慶應義塾大学は日本でドローンの黎明期が始まった初期のころからその価値に注目し、必要性を唱え、研究し、発信し、社会実装を目指している日本を代表するドローン研究体のひとつです。特にSFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム(代表:古谷知之教授)は2019年も多くの実績をあげ、2020年もさらなる飛躍が期待されています。神奈川県で開催された会合の合間に、南政樹副代表に話を聞いた。
――2020年の始動にあたり、土台となる2019年を総括するとどうなりますか?
南氏 コンソーシアムとしては年末の静岡県御殿場市との連携を含め地域との連携協定を新しく結ばせて頂いたり、原田久美子研究員を中心に、未来の学びを展開したりと、社会応用、人材育成、研究それぞれで活動を展開してきました。人材育成では連携協定を結んでいる広島県神石高原町で、地域が中心的に防災の担い手となる「地産地防」プロジェクトを進めています。ドローンを防災に役立てる取り組みです。防災科研(国立研究開発法人防災科学技術研究所)の内山庄一郎氏がアドバイザーを務めていて、着々と態勢が整えられています。この取り組みには、ドローン・ジャパン株式会社、株式会社アイ・ロボティクス、楽天株式会社、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社などドローンの活動に積極的な企業が多く協力してくれていて、地域防災に心強い担い手が育ちつつあります。
――神石高原町では高校生も大きな役割を果たしていると聞きました
南氏 地産地防の取り組みという意味では、担い手の中心は地元の40歳以上の方が中心で、彼らに嘱託という形で役割を担って頂いています。ただ、担い手の方だけでなく、地元の広島県立油木高校の高校生も、同じトレーニングを積んでいます。彼らは地域の担い手と同じように、株式会社自律制御システム研究所(ACSL)の開発した物流用の機体をフライトさせる技術を身につけ、実際にさまざまな場所で飛ばしています。ACSLの機体と飛ばす高校生は、彼らが初めてだと思います。飛ばすだけでなく、次に何をするか、どう使うか、を次々と考えています。
――どう活用するか、など考えることについては、慶応義塾大学SFCキャンパスで展開している単位にカウントされないゼミ、などと言われた自主活動「ドロゼミ」でも展開していますね
南氏 ドロゼミで先回りして取り組んでいたことを、油木高校に持ち込んでみた、ということもしました。ドロゼミの中では、ドローンを作る活動にも取り組んでいて、どうやらその空気も持ち込んでいたようで、油木高校の生徒の中にも、ドローンを作ることに興味がある、という生徒が出てきました。
――頼もしいですね。人材育成といえば、福島県田村市との連携協定でも地域での人材育成に力を入れてこられました
南氏 田村市とは2016年12月に包括連携協定を結び、さまざまな取り組みを展開しているのですが、人材育成としては地元の福島県立船引高校でドローン特別講座を土台に、地域住民や小学生など他の年齢層、住民層にも展開しています。船引高校の特別講座では、参加する生徒の活動が、今では高校の部活動として定着しました。今は米国の標準化機関であるNISTが提唱する操縦者技能評価法のSTM for SUASをトレーニングに組み込む準備を進めています。船引高校の生徒たちには、地元のドローン活動隊「ドローンコンソーシアムたむら」の会員にもその技術やスキルを伝える役割を担ってもらいたいと考えています。STMを取り入れようと思ったのは、客観的に評価できるうえ、かつグローバルに測定できるからです。
――育成する人材の対象が高校生から、広がっていますね
南氏 先日、田村市の小学校に、先生向けのトレーニングに伺いました。「プログラミング教育」の一環としてドローンを使いました。プログラミングそのものではなく、その思考法を教える、ということが大事なのですよ、という話であったり、そのための具体例として、株式会社ORSOが開発した、動物の動きをドローンで再現するカリキュラムを示して興味をお持ちいただいたり、ということをしてきました。ドローンを動物の動きを再現するように飛ばしてみるカリキュラムをしていたときに、ペンギンやりたい、という声があがって、そこから、「どういう動きをしたらペンギンに見えるか」を考えてみたり、「ペンギンの動きは“ちょこちょこ”だけじゃなくて、腹ばいになって“スー”っとすべって海に飛び込むみたいな動きがある」などと思いついてみたり、といったことがありました。「スー」で海に飛びこむのなら、フリップで表現できそう、などと考えもあがって、「そういう考え方が重要です。課題設定、それに対するアプローチを、順序だてて考えることですから」などという話をしました。なによりも印象的だったのは、校長先生がすごくがんばって取り組んでおられたこと。
――校長先生、率先垂範ですね。現場の先生方の反響はいかがでしたか?
