【寄稿】産業用ドローンの社会実装 高橋 伸太郎

2020.09.17

 2020年9月16日、日本では安倍政権が退陣し、菅内閣が発足した。日本では、20世紀の段階から、農薬散布を目的とした、産業用無人ヘリコプターの開発や実装が行われてきた。しかし、無人航空機が政策分野として本格的に立ち上がったのは、安倍政権になってからである。そのため、今回は、新しい政権が発足する節目のタイミングで、産業用ドローンの社会実装戦略について記事を寄稿する。

高まるフィールド業務の自動化・リモート化への期待

 現在、日本では、人口構造の変化(人口減少・高齢化)や、インフラ老朽化、大規模災害、新型感染症のリスクに直面している。こうした課題を解決するためには、新しいテクノロジーの実装や、社会システムの再構築が必要である。

 ドローン(無人航空機)を活用した場合、空からの産業活動が可能となるメリットがある。具体的には、インフラ点検や、建設・土木、測量、警備、環境調査、農業、森林管理、漁業・水産資源管理、環境調査、災害対応、保険調査などの分野で、社会実装が始まっている。

 産業分野において、ドローンには三つの役割があると考えられる。一つ目は、カメラ・センサーとしての役割である。情報収集・意思決定のサポートを行う。二つ目は、ロボットとしての役割である。作業のサポートを行う。三つ目は、モビリティとしての役割である。移動のサポートを行う。これら三つの役割を通じて、フィールド業務の自動化・リモート化への貢献が期待されている。

業務プロセス再構築への重要なターニングポイント “レベル5”も視野に

 日本では、ドローンといえば、小型民生用マルチコプターを思い浮かべることが多いが、産業目的で使う場合、用途に応じて、機体の種類を使い分けていく必要がある。機体の構造・飛行方法などで分類した場合、回転翼機(シングルローター、マルチコプター)、固定翼機、VTOL機、飛行船・気球型などが存在する。

 市場環境でみた場合、日本では市場規模の拡大や制度設計が進み始めている。インプレスの調査では、2019年度の日本国内のドローン産業の市場規模は1,409億円である。2018年度の931億円から478億円(前年度比51%増)増加している。制度設計については、2022年度のレベル4(有人地帯の目視外飛行)の実装に向けて、官民協議会などで制度設計に向けた議論が進められている。

 しかし、今後、産業として成長を加速させるためには、社会実装戦略について再構築する必要がある。実証実験のフェーズから、実装段階のフェーズに移行させるためには、業務プロセスの一部を置き換えるのではなく、フィールド業務の自動化やリモート化を前提に、プロセス全体の再構築を進めることが求められる。

 制度設計についても、空全体の産業戦略の視点で、ルール形成を行っていくことが不可欠である。現在、空の産業革命に向けたロードマップは、小型無人機の低高度における利用を想定し、四つのレベルで設計されている。しかし、小型無人機だけでなく、エアモビリティ やHAPS(成層圏プラットフォーム)などの実装を行うためには、低高度から高高度までを含めた空の利活用について再設計を進めていくことが求められる。統合的な空のプラットフォームとして、新しいレベル(レベル5)のコンセプトを提案する方法も考えられる。

 現在、ドローン産業は、重要なターニングポイントを迎えている。社会的な課題の解決に貢献し、産業として成長するためには、新たな進化が必要な時期にきている。新型感染症の拡大を背景に、新しい社会を求める動きも出てきている。こうした変化に対応していくためには、自らコンセプトを提示し、行動していくことが重要である。(寄稿)

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