航空宇宙産業の展示会「2024国際航空宇宙展」(主催:一般社団法人日本航空宇宙工業会、株式会社東京ビッグサイト)が10月16日、都内の展示会場東京ビッグサイトで開幕した。UAV、AAMに関連する技術も多く出品されている。初日は防衛関係者の姿も多くみられた。また千葉、覚張メッセでは前日の10月15日にテクノロジーの展示会「CEATEC 2024(シーテック 2024)」(主催:一般社団法人電子情報技術産業協会=JEITA)と、併催企画モビリティ技術のビジネス展「JAPAN MOBILITY SHOW BIZWEEK 2024」(主催:一般社団法人日本自動車工業会=JAMA)も開幕し、関連技術、周辺技術が来場者の関心を集めている。国際航空宇宙展は19日まで開催され、18日までがトレードデー、19日は一般にも公開するパブリックデーにもなる。CEATEC、JAPAN MOBILITY SHOWは18日まで。
国際航空宇宙展ではヨーロッパの航空宇宙産業大手エアバス、米航空産業大手ボーイング、米ロッキード・マーチン、米RTX、韓国KAI、英BAEシステムズなど海外勢が多く出展している。日本からも新明和工業株式会社(宝塚市<兵庫県>)、川崎重工業株式会社(東京)、IHI(東京)などが参加し、23カ国・地域から600を超える関連企業・団体の技術が会場に並ぶ。
会場ではエアバスの大型VTOL、新明和のKブログラム(経済安全保障重要技術育成プログラム)に採択され開発中の成層圏用HAPS、KAIのコンバットUAVやAAMなどが客足を止めていた。AI制御で2人の運航者が多数の群制御が可能なことで知られ国内にも配備されている米Shield AI(シールドAI)社のテールシッター型VTOL UAS、V-BATも展示されている。
ヘリコプターのポート関連技術を扱うエアロファシリティー株式会社(東京)はビル屋上などAAMが使いやすくするための素材を提案している。ビル屋上の鉄筋コンクリートは磁界を発生させていて、これがAAMのコンパスの機能に障害を与えるおそれがあることを問題視、展示会では非磁性PC床板などを提案し、採用実績とともに展示している。
CEATECとJAPAN MOBILITY SHOWでは、一般社団法人日本水中ドローン協会(東京)などが海洋DXパビリオンで水中ドローンのデモを実施。株式会社レスター(東京)はスイスFlyability社の球体ドローンELIOS3を展示、デモ飛行などを実施している。また徳島大学は山中建二助教ら5人の共同研究として、陸上走行用の2人乗りのクルマが4つの車輪がそのまま回転翼になるほか、車体床下にも回転翼を備え、少しだけ飛ぶ「空も飛べるクルマ」の模型を展示している。
インフラ事業者向けデジタル化サービスを展開し、Liberawareなどとの共同事業で知られるCalTa株式会社(東京)なども出展。高い織物技術からドローンの機体素材として期待されている炭素繊維の成形などに強みを持つサカイ産業株式会社(島田市<静岡県>)はアラミド繊維の厚板成形品などを展示している。自動車の内外装部品を得意とするしげる工業株式会社(太田市<群馬県>)は成型後の端材を使ったキャンプ用品などを提案。加工技術をアピールし、マッチングを呼び掛けている。
エアバスの“A3”は、新興の航空宇宙市場で主導的地位を確保し、まだ考えられていない新しい航空宇宙製品を発見し、デジタル技術を応用した独自の熟練した社内チームを迅速に展開し、継続的に企業として認められることを目的としたプロジェクトだ。A3のサイトでは現在、プロジェクトに必要な人材を募集している。
どんな人材が求められているのか。
A3のサイトでは、アーバンエアモビリティ(UAM)の実現に向けて、いくつかの分野でエ
ンジニアやオペレーションスキルを備えた人材を求めている。サイトに掲載されている
主な項目は以下の通りだ。
・UAM System Modeling and Simulation Engineer(UAMシステムモデリングおよびシミュレーションエンジニア)
・UAM Decision Making and Planning Engineer(UAMの意思決定および計画エンジニア)
・UAM, Systems Engineer-Optimization(UAM、システムエンジニア – 最適化)
・UAM, Process and Tools-Systems Engineer(UAM、プロセスとツール – システムエンジニア)
・UAM Trajectory Planning and Optimization Engineer(UAM軌道計画と最適化エンジニア)
A3プロジェクトにおけるUAMの目的は、コネクティビティ、人工知能、自律システム、電