南氏 プログラミング教育に対する苦手意識が多いという話はよく耳にしますが、今回は、手ごたえを感じていただけたと思っています。現場でも「ヒントがありました」とおっしゃって頂きました。プログラミング教育といえば、タブレットの画面の中でキャクターが動かすことを思い浮かべるのですが、それもありますが、手で触れるモノが目の前でプログラミングした結果として動くほうが現実的だしわかりやすいはずです。当日の様子を視察しておられた地元の市や県の教育委員会も、ドローンが有効であることが印象に残ったと思っていますし、算数や国語など他の教科の中で、ここで使える、といったことに思い当たるところもあったようです。
――ご自身の大学では「ドロゼミ」を運営されています
南氏 新年から運用を変えるかもしれません。いろんなバックグラウンドの人が増えてきて、空撮、災害対応、機体開発など希望する方向が何パターンか出てきたので。たとえば、ドローンを飛ばすことに時間をかける人、研究室でドローンづくりや調整に時間をかけるひと、などと活動を分けていくことになると思います。2019年9月には田村市でフィールドワークをしたのですが、これは2020年も変わらずに続けたいな、と思っています。
――ドローン産業を概観すると2019年はどんな年でしたか
南氏 産業として、分野によっては飽和が目前まで来たのだろうと感じます。たとえば基礎的な飛ばし方に限ったスクールは、ある意味一定の成長は見たのではないかという気がします。一方で、点検など個別の領域では、既存技術との組み合わせで生まれたソリューションが、実証フェーズを終えて、ビジネスになりはじめた、というのが2019年だったと思います。農業でも許可・承認の仕組みがかわり、各都道府県の主体性が問われる局面が増えると思います。
――都道府県ごとの熱意や知識などで地域差が生まれそうですね
南氏 その意味ではそれぞれの都道府県で集中と選択が問われることになりそうです。福島のような農業県はありとあらゆるものにチャンスがあると思います。葉タバコ、ホップ、イチゴ、トマト、伝統的なものから新規参入のものまで。そういうところでは、何かに集中する、ということよりもマーケットにまかせて、JAなど地元が必要に応じて後押しをする形で広がると思います。一方で、空中散布を制限している都道府県もあって、そういうところはテクノロジーの導入が遅れぎみです。そういう自治体では、社会で広げるよりも、「まだ実証したい」という段階です。いろいろなしがらみがあって前に進めない、という地域では、まずエビデンスをとることに集中してしまう。自治体のご事情もあるので、そこは尊重しながら、技術的な検証をして、次に進める段階を踏んでいかないといけないでしょう。
――南さんは、本来集中すべきところは実証ではない、とお考えですね
南氏 集中すべきところは、「使う人」を広めるところだと思います。ソリューションがあり、それをいいと思っている人がいるのなら、あとはマーケット判断でいい。使えない人は使わなくていいし、使いたいと思えばつかえばいい。自分がやらずに委託してもいいわけです。自治体としては、使うための条件を整備して、それを管理する責任者を整えればいいと思います。条件を整えて使えるようにすることは、規制緩和の一環であると考えます。
――さて、2020年のテーマは
南氏 高高度です。地上12、13キロから、20キロあたりまでの、高い高度のドローン運用。ここであれば気象現象が起こらず、太陽光を得やすいので太陽光発電がかなり使えます。そこを、小型無人機ではなく、大型無人機で高いところからの視点を得たいと思っています。
すでにソフトバンク株式会社の子会社、HAPSモバイル株式会社が、両翼80メートルのソーラーパネルを搭載した成層圏通信プラットフォーム向け無人航空機「HAWK30」を2度、飛行させています。ものすごく大きな機体が、ふわ、っと8時間かけて20キロまで上昇して、6キロの円を描きながらそこに滞留する。地面にむかっていろいろなサービスをすることができる。携帯電話の通信サービスはもちろんですけれど、ぼくは海の調査を24時間、365日、モニターできるようにしたい。海洋プラスチックの実態を解き明かしたいし、科学者のデータとして使える知見もある。高高度からのリモートセンシングにもチャレンジしたい。空の使い方をかえたいと言ってきたわけですが、仲間も増えてきて、2020年のテーマにしようと思っています。
