神奈川県は9月2日、ドローン前提社会の実現に向けた取り組みを推進する産学公連携型のコミュニティ「かながわドローン前提社会ネットワーク」の第1回会合を横浜市の神奈川県庁で開催した。あいさつに立った神奈川県の黒岩祐治知事は「日本も世界も、ドローン前提社会に必ず入っていく。その先鞭を神奈川県でつけたい」と決意を表明。急遽参加した鎌倉市の松尾崇市長も「神奈川県を中国・深圳に負けないドローン前提社会にしたい。鎌倉も一員として全力で取り組む」と気勢を上げた。会合では県が取り組み概要を説明したあと、ドローン研究の第一人者である一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長、慶応義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表が講演し、ドローンの事業を展開する7団体が活動内容を紹介した。
「かながわドローン前提社会ネットワーク」第1回会合は横浜市の神奈川県庁本館3階の講堂で開催され、会場は事前登録者や関係者など約200人の参加者で埋まった。
冒頭であいさつに立った神奈川県の黒岩祐治知事は、県の10市2町(相模原市、平塚市、藤沢市、茅ヶ崎市、厚木市、大和市、伊勢原市、海老名市、座間市、綾瀬市、寒川町、愛川町)が国から指定を受けている「さがみロボット産業特区」での取り組みのひとつとして、ドローンの研究開発に力を入れていることを紹介。この中で「箱根で火山活動が活発化したさいには、状況把握に活用するなどの経験を重ねてきた。第四次産業革命はドローンで劇的に変わると展望している。ドローンにはまだまだ使い道がある一方、技術である以上、光と影があり、それらをみんなで考え、共通認識を持ちたい。日本も世界も、ドローン前提社会に必ず入っていく。その先鞭を神奈川県でつけていきたい。みんなの知恵を結集したい」と、知事選で公約に掲げたドローン前提社会の実現に強い意欲を示した。
ドローン前提社会の実現に向けた取り組みの事務機能は、神奈川県政策局未来創生課が担う。会合では知事のあいさつに続き、現在の取り組みを紹介。現在、9月12日までの日程でモデル事業を募集していることなどを説明した(記事、神奈川県の告知)また今後の展望として、実証実験の蓄積や、これに伴う経済価値の向上、将来的なサプライチェーン構築のための議論を構想していることを明らかにした。
これに続く講演では、一般財団法人先端ロボティクス財団の野波健蔵理事長が、ドローンの産業活用について、農業、建設、測量、災害対応、物流などセクターごとに、研究フェーズ、開発フェーズ、事業化フェーズの段階に分類して分析。農薬散布などについて「すでに事業化フェーズに入っている」と紹介するとともに、「災害対応と物流とは非常に相性がいい」などと、ドローンの活用法を具体的に展望した。
あわせて、東京湾をはさんで千葉県と神奈川県をドローンで横断させる構想を披露。「直線であれば40キロだが、道路を移動すれば80~90キロメートルと長く渋滞リスクもある。具体的なことは今後検討するが、たとえば重量20キログラム、ペイロード5キロのエンジンを積んだ日本製のカイトプレーンなら、機体に凧がついていて、エンジンを切ってもすぐには落ちない。飛行時間2時間で、飛行距離は100キロと往復できる」などと展望した。さらに、若手研究者を対象としたコンペティションを来年6月に開催すると発言。「日本にはソフトウェア技術者が少ない。この遅れを取り戻すべくエンジニアを育成したい。今年10月から公募したい」と説明した。
「ドローン前提社会」の名付け親でもある慶大ドローン社会共創コンソーシアムの南政樹副代表は、日本では、ドローンが首相官邸で発見されたことなどから否定的にとらえられがちな状況について、「これは産業として健全ではない」と感じたことを説明。「ドローンは日常的にみんなが使えるもの、という状況にシフトさせたい。ドローンは空を活用するためのデジタルツールである、というコンセプトで研究している」と述べ、ネガティブなイメージから日常の道具への認識の転換に意欲を示した。
そのうえで南氏は自身の活動をいくつか紹介。昨年6月に神奈川県立湘南海岸公園で開催した「湘南UAVデモンストレーション」の様子や、現在開発中の航行中の船舶から離発着ができる機体を紹介し、「多くの方々にドローンの魅力を伝えて、いつも使っているスマ-トフォンのように、それほど特別なものではない、ということを伝えたい」と述べた。
