ブルーイノベーション株式会社(東京、東証5597)は、同社が日本国内での独占販売権を持つスイスFlyability社が開発した球体ドローン、ELIOS3(エリオススリー)の導入で1日作業が1時間になるなど大幅な時間削減を達成した、東北電力系の点検事業者、株式会社東日本テクノサーベイ(仙台市泉区<宮城県>)の事例を公表した。水力発電所の水路内点検や、火力発電所内の緊急点検などで成果をあげたと伝えている。
ELIOS3はFlyability社開発の球体ガードを備えたELIOSシリーズの最新機種。施設内など非GNSS空間を飛行するほか、搭載する3Dマッピング用LiDARセンサーがリアルタイムで取得した施設内情報を3Dデータ化し、位置を特定できる。
ブルーイノベーションは2018年にFlyability社と日本国内での独占販売契約を結んだ。ブルーイノーベーションは独自開発したBlue Earth Platform(BEP)と呼ぶ複数デバイス連携技術とELIOS3とを融合させた点検サービス「BEPインスペクション」を開発し、発電所、下水道など300件を超える運用実績がある。作業時間短縮、労力軽減、費用負担軽減、点検品質向上などが報告されている。東日本テクノサーベイでの活用報告もその一例だ。
発表内容は以下の通り。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、 代表取締役社長:熊田 貴之、 以下 ブルーイノベーション)は、株式会社東日本テクノサーベイ(以下 東日本テクノサーベイ宮城県仙台市泉区将監四丁目5番2号)が屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」※1を導入し、点検作業時間を大幅に短縮することに成功したことをお知らせします。ELIOS 3 は、作業時間の短縮だけでなく、作業員の業務負担軽減や安全確保、さらには点検品質の向上・仮設費用の削減にも貢献しています。
■ELIOS 3 導入の背景
近年、インフラ施設の点検作業において、作業員の高齢化に伴う人材不足と、技術継承が喫緊の課題となっています。特に、長年の経験とノウハウを持つベテラン作業員の引退や設備の老朽化が相次ぐ中で、少数の作業員で効率的な点検を実現することが求められています。
この課題に対し、東北電力グループである東日本テクノサーベイは、ドローンをはじめとする様々な技術を活用し、作業効率の向上や作業環境の改善に取り組んでいます。同社では、ELIOS シリーズの最新機種である ELIOS 3 の効果を検証した結果、その抜群の飛行安定性と操作性の良さにより、飛行経験の浅い操縦者でも十分に点検作業を遂行できると判断され、導入に至りました。
■ELIOS 3 導入による成果
同社では、ELIOS 3 の導入により、水力発電所や火力発電所における点検作業の効率化と安全性の向上を実現しました。
① 水力発電所の水路内点検
従来、水力発電所の水路内点検は、人が直接水路に入り目視により行われていますが、水路によっては急傾斜や暗所、狭所等を有する現場も多く、100m 程度の点検を行うのに丸1日かかる個所もあります。このため、作業員の安全面でのリスクや業務負担、作業員による点検精度のバラつきや変状個所の見落とし等が大きな課題でした。
今回 ELIOS3の導入により、このような現場の点検作業時間がわずか1時間程度と大幅に短縮されました。さらに、作業員が暗くて狭い水路内に入る必要がなくなり、作業環境や安全性が大幅に向上しました。また、付属ソフト「Inspector」によるデータ化(3次元点群データ)により、点検品質も従来に比べ一層向上しました。
② 火力発電所内での緊急点検
火力発電所では、地震発生後の緊急点検においてELIOS3が活躍しました。従来、大きな地震発生後には設備内に仮設足場を設置し、人による目視点検を行いますが、通常運転できるまでに仮設の設置・撤去を含め2~3週間の点検期間を要し、かつ数百万円の仮設費用がかかっていました。しかし、ELIOS 3を使用することにより、たった1日で点検が完了し大幅な時間短縮と仮設費用の削減を実現しました。
■株式会社東日本テクノサーベイ ご担当者様のコメント
設備の定期点検や緊急点検等で ELIOS3を活用し、工期短縮や仮設費用削減など目に見える形で成果を上げています。また、ELIOS3に搭載されている LiDAR※2により点群データが取得されるため、複雑な設備の形状把握などの面でもお客様に大変喜ばれています。今後もドローン等の新技術を活用し、インフラ設備の持続可能性を支えるための取り組みを続けてまいります。また、測量ペイロード※3・UT 検査ペイロード※4 といった魅力的な追加ツールが発表されましたが、今後もユニークなペイロードオプションの追加に期待しています。
(株式会社東日本テクノサーベイ 測量計測部 副長 今野 雄介氏)
■株式会社東日本テクノサーベイについて
東日本テクノサーベイは、東北電力グループの一員として、電力設備の計画・保守に係わる測量調査ならびに水門扉・水圧鉄管等の鋼構造物やコンクリート基礎等の既設構造物の健全性調査等に携わることにより、電力の安定供給に寄与しています。
https://www.hts.tohoku-epco-gnw.jp/
※1 屋内点検用球体ドローン「ELIOS 3」
ELIOS3は、Flyability 社(スイス)が開発した非 GNSS環境下の屋内空間などの飛行特性に優れた屋内用ドローンELIOSシリーズの最新機種です。世界初の3Dマッピング用LiDARセンサーを搭載。点検・施設情報をリアルタイムで3Dデータ化し、位置特定が可能です。また、最新のSLAM技術により操作性・安定性も大幅に向上し、操縦者の負担軽減と飛行時間の短縮を実現しています。ブルーイノベーションは2018年に日本における独占販売契約を Flyability社と締結し、ELIOSシリーズを活用した点検ソリューション「BEPインスペクション」の提供を開始しました。
