空飛ぶクルマなどパーソナルeVTOLの開発ベンチャー、テトラ・アビエーション(東京)は9月22日、埼玉県内にある同社工場で学生向けの見学会、説明会を開催した。会場には2020年2月に米国で開催された航空機開発コンペ「GoFly」のファイナルで、世界の頂点に立った機体が置かれ、中井佑代表やメンバーが機体を前に、開発の背景や経緯、設計思想、苦労話などについて披露した。見学会には小中学生、高校生、大学生の8人が参加し、話に聞き入り、開発者に質問をしたり、実機をのぞきこんだり、写真に収めたりと好奇心を全開にしていた。
見学会は大きく、テトラのメンバーによる説明と、機体に触れ合う時間とで構成された。前半の説明の中で、中井代表が開発の背景やテトラの取り組みを概観。最初に「日本の都市部では自動車が1時間に15㎞しか進めない」「クルマに1時間乗ると、22分は信号で止まっている」など身近な例をあげながら、都市交通の問題点を指摘して参加者の問題意識を刺激した。都市化の加速は交通問題の増加も引き起こし、結果として経済的損失をもたらし、そこで生活する人々の精神的問題や、健康的問題にもつながる実情を訴え、解決すべき緊急な課題であることを説明した。
この問題には、交通の担い手である自動車メーカーなど業界各社も対策を講じており、中井代表がそのいくつかを紹介。そのうえで、それだけでは十分といえないことを説明し、「別な方法」の対応することの有効性に言及。「空中で対応できるのではないか」と空飛ぶクルマが社会に果たす役割に触れた。
また中井代表は、空飛ぶクルマなどを通じた空中の活用には、技術開発のほかに、社会で広く受け入れられ、使われるための環境が不可欠であることを説明。そのために空飛ぶクルマの活用を段階に分けて設定する方法に取り組んでいることをあげ、各段階に適した開発を進めながら社会に広める方針を示した。
さらに世界的なコンペティション「GoFly」に参加したさいの開発のプロセスや、開発期間のメンバーの過ごし方、表情なども紹介。テラスでのんびりすごしている様子がスライドで映し出されると、参加者の表情に笑みが浮かんだ。そのほか、コンテスト出場機の性能、設計思想、開発の中で苦労した点や、手間のかかる修正を乗り越えた経緯、安全確保の重要性についても触れた。現在は、2021年7月下旬から米国ウィスコンシン州オシュコシュで開催される大規模航空展示会、EAAエアベンチャー2021への参加に照準を合わせ、出品機の開発を進めていることも明らかにした。
企画をスポンサードした東京海上日動火災保険株式会社から、保険会社が取り組む、新たな価値創造についてのプレゼンテーションもあった。
説明後には「GoFly」に出場した機体と参加者との触れ合いタイム。機体を取り囲んだ参加者は、のぞき込んだり、写真を撮ったり、触れたりと好奇心を満たしていた。「バッテリーはどこに取り付けるのですか?」「翼で得られる揚力は?」「プロペラを囲むダクトの意味は?」など次々と質問も飛び出し、機体の説明や、時間の使い方、新しい発想の生み出し方などライフハックに関する質問など、参加者とスタッフが幅広い話題で対話を繰り広げた。
この日の企画について、中井代表は「参加されたみなさんが、きちんと目を合わせて話を聞いてくださったことが印象的で嬉しかったです。これが興味関心を深めたり、新しい学びにつながったりすることを期待しています。試しに学んでみるとそれがきっかけとなって、新しい知識を獲得したり、理解を深めたりすることにつながることがあります。今回もいろいろな角度から話をさせて頂きましたが、そういったお役にたてればいいと思います。また、われわれにとっても社会から見られていることを実感すると気が引き締まったり、新たな発見があったりして、学びになります。本日もそうでした。こうした機会を通じて、みなさまに空飛ぶクルマに触れて親しんで頂きたいし、そのためにこれからもこうした機会を設けていきたいと考えています」と話した。
2020年2月に米国で開催された航空機開発コンペ「GoFly」のファイナルで、世界各国の参加チームから唯一、受賞チームとなった日本の空飛ぶクルマ開発ベンチャー、テトラ・アビエーション株式会社(東京)が、高校生以上の学生向けに、空飛ぶクルマの見学会を企画した。中井佑代表やメンバーが開発経緯を説明したり、質問に直接、答えたりする。空を飛ぶうえで重要な保険について、表に出ない話も含めこの企画のスポンサー、東京海上日動が説明し、質問を受ける。定員は10人。希望者は9月17日までに申し込みを。急げ。(申し込みはこちら)
テトラ・アビエーションは2018年に創業した、空飛ぶクルマなどeVTOLの開発を手掛けるベンチャー企業。GoFlyでの受賞以降、次期機体を開発中だ。
見学会を企画したのは、テトラが新型コロナウイルスの影響で学生向けのワークショップ、インターンシップが軒並みなくなってしまったと耳にしたことがきっかけ。
テトラは「ささやかながらわたくしたちができることとして、2030年に空飛ぶクルマを活用する世代である学生さんに、空飛ぶクルマといわれるeVTOLに触れられる機会として見学イベントを開催します。当日はコンペで飛行した実機も見られます。科学技術に興味ある学生さんの質問に答えたり、進学も踏まえ興味関心に答えたりします。東京海上日動火災保険さんからも飛行機にまつわる保険についてもお話しいただきます」と話している。
当日は中井佑代表やテトラのエンジニア、学生インターンが参加。進学や就職を含めてさまざまな質問にも答える。
主催者からの情報 【イベント内容】 ・代表の中井や弊社メンバーから空飛ぶクルマの開発経緯・機材説明 ・スポンサーの東京海上日動火災保険さんから、表にはあまり出てこない航空機の保険について、 我々がどのように支えていただいているのかを解説してもらいます。技術者ではなくとも、技術を支えるお仕事は多々あることを知っていただけたら幸いです。 ・空飛ぶクルマに興味がある方 ・科学技術に興味がある方 ・ベンチャー企業に興味がある方 であれば楽しんでただける内容にしたいと考えています。 性別・国籍を問いません。 抽選で10人の方に限られますが、ご応募お待ちしております。 ■日時:2020年9月22日(月曜・祝日) 13-15時 ■場所:埼玉県戸田市(武蔵野線・埼京線 武蔵浦和駅からバスで15分) ■募集定員:10名(高校生・高専生・専門学校生・大学生限定) ※当選された方にのみ詳しい場所をお伝えします。 <注意事項> 本人のみ参加。保護者の同行は不可。 マスクの着用必須。(距離を保てる場合にはマスクを外してもらって構いません) メディア取材の写真に写る可能性があります。 現地集合現地解散、交通費は各自ご負担ください。 連絡はメールで行います。 当日学生証を確認するので持参してください。 お申し込みはこちらから。 https://sites.google.com/tetra-aviation.com/factorytour/ 締め切り:2020年9月17日 参加できる方のみに9月18日までにご連絡します。