またドローンについては、「デジタルテクノロジーが広まっている時代の中で、タンジブル(実体感のある)な、人が手で触れられるテクノロジー」と特徴を説明。「これまでサイバースペースの世界でしかできなかったビジネスが、リアルの世界でもできるようになってきた」と紹介し、可能性が広がっている状況を解説した。
県が「ドローン前提社会」の実現に向けてモデル事業を募集していることを念頭に、南氏は、「それを考えるうえでヒントとなる4つの視点」を提示。「①従来、人が得られなかった視点を持てる、②空間で静止できるなど自在のポジショニングが可能、③インターネットと連携できる、④群で行動できる」と列挙し、多くのアイデア、工夫を呼び掛けた。
「ドローン前提社会でしたい」として「実証実験で終わることではなく、サービスや産業として継続できること」を掲げた。「そのために新たに産業に参入できる環境づくりが大事だ。人材、プラットフォーム、規制緩和、事業支援の4つの『財』を大事に、担い手、価値づくり、仕掛けの3つのセクターが三位一体となって進むことをイメージしている」と展望した。
さらに、ドローンが社会に受け入れられるための「パブリックアクセプタンス」についても言及。「ドローンが当たり前に受け入れられる社会では、利用の目的があらゆる目的に対応できる、という点が大事。社会受容性はリスクと利便性に対する社会のコンセンサスであると考えており、そこでは、思いやりが大切であり、机上でなく実例が重要であり、関係者による公平かつオープンが議論の場が必要。完全な合意をもとに進めることよりも、ゆるやかな合意形成を図る『ラフコンセンサス』を土台にスピード感を重視する考えも重要だ。さらに民意とマーケット志向で、個人が自発的に、みずから寄っていくアプローチが大事。こうしたことがキーワードになる」と、ドローン前提社会の実現に必要となる要素を列挙した。
講演に続き、ドローンの事業、研究を展開、推進する企業、団体が取り組みを発表した。発表したのは、ソリューションを手掛ける株式会社アイ・ロボティクス、機体フレーム技術の研究開発を手がける株式会社エアロネクスト、離島の物流問題解決に取り組む株式会社かもめや、体が不自由な方々にバーチャルツアーを提供する株式会社シアン、ドローンスクールの運営や橋梁点検サービスなどを提供している一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)認定スクールのDアカデミー、空撮で魅力を発信する事業を展開している株式会社Dron é motion(ドローンエモーション)、災害発生時に迅速な発災地地図作成を手掛ける「災害ドローン救援隊DRONEBIRD」や「Japan Flying Labs」などの活動を実施している特定非営利活動法人クライシスマッパーズ・ジャパンの7団体。
アイ・ロボティクスの我田友史氏は、「事業のひとつ、プラントソリューションでは国内鉄鋼大手と研究している。スーパー専門家集団というのが強みで、課題を解決していく」と事業を紹介。エアロネクスト伊東奈津子執行役委員は、「ドローン前提社会の前提は安全を担保する機体の信頼性。ソフトウェアでの解決をめざす企業が多い中、われわれはハードでの解決を試みている。最大の特徴は特許ポートフォリオ。世界の産業ドローンに搭載させたい」と意欲を語った。
かもめやは「離島の物流問題を解決するため、陸、海、空を含め24時間、365日、完全自動、無人で動く離島向け物流インフラをつくることに取り組んでいる」と紹介。シアンは「身体が不自由な方に、行けない、を、行けるにかえる、を掲げて『空力者』というサービスを提供。楽しい旅行を治療にする、というビジョンを掲げて研究をはじめている」と述べた。またDアカデミーは「スクールとして、安全運航で業務を遂行してもらうことを目的にしている。千葉県君津市とは橋梁点検の実証実験で、横浜に本社を置く株式会社アイネットとともに締結をし、手軽に低コストで点検できる方法を開発した」と発表した。
ドローンエモーションの田口厚代表は、「空撮をキーワードにさまざまな事業を展開していて神奈川県でも各地で活動している。ドローンでは、頭上より高く、ヘリコプターより低い、地上150メートル未満の高さという、ドローンを手にするまで人が得られなかった視点を得られる。観光開拓に使えると考え、自治体向けのコンテンツを発信し、旅のドローン前提社会をつくることをテーマに取り組んでいる。ホテル予約のようにスマホでドローンを飛ばせる場所を予約できるシステム『そらチケ』も展開中。今まで観光地でなかったところが、ドローンで絶景になって観光地化すれば、眠っていた土地が、人が集まる土地にかわる。そんな仕組みを神奈川県のみなさんとつくりたい」と表明した。
