• 2022.1.7

    ドローン配送実験のリピート率は25%だった! ANA,セブン-イレブン,ACSLが昨年末,東京・日の出町で実施

    account_circle村山 繁

     全日本空輸株式会社(ANA)の持ち株会社であるANAホールディングス株式会社、コンビニ大手の株式会社セブン-イレブン・ジャパン、ドローン開発を手掛ける株式会社ACSLが、東京都西多摩郡の日の出町で昨年12月に実施したドローンを使った注文商品の配送実験で、利用者の25%がリピーターだったことが分かった。お試し利用の4分の1が再利用しており、一定の需要を見込めそうな結果となった。また、利用者の年齢も30代から70代以上までほぼ等しく利用されていて、ITに不慣れと言われがちな高齢者にも使われたことが分かった。

    ■70代以上も他の年代と同様に利用 お弁当、ソフトドリンクなど「即食品」に需要

    配送ドローンが注文主に向けて離陸

     実験では、セブン-イレブンの商品をスマホで注文すると届けてもらえる「セブン-イレブンネットコンビニ」のサービスを利用した。注文者はスマホで商品を選び、受け取り希望場所、希望時間などを入力し決済する。注文できるのは最低300円(税抜)からと設定され、利用料110円(税抜)が加算される。注文が受け付けられると注文者にショートメッセージで連絡が届く。所定の時間に、届く場所に出向くと、ドローンが商品を納めた箱を運んでくる。ドローンが到着するとお客様自身で箱を受け取り買い物が完了する。

     3社によると期間中の利用実績は堅調だった。運用は期間中の午前9時から午後4時までの受け付け分が対象で、荒天などサービスを中止した時間帯を除き、運用が可能だった時間枠は「ほとんどの枠が埋まった」という。

     利用者層は男性が6割。年齢は30代から70代以上でほぼ同じ水準。ただし50代が少なかった。繰り返し利用した方も多く、リピーター率は25%だった。特に届け先に指定された公園周辺の住民がよく利用した。このサービスで購入された商品としては、ソフトドリンク、揚げ物、お弁当など「即食品」と呼ばれる商品群が多かったという。

     3社は今後、実験結果を分析し、運用方法、価格設定、離発着場を含め社会実装を進めるための要件を洗い出すとみられる。

    ■配送は安定 アイスクリーム崩れず、炭酸飲料も開栓時に噴き出さず

    あつあつのおでんと一緒に、つめたいアイスも注文。こちらも溶けもせず、崩れもせせずに届けられていた

     今回の実験には、ACSL、株式会社エアロネクストが開発した配送専用のドローンをANAが運航した。飛行中に機体が傾いても運搬性能を向上させる、機体構造設計技術4D GRAVITY®︎を搭載していることが機体の特徴だ。関係者への公開時には、注文したおでんがこぼれることも、アイスクリームがくずれることもなく、炭酸飲料が開栓時に噴き出すこともなかった。

     実験拠点のセブンイレブン日の出大久野店と、届け先として指定された公園2カ所、商業施設、病院の4カ所に離発着上が設置された。最も遠い商業施設「ひので肝要の里」までの片道距離は約4キロ。住宅地上空を含めた空路が設定された。道路上空の通行に備え、補助者を配置し、車両通行が途切れるまで道路上空の通行を待機させるなど安全確保策を採用した。ドローンの上空飛行に係るLTEネットワークはNTTドコモが提供した。

     今回の実証実検は東京都の「ドローンを活用した物流サービス等のビジネスモデル構築に関するプロジェクト」に採択されており、ANAは2022年度の離島や山間地域での実用化を目指す。

    「多くは歓迎すると思う」「採算とれるよう利用者にも工夫と慣れが」

    東京・日の出町内の実験対象エリアに配布された実験告知のチラシ

     目的地となった4カ所では、期待の声が高まっている。目的地のひとつ、地元産の農産物をジャムなどに加工して販売する「ひので肝要の里」は駐車場の一角をドローンの発着場に提供した。職員の男性(70代)は、近所の住民がネットで注文して受け取っている様子に「続いてくれるとありがたい」という思いを強くしている。

     「ひので肝要の里」の周辺は買い物には不便だ。最寄りコンビニまでクルマで15分、ショッピングセンターまで20分かかる。肝要の里自身が土産物を扱ってはいるが、日用品の品ぞろえは多くない。周辺住民の多くは玄関先まで品物が届く生協などのデリバリーサービスを利用している。一方で、がまんする機会も多い。男性も「ペンとか文房具とか、ちょっとしたものが身の回りにないことがあります。そんなときは、クルマで買い物にでかけるか、別の方法で間に合わせてがまんするかどちらかです」と話す。

     ドローン配送への期待は高い。「このあたりの人々はたいてい歓迎すると思います。実証実験はよく、社会受容性をどう醸成するかを確認するために行われますが、われわれにはすでに受容性はあると思います。むしろ受容性を理由に実験をしても、期限が来ればその利便性の提供が終わってしまうことのほうが残念です」と訴えた。

     実装される社会側の変化の必要性も感じている。「離発着場は人々が集まりやすい場所で、しかももっと数が多いほうがよいと思います。離発着場を設置する場合、地主とのルールもまとめておいたほうがよさそうですよね。利用者も、たとえばシャープペンの芯をひとつ届けてほしいなどと言っては、料金が高くなったり、事業者の採算が取れなくなったりするかもしれません。利用者自身が束になって注文するなど工夫をしたほうがいかもしれないし、慣れも必要でしょう」。

     25%が繰り返して利用していた今回のドローン配送は、住民や社会も含めて実装に向けて議論が進みそうだ。

    実験で配送ドローンの拠点となった東京・日の出町のセブンイレブン日の出大久野店
    実験を見学した関係者がスマホで注文したときの画面。「味しみ大根」「味しみたまご」のほか、アイス、炭酸飲料などを注文した
    設定された届け出先のひとつ、中央公園の発着場に注文した品を積んだドローンが到着
    ドローンに運ばれてきた荷物
    箱をあけると注文した品が整然と並べられていた
    おでんはこぼれておらず、あたたかいまま食べられた
    ドローンで運ばれた炭酸飲料の開栓。噴きこぼすことはなかった
    実験に使われた機体。飛行時に積み荷が傾かない技術を搭載している。また積み荷を機体腹部にくくりつけることなく背中部分から置ける

    AUTHER

    村山 繁
    DroneTribune代表兼編集長。2016年8月に産経新聞社が運営するDroneTimesの副編集長を務め、取材、執筆、編集のほか、イベントの企画、講演、司会、オーガナイザーなどを手掛ける。産経新聞がDroneTimesを休止した2019年4月末の翌日である2019年5月1日(「令和」の初日)にドローン専門の新たな情報配信サイトDroneTribuneを創刊し代表兼編集長に就任した。現在、媒体運営、取材、執筆、編集を手掛けながら、企画提案、活字コミュニケーションコンサルティングなども請け負う。慶應義塾大学SFC研究所ドローン社会共創コンソーシアム研究所員、あおもりドローン利活用推進会議顧問など兼務。元産経新聞社副編集長。青森県弘前市生まれ、埼玉県育ち。
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