――テーマは高高度、でよろしいですか
南氏 言い忘れるところでした。もうひとつ野望があります。それは、ドローンやエアモビリティを前提とした道路や建物などの建築物、土木構造物、それらをトータルに考えた町や都市、それぞれの在り方を研究対象としていきたいということです。
――2020年も盛りだくさんになりそうですね。ありがとうございました。
大阪府の吉村洋文知事は11月26日、なんば駅前広場で開催2日目を迎えた「道頓堀リバーフェスティバル2023」(一般社団法人大阪活性化事業実行委員会主催)の会場を訪れ、メインステージの隣に設置、展示されたテトラ・アビエーション株式会社(東京)の1人乗りeVTOL機、Mk-5(マークファイブ)の座席に乗り込む場面があった。吉村知事はいわゆる空飛ぶクルマの実現に積極的で、たびたび「乗りたい」と発言していることで知られる。
吉村知事がテトラのMk-5に乗ったのは26日午前11時半ごろ。道頓堀リバーフェスティバルの2日目の主要行事「第13回よさこい大阪大会」のあいさつのためステージにあがり、「ここミナミは大阪の個性です。ミナミが元気なら大阪が元気になる。大阪が元気なら日本が元気になる。元気な大阪を引き継いでいきたい。そして2025年に大阪・関西万博をやります。批判されている部分もありますが、それを乗り越えてベイエリアで160か国が集まる未来を見据えた万博をやりたいと思います」と、空飛ぶクルマの実現が見込まれる大阪・関西万博をアピールし大きな拍手を浴びた。
吉村知事はあいさつ後にステージからおり、よさこいのパフォーマンスを見学したあと、ステージわきのMk-5に近寄りシートに乗り込んだ。様子を見ていた来場者から「吉村さーん」などと歓声があがり、吉村知事が声の方に向かって手を振った。
吉村知事は2021年9月14日、大阪府、大阪市、株式会社SkyDriveがいわゆる空飛ぶクルマについて「実現に向けた連携協定書」を締結したさい、大阪・天保山の調印式会場に置かれたSkyDriveの前モデル「SD03」に、松井一郎前大阪市長とともに乗りこんだ経験がある。このため吉村知事は国産2機の乗り心地を体験したことになる。
またこの日の会場では前日に続き、VRコーナーに多くの来場者が詰めかけ、参加者がVRゴーグルを装着して空クルの疑似体験を楽しんだ。
大阪・ミナミの玄関口、難波駅前に11月23日に誕生したばかりの「なんば駅前広場」で11月25日、「道頓堀リバーフェスティバル2023」(一般社団法人大阪活性化事業実行委員会主催)が始まり、メインステージのすぐ横にテトラ・アビエーション株式会社(東京)の1人乗りeVTOL機、Mk-5(マークファイブ)が展示され、フェスに訪れた多くの来場者の目を引いた。フェス会場内で行われているいわゆる空飛ぶクルマの疑似搭乗体験ができるVRコーナーにも参加者が集まり、関心の高さを示した。
テトラのMk-5はフェス会場のメインステージの横に設置され、ステージイベントの観覧者はMk-5の機体を背景にパフォーマンスを見る形だ。開幕500日前を控え、機運醸成に一役買った。会場周辺を往来する人々も足をとめてスマホで撮影するなどの姿が見られた。
VRコーナーは、大阪府が力を入れている空の移動革命社会受容性向上事業のひとつで、参加者はVRゴーグルを装着することで空クルの疑似体験ができる。ゴーグルで流される映像は5種類あり、大阪市内から関西国際空港まで渋滞を回避してストレスなく移動するコース、兵庫・淡路島から大阪・中之島までの快適通勤コースなどで、利用シーンを思い描きやすくなっている。対象は13歳以上。参加希望の場合時間枠を予約する必要があり、午前10時の開場以降、続々と予約枠が埋まっていた。
また空飛ぶクルマに関する情報をわかりやすく説明したパネルも設置してあり、足を止めた来場者に担当者がていねいに説明する姿もみられた。