NPO法人クライシスマッパーズ・ジャパンの代表で、青山学院大学教授の古橋大地氏は、活動の原点が2010年1月のハイチ大地震だったと述べ、「地図がなかったが、インターネット上で2000人ぐらいがあつまって、地図をできていったことを経験した。これを災害対応にいかすそうと考えた。発災後に迅速に被災地にかけつけて、撮影して、データを共有する。これらを通じて人道的に使いたい」などと活動の一端を紹介した。
事例紹介が終了したあと、鎌倉市の松尾市長が飛び入りで参加。松尾市長は「ドローン前提社会を掲げたとき、わくわくするとともに、どうしたらいいか、とも感じた。鎌倉は高齢化率が30%を超え、17万の人口の場所に、延べ年間2000万人を超える観光客が来る。交通渋滞をはじめとしたオーバーツーリズムの問題もある。解決には、住民や企業と共創を通じて新しい価値を生み出すことが必要だと思っている。その中でドローン前提社会はおおきなキーワードになると思う。ドローン前提社会を実現するためには、産業クラスターの形成が重要と認識している。規制緩和に向けたアクション、空域の実証実験、産官学の連携とともに、企業の集積、人材の集積が重要。課題解決に手を取り合って進める中で、鎌倉も一翼を担える。頭脳、パッションをお貸し頂き、神奈川県を中国・深圳に負けないぐらいのドローン前提社会にしたい。鎌倉も一員として全力で取り組みたい」と表明した。
株式会社ORSO(東京都千代田区、坂本義親代表取締役社長)が、DRONE STARの新モデルを6月6日に発表すると予告した。DRONE STAR公式サイトには発表までのカウントダウンが表示されていて、関係者の期待が高まっている。初代モデルはゲーム感覚のアプリと18gの超軽量機体「DRONE STAR 01」などで構成され、画期的な商品として話題を独占した。学校や塾、予備校といった教育現場を中心に楽しみながら操縦が学べる教材としても高く評価されていて、6年ぶりの新モデルはドローン事業者、教育、IT関係者などから関心を集めている。
DRONE STARの公式サイトには5月下旬、「DRONE STAR NEW PRODUCT Coming soon」と関係者の好奇心を刺激するコピーと、発表までの残り時間が表示された。新モデルの概要には触れていないものの、「楽しみながら学ぶ、新しい体験。」のコピーから「楽しさ」の開発哲学を受け継ぐことが予想されている。
初代モデルが発表されたのは2017年4月で、自宅で操縦トレーニングを楽しめる画期的なコンセプトが話題を集めた。スマホでアプリを起動させ、画面越しに18gのミニドローン「DRONE STAR 01」を飛ばす操作が基本。起動方法から解説した「チュートリアルモード」、機体の位置を空中で保つホバリングの腕前を測定してスコア化する「ホバリング検定」、画面に現れるソフトクリームを避けるゲームを通じて技能向上を図る「ソフトクリームパニック」など、ゲーム感覚で操縦の基本が身につくことが評判を呼んだ。
この当時(2017年4月)はドローン普及の掛け声が高まった時期にあたる。国交省航空局が一定の基準を満たした民間のドローンスクールを「講習団体」と呼びホームページで初公表したのが2017年6月1日で、DRONE STAR発表の2か月後だ。この6月1日は、ドローンに取り組むスタートアップに資金を供給する産業特化型のベンチャーファンド「DRONE FUND」が発足した日(設立の発表は前日の5月31日)にもあたり、ドローンの普及で重要な、人材育成、産業振興の段階を押し上げる大きな節目を演出した。
6年後の現在は昨年(2022年12月)の改正航空法施行で「レベル4」飛行を可能とする要件が制度化され、制度の一環として制定された操縦に関わる国家資格の交付も進むなど、難易度の高い利活用への取り組みが進む。専門化や高難度化の機運が高まる中、ドローンの担い手となるすそ野を広げるための環境整備の必要性も生じていて、新モデルへの期待に直結している。
新DRONE STAR発表は6月6日。カウントダウンがゼロになるまであと少しだ。
