• 2020.12.18

    いつでも飛ばせる環境づくりこそゴール Skydioのトム・モス氏インタビュー

    account_circle村山 繁

     飛行航路を機体自身が判断するAIドローンの事業を展開するSkydio Japan合同会社(東京)のトム・モスCEOはこのほどドローントリビューンのインタビューに応じ、同社の技術が生かせる領域や、サービスを提供するさいの判断基準、経営目標などについて語った。モスCEOは、活用領域についてマニュアル運用されている領域はすべて対象と明言。特に撮影後にデータ解析する領域と、シチュエーショナル・アウェアネス(現状把握)が求められる領域の2点をあげた。サービスの提供先として歓迎するのは「ノーカスタマイズで使って頂けるところ」で、具体的な提供の可否判断には「より多くの人々を喜ばせられるかどうか」を考慮すると述べた。経営として設定しているゴールは「お金よりも、どこでもいつでも飛ばせる環境を作ることが重要」と強調した。また、パートナーを組む株式会社NTTドコモについて、Skydioが飛行技術開発に集中し、ドコモがそれを可能にする通信環境と取得データ解析などのクラウドサービスを提供する役割分担の関係にあることを説明した。

    ■想定する活用領域は画像解析領域と“シチュエーショナル・アウェアネス”

     Skydioが開発したSkyidio2などのAIドローンは、障害物を回避して対象を追尾したり、目的地に向かったりする自律航行技術を特徴としている。現在鉄塔などの送電設備の点検などを中心に実績を積んでいて、関係者の間で「ぶつからないドローン」と評判が高まっている。こうした評判や自律航行技術に、同社には連日、点検以外の事業領域も含む幅広い業種から多くの問い合わせが相次いでいる。

     モスCEOは同社のサービスが活用できる領域について「鉄塔や送電線など、マニュアルで点検しているところでは、弊社(Skydio)のドローンを使えばメリットを感じて頂けると思います。点検、パトロール、工事現場の監視などはすべて使えます。Skydioが考えるドローンの活用領域は2つあります。ひとつは、点検や工事現場の監視のように定期的、一時的に撮影して分析する領域。もうひとつが災害や事件が発生した際にリアルタイムで状況を把握するシチュエーショナル・アウェアネスが求められる領域です」と述べた。

     現時点で参入を考えていない領域として、重量のあるレーザーを搭載することが求められる測量などの分野をあげた。これは現時点で機体が重量のある搭載を想定していないため。それ以外では「特にこの領域には使えない、ということはありません」と述べた。現在は機体に固定されているカメラについても、将来的には別な取り換え可能になるよう開発していることも明かした。

     日本参入後は各方面から問い合わせが相次いでいる。しかしながら「まだ総勢220人の小さなベンチャー企業であるため、提供できる機体の数などに限りがあり、すべての要望には応えきれない」状況だ。こうした中、サービスの提供先の判断基準としては、「まずは今の機体をそのまま、ノー・カスタマイズで使って頂けるところがいいです。いまマニュアルで使われている場所であれば、そこを自律航行に切り替えることで、携わる人が少なくなるメリットを感じてもらえると思います」と話した。

    ■「重要なのは、より多くの人に喜んで頂けるか」

     また、具体的な提供先を検討するにあたっては、問い合わせを受けた企業のほか、パートナー企業などと可能性も検討するという。とくに、ドコモが全国に持つ支社、支店網から要望が寄せられることもあり、重要な検討材料となっているという。

     提供先を具体的に決めるさいに重視する点について、モスCEOは「より多くの人々に喜んで頂くこと」と即答。「(検討している中から)一番多くの人々を喜ばせることができるのはどれかを考えます。要望がいろいろと寄せられますが、その共通点が何かを探り、その技術を提供していきたいと考えています」と述べた。

     Skydio Japanは米Skydio.Inkにとって初の海外現地法人となる。日本市場での目指すゴールについて、モスCEOは「経済的なゴールはありません。それよりもどこでもいつでもドローンを飛ばせる環境を作りたい。それによって多くの人に喜んで頂きたい。お金よりヴィジョンが大切です。2、3年後には『Skydio2 Dock』(=機体の離発着ポートとなるボックス型のSkydio2の専用ドック)が日本中に、たとえば10万台とか100万代とか、どこにでも設置されていて、いつでもドローンがパトロールに出動できて、点検のために稼働できて、災害調査に出動できるようになっていたらいいな、と思っています。ビジネスだから儲からないといけないし、ファンドレイジングもしたいと考えています。しかし、売上よりも環境がゴールなのです」と説明した。

     そのうえで米Skydioの本拠地であるシリコンバレーの考え方について「シリコンバレーでは、技術やソリューションを提供することそのものが経営の一番の理由になっています。われわれは、この技術は絶対にないといけないと信じ、提供したいと考えています。もうかるために製品を作っているわけではありません。もうからないと開発ができないので、提供ができるようになれば、もうかるシステムにしないといけませんが、順番は提供することが先です」と述べた。

    ■ドコモの提供する通信技術、自動航行にぴったり

     さらに、パートナーのドコモに触れて、「ドコモはドローンが飛行するのに不可欠な通信環境を提供していて大容量、低遅延の5Gも提供しています。自律航行にぴったりの技術です。ドコモはかつて、i-mode(=アイモード、携帯電話でウェブページの閲覧やキャリアメールの送受信を可能にした世界初の携帯電話IP接続サービス)でもうけていたときに、まだ売れ筋でなかったスマホに“新しい風”を見出してアンドロイドの活用に乗り出した企業。そのドコモと協力して、世界中でトレンドとなる技術を日本に提供し、広めたい」とドコモへの信頼も語った。

     ドコモのドローン事業は2016年に発表した中期戦略に正式に盛り込まれた。モバイル通信事業に実績があり、目視外飛行にこの技術が生かせる。上空での通信や、正しい電波の使い方などにも知見がある。ドローンの飛行を支援しAI解析も行うクラウドサービス「docomo sky」も提供している。すでに、離島向けの宅配や、台風で孤立した住民に救援物資を届けるなどの取り組みを実施するなど、ドローンを事業のひとつの柱として位置付けてきた。自社の基地局の点検にも2017年からドローンを活用、docomo skyで自動化、データ蓄積、サビなどの検知をしている。すでに社内に350人を超えるパイロットを抱え、年間延べ1000機の飛行実績もある。

     ドコモ5G・IoTビジネス部の牧田俊樹氏は「社内で実践をしていることがドローンのサービスについて、自信をもってお客様におすすめする後ろ盾となっている」と話す。

     Skydioとは今年1月に協業検討を発表し、7月に100%子会社である株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ(東京)が、同社が運用するファンドを通じて出資。11月に、ドコモとしてSkydio 2や、産業機Skydio X2、ボックス型格納ドック、Skydio Dockの順次提供開始を発表するなど、連携を強めている。

    インタビューに応じるSkydio Japanのトム・モスCEO。手前の格納ボックス「Skydio2 Dock」にSkydio2が待機している

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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