「BEP インスペクション」は、ドローン点検の現場の運用サポート、機体の提供だけでなく、ドローン導入時の講習やパイロット育成のための教育ソリューションなども提供しており、プラントや発電所、下水道などを中心に 300 ヶ所を超える現場での実績があります(https://blue-i.co.jp/inspection/ )。
また、ブルーイノベーションはドローンを活用したソリューションを点検以外の分野でも幅広く提供しており、2024 年 1 月 1 日に発生した令和 6 年能登半島地震では、被災地での捜索や状況確認などの災害時活動で貢献しています(https://www.blue-i.co.jp/news/release/20240111_1.html )。
※2 LiDAR
「Light Detection And Ranging」の略。レーザー光を照射して、その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測する測距センサーの一種です。
※3 測量ペイロード
ELIOS 3 に搭載する専用ペイロードの一種で、高精度な点群データを短時間で取得可能な測量デバイスです。
https://www.blue-i.co.jp/news/release/20240118.html
※4 UT 検査ペイロード
ELIOS 3 に搭載する専用ペイロードの一種で、非破壊検査(UT 検査|超音波厚さ測定)が可能な UT 検査用デバイスです。
https://www.blue-i.co.jp/news/release/20240409.html
ブルーイノベーション株式会社(東京都文京区|東証 5597)
1999 年 6 月設立。複数のドローン・ロボットを遠隔で制御し、統合管理するためのベースプラットフォームである Blue Earth Platform(BEP)を軸に、以下ソリューションを開発・提供しています。
・点検ソリューション(プラント・工場・公共インフラなどのスマート点検、3D モデル化など)
・教育ソリューション(法人の人材育成、パイロット管理システム提供など)
・物流ソリューション(ドローンポートシステム提供など)
・ネクストソリューション(監視、清掃システム提供など)
産業用ドローンなどを活用して業務用ロボティクスソリューションを提供する株式会社センシンロボティクス(本社:東京都渋谷区)の北村卓也代表取締役が、DroneTribuneのインタビューに応じ、2020年の事業と展望を語った。
北村社長は、2019年の同社の活動について「当社が目指す『ドローンによる業務の完全自動化』を実現するコアテクノロジーとなる完全自動運用型ドローンシステム『SENSYN DRONE HUB』のサービス提供を開始したことが大きなトピックです」と振り返った。
「SENSYN DRONE HUB」は、ドローンの機体を格納し、自動での離発着や自動充電に対応する基地(ドローンポート)。ソフトウェアによる制御と組み合わせることで、事前に設定されたルートへの自動飛行や、画像などの撮影を自動化できる。先に行われた国営飛鳥・平城宮跡歴史公園(奈良市)での実証実験のように、定期的な施設の点検が可能になる。センシンロボティクスでは、ビル、工場、高層施設などの警備や監視業務をはじめ、津波、雪崩などの災害対策と定点観測や、鉄塔、陸橋、ダムなどの定期点検、さらに山間部、高所、災害危険地域などにおける業務に利用できると提案している。
北村社長は「当社のお客様は、鉄鋼、石油、電力、鉄道、道路、建設、通信などです。大きな工場の設備点検や、石油タンクなどの点検を行っています。すべての事業者に共通した課題が『人が足りない』という状況です。高所の点検などは危険が伴います。そのため、なかなか点検要員のなり手が増えません。こうした課題をドローンが解決していけます」と展望した。
始動した2020年の取り組みについて、北村社長は「今年は『SENSYN DRONE HUB』の実導入の年と位置づけ、様々な業種で、実運用に向けた試験導入を行ってまいります。具体的には、有人地帯における目視外飛行(レベル4)に向けた準備を進めていくことになります。現在は法規制の関係上、オペレーターの目視可能範囲(レベル3)での飛行検証を行っていますが、ドローンによる業務の完全自動化を実現するためには、目視外補助者なしでドローンにミッションを行わせる必要があり、ハードウェア・ソフトウェアの進化、社会的受容性の喚起を促進して参ります」と話す。
一方で、ドローンによるソリューションの提案先が抱える構造的な課題があると、北村社長は指摘する。いまの社会を支えている歴史ある重厚長大企業の本社の管理職や現場の責任者などが、積極的に未知の新しいソリューション導入に踏み切れないでいる現状だ。「少子高齢化や設備の老朽化に伴う課題やリスクへの対応は待ったなしと認識しつつも、自分が定年するまでは、点検などに大きな変化を起こしたくない」との心理的抵抗が大きいため、現場へのドローン導入がなかなか進まない。
こうした課題を解決するために、北村社長は「能動的な提案をぶつけるようにしています。お客様の課題を解決するひとつの手法として、ドローンやロボティクスがあることを提案しています。また、大きな事業所などでは、数多くの利害関係者が点検や検査に携わっているので、地域や地元の構図を理解した上で、ビジネスを推進しています」と取引先の事情を丁寧に向き合う姿勢を明確に打ち出している。実際、こうした取り組みが実を結び、これまでにドローンによる送電線点検や、警備サービスの強化などに導入されてきた。
北村社長は「これまでの実績が口コミで伝わることで、いろいろな部署や新規の事業者からも、問い合わせが増えています。ドローンによるソリューションは、最初の信頼を築くまでは苦労も多く事業化へのハードルも高いと思います。しかし、ひとつの実績が評価されると、わらしべ長者のように新しいビジネスへとつながっていきます。今年から、様々なシーンでドローンの社会実装が加速していくと考えています。当社が注力する設備点検、警備監視、防災・減災対応においても、産業用ドローンの市場はさらに大きく拡大していくものと想定されます。我々はドローンサービスのリーディングカンパニーとして市場を牽引して参りたいと考えております」と2020年に向けた抱負を語る。