国土交通省航空局はドローンの国家資格教育機関である登録講習機関などの監査を担う監査実施団体について、ドローン検定協会株式会社合同会社(佐賀県鳥栖市)、ドローン操縦士監査管理協会(DPAA,東京)、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA、東京)の3団体をホームページに掲載した。 国交省は 今年3月、監査実施大団体の要件を公表し希望団体の申請を受けていた。国交省は 提出された書類等で要件を満たしていると確認した団体についてホームページに掲載する ことにしており、 認定した3団体が掲載された。
監査実施団体はドローンの登録講習機関と登録更新講習機関への監査を実施する団体で、「無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令」の規定の「外部の者」に該当する。省令では「登録講習機関等監査実施団体」と呼ばれる。 登録講習機関に義務づけられている監査を外部の立場で実施し、航空局に報告を行う。
監査実施団体は5月末時点で3団体だが今後、増える見通しだ。
昨年(2022年)12月、改正航空法施行に伴い、ドローンスクールとして国家資格の教育を担う「登録講習機関」が新たに誕生し、民間団体と併存することになった。国家資格の教育機関である登録講習機関は監査を受け、報告する義務がある。監査は外部の団体が担うことになっており、申請(手続きのうえでは「願出」)を受けた中で要件を満たした団体が、今回認定を受けた。
認定された監査実施団体のうちJUIDAは、 国交省の発表後、監査実施団体としての活動方針を公表した。現在300 超を数える登録講習機関のうちJUIDA認定スクールは140強と半数 に迫る。JUIDAは 認定スクールに対しこれまでにも監査サービスを提供してきた経緯があり、今後も 独立した立場から認定スクールのうち登録講習機関となったスクールを中心に、 経験を踏まえた監査サービスを提供する見通しだ。
JUIDAが公表した内容は以下の通りだ。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(所在地:東京都文京区、理事長:鈴木真二 以下
JUIDA)は、2022年12月5日に施行された改正航空法に基づき、2023年5月19日、「登録講習機関等監査実施団体」となりましたことをお知らせいたします。
1.背景
①登録講習機関等監査実施団体制度創設の背景
国土交通省は 2023 年5月19日付で、登録講習機関等監査実施団体(以下「監査実施団体」)の一覧を発表いたしました。
2022年12月5日に施行された改正航空法では、無人航空機の登録講習機関及び登録更新講習機関に関する省令第六条第七項において、第三者による監査が義務付けられており、今般義務付けられた監査を担う監査実施団体の一覧が発表されたものです。
②監査実施団体の役割と概要
登録講習機関は下図に定めるフローに従い、監査を受ける必要があり、監査実施団体がその監査を担います。監査実施団体は航空局への監査結果の報告が義務付けられています。また登録講習機関は、監査実施団体の作成した監査報告をもとに、監査から一か月以内に航空局に監査報告および是正措置の報告を行うことが義務付けられています。国の定める法定監査となり、かなり厳格な監査となる見込みです。
2.JUIDA の取組
①JUIDA のこれまでの取組
JUIDAは、2015年にJUIDA認定スクール制度を制定し、全国278校※3のJUIDA認定スクールに様々なサービスを提供しております。その一環として、JUIDA独自の監査の枠組みを構築し、他団体に先駆けて監査を実施してまいりました。今後は、監査実施団体としても、長年培ってきたノウハウを活かして JUIDA 認定スクールのうち登録講習機関となったスクールに対して監査を実施してまいります。また、監査を通じて、業界の健全な発展と高度な技能・知識を有する人材を引き続き輩出してまいります。
②JUIDA の実施する監査の概要
JUIDAは下図に定めるフローに従い監査を行います。登録講習機関は自らの責任において監査への対応を行いますが、JUIDAは監査を通じた上での運営上の各種情報提供を継続的に行っていくとともに、図内赤枠で囲った部分については、経験が浅い登録講習機関でも対応ができるよう、外部の機関と連携してコンサルティングサービスを提供します。JUIDAは監査人としての独立性を担保しながら、国の求める書類作成などに慣れていないスクールでも監査に対応できるよう、ワンストップでサービスが受けられる体制を構築しています。
