東京ビッグサイトで8月21~23日に開催された水産加工などの展示会「第21回ジャパンインターナショナルシーフードショー」で、水中ドローンの体験会が人気を集めた。ブースを出した株式会社スペースワン(福島県郡山市)は、関係者や親子連れに体験させたり、説明したりして注目されていた。キャッチフレーズは「水中ドローンで大漁」。
スペースワンが出展したの機体は中国CHASING社製のGLADIUS mini。水産加工品のブースが軒を連ね、試食を振る舞う中で、水槽に漂う水中ドローンがライトを照らしたり、思い通りに動いたりすることに興味を示した親子連れなどが続々と見学に訪れ、実際に水槽の中で思い通りに動く機体に目を丸くしていた。
ブースの担当者は「周辺のブースとそん色のないほどに興味を持ってくださいました」と手ごたえを感じていた。
水中ドローンを手掛ける中国CHASING Innovation社の代理店、株式会社スペースワン(福島県)の小林康宏代表が5月13日、神奈川県藤沢市の慶應義塾大学SFCキャンパスで、慶大ドローン社会共創コンソーシアムの代表を務める古谷知之総合政策学部教授の先端モビリティ研究会に登壇し、水中ドローンを紹介、実演した。デモンストレーションでは居合わせた学生や教員らも集まり注目度の高さを示した。同社は研究活動に生かしてもらうため、グラデフィウスミニを1機を、実演用のプールとともにコンソーシアムに寄贈した。
小林代表はウェブサイト制作、通信販売などとともにドローン事業を展開。コンサルティングやスクール運営を手掛けるほか、全国の自動車学校によるドローンスクール進出の足掛かりとなった全国自動車学校ドローンコンソーシアム(ジドコン)の構築を支援してきた。中国CHASING社のパートナーとなって以降、水中ドローン「グラディウスミニ」などの普及のほか、水中ドローン安全潜航操縦士の講習やライセンス発行を通じて、安全確保にも取り組んでいる。
この日の研究会には、履修している学生のほか、南政樹ドローン社会共創コンソーシアム副代表が主催する自主活動「ドロゼミ」の参加学生、関係者らも参加。古谷教授のあいさつのあと、小林代表が自社の取り組みなどを説明した。その中で小林代表は自動車学校のドローン参入の背景にある免許取得人口の急減などに言及し、「自動車教習で培ってきた教習のスキルがドローンにも生かせる。垣根をこえた安全意識と質の高い教育が必要」と指摘した。
また小林代表は、民間調査機関の水中ドローン市場の拡大予測を紹介しながら、海の活用について言及。「海の平均水深は3800メートルと富士山が浸かるぐらい」、「マリアナ海溝の最深部を目撃したのは世界に3人しかおらず、そのうちの1人が映画監督のジェームズ・キャメロン氏」などと豆知識をおりまぜて講演し、海の中が「まだまだ解明されていないことだらけでおもしろい領域。日本は海に囲まれた海洋国家でもあり、水深100メートル以内のところでビジネスチャンスがあると思っている」などと、水中ドローンの可能性んも高さを指摘した。
水中ドローンへの期待は世界的に高まっていることについても言及。大規模展示会のブースを示しながら「次年度は水中ドローンのメーカーのブースが増えるうえ、1社あたりが拡大する見込みだ」と述べた。
この日、小林代表が持ち込んだのはスペースワンが扱っている水中ドローン「グラディウスミニ」。機体の色は、かつて一世を風靡したイギリスのSF人形劇特撮「サンダーバード」に登場する潜水マシンサンダーバード4号を思わせる印象的な黄色で、最近では大規模展示会、JapanDrone2019で2部門で表彰されるなど話題の機体だ。4Kカメラを搭載していて、陸上で操作をしながら搭載したカメラがとらえた映像をリアルタイムで確認できる。カメラの角度は、機体そのものの角度を調整することで可能で、その角度をたもつなど姿勢を保つことができる。空中のドローンのように、定められた位置に静止することができるなど多くの特徴を持つ。
このため、漁業関係者が船底に操船の邪魔になる貝がついていないかどうかといった、通常ならダイバーが潜って行う確認作業をグラディウスでできることを映像で紹介。荒天時の定置網の保全や、養殖場の管理、ビル蓄熱施設、ダム給水口などで用途が考えるほか、「被災地の海水浴場では、水面が穏やかに戻っているように見えても、海底には撤去されないまま沈んだ構造物の瓦礫などが残っている場合もある。近く、その作業にも出向く」などと、用途が拡大している実態を伝えた。
このほか、世界では未来のモビリティのひとつとして人が潜水を楽しむための乗り物も研究されていることを紹介。「2050年にはさまざまなモビリテフィが誕生すると思う」と展望した。
教室で講演したのち、キャンパス内にあらかじめ設置した小型プールでグラディウスミニを実演。小林代表が手に持ったプロポを操作すると、プールに浮かべた黄色い機体のプロペラがまわってしぶきをあげながら姿勢をかえずにもぐり、プールのまわりに集まっていた学生から歓声があがった。プロポの画面で機体搭載のカメラがとらえた映像が確認できた。学生たちも捜査を体験し、「これはきれい」「いろんなところで使いたい」の声があがった。また捜査の方法や機体の性能について、学生や見学者から活発に質問があがり、小林代表や、小林代表に同行したスペースワンの植木美佳さんがていねいに対応した。
デモの途中からは、別に持ち寄った中国パワージビジョン社製の海洋ドローン、パワードルフィンも投入。2機のドローンの競演に、通りがかった学生、教員、関係者、事務員らが足を止め見入っていた。
デモのあとに、小林代表が慶大ドローン社会共創コンソーシアムに、グラディウスミニをデモ用のプールとともに贈呈。「研究に生かしていただければうれしい」とあいさつした。