ブルーイノベーション株式会社(東京都)は3月11日、能登半島地震で被災した輪島市(石川県)で、決壊の危険性が指摘される土砂ダムを定期的に自動で点検する河川監視活動を実施したと報告した。土砂崩れにより道路がふさがり作業員が現地に近づけない中、ブルーイノベーションが開発したドローンの自動離発着システム「BEPポート」を適切な場所に設置し、ドローンが自動離陸することで点検を遂行した。点検は1月31日から2月6日にかけて行われ、五光物流株式会社(筑西市<茨城県>)、VFR株式会社(名古屋市<愛知県>)が協力した。
河川監視活動の対象となったのは輪島市内を流れる牛尾川につみあがった土砂が河川の水をせきとめている土砂ダムで、1月31日から2月6日にかけて、輪島市の要請を受け、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が統括して行われた。監視活動ではBEPポートに待機したドローンが、定期的に自動で離陸し、往復約3㎞を飛行して状況把握に必要な情報を収集した。ブルーイノベーションのドローンポートシステムは東日本大震災で被災した仙台市<宮城県>が設置している。災害支援活動として活用されるのは今回が初めてとなる。
発表内容は以下の通り
ブルーイノベーション株式会社
五光物流株式会社
VFR 株式会社
令和 6 年能登半島地震 二次災害に備え、ドローンポートシステムを活用
した自動監視システムを国内ではじめて実災害現場に導入・社会実装
ドローンポートから自動離発着するドローンにより、
河川上流の土砂ダム決壊の危険性を定期監視
この度の能登半島地震の影響により、被災された方々やご家族の皆様に、心よりお見舞い申し
上げると共に、皆様の安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。
ブルーイノベーション株式会社(本社:東京都文京区、代表取締役社長:熊田 貴之、以下 ブルーイノベーション)は、五光物流株式会社(本社:茨城県筑西市 代表取締役社長:小林 章三郎、以下五光物流)、VFR 株式会社(本社:愛知県名古屋市、代表取締役社長 蓬田 和平、以下 VFR)と、石川県輪島市からの要請を受け、ドローンの業界団体である一般社団法人日本 UAS 産業振興協議会(JUIDA)の指揮の元、ドローンポートシステムを活用した河川監視活動を実施しました。
本取り組みは、輪島市内を流れる牛尾川(鈴屋川の支流)に出来た土砂ダムの状況を、ブルーイノベーションが開発したドローンポートシステム「BEP ポート」を活用し、自動かつ定期的に離発着するドローンにより土砂ダムを撮影・監視し、決壊の危険性有無を常時把握することで、二次災害による被害を未然に防ぐことを目的としています。
なお、実災害現場でのドローンポートシステムの社会実装は国内初となります。
■BEP ポートを活用した災害支援活動内容
・巡回点検実施日:2024年 1 月 31 日(水)~ 2 月 6 日(火)
・場所:石川県輪島市町野町
・活動内容:
輪島市を流れる牛尾川(鈴屋川の支流)では、土砂災害による河口閉塞が数か所発生したため、道路も寸断され、人が近づくことが困難な状況でした。輪島市から JUIDA に、ドローンによる二次災害予防のための巡回点検要請があり、JUIDA指揮の元、ブルーイノベーションが開発したBEP ポートからドローンが自動で離発着し、牛尾川の上流往復約 3km を飛行。土砂ダムの状況を上空から定期的に監視を実施しました。
<鈴屋川の経時変化(同一地点)>
定点観測による撮影画像の比較から、河口閉塞による溜まり場の大きさに大きな変化がないことを確認することができました。
・使用機材
■協力
輪島市、珠洲市(ともに石川県)を中心に能登地震の被災地で災害支援活動を展開している一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)は、輪島市でドローンを定期的に自動飛行させ氾濫リスクの高まっている河川の巡視を始めることを決めた。ブルーイノベーション株式会社(東京)の遠隔監視型ドローンポート「BEPポート」を設置し、株式会社ACSL(東京)のドローンPF-2を待機させる。輪島市内の牛尾川にできた土砂ダムを監視し、河川氾濫対策の定期巡視、監視、巡回にあたる方針だ。1月30日に輪島市内にポートを設置し、早ければ同日にも運用に入る。BEPポートは東日本大震災で被災した仙台市で、津波が警告されたさいに上空から避難を呼び掛ける仕組みとして設置されている。今回導入されるポートも同型のシステムで、被災地での災害支援活動として運用される初めてのケースとなる。もはやPoCではない。
JUIDAがBEPポートを設置するのは、輪島市役所から東北東に約20㎞の地点で鈴屋川の流域だ。設置したポートからドローンを自動的、定期的に飛行させ、鈴屋川の支流、牛尾川にできたいわゆる土砂ダムの状況を継続的に監視する。
土砂ダムは地滑りや土砂くずれで河川の水の流れをふさいでいる状態で、水がためきれなくなり決壊すると氾濫などを通じた下流や流域への被害が懸念される。国土交通省は1月23日時点で6河川の14箇所土砂ダムを確認している。このうち5か所が牛尾川関連で、監視カメラを設置するなど対応が進められている。JUIDAもドローンの運用で決壊の危険性の有無を把握する。
運用開始後は、ドローンは毎日、指定時間に自動飛行させる。対象箇所を動画撮影し、リアルタイムでJUIDAと輪島市、運用を担当するブルーイノベーションが共有する。ドローンは無線の到達範囲内で運用する。ポート、周辺センサー、管理PCは米スペースX社が運用する衛星インターネットアクセスサービス、スターリンク (Starlink) を使い、災害現場での通信課題対策についても確認する。
BEPポートにはドローンの安全、確実な離発着環境を支援するセンサー類が連携している。離発着の妨げになる人の往来の有無を確認し、離発着に不適切な状況と判断した場合に離発着の停止を指示する侵入検知機能を備えるほか、ポート風況観測機能、ポート周辺のリアルタイム映像伝送機能などを持つ。これらの情報を管理するドローンポート情報管理システム(VIS:Vertiport Information System)を連携させて一元管理する。システムは国際標準化機構(ISO、スイス・ジュネーブ)が2023年6月2日に発行したカーゴドローン向けバーティポート規格ISO5491に準拠している。
BEPポートは仙台市の津波避難を呼びかけるシステムに組み込まれている。仙台市が2022年10月17日に運用を始めたシステムで、2機のドローンが津波警報とともに自動でポートを出発し、海岸まで飛行して8㎞の区間で避難を呼びかける。ドローンが撮影した映像は仙台市の災害情報センターに伝送されリアルタイムで確認できる。仙台市は、東日本大震災で避難誘導にあたった市の職員2人が津波の犠牲になっており、避難誘導の無人化を目指してシステムを導入した経緯がある。
輪島市でも土砂ダムの危険性を現地に足を運ばずに監視することが目的だ。土砂ダムの状況把握のためとはいえ人が立ち入るには危険が伴う。それをドローンの運用で回避する。ブルーイノベーションの熊田貴之代表は、2023年6月のJapanDroneで行われた「BEPポート|VIS」の発表会で、「無人のドローンが業務を安全に遂行させるためには安全を確保する信頼できるシステムが重要になる。今後無人システムの需要は拡大する。『BEPポート|VIS』でビジネスのパスポートとしての役割を果たし無人離着陸の普及と安全確保に貢献したい」と話していた。千葉市(千葉県)、中津川市(岐阜県)など各地で実現に向けた検証(PoC)を重ねている。今回はBEPポートが被災地支援で具体的に起動することになる。