DJI JAPAN株式会社(東京)の呉韜代表取締役は5月26日、千葉・幕張メッセで開催された「第5回建設・測量生産性向上展」(CSPI-EXPO 2023)の「出展者による製品・技術PRセミナー」に登壇し、発表したばかりの空撮用ドローンのInspire3、産業機のMatrice350RTKなどを紹介した。呉代表がドローン経験者に挙手を求めたところほぼ全員の手が挙がって驚く場面もあった。セミナーは盛況で、会場に用意された座席数をはるかに上回る参加者が聴講し、座席の後ろなどのスペースには立ち見の聴講者があふれた。
DJI JAPANの呉代表が登壇したのは、「現場で活躍する最新の産業用ドローンの現状」の演題で開かれたセミナーの最初の10分間。後半では、同社のソリューションエンジニア、木田雄貴氏が登壇し、DJI機の具体的な活用例を紹介した。
呉代表は冒頭に来場者に向けて「ドローンを活用している、という方、ぜひ挙手してい頂きたいと思います」と呼びかけた。会場では一斉に手が挙がると呉代表は「うわ。え。ほぼ100%じゃないですか」と目を丸くし、「数年前に同じ質問をしたところ1割もいない状況でした。短期間でここまで利用して頂けて嬉しいです」と感謝を述べた。
呉代表はDJIが2006年、日本支社が2013年に設立されたなどの歴史や、日本のスタッフは200人であり、研究買発、販売、生産まで担う、深圳の本社以外で世界最大のオフィスであることなどを説明した。また生産買発について、①個人向けのコンシューマ②Inspire3ほか映画、放送などプロフェッシショナル③農薬散布や直播、リモートセンシングなどの農業分野④産業ドローンの4つのラインナップで行われていることを紹介。産業分野で使われてる用途は53%と半分以上が土木・建設、測量であることを伝えた。
また産業機として5月18日にリリ-スされたMatrice350RTKを紹介。継続飛行は55分で、DJI JAPAN設立当初に主力機体だったPhantomが10分未満であったことと比べて、バッテリーなどの技術が進化したことなどをアピールした。このほか通信、衝突防止システムなどの機体の特徴や、サードパーティーを含めたペイロードの選択肢の豊富さを紹介したうえで、PR動画を投影した。
その後は、木田氏が活用事例として中電技術コンサルタント株式会社(広島市)と共同で実施した活火山である桜島(鹿児島県)の火山活動に伴う状況把握、地形変動量調査、土砂移動機構のメカニズム解明などの調査や、豊橋市(愛知県)の防災対策などが紹介され、来場者は しきりにメモを取っていた。
建設機械、測量機器の大規模展示会「第5回建設・測量生産性向上展 (CSPI-EXPO 2023、建設・測量生産性向上展実行委員会主催)が5月24日、千葉市の大型展示会場幕張メッセで開幕し、会場にはDJI JAPAN、アミューズワンセルフ、スペースワン、ジュンテクノサービス、セキド、エアロセンス、みるくる、ルーチェサーチなどのドローン、水中ドローンや関連技術が大量出展されている。DJIはドローンを格納するDJI Dockや、今月18日に発表されたばかりの産業機Matrice 350 RTKを初公開。ほかにも多くがこの日にあわせたコンテンツを披露している。開会前に行われたオープングセレモニーでは、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の鈴木真二理事長がテープカットに加わり、ドローンが建設測量分野で欠かせない技術であることを物語る中、ドローン関係事業者の熱の入った展示は5月26日まで続く。
にぎわいは開場前、会場外ですでに出来上がっていた。
会場である幕張メッセの玄関口前には、株式会社アミューズワンセルフのハイブリッドドローン「GLOW」を描いた巨大案内板が登場し、来場者は会場に入る前にドローンを目にすることになる。また24日午前10時の開場前に、会場ホール入場口前で行われたオープニングセレモニーでも、にぎやかさをアピールするかのように、テープカット用のテープが前後2列にはられ、主催者、業界代表ら33人がズラリとはさみを持って並んだ。JUIDAの鈴木理事長もその一人として加わった。谷鉄也実行委員長は「400社を超える出展企業で開催できた」とにぎわいを総括してあいさつしたほか、来賓として登壇した国土交通省のイノベーション担当の森下博之大臣官房参事官は「注力しているBIM/CIM、ICT施工、遠隔化・自動化などにとって、建設機械、測量機器、ドローン、AI、センサーなどは欠くことのできない主要な技術」と述べた。
