慶大ドローン社会共創コンソーシアムは9月13日、福島県田村市役所で9月10日から取り組んできたフィールドワークの成果を発表した。学生ら16人が4グループに分かれ、それぞれのテーマで、テレビコマーシャルフィルム風の15秒の動画と、それよりも少し長い1分の動画に仕立てた。当日は発表を聞きつけた市民ら約25人が参観に訪れた。田村市からみれば“よそ者”の学生が作った映像は田村市への愛情にあふれ、来場者からは「すばらしい作品」「感動した」などの声が相次いだ。映像作品は今後、市の玄関口であるJR船引駅前のディスプレーで公開するほか、地元のドローン活動隊「ドローンコンソーシアムたむら」がSNSを活用するなどして、海外からの渡航者に対し「ドローンツーリズム」をアピールし呼び込みに力を入れる。
今回の発表会を企画した慶大ドローン社会共創コンソーシアムは、ドローンを活用した地域の産業振興に取り組んでいる。田村市では人材育成、農業への活用などを多角的に進めてきた。田村市がドローン関係者の間で、ドローンに理解のある受容性の高いまちとしての認知度が高まり、関係者が田村市を訪れる機会が増えているのもこうした地道な取り組みの積み重ねの成果でもある。慶大はこうした産業振興のサイクルを「たむらモデル」と位置づけ、地域振興の体系化に取り組んでいる。
発表会の冒頭、慶大ドローン社会共創コンソーシアムの古谷知之代表が、「短期間ではありますが田村の各地に協力を頂きました。学生もそれをありがたく感じて、一生懸命動画を作りました」と経緯を説明した。実際、学生たちは発表当日の午前4時ごろまで編集作業に没頭していたという。南政樹副代表は一連の取り組みを「ドローンツーリズム」と位置づけていることを説明。田村市で取り組んできた人材育成、農業に次いで、ドローンを観光振興に役立てる取り組みであると伝え、「田村のみなさんには、こうした取り組みが続けていることを頭の片隅に置いて頂けると大変助かります」と地元の理解と協力を求めた。
発表では参加大学生が4つのグループに分かれて実施。A班は海外からの渡航客誘致を目指し、ふたつの動画を製作した。ひとつは「景色」に焦点をあて、自作したBGMを背景に15秒でテレビのコマーシャルのインパクトを狙った作品で、もうひとつが、「見る人が“楽しい”を想像できるように」SNSでの拡散も念頭に1分に編集した動画だ。それぞれを発表したあと、「事前アポ。交流風景が取れたのではないか」と反省点をあげることも忘れなかった。
ここで田村市の菅井友宏副市長が会場を訪れて登壇し、「慶應大学の学生のみなさんには、おこし頂き、ありがとうございました。田村市の名所、施設を見て頂きました。編集作業に少しだけ立ち会いましたが、真剣に議論を重ねておられました。住んでいるわれわれにさえ気づかない田村の魅力を気づかせてもらえるのではないかと期待しています」とあいさつした。
このあと、B班は、ドローンのほかに小型カメラ、360度カメラも活用して、「ユニークなまち」と「人とのふれあい」を表現するように1分間に編集した作品を発表した。発表時に披露できなかったVR映像を、発表後に体験できることを説明し、声をかけてもらうよう会場に呼びかけた。C班は滝、川など「田村市の水」の魅力に絞って編集。班員がそれぞれの視点でまとめた。滝の勢い、穏やかさなど、水の表情を「ふだん見ている人では気づかない視点を見せられるように」15秒や1分の動画にまとめた。なおC班では石原匠さん(1年)が同じ素材を使いながら、市民や班員の笑顔をちりばめた作品に仕上げた。D班は外国から訪問者が抱くと推測される感情を「まだ見ぬ物語」として15秒にまとめることを試みた。映像から漏れたメイキング動画もBGMをつけて紹介した。タイ語のテロップを入れたものも作り、海外への拡散も意識した作りを強調した。
これらの映像では、赤いそばの実がなる畑、神社、田んぼアート、食事どころ、天文台、鍾乳洞、風車、滝など多くの田村市の見どころが紹介され、観覧した市民からは「これをたった2,3日で作るなんて驚いた。どれも素晴らしい作品ばかり」、「一生懸命に取り組んでくれたことが映像からあふれていた。田村への愛情を感じて感動しました」などと話していた。
会場からは「動画で魅力を発信する先鞭になるかもしれません」「田村市民でもよさをすべて知っているわけではありません。地元の子供たちが地元の良さを知り、やがて広くPRすることにつながると思いました。教育面でも活用を考えたい」などの発言があった。
参加した学生の一人でドローンのサークルに所属している中村光一さん(環境情報学部2年)は「ドローンを飛ばしていると地元の人が寄ってきて『それいくらなの』と声をかけてくれ、とても暖かく感じました。ドローンについては、まだ特別な思いを持っている人もいるかと思いますが、触れる経験を重ねていけば特別なものではなくなると思っています。ネガテフィブな印象を持っている人がいらっしゃることも知っていますが、今回のような取り組みを重ねることで、特別なものから一般的なものにできると思っています」と述べた。発表前はほとんど眠れていなかったというが、「とても楽しい4日間。ぜひまたきたいです」と声をはずませた。