25日のVR体験者は「これはいい。早く乗れるようになってほしい」と期待を寄せた。テトラ機を眺めていた来場者は「実物はかっこいい。いまのうちにこの大きさにあわせた駐車場を準備しないと」と話していた。
初日のステージのオープニングセレモニーには、主催者など多くの関係者が列席。お笑いタレントの間寛平さん、横山英幸大阪市長、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会の堺井啓公機運醸成局長もあいさつし会場を盛り上げた。
フェス会場の「なんば駅前広場」は、南海電車難波駅・高島屋大阪店となんばマルイ前のに地域主導で整備された広場で、11月23日に完成したばかり。「道頓堀リバーフェスティバル2023」はステージでのパフォーマンスや屋台が11月26日午後5時までにぎわいを演出する。
道頓堀リバーフェスティバル2023には大阪市商店会総連盟、産経新聞大阪本社、なんば安全安心にぎわいのまちづくり協議会が共催している。
一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は11月25日に都内で開催される学生向けの航空業界セミナー「航空技術産業セミナー」(公益社団法人日本航空技術協会など主催)に参加する。航空業界にとって急務な人材確保と、学生の航空業界への就職希望などを叶えることを目指すための開催で、JAXA、ANA、IHIなど航空宇宙関連企業や研究機関、官公庁などが参加する。JUIDAも学生に向けて取り組みをアピールし浸透を図る。
参加リストにはIHI、朝日航洋、JAXA、海上保安庁、川崎重工業、国土交通省航空局、ジェットスター、ジャムコ、スカイマーク、SUBARU、ANA、電子航法研究所、中日本航空、日本航空、日本飛行機、JUIDA、ピーチアビエーション、三菱重工業の18団体の名が並ぶ。場所は東京・飯田橋の会議場「ベルサール飯田橋ファースト」(東京都文京区後楽2-6-1住友不動産飯田橋ファーストタワーB1)で、12:30~18:30。
各機関が業務内容を紹介するブースを設置するほか、国交省航空局、川崎重工、ANAは特別講演も行う。日本航空技術協会によると、航空業界にフォーカスした学生向け産業セミナーの開催は今回が初めてという。
ロボット・航空宇宙に関連する製品や技術が一堂に集まる「ロボット・航空宇宙フェスタふくしま2023」は11月22日、福島県郡山市の展示場、ビッグパレットふくしまで開幕した。75のロボット関連企業・団体、56の航空宇宙企業・団体が出展するほか、第一線で活躍する論者が講演する。22日がビジネス向け、23日が一般向けで入場は無料。ステージでの講演はライブ配信する。
出展内容は年々充実していて、主催者が「進化が目覚ましい」と驚くほどだ。
株式会社スペースエンタテインメントラボラトリー(東京)は、翼幅約3mの飛行艇型ドローン「HAMADORI3000」翼幅約3mの「HAMADORI6000」のほかに、開発中の双胴船型飛行艇ドローンの20分の1モデルを展示している。荷物を機体の中央に積むためで、順調に開発が進んでいるという。
柳下技研株式会社と長岡商事株式会社は小型・高出力ガスタービン発電機搭載の荷重300kgのハイブリット大型ドローンの試作機を展示。ブースでは福島ロボットテストフィールドでダンベルのおもり300㎏をつんで飛行している動画を公開している。躯体の強度やFCの設置場所などに工夫をしたと話している。
テトラ・アビエーション株式会社はパーソナルeVTOL Mk-5の実機を展示。来場者に囲まれていた。実機展示については各地から声がかかり、今回の郡山での「ロボット・航空宇宙フェスタ」が23日に終了したあと、分解してトラックで積み、翌々日の25日に大阪・ミナミで開幕する「道頓堀リバーフェスティバル2023」に向かう。2025年の大阪・関西万博で飛行が見込まれているいわゆる「空飛ぶクルマ」の市民の認知度や受容性、機運を高める役割を担う。
