ドローンを活用した災害対応事業に取り組む株式会社テラ・ラボ(愛知県)が、ドローン開発の株式会社ACSL(東京)のコーポレートベンチャーキャピタル「ACSL1号有限責任事業組合」と、ドローンや関連技術専門のベンチャーファンド、DRONE FUNDのそれぞれから出資を受けたと発表した。ACSLも出資したことを発表した。災害対策に力を入れ、実績も持つテラ・ラボと、国産機の開発を加速させるACSLの組み合わせは、災害対策DXの促進やドローンの災害利用の普及促進に貢献することになりそうだ。
テラ・ラボは、防災、減災に注力し、南海トラフの危険性が指摘される愛知県に本社を置き、東日本大震災で被災した福島県南相馬市に長距離無人航空機の整備・製造や、データ解析の機能を持つ試験研究施設「TERRA LABO Fukushima」を構える。2021年7月に熱海で発生した伊豆山土砂災害ではいち早く現場に駆けつけて空から把握した被災状況を、地元や関係機関に提供した。
長距離無人航空機「TERRA Dolphin」の開発、広域災害対策情報支援プラットホーム「TERRA Cloud」の社会実装を進め、防災・減災の強化を目指している。
ACSLは2022年2月28日に公表した中期経営方針「ACSL Accelerate FY22」の中で事業戦略のひとつとして、事業を通じた社会課題の解決と持続可能な世界の実現を掲げていて、防災・災害領域で消防庁、自衛隊などと連携し災害時のドローンによる支援の無償化などに取り組んでいる。またDRONE FUNDからの出資は二度目になる。
出資を通じ、テラ・ラボが自治体と築いてきた広域災害対策情報支援プラットホームと、ACSLのの情報管理が強化された国産ドローンとの組み合わせが強固になり、災害対策のデジタル化が促進され、両社が目指す防災・減災が強化された社会に向けた取り組みが加速することが期待される。
■出資者からのコメント
・ACSL取締役CFO早川研介氏
「株式会社ACSLはドローンメーカーとして、ドローンを活用した社会課題の解決に向けた取り組みを進めており、その一つとして防災・災害分野における災害状況把握等に利用するドローンを提供してまいりました。テラ・ラボ社がこれまで様々な自治体と連携し作り上げてきた広域災害対策情報支援プラットフォームと、ACSLのドローンを組み合わせることで、災害対策DXがより発展し、テラ・ラボ社とACSLが目指す防災・減災が強化された社会が実現できるものと考えております。今後も自治体や警察・消防等へのドローンの供給を通して、 テラ・ラボ社との連携を深めてまいります」
・DRONE FUND代表 大前創希氏
「私どもDRONE FUNDは、2020年5月、株式会社テラ・ラボ社にVCとして初参画し、成長を加速していく支援を重ねてきました。その中で国内の数多くの災害発災時におけるテラ・ラボ社の活動内容から、ドローン技術の発災時運用の重要性を改めて強く認識し、今後の災害対策DXの発展を確信するに至りました。そのなかで、テラ・ラボ社が開発を進める長距離無人航空機は、 今後、 国土情報のデジタル化に欠かせない技術技術になり得ると考えており、引き続き、強く支援していく所存です」
ドローンを活用した災害対応事業を手掛ける株式会社テラ・ラボ(愛知県春日井市)は11月18日、福島県南相馬市の復興工業団地内に、新拠点TERRA LABO Fukushimaを竣工させた。新拠点は、福島ロボットテストフィールド(RTF)に隣接し、RTFの滑走路に直接のアクセスが可能だ。1万㎡超の敷地に建つ延べ床面積1320㎡の社屋は、製造格納庫、管制室、危機管理対策室を備える。この日行われた竣工式で松浦孝英代表は「地域の雇用創出や産業集積に貢献したい」とあいさつした。
新拠点TERRA LABO Fukushimaは800平方mの製造格納庫と管制室、危機管理対策室が整う、「世界でも類を見ない民間試験研究施設」(松浦代表)だ。事業としての正式名称は「長距離無人航空機の生産拡張に伴う製造・整備工場、及びデータ解析試験研究施設整備事業」で、整備に合計2億7千万円強が投じられた。
製造格納庫は工場としての機能を持ち、翌長4mの機体を40機格納できる。この日はアンテナ、発電機能を持つ中継、翼長8m機のモックアップなどが並べられた。管理室は送られたデータを解析する機能を備える。114パターンの映像レイアウトが可能。3次元データ解析システムを導入した。危機管理対策は解析したデータを踏まえ災害対策本部など外部と連携しながら迅速で適切な意思決定に導く。
現在はここを中心に、翼長4mの試験機で繰り返し飛行実験を進めている。松浦代表は「長距離高高度化が目標で、2万メートルの上空まで飛行の高さを引き上げて成層圏の近くまで情報を取りに行きたい」と話している。
この日の竣工式にはDRONE FUNDの大前創希共同代表パートナーら関係者、来賓などざっと200人が竣工祝に駆け付け、神事に参列し今後の発展を祈願した。竣工式では神事のあと関係者があいさつし、松浦代表の案内で施設の内覧会が行われた。