展示でもドローンは主役である建設機械とともに彩を添えている。
DJI JAPAN株式会社はドローンの格納、充電、離着陸場となるDJI Dockを初出展した。手元のスマホで開閉する様子を実演し、その様子に多くの来場者の足をとめていた。機体を格納するときには離着陸台の左右から箱型の覆いが機体をつつむようせり出して閉じる。機体のプロペラは自動で向きが整えられDockに収まる態勢になる。またDockの周辺環境を監視するカメラも備わり、機体が離着陸するときの安全を確認する。早ければ6月中にも発売となる見込みだ。このほか1週間前に発表されたばかりのMatrice 350 RTKも展示されている。
同社のブースには、株式会社テクノシステム、株式会社kiipl&napなど関係の深い企業がそれぞれの技術をブース内ブースのような形式で展示している。たとえばテクノシステムはUAV支援システム「ランドステーソンUAV」を紹介。ドローンで取得したデータをもとに、作業規定準則などに定めるフォーマットにそった帳票を作成することができ、入力作業を軽減する。
ドローンの販売や人材育成などを手掛ける株式会社セキドは、中国CZIのドローン用のミッションペイロードを紹介している。音声を届けるためのスピーカーなどデジタルボイスブロードキャスティングシステムやライトなどが来場者の興味を引いていた。
NORTEKジャパン合同会社は、手のひらサイズの高精度水中ナビゲーションセンサパッケージ、Nucleus1000を紹介している。音波を出して距離を測る音波発受信部を持ち、圧力計、水温計、超音波式距離計やAHRSセンサーを備え、深度、水底や壁面などまでの距離、姿勢、方位、対地速度などを割り出す水中ドローン向けのアプリケーションだ。油田開発に用いる探査ロボットなどに使われてきたが、ドローンに使えるように応用、調整した。
株式会社スペースワン、ジュンテクノサービスも水槽を用意し水中ドローンを中心に展示している。スペースワンはCHASNGの「CHASING M2 S」を日本で初めて公開した。またジュンテクノは水中ドローンの活用事例を紹介したり、ポータブル電源を開発する中国、エコフローテクノロジー社のポータブル電源や、12分あれば18個の氷が作れるポータブル冷蔵庫GLACIERなどを紹介したりしていて、いずれも多くの来場者でにぎわっていた。
ドローンを使った構造物の高密度測量で知られるルーチェサーチ株式会社は、既存構造物の点群から3DCADに変換するソフトウェア「PINO」を展示している。点群をモデル化するさい、最前面でない点群をつかみ、ゆがんだモデルになってしまう事態を避けるため、簡単な作業で奥の点をつかまずに済むよう工夫してある。同社の尾原保弘技術営業部長は「図面のない構造物が多くあり、その現状を再現することに貢献したい」と話す。
また古河産業株式会社は、最大49㎏までの重量物を運べ、飛行中につり荷の横揺れを防ぐ機能を搭載した「EAGLE 49」を展示。株式会社FLIGHTSは高性能でありながらリーズナブルな次世代いLiDAR「FLIGHTS SCAN」を紹介している。株式会社カナモトはレンタルや運用サービスで活用しているFreeflySystems社製マルチコプターALTA X(アルタエックス)を展示し、都心部での送電線作業をこの機体で遂行している様子を動画で紹介している。エアロセンス株式会社は、200haを30分でレーザー計測できる、YellowScanのLiDARを搭載したVTOL機「エアロボウイング」をアピールしている。NTTコミュニケーションズ株式会社もAIドローン開発で知られる米Skydio社の機体やソリューションを紹介している。
ほかにも株式会社みるくる、株式会社テラドローンなど多くのドローン関連企業が、建設機械メーカーなどとともに会場を盛り上げていた。25日にはJUIDAの鈴木理事長が「ドローン、空飛ぶクルマが拓く未来」の演題で「特別セミナー」での登壇を予定してる。26日にはDJI JAPANの呉韜代表取締役が「現場で活躍する最新の産業用ドローンの現状」について、製品・技術PRセミナーとして講演することになっているなど、ドローンの存在感が高い3日間となりそうだ。