このほか埼玉県産業労働部は埼玉県が圏央道圏央鶴ヶ島IC近くに整備を進めている複合実証フィールド「SAITAMA ロボティクスセンター(仮称)」の概要をパネルなどで紹介、Zip Infrastructure株式会社(秦野市<神奈川県>)は2024年度に南相馬市で実験予定の独自開発の自走式ロープウェイ「Zippar」を紹介している。株式会社ダイモン(東京)は2024年初頭に月に向かう超小型月面探査車YAOKIを展示し、学生たちに囲まれている。
田村市(福島県)を拠点に活動するドローン活用団体、ドローンコンソーシアムたむらと株式会社manisonias(田村市)は、センシング機材、ドローンによる空中散種機材や3D地形モデルなどを展示。一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)も、幅広い活動やライセンス制度などを説明する。
ステージも、3カ所に設置され講演が充実。初日は、インターステラテクノロジズ株式会社の稲川貴大代表取締役社長が「宇宙産業の展望と民間企業開発」、イームズロボティクス株式会社の曽谷英司代表取締役社長が「型式認証とドローン活用の最新動向」をテーマに講演するなど多くの講演が予定されている。
ステージの様子はライブ配信される。フェスタは23日まで
サイエンスを楽しむイベント「サイエンスアゴラ2023」(国立研究開発法人科学技術振興機構=JST=主催)の会場開催イベントが11月18日、東京・青海(あおみ)のテレコムセンターではじまり、ユーザー体験デザインの株式会社ORSO(オルソ、東京)が開発した重さ50.5gの部屋で楽しめるドローン、DRONE STAR PARTYを使ったプログラム飛行体験「小型ドローンでミッションにチャレンジ!」が親子連れなどに大人気だ。設定された着陸場所にたどりつけるようタブレットでプログラムし、実際に飛ばして試す体験に、参加した子供たちは没頭し、見守る親も手に汗を握り声援を送っている。サイエンスアゴラは19日まで。参加希望者で事前予約をしていない場合はキャンセル待ちを狙うことになる。
プログラム飛行体験は、研究知シェアリングを手掛ける株式会社A-Co-Labo(エコラボ、東京)と、DRONE STAR PARTY を開発したORSO、サイエンスアゴラを主催するJSTがテレコムセンター1階に設置したブースで実施している。大人も子供も参加できるが、参加者は主に小学生だ。事前予約を済ませた参加者が予定の時間に集まると、先生役のA-Co-Labo代表取締役CEOの原田久美子さんが、ドローンの仕組み、飛ばし方などを説明する。参加者用の席には1人1台、DRONE STAR PARTYとタブレットが置いてあり、参加者はドローンやタブレットに触れながら、原田さんの説明に耳を傾ける。
「飛び上がることを『りりく』といいます。タブレットにりりく、と書いてあるブロックありますか」
「前に進む前進もできるし、宙返りをするフリップもできます」
「計算機のような画面で数字をいれると、どのぐらい進むかを決めることができます」
「電波の関係や、空気の流れの関係でプログラムした通りにいかないこともあります」
「最後にかならず『ちゃくりく』をいれてくださいね。そうじゃないと飛びっぱなしになったいます。じゃあ、やってみましょう。できたら隣で実際に飛ばしてみましょう。今回は2回まで飛ばせます」
参加者はすぐに没頭する。親や見物者が成り行きを見守る。子供にサインをおくったり、助言したりする姿もみられた。
説明をはじめてから10分ほどで、飛行に挑む参加者が出始める。ふたつある飛行場所には、ORSOのスタッフが待機し、子供たちをサポート。「お、はやいね」「おっと、フリップがいっぱいはいってるね」などと盛り上げる。子供の横で様子を見る親もいれば、ネットの裏にまわって子供の雄姿を正面からおさえようとする親もいる。
飛ばしてみると、うまくいこうが、いくまいが親も子も「あー」などと声があがる。中には1回目でゴールにじょうずに着陸させることができる参加者もいて、そのときには拍手があがる。2回まで飛ばせるので、1回目で思い通りの軌道をたどらなかったら、プログラムを修正して再チャレンジができる。2回を飛ばし終えると参加者は「楽しかった。ありがとうございました」とスタッフに笑顔を残していく。
指導役のA-Co-Laboの原田代表は「体験に没頭している表情をみると、私も楽しくなります。楽しいと思ってもらえると嬉しい」と話している。
