株式会社東京証券取引所(東京)上場部は6月25日、取引終了後に、小型ドローンの開発を手掛ける株式会社Liberaware(千葉市)の新規上場を承認したと発表した。上場予定日は7月29日、市場はグロース市場で、業種は「精密機械」に分類される。ドローン関連事業を本業にする企業の上場で精密機械に分類される企業は初めてで、東京電力福島第一原発の格納容器内点検や、能登半島地震での倒壊家屋内点検ほか豊富な屋内狭小空間の点検実績を土台に事業拡大を図ることになる。
Liberawareはドローン産業関係者の間では名の通った日本に拠点を構える機体開発事業者のひとつ。高性能小型ドローンIBIS(アイビス)を活用した事業で知名度を広げ、ゼネコン、電力などエネルギー、インフラなどでの産業で活用も拡大している。
廃炉作業が進む東京電力福島第一原発の格納容器内の点検作業では、東京電力が作業で活用したデバイスがLiberaware製であることを記者会見で認め知名度が広がった(このとき使われた機体は「IBIS」だった)。2021年にはJR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社と点群データ取得や鉄道・インフラ業界のデジタル化事業を展開する合弁会社、CalTa株式会社(東京)を設立し、現在、デジタル化ソフトウェアTRANCITYを提供していることで知られる。
社会貢献にも積極的で2024年元日に発生した能登半島地震では一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の呼びかけに応じて輪島市などへの災害支援対策にあたり、倒壊家屋内の点検に同社の技術を活用した。
同社が開発したIBIS2は2023年6月に千葉・幕張で開かれたドローンの展示会「JapanDrone2023」ですぐれたプロダクトであったことで表彰された。
ドローン関連事業を本業の柱に位置付ける企業としては、株式会社ACSL(東京、分類:機会)ブルーイノベーション株式会社(東京、分類:情報・通信)に続く上場となる。
株式会社 Liberaware(リベラウェア、千葉市)の小型ドローン「IBIS」は、JR新宿駅で駅舎の天井裏にある高さ25センチの空間を飛行し、空間の様子を動画で撮影する実験を実施した。リベラウェアはその動画から3Dモデルを生成し、天井裏のケーブルの長さや、ダクトの大きさなど内部の様子を把握した。
IBISによるフライトは、リベラウェアとJR 東日本スタートアップ株式会社(東京)が、ビジネスアイディアの社会実装を支援する「JR東日本スタートアッププログラム」の一環で2月末に行われた。IBISの撮影により、作業員は天井をはがさなくても、点検口から数十メートル奥まで状況を確認することができた。天井裏の空間は天井高が最大で25センチで、ケーブルやダクトが走っていた。
鉄道駅舎の改良工事やメンテンナンスは、通常、利用客がいない終電から始発までの間の限られた時間に行うことを要求される。一方、天井裏の点検は、天井をはがしての実施に時間的な制約があり頻繁にはできない。多くが点検口から作業員が目視をして実施するが、奥まで確認することは難しい。このため天井をはがさずに内部を点検する手法の確立が急務になっている。
リベラウェアとJR東日本スタートアップは今後、より精度を高めるための検証を進め、作業員の負担軽減、生産性向上などを通じて、人が立ち入れない場所での点検を可能にする新たな点検手法の確立を目指す。