慶應義塾大学でドローン研究に取り組む学生と引率の教員らが、福島県田村市で、地元の見どころを探索し、映像にまとめて発信する取り組みにチャレンジしている。映像にはドローンも活用し、ドローンの利活用に力をいれる田村市らしさが表現される。本稿が公開される9月13日(金)の午前10時から、田村市役所でその成果を発表する。発表の様子は市役所でだれもが見ることができる。
参加しているのは、慶應義塾大学ドローン社会共創コンソーシアムの代表、古谷知之さんのゼミ生、南政樹副代表が率いる自主活動グループ「ドロゼミ」の学生ほか総勢15人。一行は福島県田村市の観光宿泊施設「スカイパレスときわ」を拠点に9月10日から活動している。
初日の10日には田村市役所から、撮影に適しているとみられる珍しい花が咲く畑、地元に伝わる街道沿いの魔除け人形、400メートル続く杉並木、パノラマの絶景地、鍾乳洞、風車などの31のスポットの説明を受けたあと、グループごとにテーマや、取材計画、編集方針などを話し合った。
夕方には、ドローンの初心者、経験者も含めて、南ドロコン副代表から、操作の手ほどきや、撮影技法についての講義が行われた。ひととおりの知識を備えたところで、スカイパレスときわのテラスで、腕試し替わりにドローンをフライトさせ、操作の感触を確かめ、ドローンができることを確認した。
一行は翌11日、12日と、グループごとに立てた計画にそってフィールドワークを実施。現地からの報告だと、とりためた映像の編集作業など、発表の準備は12日の深夜まで続けられたという。成果は本日13日、市役所で公開される。
田村市は2016年12月に、慶大とドローンの利活用に関する連携協力協定に締結した。慶大がドローンの利活用で自治体と連携協定を締結する第1号が田村市だ。締結後は、市内にある県立船引高等学校でドローンの担い手を育成する「特別講座」を開催したり、市で開催された音楽フェスでドローンの腕を磨いた高校生が公式に撮影する活動の場を提供したり、地元の名産品のひとつでビール主原料のひとつであるホップの生育状況確認などの農業利用の実験をしたりと、田村市内でのドローンの取り組みを広げてきた。地元主導でドローンを普及させる「ドローンコンソーシアムたむら」も設立されて活発に活動をしているほか、今回の活動の拠点となっている「スカイパレス」も、株式会社ドローンエモーション(東京)が展開しているドローンのフライトエリア登録サービス「そらチケ」に登録されているなど、田村市はドローン関係者の間では、日本を代表するドローンを歓迎してくれる町として知られ始めている。
ドローン研究に力を入れる慶應義塾大学で、単位認定外の自主活動ドロゼミが5月15日の定例活動を開催し、指導役の南政樹ドローン社会共創コンソーシアム副代表が、「静止推力」とプロペラの関係について説明した。6月以降、製作に取り組むさいの基礎知識のひとつとなる。
静止推力は、機体が重力に対抗するさいに必要となる力で、回転翼を持つドローンを作るときなどにこの理屈を踏まえることになる。ドロゼミでは6月以降、独自ドローンを製作するため、今後、必要な知識を蓄えていく。この日はプロペラとの関係について、風を切る角度(ピッチ)、プロペラの直径、プロペラの回転数がどう関係するか、すでにある理論を概観した。
この中で、「推力はプロペラ直径の3乗に比例し、回転数の2乗に比例し、ピッチに比例する」という理論を学習。これを前提に「重さが2倍のものを持ち上げなければいけないときにすべきことは?」などの問いにプロペラ角度を変える場合や、直径をかえる場合などで試算した。一方、実際には反トルクなど理論の実現を妨げるさまざまな力が働くため、理論通りにはいかないことも説明。「そこをどうするか、を次に考える」と、学生の好奇心をあおった。
ドロゼミではこのあと、小型ドローンをつかって教室内で操縦体験の練習を実施。2機で対戦遊びができるドローンを用いるなどして、操縦に慣れさせた。
ドロゼミは慶大SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が中心になって運営している活動で、飛ばし方の練習、理論の研究のほか、ドローンの力が役立ちそうな現場に出向いて測量、空撮、農業利用など幅広い活動をしている。活動はドロゼミから掛け合うこともあれば、自治体や企業から持ち込まれることもある。ドロゼミの活動は自主活動にあたり、参加学生に対して大学としては単位を認定していない。このため参加者の卒業要件には原則として組み込まれないが、幅広い活動が学生の好奇心を魅了し、多くの学生が参加している。