プログラム飛行体験で使われているDRONE STAR PARTYは、ORSOが「おうちで飛ばせる」を掲げて開発した直径12cm、重さ50.5gの小型ドローン。プロペラガードを標準で装備していて1回の最大飛行時間は7分。撮影可能なカメラもついている。この日の飛行体験中も、ドローンのカメラがとらえた動画が確認できる。
プログラム飛行体験「小型ドローンでミッションにチャレンジ!」の参加者は10月に募集し、募集開始から15分で全枠が埋まる人気ぶりだった。参加者は事前予約が必要だが、回によっては欠員がでることもある。ブースではキャンセル待ちを受け付けていて、18日も、欠員枠に参加したケースがあった。
サイエンスアゴラ2023は社会と科学をつなぐ5日間を掲げ、科学者のキャリア、いきもの、STEAM、ロボット・AI・プログラミング、健康、実験、数学など多角的なテーマを扱い150以上のプログラムを提供する。すでに10月にオンラインイベントが3日間開催されている。18、19日が会場での開催となる。入場は無料だ。
日用品大手の花王株式会社(東京)は11月9日、中津川市(岐阜県)で荷物を積んだドローン3機を自動で編隊飛行させ、そのうち1機から降ろされた荷物を自動配送ロボットに載せ替え、50mほど離れた目的地に無人で届ける自動ラストワンマイルの実証実験を行った。3機の編隊飛行は1機で載せきれない場合複数機にわけて貨物列車のように運ぶことを想定した。ドローンが荷物を下ろせる場所でおろしたあと、人の手を介して載せ替えることなく最終目的地まで運ぶ実用性や経済性、技術的な改善点などを探ることが目的で、実験は予定通りに進行した。今後、関係者が結果を解析する。実験にはイームズロボティクス株式会社(南相馬市<福島県>) ブルーイノベーション株式会社(東京)、NTTコミュニケーションズ株式会社(東京)が技術や知見を持ち寄った。
実験は国土交通省の国土交通省の「無人航空機等を活用したラストワンマイル配送実証事業」の採択を受けて、花王が統括した。無人で最終目的地まで届ける技術として、ブルーイノベーションのドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」や自動配送ロボット運航を担った。ドローンはイームズロボティクスのヘキサコプターE6106を3機活用、1機をリーダー機、2機を追従機として編隊飛行させた。イームズは編隊飛行の経験を豊富に持つが、試験場ではなく、導入が検討される現場で一般道をまたぐルートで編隊飛行が行われたのは今回が初めてだ。またドローンの長距離飛行に必用な上空LTE技術をNTTコミュニケーションズが提供した。
実験会場は、地域の観光スポット、椛の湖(はなのこ)のほとりに広がる椛の湖オートキャンプ場で、荷物を受け取る目的地になった。物流用ドローンポートを搭載した自動走行ロボットもここで待機する。出発地点は直線距離で1,9㎞離れた中津川市立坂下小学校のグラウンドだ。標高差は200mあり、小学校から目的地のオートキャンプ場までは、180度折り返す急カーブがくねくねと4,6㎞にわたり続く。直線では105パーミル、陸路でも43パーミルといずれも急こう配だ。
実験では出発点の小学校のグラウンドで、ドローン3機に、日用品を中心に2㎏ずつの密が積み込まれた。飛行ルートは予め決められた。出発の合図とともに、3機が1機体ずつ、1秒ほどの間隔で離陸した。3機は上昇すると地表から110mの高さで目的地に向かった。標高差があるので、斜面をなぞるように高度をあげながら進んだ。
目的地では、実験の関係者、地元行政、議会関係者、離陸地となった坂下小学校の児童らが空を見上げドローンの到着を待った。週っ発の合図から3分ほどでプロペラの回転音と3機の姿を確認すると、小学生から「来た」「あそこだ」などの声があがり、関係者も場所を確認しあった。
機体は目的地上空でホバリングをしたあと下降を開始した。編隊飛行を船頭してきた1機が、目的地に待機していたドローンポート付き自動配送ロボットのうえに着陸すると、居合わせた生徒や関係者から拍手があがった。飛行時間は約5分だった。残る2機もすぐそばに着陸した。ポート上に着陸した機体は、積み荷を自動で切り離し、再び浮上してポートから離れた着陸した。荷物を受け取った自動配送ロボットは、決められたルレーンを50mほど走り、受け取り地点で止まり、任務を終えた。