那須蘭太郎さん(環境情報学部2年)も「飛ばせる場所が多いことはとてえがたい経験でした。ほかでも飛ばせますよ、というところはあるのですが、そこが気兼ねなく飛ばせる場所か、といえば、必ずしもそうでないことも多いのです。気を使ったフライトで撮影すると、映像にもダイナミックさが出なかったりすることがあります。でも田村市は違いました」と、ドローンに理解のある町ならではの価値を感じていた。また、ドローンを使える人を増やすために「ドローンは、機械に詳しくなくても、ITの知識がなくても、スマホと同じように使えることを伝えたいと思っています。ドローンが特別なものでく一般的なものになれば、楽しくて豊かになると思います。楽しいって大事なことなので、ぜひ『楽しい』を多くの人に味わってほしい」と話していた。
編集作業の最終局面で笑顔に切り替えた石原さんは、「田村ではふだんできない経験ができました。もともと笑顔の力を発信したいということが自分もここ最近のテーマで、思い切って途中で切り替えました。笑顔の力を伝える方々が世の中にいらっしゃいますが、この機会にこの動画を創れたことで、そんな人に一歩でも近づければと思っています」と充実した表情を見せた。
田村市は今後、動画をFBやHPほか、PRに活用できる場所で公開していく予定だ。
建設設備大手の三機工業株式会社(東京)は7月11日、グループ会社、有限会社キャド・ケンドロ(仙台市)と共同で狭小空間ドローン開発の株式会社リベラウェア(Liberaware、千葉市)のドローンとレーザースキャナを併用した既存設備の3Dモデル化するデジタル化手法を確立したと発表した。Liberawareも同日、三機工業に「IBIS2」を「導入した」と発表した。
三機工業は設備更新や模様替えなどのさいに、現場を3Dモデリングし、現状を把握してから取り組む。完成後の更新や追加工事で現状が図面通りになっていないことが多く、作業の妨げになるおそれがあるためだ。しかし天井裏などでダクトや配管が込み入っている場合に、すべての設備にはレーザーが届き切らずに十分な3Dモデルができあがらない場合がある。こうした課題を乗り越える手法の開発を進めているところ、今回、ドローンとレーザースキャナを併用してデジタル化する手法を開発した。
同社が実施した実用化検証では、IBIS2とレーザースキャナを併用した場合、従来の3Dスキャン手法と比べ、機械室などの天井の無い空間の場合、認識できた建築部材が約135%、天井の一部が解体された天井裏空間で約400%向上したという。
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丸紅株式会社(東京)は7月8日、大阪・関西万博でデモフライトを披露する計画を公表している英ヴァーティカルエアロスペース社(Vertical Aerospace Group Ltd.)開発の5人乗りAAM「VX4」について実施を「見送る」と発表した。英国で行われているVX4試験機での有人飛行試験で判断したという。
丸紅は発表の中で「現在英国で行われているVertical社製VX4試験機による有人飛行試験の進捗状況から、大阪・関西万博でのデモフライトへの対応を見送ることとなりました」と伝えた。VX4のキャビンを再現したモデル空間は予定通り万博会場に出展し、8月から搭乗体験を実施する予定という。
また丸紅が万博で飛ばすもうひとつの機体、米LIFT AIRCRAFT社(以下、「LIFT社」)製の1人乗り機「HEXA」については、デモフライトを近く再開させる方向で調整中だ。HEXAは4月26日のデモフライト中に部品が落下したためデモフライトを中断して原因究明を続けている。
その結果「モーター搭載箇所の部品について、サプライヤーが仕様と異なる素材の部品を誤って供給していたことが判明」したと説明し、「当該部品の交換およびその他重要部品の再点検を完了した上で、再発防止策として、LIFT社において部品の受領・品質管理について包括的な監査を実施し、必要な工程について改善したことを確認しました。関係機関の許可を以て、今後大阪・関西万博でテストフライトを実施し、十分に最終確認を行った後、安全を最優先として関係機関および関係各社と協議・判断し、デモフライトの再開に関しては改めてお知らせいたします」と伝えている。
丸紅は大阪・関西万博でのAAM運航事業者4グループのひとつだ。
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英ロックバンド、オアシスの再結成後初のコンサート会場となるウェールズの首都カーディフのプリンシパリティ・スタジアムで現地時間7月2日、ドローンで形作られた「OASIS」のロゴが浮かび上がった。ツアーは7月4日に始まり、11月まで世界各国をまわる。ツアー初日を翌々日に控えたドローンの演出はオアシスの公式アカウントで公開されている。