松浦代表はあいさつの中で「浜通り地域の課題はさまざまあります。この地域をイノベーションで活性化させたいし、南相馬というまちがロボットのまちであることを広く発信したい。そのためにも、地域の雇用創出や産業集積に貢献したい。この南相馬で、ベンチャーがメガベンチャーに変貌を遂げていきたいと思います」と力強くあいさつした。
南相馬市の門馬和夫市長は、「令和元年10月の台風19号の災害発生直後に、テラ・ラボ様はほかの機関とともに調査チームをつくり、画像情報収集で大変なご尽力を頂きました。そのおかげで復旧に役立てることができました。今回の竣工は、正確で迅速な情報把握、分析で防災、減災の実現に向けた大きな一歩と感じています。テラ・ラボ様がこの地で事業を拡大され、新工場を竣工されたことを大変喜ばしく、心強く思っています。これからも地元企業として、お手伝いをさせて頂きますので、末永いお付き合いをお願いします」と竣工を歓迎した。
竣工式終了後、松浦代表はドローントリビューンの取材に「防災はこれまで公共セクターが担ってきました。しかしこれからは民間のテクノロジーが重要になります。事業の整備には多くの補助金もつか和得て頂いていて、株式会社の役割そのものの見直しにもつながる可能性があると思っています。まずはここで事業を拡大させ、多くの人がこの工場で働き始め、ここに住みたいと思う人が増えればいいなと考えています」と話した。
施設概要 ◎事業名:長距離無人航空機の生産拡張に伴う製造、整備工場及びデータ解析試験研究施設整備事業 ◎所在地:福島県南相馬市原町区萱浜 南相馬市復興工業団地内 ◎敷地面積:10,754.18㎡(約3,259坪) ◎延床面積:1,320.00㎡(約400坪) ◎投資額:2億7700万円 ※自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金制度を活用
Japan Drone 2020ではドローンや関連産業で活躍する論者らから、注目すべき発言が相次いでいる。
アーバンエアモビリティ開発を手掛ける独ボロコプター社(Volocoper Gmbh)のファビアン・ネストマン国際担当責任者は9月29日、千葉・海浜幕張で開催されているJapan Drone 2020で動画講演を公開し、日本で導入した場合の試算を公開した。
ボロコプター社はeVTOL型エアクシー、ボロシティ(VoloCity)を開発し、収益化することを前提に事業展開を進めている。ネストマン氏は、導入に適切なエリアについて、エリア内の「人口」「(人口」密度」「(人の)動き」の3点を重視していると説明。日本では東京、大阪圏に注目していると話した。
このうち、神戸空港と大阪沿岸部との間の移動にボロシティを導入した場合、現在利用可能な交通手段による平均的な移動時間より59%の短縮が可能と試算。東京では羽田・新宿間の移動で41%、田園調布・新宿間の移動で53%の短縮が可能との試算を示した。
ネストマン氏はボロシティについて、「欧州航空安全庁(EASA)の厳しい基準に基づいて開発された初の商用ライセンスを取得した機体。エアバスやボーイングなどの航空機と同程度の安全性を持ち、気にならないほど静かで、垂直離着陸をし、バッテリー交換に時間を無駄に費やすことがないほどに簡単で、都市部のための機体としての要素を兼ね備えている」とアピールした。 同社は都市部での商用飛行ビジネスを目指して2011年に設立された航空スタートアップ。垂直離着陸ができるため広大な敷地が必要となる滑走路が不要で、着陸パtッド「ボロポート(Voloports)の利用を想定している。
1 翼長8メートルの固定翼機で来場者の視線を集めている株式会社テラ・ラボ(愛知県春日井市)の松浦孝英代表取締役は、パネルディスカッション「長距離無人航空機による社会実装に向けた取り組み」にパネリストとして登壇し、展示している固定翼機は、垂直離着機を開発するための途中段階であることを明らかにした。さらにジェットエンジンの搭載計画も明らかにしており、それにより現在の設計で飛行高度が現在の想定である6000メートルから2万メートルになるという。
松浦氏はこの中で、11月に地上支援システムを福島県南相馬市で着工することも明らかにした。
テラ・ラボについては30日に登壇した前復興層・田中和則ドローン議連(無人航空機普利用促進議員連盟)会長代理が福島ロボットテストフィールドの産業集積に関連し、隣接する工業団地での建設計画を引き合いに出すなど活躍の注目度の高さを示した。
Japan Drone 2020の主催者であるJUIDAの鈴木真二理事長は、この日のウェルカムスピーしかしコロナ禍にあってもドローンは大きな影響を与えてきた。メッセージの垂れ幕を掲げて街を飛んだり、上空から市民にアナウンスをしたり、消毒液をまいたりと活躍をしてみせた。これからも使い方の可能性に満ちている。このJapan Droneでイノベーションのヒントを得てもらえれば」とあいさつした。