兵庫県と大阪公立大学は、多自然地域等でのドローン利活用の可能性を探る共同研究の一環として、兵庫県猪名川町でドローンを使った見守りや呼びかけ、オンライン診療機器の配送などの実証実験を行った。実証実験ではスピーカーを搭載したドローンを飛行させ音声が住民に届けられることや、住宅の新聞受けに配達された新聞がたまっていないかどうかが判別できることを確認した。主催した兵庫県は、「一定の有効性が確認できました。ドローンに求めたい性能もあり、今後も活用を見据えながら検証を続けたいと考えていきます」と話している。
実験は、兵庫県が研究機関や民間企業などと連携して課題解決にあたるために設置した「公民連携プラットフォーム」を通じて、大阪公立大学都市科学・防災研究センターと共同で実施した。実験には猪名川町、ドローン運用も手掛ける日本コンピューターネット株式会社(大阪市)、音響技術のTOA株式会社(神戸市)、医療機器のニプロ株式会社(大阪市)が協力した。
会場は兵庫県猪名川町の山間部で、「消防防災広場」と「上肝川」のバス停周辺エリアとの区間の約1.0 ㎞を、Matrice300RTKが、高精細カメラ、または、スピーカー、あるいは、③オンライン診療関連機器などを積んで飛行した。高精細カメラを搭載した飛行実証では、地域の住宅の郵便受けに新聞なため込まれた状態を再現し、ドローンで住宅の異変を検知することができるかどうか確認した。カメラでズームをすることで新聞のたまり具合を見ることができ、ふだんと違う乗用である場合、空からドローンで確認できる可能性を示した。
また、スピーカーを積んだ飛行実証では、上空から発した音声が地上に届くかどうかを確認した。ドローンは「地域の見守りの実証をしています」などのメッセージを流した。実証では地上でも明瞭に聞こえることを確認した。オンライン診療器具の配送実証では、血圧計を住民に届けるなどを実施した。
兵庫県と大阪公立大はこれまでもドローンを使った実証を重ねてきており、兵庫県は、「実証を通じて山間部の社会課題につきまとう“距離”の問題を、ドローンで埋め合わせることができることが見えてきました。十分に手を差し伸べるにはさらに長距離飛行が必要となるので、LTEやバッテリー技術の向上が図られることを期待したいと思います。コストも重要なので検証しないといけないと考えています。課題を洗い出したうえで社会に実装することを見据えて、これからも取り組みを進めたいと考えてます」と話している。
新型コロナウィルスのワクチンの大規模接種が始まった神戸市で5月25日、ドローンを使って会場上空から市民に接種会場の案内をする取り組みをはじめた。予約が必要であること、1日あたり2000人の接種ができることなどを連絡し、接種が進むことを伝えた。神戸市は、市民への呼びかけにドローンを活用する取り組みを積極的に行っている。ドローンは日本コンピューターネット株式会社(NCN、大阪市北区)と拡声放送機器大手のTOA株式会社(神戸市)が運用した。
神戸市では5月25日から、JR神戸駅南側のハーバーランドにある神戸ハーバーランドセンタービル(同市中央区)を大規模接会場とした接種が始まった。神戸市はこれにあわせて会場上空にスピーカーを搭載したアナウンスドローンを上空に飛ばし、接種利用者をナビゲート。JR神戸駅では「一日あたり2000人の接種が可能です」と案内が聞こえ、安心して接種会場に迎える様子がみられた。神戸市では月末の5月31日には、兵庫区のノエビアスタジアム神戸でも大規模接種が始まる。
ドローンを運用したのはITインフラ事業を手掛ける日本コンピューターネット株式会社(NCN、大阪市北区)と拡声放送機器大手のTOA株式会社(神戸市)。これまでも緊急事態宣言で外出自粛を市内で呼びかけるなど、ドローンの活用範囲を拡大している。
両社は上空から音声を流す場合の音量や反響を少なくするための発声の方法について改良を重ねており、この日の音声で地上ではっきりと聞き取れた。
新型コロナウイルス感染で緊急事態宣言が出されている神戸市は4月30日、地域最大の繁華街、三宮でスピーカーを積んだアナウンスドローンを飛ばし、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ行動をとるよう、上空から周辺の市民や通行者に呼びかけた。運用したのはITインフラ事業を手掛ける日本コンピューターネット株式会社(NCN、大阪市北区)と拡声放送機器大手のTOA株式会社(神戸市)で、アナウンスドローンの運用では実績がある。この日も上空100mからの「不要不急の外出は控えましょう」などの呼びかけは、地上ではっきりと聞き取ることができ、声に気づいた通行者が見上げたり、撮影したり、聞き入ったりしていた。
ドローンは三宮(三ノ宮、神戸三宮)駅に直結する地域のランドマーク、神戸国際会館の屋上を離発着点としてフライトした。高さ約60mの屋上から垂直に40mほど上昇し、地上からは100mほどの高さで静止しスピーカーから呼びかけた。離発着場所の神戸国際会館は安全確保のため、作業時間中の立ち入りを制限した。
ドローンは、「緊急事態制限が出ています。助かる命を助けるため不要不急な外出は控えましょう。マスクをうけ話しましょう。食事のときには1メートル以上離れましょう。路上や公園での飲酒はやめましょう」などと女性の声で「神戸市からのお願い」を呼びかけた。