ドローンのロゴは公演開始前に上空に描かれ、オアシスの再結成ツアー開催を祝福し、喜ぶファンの気分の高揚に貢献した。
オアシスは1991年にマンチェスターで結成され、7000万枚以上のアルバムを売ったロックバンドだ。2009年に解散したが昨年2024年に再結成した。再結成後初のコンサートツアーが7月4日にはじまり、北米、南米、オーストラリア、韓国など各地をまわる。2025年は11月23日のサンパウロ公演で幕を閉じる予定だ。日本公演も10月に予定されている。チケットはいったん予定枚数の販売を完了したが、機材席の解放による追加販売が決定し、7月12日正午に抽選の受付を開始する予定だという。
音楽シーンとドローンとは、MV撮影、ライブ映像撮影、演出としての屋内ドローンショーなどの例があるなど縁があり、今後も活用の幅が広がる可能性がある。
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AAM開発の米ジョビー・アビエーションは6月30日、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイでパイロットが搭乗し、垂直離着陸の固定翼飛行を実施した。ジョビーは「2026年に最初の乗客を運ぶ」と2026年のサービス開始を目指している。ジョビーは開催中の大阪関西万博で「運航事業者」にもなっている。
ジョビーによるドバイでの飛行は、「piloted, vertical-takeoff-and-landing wingborne flights」で、パイロットが乗り、垂直離着陸をしたうえで、機体の固定翼で移動した飛行で、「eVTOL分野では初めての取り組み」としている。ジョビーはこの飛行を通じて、ドバイ地域での商用市場準備の取り組みを開始したことも明らかにした。ジョビーは直接運航、航空機販売、地域パートナーシップを商業化戦略の3本柱と位置付けていて、今回の試験飛行が「重要な一歩」と話している。
試験飛行はドバイ道路交通局、ドバイ民間航空局、UAE民間航空総局と連携して実施された。またドバイ道路交通局長官兼理事会会長のマタール・アル・タイヤー会長が立ち会った。
ジョビーは、ドバイ国際空港(DXB)、ペルシア湾の人工島であるパーム・ジュメイラ、現在建設が進められている世界第2の面積の人工のマリーナであるドバイ・マリーナ、超高層ビルブルジュハリファで知られるドバイ・ダウンタウンでの商業サービス導入を目指している。バーティポートはすでに建設が進められている。
ジョビーはDXBからパーム・ジュメイラまでをエアタクシーサービスで移動した場合、移動時間は12分で、45分かかる車での移動時間が大幅に短縮されると見込んでいる。
ジョビーがエアタクシーサービスで使う機体は電動で、パイロット1人と最大4人の乗客を乗せ、最高時速200マイル(約320km)で輸送できる設計と説明していて、ジョビーは「短時間の通勤、小旅行、地域間のシームレスな移動のために、より速く、より静かで、より便利な空の旅を提供します」と話している。
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東京株式市場グロース市場で7月2日、ACSL株がストップ安となった。午前9時29分にいったん1187円で寄り付いたがその後も売りが殺到し、再び取引の成立したない売り気配で推移した。ACSLは前日の7月1日、前CEOによる不適切取引判明を発表していて嫌気を誘ったとみられる。
ACSL株は取引き開始前から売り注文を集めていて、取引開始がはじまったしばらく値が付かないまま推移した。午前9時29分に値幅制限いっぱいいの、前日終値比300円安のストップ安となる1187円で取引が成立したが、その後も売りは止まらず、再び取引が成立しない展開が続いた。
ACSLが7月1日に発表した「お知らせ」はこちら
株式会社ACSLは7月1日、今年4月30日に退任した鷲谷聡之前代表取締役CEOが不適切な取引を行っていたとして、全容解明のため外部の弁護士と社外取締役の4人で構成する特別調査委員会を設置したと発表した。ACSLは業績に与える影響は精査中で、過年度業績への影響はないと見込んでいる。特別調査委員会7月中旬をめどに最終報告書をまとめる見込みだ。
ACSLによると前CEOによる「個人的な経済状況に関する懸念」が3月に浮上し、4月に社内調査に着手した。調査で「(前CEOが)代表取締役の立場を個人的に悪用して、2025 年3月から、一部業者との間で実態のない不適切な取引を行っていた事実が判明」したという。ACSLは全容解明、厳正な対処、再発防止策構築を目的に7月1日の取締役会で特別調査委員会設置を決議した。
ACSLは「特別調査委員会による調査に全面的に協力し、早急に調査を進めてまいります。また、特別調査委員会による調査の結果、明らかとなった事実関係等につきましても、受領次第速やかに開示いたします」とコメントしている。
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