「ブルー・アース・プラットフォーム(BEP)」の開発にたどりついたことなどを説明した。またBEPについて、情報統合管理、サーバー通信、自己位置推定システム、操縦システムの4つのサブシステムで構成されている、なども説明した。
具体的な活躍の現場として屋内警備ソリューション「T-FREND」、スイスのFLYABILITY社が球体ドローン「ELIOS」を活用した屋内点検事業、物流用ドローンポートの開発による物流ソリューションなどの事例を紹介し「それぞれにBEPが組み込まれている」と説明。9月22日に発表したばかりの7つのセンサーを搭載したELIOSの新型機、「ELIOS2」を日本市場に投入したことも紹介し、動画を投影しながら解説した。
最近は、屋内でフライトをさせることで課題を解決する、インドアフライトプラットフォームAMY(エイミー)の活用を推進していることも紹介。倉庫内棚卸、点検などのソリューションを展開していることを強調した。自己位置は誤差がプラスマイナス1センチのレベルで、「現在、倉庫内の在庫管理などでの展開に問い合わせが非常に多い状況」と説明した。
さらに、最近力をいれていることとして、「物流ソリューション」を提示。パーキンギシステムのIHI運搬機械株式会社や7月に提携した中国の物流会社ANTWORKと、基礎研究から4年かけて開発した離発着ステーション「BIポート」を、「間もなく公表します」と予告した。
詳細の言及は避けたものの、ポートは、荷物が格納できるスペースをもち、荷物を運んできた自動ロボットから荷物を受け取り、次のモビリティに受け渡す機能を持っているといい、たとえば、倉庫からAGVで持ち込まれた荷物をポートにいったん格納し、ポートで待機しているドローンが荷物を自動で積み込んで配送をするイメージだと概要を説明した。
熊田氏が会場でANTWORKのPR動画を投影すると来場者はスマホをかざすなどして撮影していた。
熊田氏はポートについて、屋内外で活躍するドローンの離発着として活躍することを想定していて、「警備、点検、エンタメ、物流でポートを設置し、離発着ステーションの提供でドローンの産業振興をサポートしたい」と話した。