九州電力株式会社(福岡市)とIT事業の株式会社オプティム(佐賀市)は4月5日、ドローンとAI解析技術を組み合わせた点検技術を、九州電力のダム遮水壁点検業務に活用し、点検時間の短縮、劣化判断基準の均一化、損傷の見落とし防止などの効果を確認したと発表した。今後、このサービスの事業化も視野に、知見の蓄積を進める。
九州電力株式会社と株式会社オプティムの発表は以下の通り。
九州電力株式会社と株式会社オプティムは、ドローンとAI解析技術を活用したインフラ点検DXにより、九州電力のダム遮水壁点検業務において高度化・効率化を図り、高精度な設備異常検知及び大幅なコスト削減を実現しました。
これは、九州電力がドローン測量で使用している独自の自動操縦プログラム(特許第6902763号)を傾斜のあるダム遮水壁の壁面撮影に活用し、オプティムが開発したAIによる画像解析を組み合わせることによって、1センチメートル単位でダム遮水壁のひび、表面保護層の塗布の剥がれ等の損傷を確認できる高精度な設備異常検知を可能にしたものです。
これにより、点検時間の短縮化、劣化判断基準の均一化が可能となり、さらには経年劣化状況の可視化機能により損傷の見落としを防ぐことで、点検業務の高度化・効率化を実現し、点検業務に掛かるコストを約40%削減することができました。
今後は、社外へのサービス展開も視野に入れ、本点検データを蓄積することで、過去の点検データとの比較により将来的な経年劣化を予測する技術を開発し、AIによる最適な保修スケジュール作成管理機能の実装を目指します。
(1)九州電力
商号: 九州電力株式会社
URL: https://www.kyuden.co.jp/
本社: 福岡市中央区渡辺通二丁目1番82号
代表者: 代表取締役社長執行役員 池辺 和弘
設立: 1951年5月1日
資本金: 2,373億円
事業内容: 電気事業、エネルギー関連事業、情報通信事業、その他の事業
(2)オプティム
商号: 株式会社オプティム
URL: https://www.optim.co.jp/
佐賀本店: 佐賀県佐賀市本庄町1番地 オプティム・ヘッドクォータービル
東京本社: 東京都港区海岸一丁目2番20号 汐留ビルディング18階
代表者: 代表取締役社長 菅谷 俊二
設立: 2000年6月8日
資本金: 444百万円
事業内容:(IoTプラットフォームサービス、リモートマネジメントサービス、
サポートサービス、その他サービス)
東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社オプティム、株式会社WorldLink & Companyの3社が合弁で設立した株式会社 NTT e-Drone Technology(埼玉県朝霞市)が始動した。会社ホームページを公開し、国交省航空局が掲載している「管理団体」にも社名が登場した。同社は1月、農業分野を中心に注力していくことを表明している。新会社の登場で、ドローン関連の産業振興や、社会実装への期待が高まりそうだ。
NTT e-Droneの会社名は、国交省航空局が2月1日付で改訂した「無人航空機の講習団体及び管理団体一覧」の管理団体として登場した。55件の管理団体の6番目に、「株式会社 NTT e-Drone Technology(旧名称:株式会社エンルート)」と表記され、株式会社エンルートから関連事業の譲渡を受けて始動したこと、またエンルートが運営していたドローンスクール事業を継承したことを周知した形だ。また「HP掲載日」も「平成29年6月1日」を継承。国交層が「管理団体」の掲載を開始した当初の4団体のひとつであった実績を刻み込んだ。
1月の設立発表時には、2021年度の売上高を10億円と見込み、5年後には40億円規模を目指す考えを表明している。発表会では、NTT e-Drone Technologyの代表取締役社長に就任した東日本電信電話株式会社の田辺博代表取締役副社長がドローンビジネス市場への大きな期待を表明し「各産業分野でドローンの活用による活性化が期待されている」と産業全体に与えるインパクトの大きさを強調した。
当面はエンルートが2019年10月にお披露目すると、あっと言う間に評判を獲得した「AC101」を中心に、農業事業を展開していく。事業には機体開発、運用支援、ソリューション、プラットフォームなどを掲げており、同社の始動が市場を盛り上げそうだ。
■株式会社NTT e-DroneTechnologyのサイトはこちら