運用したNCNとTOAはドローンを活用した上空からの呼びかけで経験を積んでおり、今年2月にも三宮駅から徒歩10分の生田神社(神戸市中央区)境内にある生田神社会館の屋上を起点に、周辺繁華街に向けて「健康を守るための行動をお願いします」などと呼びかけている。
上空からスピーカーを使った呼びかけには、地上で聞き取れる音量や音質の調整に工夫と技術が必要だ。音量を上げても、雑音にしか聞こえなかったり、言葉として受け取れなかったりすることが多い。また送り届けるメッセージも、言葉の選択や、しっかり伝わる限度の長さ以内にするなど工夫が必要だ。神戸市は新型コロナ以前にも、防災訓練として上空から避難誘導をするためのドローンの活用を進めており、今回もドローンを広報活動の一環として活用した。
神戸市を含む兵庫県には4月24日、緊急事態宣言が出されており、翌25日から、飲食対策の徹底、人流抑制などが要請されている。神戸市はHPなど従来の広報活動に加え、広報車両、街頭ディスプレイなども使うなど呼びかけを強化しており、ドローンもその一環として用いられた。
産業創造支援のSUNDRED株式会社 (東京都渋谷区) 、株式会社自律制御システム研究所(ACSL、東京都江戸川区)、株式会社センシンロボティクス(東京都渋谷区)など6社は2月9日、ドローン技術の確実な社会実装を実現させるための「人生100年時代に人々を幸せにするドローン作り『Take Off Anywhere』プロジェクト」(ToA)を2月22日(月)に発足させると発表した。
6社はSUNDRED、ACSL、センシンのほか、PHB Design株式会社(大阪府大阪市北区)、VFR株式会社(東京都千代田区)、株式会社理経(東京都新宿区)。各社の専門性や知見を持ち寄り、金銭的、時間的な負担を分け合って、社会実装に必要となる、効率的運用を可能にするシステムを構築する。またその過程で浮き彫りになった課題は公開し、その課題解決に必要な技術も開発する。
この日は発足に参画した6社が東京で会見を開き、SUNDRED代表取締役の留目真伸、ACSL代表取締役社長COOの鷲谷聡之氏、VFR執行役員COOの湯浅浩一郎氏、センシンロボティクス代表取締役社長の北村卓也氏、株式会社理経代表取締役社長の猪坂哲氏らが登壇し、趣旨や背景、展望、抱負について説明したほか、参画企業同士のパネルディスカッションで意見交換をした。
この中でACSLの鷲谷COOは、従来の労働力の需給バランスが崩れ始めた「変極点」にあると分析。「ドローンは空飛ぶロボティクスとして屋外、屋内を含めた3次元移動、遠隔操作、自動化が可能。ドローンの活用で変曲点を乗り越えたい」と述べた。またVFRCOOの湯浅氏はプロジェクトの進行について3段階に分けて説明。「フェーズ1でワンオペ、フェーズ2で無人化、フェーズ3でドローンが生活の一部となる。2023年までにこれを実現し、ドローンを誰もがどこでも必要な時に活用できる社会になることを目指す」などと述べた。
また質疑応答では、プロジェクトの前提である「個社を超えた連携」が生み出す参加各社の投資回収見込みについてACSLの鷲谷氏は「個社にとってリターンは重要」と前置きしたうえで、「この実証のためのプロジェクトではなく、社会実装のプロジェクト。実装できれば循環型社会が実現する。個社にとっても採算性が見込める前提」と回答した。
説明会で紹介された開発途中の機体について、トリビューンが仕様、完成予定時期、価格などを質問したところ、説明会後に「現時点では非公開。今後、随時情報を発信する」と回答が寄せられた。有力な活用場面のひとつである遠隔医療に伴う医薬品配送の、ドローン運用の担い手についても同様に質問したところ、「薬局自身で担う方法、専門業者に委託する方法の2パターンが検討されています」の回答が届いた。
プロジェクトは参画、協力を募っているという。発表当日現在で、加賀EFI株式会社、東京ドロウイング株式会社、VAIO株式会社、マナブデザイン株式会社、株式会社g、菱洋エレクトロ株式会社が協賛パートナーに名を連ねており、関心ある企業、団体などの連絡を歓迎している。連絡は「ToAプロジェクト事務局」まで。
【プロジェクト概要】
■名称 :「人生100年時代に人々を幸せにするドローン作り『Take Off Anywhere』プロジェクト」(略称:ToAプロジェクト)
■発足日:2021年2月22日(月)
■内容 :
①ドローンの確実な社会実装に向け、ドローン技術の可能性および課題の明確な発信とパブリックの知識醸成、パートナーシップ構築
②社会実装をしていくために必要な共同で実施可能な周辺技術の開発
■参画企業と役割
<SUNDRED> : 新産業共創プロセスを活用したエコシステム共創の推進によるドローン産業発展のリード
<ACSL>: ローン機体開発、離着陸制御及び自動航行制御の制御システム開発、 機体技術面から見た、ドローンの可能性と課題の発信
<センシンロボティクス>: 全自動ドローン基地のソフトウェア開発 経済面、ユースケースからみたドローンの可能性と課題の発信
<PHB Design>遠隔医療を完成させる薬局の持つべき物流機能の提案と検証
<VFR>: ドローン機体開発 、全自動ドローン基地のハードウェア開発、 製造面、経済面からみたドローンの可能性と課題の発信
<理経> : 仮想現実空間を利用したドローン開発環境の構築