ドローンの国家資格を満たす知識や技能を受講生に提供する「登録講習機関」が5月20日現在、300機関を超えた。ひとつの機関が複数のスクールを設置しているケースも含めると、スクール数は460校となった。昨年(2022年)12月5日の航空改正法施行によりスタートした国家資格制度は、講習機関の設立が相次いでいる。国家資格制度以前に、国交省のホームページに掲載を認めていた民間スクールである「講習団体」は1000件を超えていたため、今後も従来スクールから講習機関への転換や新規開設が続くとみられる。
国交省が公開している一覧表によると、登録講習機関は5月19日現在で309件。機関によって地域別スクールなどを複数設置しており(一覧表では「事務所」)、スクールは全国で461校を数える。一覧表には各スクールが対応できる8つの項目ごとに「〇」が表示してあり、全項目対応校は96校だ。
今年(2023年)2月までは一定の条件を満たすと認められた民間スクールが「講習団体」として国交省のホームページに掲載されており、それぞれの講習団体が上位組織の策定したカリキュラムに準拠するなど管理を受けている場合もあり、講習団体を管理する「管理団体」も掲載されていた。
国家資格制度に移行後は、講習団体、管理団体の区別はなく、国家資格の知識、技能を提供する機関は「登録講習機関」に統一されている。準拠する講習内容は国が定めている。
一方、ひとつの機関が複数のスクール(一覧表のうえでは「事務所」)を運営するケースはあり、一般社団法人農林水産航空協会は32校、一般社団法人DPCAが31校、日本無人航空機免許センター株式会社(JULC)は28校、日本ドローン機構株式会社は8校、株式会社先端技術無人航空機トレーングセンターは8校、一般社団法人ドローン大学校は6校、株式会社モビリティテクノは6校を展開している。なお旧管理団体が引き続き指導、管理、手ほどきしているケースも多いが、旧管理団体自身が講習を行わない場合には登録講習機関に名を連ねておらず、一覧表には表示されていない。
旧管理団体の中には、傘下のスクールの登録講習機関への登録手続きを支援し、管理団体自身は講習機関には登録ない団体もある。国家資格創設の環境整備を支援するなどいわば裏方業務をこなしてきた団体も多く、中央省庁や民間スクール、産業界の中には、今後も旧管理団体の活動に期待を寄せる声も多い。
大阪・関西万博での実現が期待される、いわゆる「空飛ぶクルマ」などのエアモビリティへの関心が高まる中、DroneTribuneは、3月に米LIFT社が開発した1人乗りエアモビリティ、HEXA(ヘクサ)を操縦する様子を公開したGMOインターネットグループの熊谷正寿グループ代表にインタビューした。飛行機やヘリコプターの操縦の資格を持ち、空を飛ぶことに詳しい熊谷氏は、HEXAの操縦体験について不安を感じることは一切なかったと明言し、そのうえで「われわれは空飛ぶクルマをお守りする」と、サイバーセキュリティ、情報セキュリティを手がける企業グループとしての使命感を鮮明にした。また3月に行った飛行の公開も、可視化しにくいセキュリティを、身をもって示す意味があったと明かした。
空飛ぶクルマなどエアモビリティの実現が期待される大阪・関西万博は4月13日に開幕まで2年となる節目を迎え、プレ万博など地元を中心に機運を高める催事が企画されている。GMOの熊谷氏はこれに先立つ3月15日、大阪城公園で丸紅株式会社が主催したHEXAの飛行デモンストレーションに、日本人で初めてライセンスを取得した操縦者として参加し、自身が飛行する様子を公開した。万博開幕まで2年を切り、エアモビリティへの関心がますます高まっていることから、熊谷氏に尋ねる機会を得た。インタビューは、都内のGMO本社で行われた。
――空飛ぶクルマやエアモビリティの現時点での話題には、安全、安心がついてまわります。操縦者の立場としてどう感じますか
熊谷氏 「私は飛行機で双発エンジン航空機の免許を持っており、ヘリコプターでも同じように双発エンジンの免許を持っております。その意味で空飛ぶ乗り物のライセンスは、今回のHEXAで3種類目となり、空の安全は常に意識しています。どの観点から論じるか、による面がありますが、まず申し上げたいのが動力の数の観点です。HEXAはこの点で飛行機やヘリコプターと比べると最も安心できる乗り物と言ってよいと思います。なぜなら、飛行機の動力の数は2つ、ヘリコプターも双発の場合で2つなのに対し、HEXAは小型のプロペラが18基あり、ローターのひとつひとつに動力であるモーターがついています。ひとつの動力が失われた場合も安全性に問題はありません。ここは安全を語るうえでお伝えしたい点です。このほか空域の観点もあります。
――それはどんな?
