慶應義塾大学と包括連携協定を結んでいる福島県田村市の県立船引高校で10月24日、ドローン特別講座が開かれ、ドローン科学探求部のメンバーがアメリカ国立標準技術研究所(NIST)の技能評価手法にチャレンジしました。初挑戦のメンバーもゲーム感覚で楽しみながら、上手な生徒をはやしたてたり、自分の操縦の課題を発見したりしていました。この日も指導役の慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が、チャレンジの内容や目的をていねいに伝え、生徒たちのいきいきとした表情を引き出していました。
NISTの評価手法は、文字が書かれたバケツ型の被写体を取り付けたツリーを使うところが特徴です。バケツは内側の底に円が縁どられ、その中にアルファベットが描かれています。正面からのぞきこむと円と文字が読み取れますが、のぞき込む位置がずれたり、距離を取り誤ったりすると、文字が読み取れなかったり、縁取りの円の一部が欠けたりします。バケツの大きさや向き、高さ、角度は予め決められています。技能評価では、時間や飛行方法の条件が与えられ、ドローンを飛ばし、カメラでバケツ内の文字や円をとらえられるかどうかを判定することになります。
船引高校には昨年秋、この評価のためのツリーが1セット導入されました。この評価はドローンの技能の評価として世界に広まりつつあります。船引高校は、これに沿った練習ができるきわめて珍しい高校といえます。ただ導入後には、新型コロナウイルスの感染拡大防止対策の一環で活動休止が余儀なくされていました。今年秋以降、感染状況をにらみながら、活動を少しずつ再開したところで、この日は2020年度にはいって初めて、ツリーを使った練習となりました。
4月に新入部員となった生徒にとっては、ツリーを使った練習は初めてでした。初めてであったり、久しぶりであったりしながら、好奇心も手伝って作業はするすると進み、生徒たちは体育館に機材を持ち込み、ツリーを組み立てるところまで約10分で準備を終わらせました。背の低い株ふたつと、高さ3メートルのツリーひとつを並べたコースができると、まずは小型のカメラ付きドローンで、3チームに分かれて、バケツの中の文字をとらえる練習で腕をならします。あちこちから「読めた!」「円が欠けてる!」と声があがります。「もうちょっと左」などと励ます声も混じり、体育館の中は練習が進むにつれて活気が満ちてきました。
この日のハイライトは、決められたバケツの文字を読み取ったうえで、離陸から着陸までの時間をできるだけ1分に近づける「1分チャレンジ」でした。機体は学校で持っているPhantom4です。このチャレンジでは、初心者であるなど不慣れなチャレンジャーほど、ゴールまで急ぐことに専念しがちですが、実は早ければいいというわけでもないところがキモです。器用に読み取れる操縦者にとっては、着陸までの時間を1分に近づけるためには、同じペースを保てるかどうかが重要になります。
準備が整ったところで順番を決めて、チャレンジをスタートさせると。最初の生徒が離陸からなめらかに操縦し、文字もとらえ、無事に着陸させて、いきなり1分2秒の好タイムをたたきだしました。順番待ちの生徒から「おおっ」「うますぎるっ」などと声があがりました。実際、これが、この日の最高タイムとなりました。ただ、そのほかの生徒も実はかなり手馴れていました。この日の二番手の成績は1分8秒。それに1分10秒台も複数いました。最も時間がかかった生徒でも2分を超えることはなく、練習量が多く確保できない中でも、この先さらに上手になる可能性を実感できました。
練習の最後に南氏は、この日の取り組んだNISTの評価手法が、現在、世界中に広まりつつあることや、飛ばし方にいくつもの種類があることを説明しました。その中で、「世界中に広まりつつある方法であるということは、これで獲得した技能評価は世界中どこにいっても通用するということになる可能性があるということです。またツリーを使う飛ばし方には、オービット、スパイラルなどいろいろありますが、今回チャレンジしてもらったのは、並べられたツリーの外側を周回するトラバースという方法です。時間があればいろいろな方法で練習をしてみると楽しいと思います。最後の1分間チャレンジでは、より速くということよりも、どれだけ滑らかに動かせるか、というところが重要です。そんなことも頭に入れながら練習してみてください」。と伝えました。
また、「学期の終わりあたりで実際に技能レベルを測ってみたいと考えています」と、生徒たちのチャレンジ精神を刺激しました。また田村市の美しい紅葉を撮影してみることや、学校を撮影してみることなども提案しました。
船引高校のドローン活動は2016年12月にスタートして、あと少しで丸4年になります。船引高校の地元である田村市と、慶応義塾大学との連携協定をきっかけに人材育成の一環として始まった活動は、船引高校の大きな特徴のひとつとなり、地元の田村市の人々や、周辺自治体から一目も二目も置かれるようになりました。DroneTribuneは、船引高校をはじめ田村市の取組を折に触れて見て、伝えて参りました。これからも田村市や船引高校の取組に声援を送ってまいります。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
ACSLの発表はこちら。