日本製ドローンの開発を手掛けてきた株式会社エンルート(埼玉県朝霞市)は1月18日、同社のドローン事業を、新しく発足するNTT東日本系の株式会社NTT e-Drone Technology に譲渡すると明らかにした。新会社e-Droneは現在のエンルートの社屋に本社を構え、2月1日から事業を開始する。昨年発覚したエンルートの助成金不正受給に関わる対応は譲渡される事業に含めず、引き続きエンルート側で対応する。また譲渡後のエンルートの事業については「親会社であるスカパーJSATグループの中で見直しを図る」としており、ドローン事業からは事実上の撤退となる公算だ。2006年10月の設立から日本のドローン産業をけん引してきたエンルートは、ドローンの表舞台から姿を消すことになりそうだ。
エンルートはこの日、「2021年1月31日をもちまして、ドローン事業及びこれらに附帯関連する事業の一部を、株式会社NTT e-Drone Technology(以下「事業譲受会社」)へ譲渡することになりましたのでお知らせいたします。ここに永年にわたり賜りましたご愛顧、ご厚情に対しまして衷心より御礼申し上げます。」と表明した。
親会社の株式会社スカパーJSATホールディングスも同日、連結子会社にあたるエンルートからe-Droneへの事業譲渡を発表。この中で「当社グループはNTTグループやパートナーとの連携で、引き続き衛星通信とドローンの連携を促進し、山間・島しょ部等の通信不感帯や見通し外飛行における技術的課題の解決、画像解析等のソリューションの提供等、サービス領域のさらなる拡大に取り組む」(一部抜粋)と表明。また業績への譲渡が業績に与える影響を「軽微です」と公表した。
エンルートによると、譲渡するのは、ドローンの機体開発、製造、販売、保守・点検、スクール運営、飛行データ管理、農薬散布、データ収集・加工など。発表では「事業の一部」と表現されているが、継続可能なドローン事業はe-Droneが引き継ぎ、継続しない事業は整理され、不正受給処理対応関係は当面の間エンルートが担う、という対応になるとみられる。
また今回の事業譲渡では、エンルートの社員がそのままe-Drone の社員になることにはなっていない。2月以降はエンルートで開発、製造に関わっていた担当者を中心にe-Droneで開発を担う見通しだ。
エンルートについては親会社の株式会社スカパーJSATホールディングスが1年以上前の2019年ごろから同社の経営健全化、資本政策などを検討し、NTT東日本側に事業譲渡を持ちかけていた。しかし2020年にエンルートが国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に採択された事業で助成金、委託費の受給をめぐる不正が発覚し、2020年2月に社長を交代するなど経営を一新。またその後に行った調査で、農林水産省や国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)関係でも不正が見つかったため、受給した資金を返納し、9か月の指名停止処分を受け、事業譲渡に踏み切るタイミングがこの時期になった。
エンルートは今回の事業譲渡に先立ち、先月(2020年12月)末に、既存の機体の大半について生産終了に踏み切った。同社は部品調達が困難になったことを理由にあげている。製造販売を修了したのは、農業用ドローン「AC940D」「AC1500」、産業用ドローン「QC730」、「QC730TS」、「CH940」、「PG390」、「PG560」、「PG700」で、いずれも国土交通省の「飛行申請で書類の一部を省略できる機体」の一覧に掲載が認められている。この生産終了により、エンルートが生産するドローンは農業用ドローン「AC101」と、産業用ドローン「EC101」に集約。今回の事業譲渡により新会社e-Droneも農業に力を入れる方針を表明しており、引き継ぎ機体は新会社の事業に合致する。
新会社e-Droneは、エンルートの事業譲渡が公表された1月18日の同日、東日本電信電話株式会社(NTT東日本、株式会社オプティム、株式会社WorldLink & Company(京都市)の3社が設立を発表した。エンルートの開発系のメンバーを中心に30人程度で構成し、当面は農業用ドローン分野が事業の中心となる。資本金は4.9億円。筆頭株主はNTT東日本で2021年度は売上10億円、5年後に40億円規模を目指す。e-Droneを設立した 3社はこの日の記者発表会し、ドローン市場への期待などを表明している。
■エンルートの「当社の一部事業譲渡に関するお知らせ」はこちら。
■スカパーJSATの「当社連結子会社の一部事業譲渡に関するお知らせ」はこちら。
■NTT東日本の「ドローン分野における新会社設立及び事業開始について」はこちら。