熊谷氏 「飛ぶ空域が異なるということです。飛行機の場合は3万から4万、5万フィート。プライベート機がより高く、民間機だと3万3000フィートあたり、ヘリなら都内だと2000フィートとか3000フィートといった具合です。それに対し空飛ぶクルマはそれよりずっと低い。陸上交通の場合は電車も自動車もほぼ地上を動きますので、その観点からも議論できるかもしれません。航空管制の整備はこれからですが、日本の場合は特にしっかりしています。議論の最中の型式などルールづくりの中で出てくる論点もあると思います」
――快適性などは
熊谷氏 「HEXAはFAA(米連邦航空局)が『Part103』と呼ぶウルトラライト級に位置付けられています。ものすごく軽くてとにかく飛ぶことを最優先した機体です。小回りがきく分、扉がなくて、夏はいいんでしょうけど、冬は寒いとか。快適性はこれから解決していくことになるかもしれません」
――総合的にはいかがでしょうか
熊谷氏 「飛行そのものでは技術的にはもう全然、問題ないレベルです。あとは規制と市民感情の問題があると思っています」
――熊谷代表はHEXAを操縦したとき上空から手を振っていましたが率直に、こわくないものですか
熊谷氏 「パイロットなのでシートがあってハーネスがあって操縦桿を握っていればこわくないのです。ただ、ギャグみたいな話なんですが、基本的に高所恐怖症でして。いや、ホントです。飛行機の免許をとる前に、ここ(東京・渋谷のセルリアンタワーにあるGMOのオフィス)から外を眺めて、ふと『ここを飛ぶのか』と思ってビビったことがあるんです。子供のころから空を飛びたいと思っていたのですが、ホントに取ろうと思ったときに、やっぱりちょっと高いところはこわいよな、と思ったんです。そのうえで、空飛ぶクルマですが、まったく、こわくない。これは私がパイロットだから、とか、高所恐怖症を克服したから、ということよりも、一番大きいのは機体が安定したから、ということだと思っています。HEXAはパイロットが機体を安定させるためにすることはほとんどなくて、コンピューターがプロペラを制御してくれています。これだけ安定していればなにもこわくない」
――操縦士ががんばらなくても機体が安定しているのですね
熊谷氏 「ふつうならパイロットはいつも風を計算して飛びます。私もスマホにパイロットのアプリをいくつも入れていますが、たえず風向きを気にしています。羽田空港も風向きによって着陸の滑走路が違います。ヘリも飛行機も、正面から風を受けていないといけないのですが空飛ぶクルマは、機体によって多少差はあるかと思いますが、少なくともHEXAは風向きを気にすることはありませんでした。飛行条件が整っていれば、どっちから風が吹いてくるからどっちに向いて飛ぶ、ということはなかったです」
――HEXAや空飛ぶクルマの普及イメージは
熊谷氏 「普及の障害は、住民感情と規制だと思っています。テクノロジーの障害はほぼない、とIT業界に身を置くものとして、思っています。規制は日本では大阪・関西万博をきっかけにずいぶん整備が進んでいますし、これからも進むと思います。経済産業省、国土国交省主導で空飛ぶクルマを普及させようとしていますし、万博終了後も定期航路を残そうとしていますね。非常によい動きです。残る最大級の問題が、離発着場です。空からみるとHマークやRマークがありますが、実際には使われていません。まずはそこをなんとかしないと離発着できません。あとは飛行許可。ヘリですら飛行のたびに国土交通大臣の許可が必要です。それが空飛ぶクルマの離発着についてどうなるのか。いまの日本の状況では都度、国土交通大臣の許可が必要、という話になりやすいので、規制緩和ができるかどうかが普及には重要だと思います。あとは住民感情です」
――乗り越えるための対応が必要だと言われています
熊谷氏 「われわれGMOは空飛ぶクルマをお守りしています。GMOはテクノロジーとしてセキュリティの領域に強みを持っています。情報セキュリティとサイバーセキュリティ、つまり、暗号化で読み取られないようにする部分と、ハッキングされないようにする部分です。空を守ることに貢献するため経済産業省の担当部署にもパートナー(従業員)を派遣しておりますし、空飛ぶクルマの開発企業に技術協力をしております。セキュリティは可視化が難しいので、そのために何ができるかをわれわれはいつも考えております。3月に大阪城公園をHEXAで飛びましたが、あれも私が身をもって安全ですよ、と示すため、という文脈です。ただ空が好きだから飛んだ、というわけではなかったんです。6月に開催されるドローンの展示会『JapanDrone2023』にも出展してご理解いただけるようにアナウンスもするつもりでおります」(注:GMOインターネットグループはJapanDrone2023のメインスポンサーでブースも出展する)
ーー空の産業利用に大きな可能性を感じていることが伝わります
熊谷氏 「空は現時点では最後の産業的なフロンティアです。 だって、地上はいっぱいじゃないですか。それに対して空は、ヘリが飛ぶ高さより下の低空域はガラガラです。そこを安全に産業的に利用すべきだと考えています」
ーーGMOインターネットグループとしての空飛ぶクルマへの取り組みとは
熊谷氏 「強みがないことをやっても仕方がないと思っています 空飛ぶクルマの産業を強みである情報セキュリティ、サイバーセキュリティなどセキュリティの面から応援し、お守りし、普及を支えようと思っています 安心安全の空の利活用を応援して普及をするようにグループを挙げて努めてまいります」
――ありがとうございました
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