気推進の分野での、技術の限界を押し広げることによって、環境への影響を最小限に抑え
ながら最大の社会的利益をもたらす持続可能なモビリティシステムの開発にある。
この目的のためにエアバスは、都市のモビリティの3次元空間を解き放ち、人々をつなぐための実行可能な代替手段を提供するソリューションを開発するために、会社全体でその専門知識を利用している。
募集している業種の中で、例えば「軌道計画と最適化エンジニア」では、フライトコントロール部長の元で、フライトソフトウェアとサブスケールに関する業務に従事する。その役割は、UAMドローンの飛行計画と軌道を生成する安全でクリティカルなフライトソフトウェアの設計と実行になる。リアルタイムのフライトソフトウェアの設計と実装に、シミュレーションやサブスケールおよびフルスケールの航空機でのソフトウェアとモデルの検証まで、
開発のすべての段階に携わる。具体的には、制御システムを設計し実行し、テストして、自律走行車、あるいはロボット工学プラットフォームに展開する。
求められるスキルは、固定翼と回転翼機の飛行力学や古典的で現代的な制御技術などになる。加えて、高い数学的スキルと分析力や、ソフトウェア開発の経験も求められる。フライトビークルのための低次元モデル、ツリー検索や最適化ベースのアルゴリズムを含む動作計画、およびこれらの各手法の長所と短所も理解している必要がある。また、ソフトウェア検証および検証ツールの開発や、モンテカルロシミュレーションなどのシミュレーションに基づいた失敗の確率評価方法の経験も求められる。
MATLABおよびSimulink / Stateflowの開発および解析ツールの豊富な経験を持ち、アプリケーションレベルのソフトウェアの展開、テスト、およびデバッグに精通した優秀なソフトウェアエンジニアを必要としている。さらに、ハードウェアレベルで何が起きるのかを明確に理解した上でCとC ++によるコーディングの経験も重視される。その他にも、多言語で開発されたコンポーネントでソフトウェアシステムを構成した経験や、システムのコードを通して組織の誰とでも交流し、他人が困っているバグを潰せるスキルも求められる。最終的には、飛行機、ロボットあるいはその両方に情熱を
持っている人材が重要となる。
A3プロジェクトは設計上「独創的」であるため、課題や障害に対する創造的な解決策を模索し、調査し、実行し、必要に応じて最小限の勢いで巧みにオペレーションを遂行することが期待されている。
具体的には、次のような責任が求められている。UAM航空機用の安全性重視リアルタイム軌道計画ソフトウェアの設計と実装軌道解析、検証、検証用のソフトウェアツール開発現実的な飛行シナリオで軌道生成機能の信頼性をテストするためのシミュレーション環境やその他のツールを開発、実装、統合シミュレーションおよび飛行試験データを分析し、これらの結果に基づいて軌道生成機能の
改善を提案エンジニアリングの意図を他のエンジニアリングチームと効果的に伝達し、社交イベントに参加し、新しいイベントを提案し、自身の情熱と趣味を共有し、どこへ行っても喜びを広めることによって、A3の社会環境に永続的に貢献求められる
求められる資格や学位などについては、航空宇宙、機械、ロボティクス、コンピュータサイエンス、または同様の分野の修士号または博士号。軌跡の最適化、運動計画、車両シミュレーションの分野で、少なくとも5年間の意欲的な経験、特に線形代数、動的システムおよび最適化における強力な数学的および分析的背景、軌道最適化への応用を伴う数値最適化の実地経験、MATLAB、Simulink、および関連するワークフローに関する幅広い知識、優れたコミュニケーションスキル、専門分野で主導的な役割を果たすことができ、適切な場合には分野を超えて仕事をする能力が列挙されている。
また、さらにプラスとなるITスキルとして、C、C ++などのコンパイル済み/システム言語、およびPythonなどのインタプリタ言語の経験、Gitまたは他のDVCSでの経験、アジャイル手法、および関連ツール、JIRA、Bitbucketなどに精通、UAV(固定翼、ヘリコプターまたはマルチローター)のための飛行制御システム設計の経験、不確実性下での機会制約付き最適計画と意思決定の経験、フライトソフトウェア認定要件の経験、NASおよびATM/UTMシステムでのフライト運用に関する知識、エントリーフォームなどは、以下のURLで受け付けていて、海外であれば米国で働くための
資格も求められる。
https://www.airbus-sv.com/jobs/263
人材の募集要項を読む限りは、実際にこれだけスキルと経験を備えている人材であれば、UAMプロジェクトに限らず、あらゆる企業から引っ張りだことなる優秀なエンジニアだろう。