最終目的地に荷物を運んだ自動配送ロボットは、ブルーイノベーションが開発したデバイス統合基盤技術BEP(べっぷ=Blue Earth Platformの略称)が組み込まれていることが特徴だ。物流用のドローンポートのシステムについては、国際標準化機構(ISO)が設備要件を国際標準規格ISO5491として発行しており、今回の実験では、ブルーイノベーションがISO5491に準拠して開発したドローンポート情報管理システム「BEPポート|VIS」を使った。関連する運航管理気象センサー、障害物検知、侵入検知などの機能を持つ。センサーから得た情報はVISで一元管理された。
ブルーイノベーションの田中建郎取締役は「今回の実験で満足することなく、今後もさらに利便性、安全性など改善を図っていきたい」と述べた。
イームズロボティクスの 曽谷英司代表取締役は「1台で運びきれない場合に、複数台を1人で運用できればより多くのものを運べる。機体開発や編隊飛行には現在も取り組んでおり、今後、1人が運用できる台数の拡大や、1台あたりの積載能力の大きい機体開発を通じて、ドローン物流が広がることを期待している」などと述べた。
今回の実験の会場となった中津川市は花王の創業者、長瀬富郎(ながせ ・とみろう)の生家の造り酒屋がある縁の深い場所だ。実験には恵那醸造(えなじょうぞう)株式会社の長瀬裕彦代表取締役も立ち会い、荷物の受け取り役を引き受けた。裕彦氏は「いまあるのも花王がここまでになってくれたから。その花王が地元で実験をしてくれるのは感慨深い」と話した。
今回の実験で花王のスタッフは、「かおぞら」と白く染め抜かれた色違いのジャケットを着用してのぞんだ。花王のドローン物流推進事業は、同社が「01KAO(ゼロワン花王)」と呼ぶ社内の2021年7月に導入した事業提案制度から発足した事業で、実質的に稼働をはじめた2022年以降、「かおそら」を使いドローン物流に取り組んでいる。今年(2023年)9月には養父市(兵庫県)で15㎏の荷物を空送する実験を実施した。
花王SCM門ロジスティクスセンターの山下太センター長は「花王は日用品メーカーとして多様化するニーズにこたえるために、マーケティング、生産、物流、販売の船体最適のサプライチェーンの構築に取り組んでいる。創業者、長瀬富郎の有名な言葉に『天祐は常に道を正して待つべし』があり、花王はそれを今も理念と考えている。今回はその志を持つメンバーがこのプロジェクトに集まっており、その気概と熱意を届けたい」と中津川での実験に寄せる思いを伝えた。
プロジェクトリーダーの一人、是澤信二氏は「花王は全国に工場、配送センターを構えており、これらの物流資産をドローン物流に生かしたいと考えている。工場やターミナルにドローンデポと呼ばれる基地を整備し、そこから一括で供給する物流を目指したい。2024年問題もあり、無人化にこだわりたい」と意気込みを伝えた。
もう一人のプロジェクトリーダー左藤真彦氏も「最終的に届くまで多くの人の手を介するいまの物流をできるだけ無人化したい。今回も荷下ろし、詰め替えの作業をせず、そのまま届ける。こうしたシンプルな物流を実装したい」と述べた。
実験には、事業者、メディアのほか国交省中部運輸局、経産省中部経済局、岐阜県、岐阜県議会、中津川市などが立ち合い、実験の様子を見守り、関係者の話に耳を傾けた。中津川市の青山節児市長は「私たちは環境に恵まれた土地で生まれ生活していると思っている。私はストレスマネジメントのできる地域と形容している。恵まれた環境が当たり前になる中、人口減少に歯止めはかからない。いなかでもしっかりと生活できるようになってほしいし、そのための取り組みには市としても積極的に参加したい。それを通じて自分たちの郷土にほこりを持って頂けるようになればいいと思っている」とあいさつした。また実験後には、「子供たちの歓声がすべてを物語っている。この地でカタチができていくと確信した」と感想を述べた。