ハイブリッドドローンの開発、製造を手掛ける株式会社エアロジーラボ(AGL、大阪府)は5月14日、モジュール、パーツを日本製でそろえる純国産ハイブリッド機「エアロレンジプロ(AeroRangePRO)」の開発にめどがつき、量産体制を整備したことを発表した。6月1日に受注の受付を始める。
AeroRangePROは、同社が得意とするジェネレーターとバッテリーを組み合わせたハイブリッドドローンで、パーツのひとつひとつを専用に設計、開発した。飛行を制御するフライトコントローラーには株式会社自律制御システム研究所(ACSL、千葉市)を採用した。年度内には独自のパワーユニットも完成する予定で、それにより純国産のハイブリッドドローンとなる。
6ローターの回転翼機で大きさは直径180センチ、重さは19キログラム。10キログラムまで積載可能という。飛行時間は180分間、飛行距離は120キロだ。
モーター、躯体、燃料タンクなど、必要な技術を、地域の専門家集団が開発チームを構成して絞り出したことも開発の特徴。産業用機械の設計、製造を手掛ける成光精密株式会社(大阪)と同社と交流のある町工場が開発チームを構成した。また農業用部品製造を手掛ける株式会社小橋工業(岡山市)が今年(2020年)2月に設立した量産支援サービスのKOBASHI ROBOTICS株式会社(岡山市)が量産を支える。こうした生産の環境整備に知識プラットフォームを手がける株式会社リバネス(東京)が関与した。
エアロジーラボは2010年からドローンを作り始めた谷紳一代表らが2012年に設立したメーカーで、長距離、長時間の飛行を可能にするため早くからハイブリッド機の開発に取り組んできた。世界から高性能のパーツを集め、調整したうえで組み立てた従来のハイブリッドドローンAeroRangeは、2018年、岡山県和気町で開催された過疎地での物資配送実験で、40キロをノンストップで飛行する性能を証明している。
谷紳一代表は「マニアの趣味からはじまった会社ですが、今では日本では数少ないドローンの開発を手掛ける会社のひとつとなりました」と語った。
リバネスの丸幸弘代表は「高性能を生み出す技術者がいて、形にするための地域連携があり、町工場が手を取り合うスーパーファクトリーグループが支える。量産の壁を超えるための必要な要素を集めた取り組みになる」と述べた。
機体開発、操縦指導などドローン事業に力をいれている東光鉄工株式会社(秋田県大館市)は、主要技術、主要部品を日本製でそろえた災害対応ドローン「TSV-RQ1」を、2020年夏をめどに提供を開始することを明らかにした。災害対応を担う官公庁、消防関係、海上保安庁などの需要を見込み、“日本製”リクエストに応えて開発。東京ビッグサイトで開催中(2月14日まで)の「ロボデックス」で参考出品している。
開発中のTSV-RQ1は、ローター間1100ミリのクアッドコプター。折りたたむと520ミリ×570ミリになる。水を浴びても影響を受けないIPX5の防水性能、秒速15メートルの風速に耐える耐風性能を備え、運用時の天候の影響を受けにくい。スピーカー、物資投下装置、8000lmのサーチライト、高感度カメラを備え、状況確認、避難勧告、救援物資投下、捜索など災害現場に必要な作業に対応するために開発を進めている。
フライトコントローラーをはじめ、主要技術、部品の大半を国産でそろえ、官公庁での需要に利用を見込んでおり、この夏以降に提供に踏み切る見通しだ。
開催中のロボデックスの東光鉄工ブースでは、TSV-RQ1に搭載を計画している災害レスキュー用高感度カメラ「WCAM001」や、ドローンとして同社の主力となる10リットルの散布が可能な農薬散布機「TSV-AH2」なども展示。ブースで説明をしていた同社UAV事業部の天内敦之さんは「地元が秋田県のコメどころで、地元の農家の要望にこたえようと農薬散布ドローンを開発したところ、今度は官公庁から災害対応機の要望があることを知り開発に着手した。多くの要望に応え課題解決に貢献したい」と話している。
東光鉄工は南極昭和基地にも納入実績のあるTOKOドームなど各種鋼構造物の設計製作、プラント製品、機械装置などを手掛ける秋田県大館市の企業で、ドローン業界でも機体開発、スクール運営を展開。青森県立名久井農業高校でドローンによるリンゴ受粉作業の効率化の研究を実施していることでも話題になっている。リンゴ受粉研究は2020年で4年目を迎える。
国産ドローン開発、製造などを手掛ける株式会社エンルート(埼玉県朝霞市)は2月5日、スカパーJSAT株式会社執行役員常務だった江口覚郎氏が代表取締役社長に就任する人事を発表した。
社長に就任した江口氏は1958年4月10日生まれ。ソニー株式会社を経て2002年に株式会社スカイパーフェクト・コミュニケーションズ(現スカパーJSAT(株)。執行役員、執行役員常務経営管理部門経営戦略本部長などを経て、2019年7月から執行役員常務経営企画部門長代行を務めていた。国産ドローン開発を手掛ける企業として3代目の経営者となる。日本国内でのドローン開発、製造への期待が高まり視線が集まる中、江口氏の手腕が期待される。
前代表、瀧川正靖氏は2月4日付けで同社を退任した。瀧川氏は2017年4月1日に、創業者の伊豆智幸氏に代わり就任。社屋を移転し、イメージの刷新、独自開発機の開発など国産ドローンメーカーの地位向上に奔走した。2019年10月には、農業技術の展示会で小型、軽量、低燃費の農薬散布用意新型ドローン「AC101」を発表し話題を集めた。
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